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第二部 第四章 開花
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品出しを終えると、セーラがメリーから与えられたエプロンを装備して銭闘態勢を整える。
『おっさんず』たちも、メリーの店の屋号を書いた前掛けを着け、野太い声で店の開店を告げる呼び込みを始めていく。
「ブラックミルズ商店街連合会ダンジョン販売店の開店だ。今日はいい武具が入ってるぞ。中堅なり立てで懐が温かい奴らは、装備のグレードアップ候補に見ていけー」
「グレイの言う通りだ。オレ等も金が有ったら買いたい一品が入荷されているぞ! ちょっと、お高い買い物かもしれんが、より下の階層に潜るなら必要な一品だ」
「わしら、『おっさんず』も垂涎の品ぞろえだぞ。金が無くても品物だけは見えていけ」
『おっさんず』の呼び込みに、整列して開店を待ちわびていた冒険者たちからどよめきが起きる。
「武具か……。最近、儲かっているから、そろそろ更新したいが……。見るだけ見るか。五〇〇〇ウェル以上は使わないと鑑定無料券もらえないからな」
「ベテラン冒険者だった『おっさんず』お薦めの武具かぁ。ちょっと背伸びしてみるか」
冒険者たちは、冒険者ギルドが納品依頼料の増額改訂をして以来、懐に入る金が増えており、自分の命を託す装備に対しての出費に意欲的になっているようだ。
今回は特に鍛冶屋の親父に無理言って質のいい武具を揃えてもらったり、ドロップ品の武具もいいのを揃えてきたからな。売れたら、きっとまた記録更新だろうな。
「さぁ、みなさん。見てってねー。今日もサービスしてるから」
『おっさんず』に続いて小柄なドワーフ女性であるセーラが、お客に向かって開店の挨拶を告げると、男性冒険者たちから歓声が上がっていた。
「セーラちゃん! 俺たち、いっぱい買うからね」
「メリーちゃんやファーマちゃん、カーラちゃん、アウリースちゃんはグレイズさんの嫁だから、せめてセーラちゃんは俺たちの――」
「馬鹿野郎! セーラ『も』すでにグレイズの嫁候補だ!」
モローがセーラに熱視線を送る男性冒険者に対して、事実無根のデマを流布していく。
「そうだな。少なくともわしらは応援しておるぞ」
「ば、馬鹿野郎! セーラはまだ嫁に出すつもりわねぇ!」
「おとうさん! それにモローおじさんもデイビスおじさんもお客さんの前で何言ってるの!」
顔を真っ赤にして一生懸命に否定するセーラの姿を見て、男性冒険者たちが悲鳴にも似たため息を漏れ出していた。
「ま、またグレイズさんだ」
「マジか、俺のセーラちゃんまで」
「これはもう闇討ちするしか……」
男性冒険者たちからのねっとりとした視線を受ける。
いや、だからそういうわけじゃないんだがなぁ。
「セーラ、じゃあ、俺たちは潜ってくるわ。後は頼んだからな」
「あ、はい! 頑張ります。グレイズさんもお気を付けて。あたしはここで帰ってくるの待ってますからね」
男性冒険者たちの羨望と嫉妬の入り混じった視線に、居心地の悪さを感じた俺はセーラに店を任せると、逃げ出すように次の階層へ向かう階段がある方へ歩き出していた。
階段に向かって歩き出した背後で、メリーたちもセーラへ挨拶をしていた。
「セーラさん、行ってきますー!」
「セーラ、ダンジョンで私たちもいっぱいドロップ品獲ってくる。鑑定よろしく」
「セーラさん、私たちも頑張ってきますね」
「セーラ、お店の方は頼むわね。ガンガン売っていいわよ」
やがて、挨拶を終えたメンバーたちは、先に進んでいた俺の方へ追い付いてきていた。
店は『おっさんず』とセーラに任せ、俺たちは一路、討伐目標のいる第一二階層へ向けて歩を進めていく。
ただ、店を開いている第一〇階層は冒険者の密度が多いため、ダンジョン主が絶えず防衛反応ともダンジョントラップを多数設置してくる階層であったのだ。
ダンジョントラップは、ダンジョン主がダンジョンに侵入する冒険者を排除するための防衛反応だという与太話を聞いていたが、冒険者の密度が多い第一〇階層はダンジョントラップの発生数がとても多い場所なのだ。
「わふぅ! (油臭いです)」
先頭を歩いていたハクが、何かを見つけたのか、尻尾を振って立ち止まっていた。
「ハクが尻尾振っている。ダンジョントラップみたい。解除する」
カーラが、ハクの見つけたダンジョントラップの場所を詳しく観察していく。
追放者では、探索警戒はハクとファーマ、トラップ解除はカーラか俺と分業化されている。
トラップ解除はまずはカーラが担当するように決めていた。低層階や中層階のダンジョントラップは難度の低い物が多いため、カーラの器用さを以ってすれば解除できない物はほとんどなかったのである。
ハクが見つけたダンジョントラップの疑いがある場所にしゃがんだカーラが革袋の水でダンジョンの汚れた床を軽く綺麗にしていく。
すると、綺麗になった床面にちょっとした突起が見えるようになった。
カーラが周囲の様子を窺いトラップの詳細を把握に務めていた。
「ふむ、これは踏むと火種が発生して、床下の油に着火して火柱が上がる仕掛け。スイッチも小さくて見落としやすい。いやらしいトラップ」
トラップの仕掛けを把握したカーラが、地面に作られたスイッチボタンに続く壁の仕掛けを見つけたようで、繋がっていた線をナイフで切断してトラップの無効化に成功していた。
「処理完了。これで、安全」
「オッケー。とりあえず、安全確認は俺がやるから、みんな下がってくれ」
カーラの処理したダンジョントラップがキチンと解除されているかの確認を俺が行う。万が一、解除されていなければ他のパーティーが引っ掛かる可能性が残されてしまうからだ。
メンバーが下がったのを確認し、トラップを発動させるスイッチのある場所に向けて小石を弾く。
カツンとスイッチに当たった小石が地面をカラカラと転がっていった。
それから、しばらくの間様子を見たが、カーラの解除は成功していたようで、地面に変化は全く見られない。
「よし、安全のようだ。さすが、カーラ」
「トラップ解除は好き。仕掛けを見つけるのは知的な興奮を感じる」
回復支援職の精霊術士であるカーラだが、器用さS+と膨大な知識という特性を生かし、トラップ解除を得意としている。
本来なら、大事な回復支援職を一番危険なトラップ解除担当にするのは愚策だと思われるが、予備回復手のメリーが加入したことと、カーラの能力を考えて育成も兼ねて解除をお願いしているのだ。
腕前は御覧の通り専門職の探索者も顔負けのレベルである。
「カーラさん、凄いねー! トラップも解除できるし、回復も支援もできて、頭もいい。色々とできてうらやましいなぁ」
「ファーマは敵の気配が読める。それは凄いこと。得意なことは人それぞれ。お互いに補い合えば、最強になる」
ファーマがカーラの万能さを羨ましがったが、カーラが言った通り、人それぞれ得意なことは違っている。
だから、俺の率いるパーティーってのは、それぞれの得意なことを使って補い合い、より大きな力を発揮する集まりにしていきたいと思っているのだ。
「カーラの言う通りだな。ここにいるメンバーはそれぞれ得意なことは違うけど、みんな凄い奴らだってことさ。ファーマも凄いし、カーラも凄い、アウリースもメリーもハクも凄いんだ。だから、俺らはお互いに高め合っていけるはずさ」
「グレイズさんはもっと凄いですけどね。私たちはグレイズさんがいるから、自分たちの力に慢心せずにより高みをめざせますし」
「アウリースの言うとおりね。グレイズさんの能力を見せられたら、自分たちはもっと頑張らないとって思えるわ。商売でも、グレイズさんにはまだ勝てた気はしてないしね」
アウリースやメリーもカーラの言葉に同意を示していた。
そういった考えができるメンバーだからこそ、『天啓子』という特別な力を与えられている者としても、慢心せずに急激な成長を見せているだろう。
俺はこのメンバーたちともっと、もっと一緒に成長していきたいと思えている。
「さって、安全になったことだし探索再開するぞ!」
「「「「はい」」」」
俺たちは安全になった通路を通り、目的の第一二階層に向けて探索を再開していった。
『おっさんず』たちも、メリーの店の屋号を書いた前掛けを着け、野太い声で店の開店を告げる呼び込みを始めていく。
「ブラックミルズ商店街連合会ダンジョン販売店の開店だ。今日はいい武具が入ってるぞ。中堅なり立てで懐が温かい奴らは、装備のグレードアップ候補に見ていけー」
「グレイの言う通りだ。オレ等も金が有ったら買いたい一品が入荷されているぞ! ちょっと、お高い買い物かもしれんが、より下の階層に潜るなら必要な一品だ」
「わしら、『おっさんず』も垂涎の品ぞろえだぞ。金が無くても品物だけは見えていけ」
『おっさんず』の呼び込みに、整列して開店を待ちわびていた冒険者たちからどよめきが起きる。
「武具か……。最近、儲かっているから、そろそろ更新したいが……。見るだけ見るか。五〇〇〇ウェル以上は使わないと鑑定無料券もらえないからな」
「ベテラン冒険者だった『おっさんず』お薦めの武具かぁ。ちょっと背伸びしてみるか」
冒険者たちは、冒険者ギルドが納品依頼料の増額改訂をして以来、懐に入る金が増えており、自分の命を託す装備に対しての出費に意欲的になっているようだ。
今回は特に鍛冶屋の親父に無理言って質のいい武具を揃えてもらったり、ドロップ品の武具もいいのを揃えてきたからな。売れたら、きっとまた記録更新だろうな。
「さぁ、みなさん。見てってねー。今日もサービスしてるから」
『おっさんず』に続いて小柄なドワーフ女性であるセーラが、お客に向かって開店の挨拶を告げると、男性冒険者たちから歓声が上がっていた。
「セーラちゃん! 俺たち、いっぱい買うからね」
「メリーちゃんやファーマちゃん、カーラちゃん、アウリースちゃんはグレイズさんの嫁だから、せめてセーラちゃんは俺たちの――」
「馬鹿野郎! セーラ『も』すでにグレイズの嫁候補だ!」
モローがセーラに熱視線を送る男性冒険者に対して、事実無根のデマを流布していく。
「そうだな。少なくともわしらは応援しておるぞ」
「ば、馬鹿野郎! セーラはまだ嫁に出すつもりわねぇ!」
「おとうさん! それにモローおじさんもデイビスおじさんもお客さんの前で何言ってるの!」
顔を真っ赤にして一生懸命に否定するセーラの姿を見て、男性冒険者たちが悲鳴にも似たため息を漏れ出していた。
「ま、またグレイズさんだ」
「マジか、俺のセーラちゃんまで」
「これはもう闇討ちするしか……」
男性冒険者たちからのねっとりとした視線を受ける。
いや、だからそういうわけじゃないんだがなぁ。
「セーラ、じゃあ、俺たちは潜ってくるわ。後は頼んだからな」
「あ、はい! 頑張ります。グレイズさんもお気を付けて。あたしはここで帰ってくるの待ってますからね」
男性冒険者たちの羨望と嫉妬の入り混じった視線に、居心地の悪さを感じた俺はセーラに店を任せると、逃げ出すように次の階層へ向かう階段がある方へ歩き出していた。
階段に向かって歩き出した背後で、メリーたちもセーラへ挨拶をしていた。
「セーラさん、行ってきますー!」
「セーラ、ダンジョンで私たちもいっぱいドロップ品獲ってくる。鑑定よろしく」
「セーラさん、私たちも頑張ってきますね」
「セーラ、お店の方は頼むわね。ガンガン売っていいわよ」
やがて、挨拶を終えたメンバーたちは、先に進んでいた俺の方へ追い付いてきていた。
店は『おっさんず』とセーラに任せ、俺たちは一路、討伐目標のいる第一二階層へ向けて歩を進めていく。
ただ、店を開いている第一〇階層は冒険者の密度が多いため、ダンジョン主が絶えず防衛反応ともダンジョントラップを多数設置してくる階層であったのだ。
ダンジョントラップは、ダンジョン主がダンジョンに侵入する冒険者を排除するための防衛反応だという与太話を聞いていたが、冒険者の密度が多い第一〇階層はダンジョントラップの発生数がとても多い場所なのだ。
「わふぅ! (油臭いです)」
先頭を歩いていたハクが、何かを見つけたのか、尻尾を振って立ち止まっていた。
「ハクが尻尾振っている。ダンジョントラップみたい。解除する」
カーラが、ハクの見つけたダンジョントラップの場所を詳しく観察していく。
追放者では、探索警戒はハクとファーマ、トラップ解除はカーラか俺と分業化されている。
トラップ解除はまずはカーラが担当するように決めていた。低層階や中層階のダンジョントラップは難度の低い物が多いため、カーラの器用さを以ってすれば解除できない物はほとんどなかったのである。
ハクが見つけたダンジョントラップの疑いがある場所にしゃがんだカーラが革袋の水でダンジョンの汚れた床を軽く綺麗にしていく。
すると、綺麗になった床面にちょっとした突起が見えるようになった。
カーラが周囲の様子を窺いトラップの詳細を把握に務めていた。
「ふむ、これは踏むと火種が発生して、床下の油に着火して火柱が上がる仕掛け。スイッチも小さくて見落としやすい。いやらしいトラップ」
トラップの仕掛けを把握したカーラが、地面に作られたスイッチボタンに続く壁の仕掛けを見つけたようで、繋がっていた線をナイフで切断してトラップの無効化に成功していた。
「処理完了。これで、安全」
「オッケー。とりあえず、安全確認は俺がやるから、みんな下がってくれ」
カーラの処理したダンジョントラップがキチンと解除されているかの確認を俺が行う。万が一、解除されていなければ他のパーティーが引っ掛かる可能性が残されてしまうからだ。
メンバーが下がったのを確認し、トラップを発動させるスイッチのある場所に向けて小石を弾く。
カツンとスイッチに当たった小石が地面をカラカラと転がっていった。
それから、しばらくの間様子を見たが、カーラの解除は成功していたようで、地面に変化は全く見られない。
「よし、安全のようだ。さすが、カーラ」
「トラップ解除は好き。仕掛けを見つけるのは知的な興奮を感じる」
回復支援職の精霊術士であるカーラだが、器用さS+と膨大な知識という特性を生かし、トラップ解除を得意としている。
本来なら、大事な回復支援職を一番危険なトラップ解除担当にするのは愚策だと思われるが、予備回復手のメリーが加入したことと、カーラの能力を考えて育成も兼ねて解除をお願いしているのだ。
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「カーラさん、凄いねー! トラップも解除できるし、回復も支援もできて、頭もいい。色々とできてうらやましいなぁ」
「ファーマは敵の気配が読める。それは凄いこと。得意なことは人それぞれ。お互いに補い合えば、最強になる」
ファーマがカーラの万能さを羨ましがったが、カーラが言った通り、人それぞれ得意なことは違っている。
だから、俺の率いるパーティーってのは、それぞれの得意なことを使って補い合い、より大きな力を発揮する集まりにしていきたいと思っているのだ。
「カーラの言う通りだな。ここにいるメンバーはそれぞれ得意なことは違うけど、みんな凄い奴らだってことさ。ファーマも凄いし、カーラも凄い、アウリースもメリーもハクも凄いんだ。だから、俺らはお互いに高め合っていけるはずさ」
「グレイズさんはもっと凄いですけどね。私たちはグレイズさんがいるから、自分たちの力に慢心せずにより高みをめざせますし」
「アウリースの言うとおりね。グレイズさんの能力を見せられたら、自分たちはもっと頑張らないとって思えるわ。商売でも、グレイズさんにはまだ勝てた気はしてないしね」
アウリースやメリーもカーラの言葉に同意を示していた。
そういった考えができるメンバーだからこそ、『天啓子』という特別な力を与えられている者としても、慢心せずに急激な成長を見せているだろう。
俺はこのメンバーたちともっと、もっと一緒に成長していきたいと思えている。
「さって、安全になったことだし探索再開するぞ!」
「「「「はい」」」」
俺たちは安全になった通路を通り、目的の第一二階層に向けて探索を再開していった。
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