おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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アルガド視点

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 ※アルガド視点

「アルガド様、『婚約者』のメラニア様がいらしております」

 冒険者ギルドで新任の挨拶を終えたわたしがブラックミルズでの滞在先にした居館に戻ると、メイドの服装をしていたマリアンから宰相閣下の送り込んだ令嬢が到着したことを告げられていた。

 三流貴族のヴィーハイブ伯爵家の令嬢メラニア。

 宰相閣下が我がクレストン家の勢力拡大を懸念して、力を持たぬ貴族を指名し正室候補として送り込んだ女。

 きっと甘やかされて、我がままいっぱいに育てられ、自分の思い通りにならないと喚き散らし、慎ましさを欠片も持ち合わせない生物に違いない。

「分かった。会ってやることにしよう。マリアン、着替えの手伝いを頼む」

 わたしはマリアンからの報告を受けるとふぅとため息を吐き、汗に濡れた服を着替えることにした。


 着替えを終え、メラニア嬢を待たせてある応接間に向かった。

 扉を開けて応接間の中に入ると、リトルヒューマン族の小柄な女性が慌てて立ち上がって挨拶をしてくる。

「は、初めまして! わたくし、ヴィーハイブ伯爵家のメラニアと申します。こたびは宰相閣下のご厚意によりアルガド様と婚約をさせて頂き感謝しております」

 小柄でほっそりとした身体付きの鳶色の瞳をしたメラニアが、栗色のロングヘアを揺らして挨拶をしてきた。

 さすがに伯爵令嬢であるため、儀礼をキチンと仕込まれているようで、型通りの挨拶を行えている。

 だが、あまりにも型通りに行われた挨拶に対して、わたしは苛立ちを覚えていた。

 王都で暮らしていた時期に、彼の地の貴族令嬢たちとは色々と浮名を流したが、彼女らの表面的な礼儀を引き剥がせば、中身は平民女よりも低俗で自己顕示欲の塊でしかなかったため、それ以来、貴族令嬢には食指が動かなくなっているのだ。

「ああ、そうか。宰相閣下よりのご依頼であるが、我が正室として迎えるべき女性であるかは判断させてもらいたい。これは、父上からもよくよく考えよと言われておるのでな。メラニア嬢の人となりを見させてもらうぞ」

「は、はい。わたくしも父より、アルガド様に誠心誠意お仕えせよと言われております。これからお願いいたします」

 メラニアをわたしの言葉を予想していたのか、取り立てて驚いた顔を見せずにいた。

 そういった冷静さも癪に障る。

 なので、予定通りにイジメ抜いてメラニア嬢から婚約を破棄させるつもりだ。

「よかろう。マリアン、服を渡してやれ」

 わたしに付き従って入室したマリアンに持たせていた服をメラニア嬢に渡させる。

 このブラックミルズに来る道中にマリアンとともに、婚約者として来る貴族令嬢の尊厳をへし折り、婚約を破談させる手段を語り合った中で一番最初に出た案を実行することにした。

「メラニア様、こちらが今後のお召し物となっております」

「え!? これって……」

 マリアンが差し出した衣装はメイド服である。しかも、使い込まれて擦り切れそうなボロボロのメイド服で、スカートの丈もかなり短くして肌が露わになるものだ。

「すまぬが、わたしはこの度、このブラックミルズのギルドマスターの大任を父上より拝しておるのだ。だから、メラニア嬢との婚約の話は周囲にはまだ伏せておる。父上からは、この地での仕事を終えた後で正式に発表すると言われておるから、メラニア嬢には悪いがこの地での仕事が終わるまでは我が家のメイドとして、このメイド長であるマリアンの下で色々と学んで欲しいと思っておる」

 差し出されたボロボロのメイド服を見て、メラニアが逡巡を見せていた。

「嫌なら婚約を破棄してもらってもこちらは困らないんだ。で、どうされますかな? メラニア嬢」

 逡巡を見せていたメラニアは、わたしの言葉を聞くとマリアンが差し出した無言で受け取っていた。

 三流貴族であるヴィーハイブ家は、古くから宮廷魔導士として王家に仕え、何名もの宮廷魔導士を輩出してきた家系である。特に召喚術に優れた人材を多数輩出し、王の身辺を守る近衛術士として仕えた者も多い家系だ。

 だが、家格こそ伯爵とそこそこで歴史もある家だが、王家一筋を貫き政治的な動きを一切拒否してきた家のため、貴族への影響力は皆無であり、現当主の血縁も娘であるメラニア一人しかおらず、家は今代で終るとまで言われている。

 そんな追い込まれた状況の貴族令嬢ため、普通の令嬢よりは自制心が高い女のようである。だが、所詮は貴族の女。すぐに本性を現わして喚き散らすに違いないのだ。

「メラニア様、これよりはクレストン家のメイドとして私の指示に従って頂けますようお願い申し上げます」

 隣に居るマリアンが、メイド服を受け取ったメラニアに対し、メイドとして我が家に仕えるように迫っていた。

 受け取ったボロボロのメイド服に視線を落としたメラニアが小さくうなずくのが見えた。

「は、はい……。わたくしとしては、文句はありません。アルガド様のご指示通り、クレストン家のメイドとしてマリアン様の御指図をお受けいたします」

「ならば、すぐに衣服を着替えていただき、メイドとしてのお仕事を開始して頂きたい」

 マリアンの口から厳しい言葉が飛び出すと、メラニアがビクリと肩を震わせている。

 マリアンには、貴族令嬢として扱う必要はないと伝えてあるため、普通のメイドよりも厳しい仕事が割り振られる予定だ。

「メラニア嬢、頑張ってくだされ。では、あとのことはマリアンに聞いてくだされ」

 その後、ボロボロのメイド服に着替えて、わたしの前に現れたメラニア嬢は、貴族の令嬢とは思えないほど地味で素朴な女になり下がっていた。

 やはり、まだ一〇代という年齢もあるが、コテコテに盛られた化粧と衣装が剥ぎ取られれば、市井の平民女よりも格段に劣る色香しか感じられない女である。

 三流貴族のヴィーハイブ伯爵家としては、今回の娘の輿入れで、財政が豊かなこのクレストン家からの支援が引き出せると目算しているのだろうが、こんな貧相な小娘一人のために大事な金とわたしの正室という立場を与えるつもりは全くない。

 精々、うちの家産を踏んだくれる夢を見ながら、辛く苦しいメイド仕事に励むといいさ。どうせ、数日で婚約破棄を言い出してくるだろうな。

 マリアンに付き従い、掃除道具を持ったメラニアを一瞥するとわたしは呼び出していたヴィケットとの話し合いをすることにした。
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