おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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アルガド視点

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 ※アルガド視点

 屋敷に帰ると、マリアンが例の如くメラニアをいびる場面に出くわした。

 床の掃除をさせていたメラニアにいちゃもんを付けているようだ。

「メラニア、ここに汚れが残っているではありませんか! アルガド様の屋敷を訪れた方に見つかったら、アルガド様が恥をかくのですよっ! まったく、貴族のご令嬢は掃除一つもまともにできないのかしらねっ!」

「す、すみません。急いでやり直します」

 バケツの水で雑巾を慌てて絞り直そうとしたメラニアに、バケツを手にしたマリアンが頭から汚れた水をぶっかけていく。薄汚れて擦り切れそうなメイド服が砂や泥の混じった汚水を染み込ませていった。

「何度言えば分かるの。雑巾は綺麗な水で絞りなさいと言ったはず。貴方のせいでまた床が汚れたわよ。さぁ、井戸で新しい水を汲んできて床を綺麗にしなさい」

「は、はい。すぐに汲んでまいります。ぬ、濡れた服は乾かして……」

「私は『早く』と言ったつもりですが!」

「はい。すぐに綺麗にいたします」

 髪からも汚れた水を滴らせたメラニアが目に涙を浮かべて、バケツを持ち屋敷の外へ水を汲みなおしにいく。暖かくなってきたとはいえ、濡れた服で外に出ればかなりの寒さになるはずだ。

 メラニアが外に去ったのを見送ると、マリアンに声をかける。

「精が出るな。メラニアはまだ頑張っているのか」

「これはアルガド様。お出迎えせずに失礼いたしました。御覧の通り、貴族の娘にしては我慢強いみたいです。苛めても、苛めても一向に根を上げて婚約破棄を言い出し始めませぬ。それほどまでにクレストン家の財産が欲しいのでしょうか?」

「ふむ、メラニアの実家は落ちぶれているからな。それに宰相閣下にいらん入れ知恵をされておるのではないか?」

 マリアンの言った通り、メラニアはすでに一ヵ月以上も侮辱的な扱いをされており、それでもなおメイドの修行を必死で行っていた。

 彼女がここまで頑張る理由を考えているのだが、実家の再建のこともあるだろうが、婚約の仲介に入った宰相閣下からクレストン家の内情を詳しく探れという密命を受けているのかもしれない。

 あの宰相閣下も喰えない人だからな。わたしは別に父親と違って王家に敵対する気はないし、ただ自由に楽しく生活を送れればいいんだが。父親のせいでこっちも目を付けられているかもしれないな。

 元々王家の血筋から出たクレストン公爵家は、王国でも屈指の経済力を持つ家であり、父の代で王家以上の影響力を持つ家に成長をしていた。そのことをよく思っていない勢力の筆頭が宰相閣下なのだ。

 彼もまた大貴族であるが、王家の力を抑えて王国の政務を牛耳るためには、クレストン家の力が邪魔でしょうがないのだろう。

 なので、今回の婚約を申し入れ実家が無力なメラニアをわたしの正室にして、クレストン家の力を削ぎにきていると思われ、メラニア自身にもうちの内情を探れとの密命を下しているに違いなかった。

「アルガド様のご意向に沿えず申し訳ないです。今日よりは更に厳しく締め上げます」

「殺してはマズいのでな。余りやり過ぎるな。まぁ、私の方でもヴィケットに指示を出してメラニアを痛めつけるように言っておく。マリアンはわたしの世話に励めばいい」

「は、はい。心得ました。では、これから浴室に参りましょう。お仕事の疲れを洗い流させてもらいますわ」

 マリアンがわたしにしなだれかかるように寄り添ってくる。柔らかなマリアンの肢体が与える感触によって、メラニアのことを頭の中から追い出すと、彼女を連れて浴室に向かうことにした。

 
 夕食後、久しぶりに呼び出しておいたヴィケットがわたしの私室を訪れていた。今日は闇市の様子の確認とメラニアについて色々と頼もうと思い呼び出してある。

「アルガド様におかれましては冒険者ギルドのギルドマスターとしての評価が上がっているようで、このヴィケットも喜ばしい限りです」

「褒めても何もでないぞ。ヴィケットが提案した通り、闇市の関係者を全部ブラックミルズの外から連れてきたことが功を奏しているな。それに既存のブラックミルズの犯罪組織はお前からの情報提供で壊滅させられたしな。おかげでブラックミルズは表面上の治安を取り戻しつつある」

「いえいえ、アルガド様の指導力の賜物です。私ごときの力など些末な物ですので」

「それはそうと闇市の方はどうなっている?」

「売り上げは好調です。やはり人の売買を止めたことが良い効果を発揮しておりますな。周囲に怪しまれることなく、禁制品やレアドロップ品などが売れておりますぞ。探索を任せている冒険者たちも冒険者ギルドを通さずに寝起きを郊外の屋敷に限定させて人目を触れさせずに潜らせておりますし、『衛兵隊』の皆様のご協力もあり、以前にも増して盛況な様子を呈しています」

 ヴィケットが揉み手をしながら闇市の報告を上げてきていた。書類では確認していたが、実際に闇市に関わっているヴィケットの顔色を見ると彼の言っていることは嘘ではなさそうなので、売り上げもいいところまできているのだろう。

「そうか。引き続き頼むぞ。闇市の存在はブラックミルズの人間にバレなければ、『衛兵隊』が動く必要もないからな。くれぐれも探索に使っている冒険者たちを街に入れさせて問題を起こすなよ」

「ははっ! 心得ております。屋敷に拘束する代わりに高額に報酬を提示しておりますし、接待用の女も外から調達しておりますので、街に繰り出して何かしようとは思わぬはずです」

「うむ、手抜かりなく頼むぞ。お前からの売上金はわたしの金になるということを忘れぬようにな。わたしが富めば、必然的にお前も富むということだ。分かっているよな?」

「はい。心得ておりますとも。私の人生はアルガド様に捧げております。今後とも闇市は拡大していくとおもいますので、アルガド様の蔵は金であふれることになりましょう」

 ヴィケットの顔は笑みに彩られている。こいつがこの顔をする時は万事物事がうまく進んでいる時だ。

 ともなれば、そろそろ冒険者ギルドの方はアルマに任せ、マリアンと悠々自適に田舎暮らしを楽しんでも良い時期に来ているかもしれないな。

 冒険者ギルドも裏帳簿作りに引きずりこんだアルマに実務を任せ、闇市はヴィケットにキッチリと管理させれば、残る懸念はメラニアの処遇だけである。

 そう思うと早めにそちらの件も処理をしたくなり、ヴィケットに相談をすることにした。

「では、ヴィケットに一つ頼みたいことがある」

「ははっ! なんなりとお申し付けください。なんでもやってみせますぞ」

「そうか。その言葉頼もしいな。では、我が婚約者であるメラニアを婚約破棄に持ち込みたいのだが、なんぞ良い案はないか? 殺すとかはなしだ。殺すと色々と面倒なので、相手側から破談を申し出させたいのだ」

「アルガド様の婚約者に破談を申し出させる手ですか……。ふむ、貴族の方は体面を重んじるので、婚約者殿が不貞、不義を働いたことにすれば良いのでは?」

「不貞、不義だと……。だが、あやつは召使として我が家で一日中扱き使っておるのだぞ」

「ふむ……。ならば、不逞の輩に襲われて身体を汚されたことを周囲にばら撒くという方法はどうでしょうかな? 婚約者であるメラニア嬢が純潔を守れなかったとなれば、破談の持ちかけにも応じると思いますが」

「なるほど、貴族娘の純潔など毛ほどにも信じておらぬが、世間一般の輩はそれで誤魔化せるであろうし、貴族たちも体面を重んじるので、嘘とは言え純潔を守れなかったとなれば擁護する輩もおるまい。わたしも婚約者に裏切られたという形であるし、破談にしても反感よりも同情が集まりそうではある」

 ヴィケットの示した策はわたしの意図するところとほとんど合致していた。

 マリアンからの執拗な苛めにも耐えるメラニアに対し、致命的な一撃を与えることで破談へと持っていけると確信していた。

「ヴィケット、良い案だ。早速実行に移す。あとくされのない者を数名用意してメラニアを襲わせろ。殺してはならぬが怪我くらいならさせてもいいぞ。準備ができたら連絡せよ。メラニアに人気のない場所への使いを出させる手はずをする」

「ははっ! 心得ました。すぐに準備をいたします。では、今宵はこの辺でおいとまをさせていただきます」

 ヴィケットは恭しく頭を下げると部屋から出ていった。

 正直、メラニアがどうなろうが知ったことではないが、破談を宣言だけはしてもらわねばならない。そのためには生きておいてもらわなければならないのだ。

 婚約の破棄さえ宣言させ、婚約破棄通告書にサインをさせ実家に送り返し、宰相閣下に書簡を送れば万事解決となるはずだ。

 今までは手荒なことは控えていたが、ギルドマスターの地位も安定し、闇市も安定し始めたので遠慮することもなくなった。

 面倒事は早いところ片付けてマリアンとアルマとで、悠々自適な日々を過ごすことにしよう。
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