おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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アルガド視点

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 ※アルガド視点

 このブラックミルズに赴任してかれこれ一ヵ月ほどが経過している。

 フラマー商会のヴィケットに任せている闇市の方も再開したことを聞きつけた客たちが集まり始め、以前の盛況さを取り戻しつつあるとの報告が、新設した治安維持部隊である『衛兵隊』から上がって来ていた。

 冒険者ギルドのギルドマスターとして強権を発動し発足させた『衛兵隊』であるが、採用している隊員は、最古のダンジョン都市でSランク冒険者だった者や王国軍の近衛兵をしていた歴戦の猛者たちばかりである。

 ヴィケットが以前、この街の半端な冒険者を使って危うく冒険者ギルドにわたしの存在を気付かれかねない失態を起こしているため、今回は金に糸目を付けずに上質な連中を一〇〇名ほど集めているのだ。

 彼らを郊外の屋敷に住まわせ、表向きはブラックミルズの治安を守る『衛兵隊』として活動させているが、実態は闇市の開催場所を提供し、不審者からその場の警護をする任務が本来の任務となっている。

 犯罪を取り締まるための組織が犯罪を行っているとは誰も思っていないようで、以前よりも更に取引量を増やし、闇市は常設されるようになっていた。

 もちろん、レアドロップや禁制品を納入する冒険者たちもブラックミルズの冒険者をすべて排除し、完全に外の街からヴィケットに勧誘させて連れてきている。

 これも以前に失敗したことで得た教訓を生かし、ブラックミルズの表の商売に手を出せば商店街の連中と、わたしから自由な独身生活を奪ったうっとおしい男がしゃしゃり出てくるからだ。

 あいつは表の商売や街の連中に迷惑にならない限り、手を出してこないはずだとのヴィケットの意見を採用している。

 なので、今回の闇市は完全にブラックミルズの者を排除した運営体制を整えているのだ。開催場所を警護する『衛兵隊』も商品を調達する『冒険者』も『商品を購入する者』も全部ブラックミルズ外に住む者と限定している。

 レアドロップや禁制品生成に必要な素材を取りに行く冒険者たちは、冒険者ギルドの仕事を受けず、直接ダンジョンに潜り目的の素材を収集して闇市で関係者に売買し対価を得る。

 禁制ポーション等を生成する錬金術士も外部から招聘しており、素材を買い与えて屋敷に整備した機器を使って製造して販売している。

 あと、人の売買は今回からは扱わないことにした。リスクが高い割に稼ぎとしては大した額にはならないので、今回の闇市では取り扱わないでおくことに決定している。

 ただ、人の意志を奪い無理矢理に従属させる禁制品の装備『支配の首輪』は素材を集めさせて量産できる体制を整えてある。

 使役するための道具は売るが、使役する人間は自分たちで調達させることで、ブラックミルズでのトラブルを回避することにしてある。

 おかげでブラックミルズは表向き平穏な生活を享受し、犯罪もヴィケットからの情報提供でブラックミルズにある既存の犯罪組織は徹底的に組織破壊をして葬り去り、犯罪といえば酔った冒険者たちが起こす喧嘩程度のものに限定されていた。

 治安が悪いと言われていたブラックミルズもわたしの手腕によって平穏さを取り戻したと言えるのだ。

「アルガド様、今月の帳簿が完成いたしました。ほ、本当に後でご領主様の許可が頂けるんですよね?」

 冒険者ギルドの執務室で上手く回り始めた闇市に関して悦に入っていたら、冒険者ギルドの裏帳簿作りを手伝わせているアルマから帳簿が完成したとの報告をされた。

「アルマ、わたしは領主の嫡男だぞ。安心して任せておけ。もちろん、手伝ったお前には相応の報いを与えるつもりだから任せておけ」

 アルマが差し出した二種類の帳簿を確認していく。

 一つは前年の冒険者ギルドの売り上げを踏襲し若干の上振れを乗せた偽装帳簿。もう一つは今月に本来売り上げた額を書いた本物の帳簿だ。

 二つの帳簿の差額は一二〇〇万ウェルほど。冒険者たちへの納品依頼料を増額した程度で、一ヵ月でこれほどまでの利益の差が発生していた。

 裏帳簿を作っているとはいえ、冒険者も依頼料増額で懐が温まるし、冒険者ギルドも稼ぎすぎて来季に過大な売り上げ目標を課されることもなく、差額の金も結局将来的にはわたしの元に来る予定の金であるため誰も損をしない。

 強いて損をしているというなら父親だが、アレも年老いてきているので、遺産相続の際に国庫に吸い上げられる額を考えれば、わたしが中抜きしてもらった方が良いと判断するであろうと思われた。

 つまり誰も損をしない。しかも、わたしの自由になるお金になるのだ。

「うむ、よく作ってくれたな。どうだ、この後わたしの屋敷で食事でもしないか? 今日はいいワインを仕入れたんだ」

 アルマはまだ自分が犯罪に加担したことを後悔しているのか、青白い顔をして目の下には薄っすらとクマができている。

 だが、もう手遅れだ。この帳簿を作ってしまったからには、言い逃れはできない。

 後はじっくりと時間をかけて、アルマを追い詰めていき、自分の言うとおりに動く人形にしていくだけだ。

「い、いえ。お誘いはありがたいのですが……。今日は体調が悪いので」

「そうか。ならばまた日を改めることにしよう。体調が悪いのなら、今日はもう上がっていいぞ。ご苦労だったな」

「お気遣い頂きありがとうございます。では、お言葉に甘えて本日は早退させてもらいます」

 ペコリと頭を下げたアルマは逃げ去るように執務室から走り去っていった。

 まぁ、ブラックミルズでの暇つぶしがてら、じっくりとアルマを堕としてやるとするか。

 その後、わたしはアルマの作った二種類の帳簿のうち、偽装した帳簿を複製して父親に送るように部下に指示すると、本来の売り上げを書き記した帳簿を自宅の屋敷に持ち帰った。
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