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第二部 第四章 開花
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探索を進めていくと、ゴブリンウォーリアーを引き連れたホブゴブリンの巣を発見することに成功していた。
廃墟の館を利用して自らの棲家を作っていたホブゴブリンは、多くのゴブリンやゴブリンアーチャー、ゴブリンウォーリアーを従えて、周囲の警戒に当たっている様子である。
おかげで巣には幾重もの瓦礫による防壁が築かれており、侵入するのは容易ではなさそうだ。
ふむ、力押しするべきか……。
『ガンガン行きましょう! ゴブリンたち程度、あたしたちの敵じゃありませんよ! あたしが先頭で行きますからぁ!』
尻尾をパタパタさせたハクが、突入要請をしてきていた。
どうも、この使徒様は能力を取り戻しつつあるみたいだけれども、それとともに戦闘意欲もモリモリと増大しておられるようだ。
だが、ハクの言うことにも一理あった。ここを制圧するのに手間取れば他の巣から援軍が駆け付ける可能性も否定できない。
襲うなら一気に突っ込んでボスであるホブゴブリンの首を挙げた方が、効率は良いと思われるのだ。
今一度、敵の様子を観察していく。未だにこちらの気配には勘づいておらず、今攻撃を仕掛けていけば、完全に奇襲攻撃を仕掛けられる態勢であった。
「よし、一気にこの巣の敵を殲滅するぞ。ファーマ、ハクは先頭で突入して敵を攪乱。メリーは二人のバックアップ。カーラは支援よろしく。アウリースはゴブリンアーチャーを優先して潰してくれ、俺も手伝うから」
「「「「はい」」」」
指示を受けたメンバーたちが、ホブゴブリンの巣に向かって駆け出していく。すると、こちらに気付いた魔物たちが驚きの叫びを上げ、ホブゴブリンの巣は一気に喧騒に包まれていく。
「わふぅううううっ!! (弱い! 弱い! 弱すぎます! 強い相手はどこにいるの! あたしが相手になるからぁ!)」
ハクが先行して巣の中に飛び込んでいき、すれ違いざまに爪でゴブリンたちを引き裂いていく。その少し後方を走っていたファーマもハクが取りこぼした敵に対して、爪を繰り出し仕留めていた。
「ハクちゃん、後ろはファーマが居るからガンガン行こうー!!」
「わっふぅうう! (ファーマちゃんが居るなら、あたしは無敵ぃいいいっ!)」
更にスピードを増したハクがゴブリンたちを次々に牙や爪にかけて絶命させていくのが見える。ファーマもハクの背後を狙うゴブリンを見つけると、一気に距離を詰めて爪で首筋を斬り裂いていた。
その更に後ろをカーラの支援魔法によって素早さを増してもらったメリーが盾を構えて続くと、近づいてきたゴブリンをメイスの一撃で撲殺し血祭りあげながら、進んでいく。
「ファーマもハクも張り切っているわね。早すぎてついて行けるかしら……」
メリーはメイスに着いたゴブリンの血を振り落としながら、先発のファーマとハクの後を追っていく。そんな、メリーを高く積み上げられた瓦礫の上から弓矢で狙うゴブリンアーチャーを見つけた。
生憎とメリーもまだ気づいていないようだ。
咄嗟に小石を手に持つと、すぐにゴブリンアーチャーに向けて指弾を放った。
「ぎゃあっ!!」
指弾のヒットしたゴブリンアーチャーは顔を窪ませて、瓦礫から転落するとドサリという音がして動かなくなっていた。
「アウリース! ゴブリンアーチャーを落とすぞ! 支援回復の判断はカーラに任せる」
「はいっ! 私はゴブリンアーチャーを落とします!」
「承知、支援と回復は任せられた」
カーラは先発組と俺たちを両方支援できる位置に進み、身を隠し、いつでも回復や支援ができる態勢を整えた。
それと、同時に俺とアウリースはファーマ、ハクには当たらないと判断し、当てやすいメリーに狙いを絞ったゴブリンアーチャーたちに向け指弾や魔法で狙撃を敢行していった。
瓦礫の上に昇ってメリーを狙っていたゴブリンアーチャーたちは、次々に指弾や炎の矢を受けて転落し絶命していく。
「わふぅうう! (ホブゴブリン発見! ついでにハイオークも見つけましたぁ!)」
巣の奥に突入を果たしたハクから、目的の魔物を発見したと連絡が入った。
援護いるか? メリーがもう少しで到着するが?
『大丈夫、あたしとファーマちゃんでいけます!』
了解、無茶はしないようにな。すぐにメリーも俺たちも援護に入る
『その前に終わってますよ』
ハクが発見したホブゴブリンに向けて飛びかかると、首筋に噛みつき地面に押し倒していた。あっという間のできごとで隣に居たハイオークは武器を構えることもできていない様子である。
「ハクちゃんがそっちなら、ファーマはこっちー! 今回は特別にスキル使っていくよー」
ファーマが一気にハイオークの懐に飛び込んだかと思えば、強く地面を踏みしめていく。踏みしめた力があまりに強かったため、ダンジョンの床が窪んでいるのが見えた。
それと同時にファーマの肘がハイオークの腹部に深くめり込んでいる。
「ぐあぁあああっ!」
『震脚』から発生した力を全て肘の一点に載せた攻撃は、まさに尖ったハンマーで撃ち抜かれたかのようにハイオークの鎧をへこませて内部にまで深刻なダメージを与えていた。
ファーマの肘を喰らったハイオークが息を詰まらせたように喘ぎ、膝を地面に突いていく。
膝を突いたことで、ちょうどハイオークの顔がファーマの目の前の位置に据えられることになった。
「もらったのーー!!」
その瞬間を狙っていたファーマがもう一度地面を踏みしめると、身体を捩じり、大きく回転するように回し蹴りを放っていく。咄嗟の攻撃に対応できなかったハイオークが首にファーマの回し蹴りを受けて、鈍い音を発し、ハイオークは首を傾げさせると地面に倒れ込んでいった。
ファーマによって第一二階層で一番強い魔物であるハイオークが二発で沈んだのを見せられたのには驚いた。
だが、その隣では、ホブゴブリンを押し倒したハクが首筋に噛みつき、逃れようと暴れるホブゴブリンを抑えつけたまま、ゴキリと首を捩じ切っていた。
このコンビ、やはりトップクラスに食い込む実力なのではないだろうか……。
ボス二人を討ち取られたゴブリンたちは、恐怖を感じたのか次々と逃げ出し始めたため、背中を向けた魔物に向けて俺の指弾と、アウリースの炎の矢が飛び交うこととなった。
しばらくすると、巣を占拠していたゴブリンたちは大半が討ち取られ、肉の焦げる匂いと、煙があちこちから上がり始めている。
「今回は私の出番は無かったみたいね。ファーマとハクだけでほとんど決着ついたみたいだし」
「私も見物だけだった。もう少し骨があるかと思ったけど。たいしたことない」
お仕事がなかったメリーとカーラが少し呆気に取られている。本来ならゴブリン軍団の数に圧倒され、中堅冒険者たちでも多少なりとも苦戦する相手であるはずだが、俺たちはほぼ無傷の完勝を達成していた。
地味に強いなこのパーティー。
『足りませんねぇ……。もっと深い場所でもっと強い敵と戦いたいですぅ』
顔中がホブゴブリンの血で染まったハクが、脳内に返事をしてきていた。
「ん!? 誰がしゃべっているの? グレイズさん、変な声が聞こえるよー!!」
ハクと俺との脳内会話に反応を示したのは、常にハクと一緒に行動し、著しい成長を遂げていたファーマであった。
『あら、ファーマちゃんがついに声をきこえるようになったのかしら?』
「え!? え? ハクちゃんの声? これハクちゃんの声なの?」
どうやら、ハクの声は俺だけに向けて発せられていたわけではないようで、全方位に向けて発せられており、受信できる者が声を聞ける仕様のようだ。
「ファーマ、ハクの声が聞こえるのか?」
困惑顔のファーマにハクの声が聴けるようになったかを尋ねた。
「う、うん。頭の奥から女の人の声が聞こえるの―! これハクちゃんの声?」
『そうですー。ハクですよー。ファーマちゃん、ようこそ神様候補たるグレイズ殿の従属神候補たる『天啓子』の世界へようこそ~』
「うぁあああ! ハクちゃんの声が聞こえるよぉお!!」
目を丸くしたファーマがハクをギュッと抱きしめていた。よほどハクの声が聞こえたのが嬉しかったらしい。
その様子を他のメンバーが羨まし気にみていた。
「ファーマが聞こえるようになった。私もそろそろ聞こえるはず。もっと、魔物狩る」
「そそそ、そうですね。もっと、いっぱい狩らないと。可及的速やかに魔物討伐を再開しましょう」
「ファーマのあの様子……。本当に聞こえるのね。これは、早く私たちも聞こえるようにならないと。グレイズさん、次の巣を殲滅するわよ」
ファーマがハクの声を聞こえるようになったことで、メンバーたちにやる気が漲っているようだ。
その後、ファーマと同じくハクの声が聞こえるようになるために漲った、彼女たちのやる気は第一二階層の魔物数百体という結果をもたらしていた。
そして、探索を終えて地上に戻る頃にはメリーを始めとした追放者のメンバー全員がハクの声を聞こえるようになっていたのである。
廃墟の館を利用して自らの棲家を作っていたホブゴブリンは、多くのゴブリンやゴブリンアーチャー、ゴブリンウォーリアーを従えて、周囲の警戒に当たっている様子である。
おかげで巣には幾重もの瓦礫による防壁が築かれており、侵入するのは容易ではなさそうだ。
ふむ、力押しするべきか……。
『ガンガン行きましょう! ゴブリンたち程度、あたしたちの敵じゃありませんよ! あたしが先頭で行きますからぁ!』
尻尾をパタパタさせたハクが、突入要請をしてきていた。
どうも、この使徒様は能力を取り戻しつつあるみたいだけれども、それとともに戦闘意欲もモリモリと増大しておられるようだ。
だが、ハクの言うことにも一理あった。ここを制圧するのに手間取れば他の巣から援軍が駆け付ける可能性も否定できない。
襲うなら一気に突っ込んでボスであるホブゴブリンの首を挙げた方が、効率は良いと思われるのだ。
今一度、敵の様子を観察していく。未だにこちらの気配には勘づいておらず、今攻撃を仕掛けていけば、完全に奇襲攻撃を仕掛けられる態勢であった。
「よし、一気にこの巣の敵を殲滅するぞ。ファーマ、ハクは先頭で突入して敵を攪乱。メリーは二人のバックアップ。カーラは支援よろしく。アウリースはゴブリンアーチャーを優先して潰してくれ、俺も手伝うから」
「「「「はい」」」」
指示を受けたメンバーたちが、ホブゴブリンの巣に向かって駆け出していく。すると、こちらに気付いた魔物たちが驚きの叫びを上げ、ホブゴブリンの巣は一気に喧騒に包まれていく。
「わふぅううううっ!! (弱い! 弱い! 弱すぎます! 強い相手はどこにいるの! あたしが相手になるからぁ!)」
ハクが先行して巣の中に飛び込んでいき、すれ違いざまに爪でゴブリンたちを引き裂いていく。その少し後方を走っていたファーマもハクが取りこぼした敵に対して、爪を繰り出し仕留めていた。
「ハクちゃん、後ろはファーマが居るからガンガン行こうー!!」
「わっふぅうう! (ファーマちゃんが居るなら、あたしは無敵ぃいいいっ!)」
更にスピードを増したハクがゴブリンたちを次々に牙や爪にかけて絶命させていくのが見える。ファーマもハクの背後を狙うゴブリンを見つけると、一気に距離を詰めて爪で首筋を斬り裂いていた。
その更に後ろをカーラの支援魔法によって素早さを増してもらったメリーが盾を構えて続くと、近づいてきたゴブリンをメイスの一撃で撲殺し血祭りあげながら、進んでいく。
「ファーマもハクも張り切っているわね。早すぎてついて行けるかしら……」
メリーはメイスに着いたゴブリンの血を振り落としながら、先発のファーマとハクの後を追っていく。そんな、メリーを高く積み上げられた瓦礫の上から弓矢で狙うゴブリンアーチャーを見つけた。
生憎とメリーもまだ気づいていないようだ。
咄嗟に小石を手に持つと、すぐにゴブリンアーチャーに向けて指弾を放った。
「ぎゃあっ!!」
指弾のヒットしたゴブリンアーチャーは顔を窪ませて、瓦礫から転落するとドサリという音がして動かなくなっていた。
「アウリース! ゴブリンアーチャーを落とすぞ! 支援回復の判断はカーラに任せる」
「はいっ! 私はゴブリンアーチャーを落とします!」
「承知、支援と回復は任せられた」
カーラは先発組と俺たちを両方支援できる位置に進み、身を隠し、いつでも回復や支援ができる態勢を整えた。
それと、同時に俺とアウリースはファーマ、ハクには当たらないと判断し、当てやすいメリーに狙いを絞ったゴブリンアーチャーたちに向け指弾や魔法で狙撃を敢行していった。
瓦礫の上に昇ってメリーを狙っていたゴブリンアーチャーたちは、次々に指弾や炎の矢を受けて転落し絶命していく。
「わふぅうう! (ホブゴブリン発見! ついでにハイオークも見つけましたぁ!)」
巣の奥に突入を果たしたハクから、目的の魔物を発見したと連絡が入った。
援護いるか? メリーがもう少しで到着するが?
『大丈夫、あたしとファーマちゃんでいけます!』
了解、無茶はしないようにな。すぐにメリーも俺たちも援護に入る
『その前に終わってますよ』
ハクが発見したホブゴブリンに向けて飛びかかると、首筋に噛みつき地面に押し倒していた。あっという間のできごとで隣に居たハイオークは武器を構えることもできていない様子である。
「ハクちゃんがそっちなら、ファーマはこっちー! 今回は特別にスキル使っていくよー」
ファーマが一気にハイオークの懐に飛び込んだかと思えば、強く地面を踏みしめていく。踏みしめた力があまりに強かったため、ダンジョンの床が窪んでいるのが見えた。
それと同時にファーマの肘がハイオークの腹部に深くめり込んでいる。
「ぐあぁあああっ!」
『震脚』から発生した力を全て肘の一点に載せた攻撃は、まさに尖ったハンマーで撃ち抜かれたかのようにハイオークの鎧をへこませて内部にまで深刻なダメージを与えていた。
ファーマの肘を喰らったハイオークが息を詰まらせたように喘ぎ、膝を地面に突いていく。
膝を突いたことで、ちょうどハイオークの顔がファーマの目の前の位置に据えられることになった。
「もらったのーー!!」
その瞬間を狙っていたファーマがもう一度地面を踏みしめると、身体を捩じり、大きく回転するように回し蹴りを放っていく。咄嗟の攻撃に対応できなかったハイオークが首にファーマの回し蹴りを受けて、鈍い音を発し、ハイオークは首を傾げさせると地面に倒れ込んでいった。
ファーマによって第一二階層で一番強い魔物であるハイオークが二発で沈んだのを見せられたのには驚いた。
だが、その隣では、ホブゴブリンを押し倒したハクが首筋に噛みつき、逃れようと暴れるホブゴブリンを抑えつけたまま、ゴキリと首を捩じ切っていた。
このコンビ、やはりトップクラスに食い込む実力なのではないだろうか……。
ボス二人を討ち取られたゴブリンたちは、恐怖を感じたのか次々と逃げ出し始めたため、背中を向けた魔物に向けて俺の指弾と、アウリースの炎の矢が飛び交うこととなった。
しばらくすると、巣を占拠していたゴブリンたちは大半が討ち取られ、肉の焦げる匂いと、煙があちこちから上がり始めている。
「今回は私の出番は無かったみたいね。ファーマとハクだけでほとんど決着ついたみたいだし」
「私も見物だけだった。もう少し骨があるかと思ったけど。たいしたことない」
お仕事がなかったメリーとカーラが少し呆気に取られている。本来ならゴブリン軍団の数に圧倒され、中堅冒険者たちでも多少なりとも苦戦する相手であるはずだが、俺たちはほぼ無傷の完勝を達成していた。
地味に強いなこのパーティー。
『足りませんねぇ……。もっと深い場所でもっと強い敵と戦いたいですぅ』
顔中がホブゴブリンの血で染まったハクが、脳内に返事をしてきていた。
「ん!? 誰がしゃべっているの? グレイズさん、変な声が聞こえるよー!!」
ハクと俺との脳内会話に反応を示したのは、常にハクと一緒に行動し、著しい成長を遂げていたファーマであった。
『あら、ファーマちゃんがついに声をきこえるようになったのかしら?』
「え!? え? ハクちゃんの声? これハクちゃんの声なの?」
どうやら、ハクの声は俺だけに向けて発せられていたわけではないようで、全方位に向けて発せられており、受信できる者が声を聞ける仕様のようだ。
「ファーマ、ハクの声が聞こえるのか?」
困惑顔のファーマにハクの声が聴けるようになったかを尋ねた。
「う、うん。頭の奥から女の人の声が聞こえるの―! これハクちゃんの声?」
『そうですー。ハクですよー。ファーマちゃん、ようこそ神様候補たるグレイズ殿の従属神候補たる『天啓子』の世界へようこそ~』
「うぁあああ! ハクちゃんの声が聞こえるよぉお!!」
目を丸くしたファーマがハクをギュッと抱きしめていた。よほどハクの声が聞こえたのが嬉しかったらしい。
その様子を他のメンバーが羨まし気にみていた。
「ファーマが聞こえるようになった。私もそろそろ聞こえるはず。もっと、魔物狩る」
「そそそ、そうですね。もっと、いっぱい狩らないと。可及的速やかに魔物討伐を再開しましょう」
「ファーマのあの様子……。本当に聞こえるのね。これは、早く私たちも聞こえるようにならないと。グレイズさん、次の巣を殲滅するわよ」
ファーマがハクの声を聞こえるようになったことで、メンバーたちにやる気が漲っているようだ。
その後、ファーマと同じくハクの声が聞こえるようになるために漲った、彼女たちのやる気は第一二階層の魔物数百体という結果をもたらしていた。
そして、探索を終えて地上に戻る頃にはメリーを始めとした追放者のメンバー全員がハクの声を聞こえるようになっていたのである。
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