おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第七章 街の未来

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「おばば、俺は商店街の店主じゃないぞ。ただの冒険者にすぎん。それが商店街連合会の会長などという重責に就けるわけがないだろう」

「何を言うておるのじゃ。お前はすでに商店街の店主の一人じゃぞ。ダンジョン販売支店への物資輸送を専門で請け負う『グレイズ急便』って屋号でおぬしに貸しておる倉庫の賃貸名義には登録してあるしのぅ。ジェイミーという従業員も雇ったようだしな。立派に店主の一人だとわしは思っておる」

 おばばの言葉に思わずメリーの方を見た。ダンジョン販売店関連の物資輸送の仕事は、俺のパーティーが個人的に依頼を受けて行っていると思っていたからだ。

 俺の視線を浴びたメリーがニコリと笑ってうなづいていた。

 知らぬ間に俺は自分の店を持っていたらしい。

「グレイズさんには内緒にしてたけど、私のダンジョン販売店の関連取引先として、グレイズさんのお店作っちゃったの。ジェイミーさんもそこの従業員にしてあるわ。そうした方が利益が分散できて、国や領主に払う税金が抑えられるからね。グレイズさんの名前を借りてるの。ああ、大丈夫よ。名義はグレイズさんでも事務処理は私がキッチリとやってるから規定の報酬はグレイズさん用に作ってある口座に振り込んであるし、使いたいことがあったら言ってくれればいつでも出せるわよ」

 メリーの商才は理解していたが、稼いだお金を運用する才能も持っているらしい。

「そういうことじゃ。おぬしは冒険者であり、商店街連合会に所属する店主の一人ということじゃわい」

「グ、グレイズさん、店主になられていたんですね。私もお手伝いした方がいいですかね」

 ジッと話を聞いていたアウリースが俺の方を見て手伝いを申し出てきていた。

「ファーマもグレイズさんのお店のお手伝いする―」

「私も手伝いしてもいい」

 他のメンバーも俺が店主だと初めて知ったらしく、手伝いを申し出てくれていたが、俺自身ダンジョンに潜るついでに荷物を運んでいるだけなので、何を手伝ってもらうべきか分からなかった。

「ああ、大丈夫よ。みんな、グレイズさんのお店の従業員だからね。今まで通りにダンジョンに潜っているだけでいいわよ。そうすれば、ダンジョン販売店の多すぎた利益分が『グレイズ急便』の輸送依頼料に上乗せされて還流するようにしてあるからね。売り上げ総額の三%はグレイズさんの管理するパーティー口座に入るけど、うちがもうけ過ぎてしまった分は、利益を付け替えてグレイズさんの店の口座に移動してあるわ。今のところは少ないけどね、みんなにもグレイズさんの会社から給与という形で口座作って振り込んであるからね。ダンジョン販売店は今後もっと需要が伸びるだろうし、稼ぎすぎた時の対策という意味もあるわよ」

 メリーの説明を簡単に要約するとダンジョン販売店が売り上げ好調で稼ぎすぎると税金をいっぱい徴収されるから、物資輸送を委託している店として俺の店を作り、そこへの輸送依頼料へもうけ過ぎた分を上乗せして払い、自分の店の税金を抑えるため利益を分散させるということらしい。

 しかも、メンバーやジェイミーに給料を払っていることで俺の店にかかる税金も抑えていたのだ。

 お金を稼ぐことに関してのメリーの凄さを垣間見た瞬間であった。

 メリーの行っている手法はこの国の徴税法において、なんら罪に問われることはない完璧な節税法であったのだ。

 つまり俺は今まで通りダンジョンに荷物を運ぶだけでいいのである。

「ひぇひぇひぇ。メリーがいればグレイズが金に困ることはないのう。これなら安心して忙しい責任職を押し付けれるわい」

「いや、俺は会長なんていう重責は……」

「年齢、実績、人望、資金、時間、全部持っておる店主はグレイズだけじゃな。よし、この際わしは会長職をグレイズに譲ることにした。今から一筆書くから、あとはメリー万事頼むのぅ」

「はい、お引き受けしました。グレイズさんならきっと商店街を良くしてくれると思いますからね。私も及ばすながらお手伝いします」

 メリーがおばばに紙と筆を渡すと、ベッドに横たわったまま、おばばがサラサラと何やら書き始めていた。

「ちょ、ちょっと俺はまだ受けるとは」

「大丈夫じゃ。もう、事前の根回しは終わっておる。時期を見計らっていたのじゃ。わしの腰が逝ったことで皆も納得してくれるはずじゃわい。わしは人を雇ってのんびり店をしつつ、グレイズの子供ができるのを待つだけじゃ」

 すでに事前の根回し済みとは……謀ったなおばば。メリーも巻き込んで周到に俺に会長職を押し付ける準備を進めていたのか。

 進退に窮す。ここで断ることもできるが、断ればおばばが続投となり、老体に鞭打つことになりかねない。

 おばばの年齢を考えると、俺に断るという選択肢は浮かび上がってこなかった。

「仕方ない。世話になったおばばがそれで楽になるなら引き受けることにするわ。ただ、俺は冒険者でもあるから探索は続けるぞ」

「分かっておるわい。実務は、メリーや他の役職が引き継いでくれるし、会長職は各種式典への出席とトラブル処理くらいにしてあるわい。探索は今まで通り続けてもらわんとな。わしらが稼げんからのぅ」

 いいように使われているかもしれないと思わないでもないが、俺が持つ力を使って物資をダンジョンに運ぶことで、世話になっているブラックミルズの商店街が発展するなら、それは俺にとっても嬉しいことではあった。

 こうして、俺はブラックミルズの店主代表として商店街連合会の会長という肩書が追加されることになった。
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