おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第七章 街の未来

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「君が新しくブラックミルズ商店街連合会の会長になるというグレイズ君か、名前はチラホラと聞いていたぞ」

 受付嬢に案内されたギルドマスターの執務室で、ギルドマスターの椅子に座っていたのは、新任のギルドマスターアルガド・クレストンであった。

 ブラックミルズを領有するクレストン公爵家の嫡男であり、自身も子爵位を持つ貴族であるが、緩んだ身体と金髪の髪が薄くなった頭頂部を見て、若いうちから飽食を享受して成長してきたことが窺いしれた。

 しかも、その脂肪の多さからなのか、常のハンカチで自らの汗を吹き取る姿は滑稽さを増して、笑いを堪えるのが大変な状況だった。

 だが、この滑稽な貴族様は強力な治安部隊を編制し、犯罪組織がはびこっていたブラックミルズの歓楽街から犯罪を一掃し、治安を劇的に向上させるという桁違いの実績を上げている人物である。

 人は見かけによらないという言葉があるが、このアルガドという男はその言葉ががっちりとハマる実力も持ち合わせているらしい。

「初めまして、グレイズとお申します。この度、商店街連合会の会長という大任を拝することになったため、ギルドマスター殿にご挨拶にと思った次第です」

 俺は必死に笑いを堪えると、礼法通りに頭を下げていく。

「堅苦しいのは抜きにしよう。わたしは領主の嫡男とはいえ、今はブラックミルズのギルドマスターに過ぎないからな。商店街とは上手くやっていきたいと思っているので、グレイズ君とは友好的な関係を築きたいと思っているぞ。アルマが進めてくれた君の店が地下で冒険者から買い取ったドロップ品からの納品数は、うちの冒険者ギルドの成績を良くしてくれている。これからも、良い関係を続けていこうか」

 アルガドが俺を値踏みするような視線を向けつつも、握手を求めてきた。

 視線に若干の厳しさを感じるものの、敵対する理由もないので、握手を握り返していく。

 街の治安も担う冒険者ギルドのトップであるギルドマスターと敵対することは、商店街にとってはマイナスになるため、良い関係は維持しておく方が良いと思われた。

「アルガド様の手腕には、商店街の店主たちも感服しております。長年の課題だった歓楽街の犯罪組織を就任一ヵ月で壊滅させた手段に皆が脱帽しておりましてな。今後とも治安の方はよろしく頼みたいと思っております」

「わたしも父上より、ブラックミルズの治安を特によく手当せよと厳命されていてな。衛兵隊は更に拡充し、更にブラックミルズの治安向上に勤めるつもりである。安心してくれたまえ」

 アルガドは治安向上を褒めると、それまでの厳しい視線を潜め、穏やかな表情を浮かべ、ブラックミルズの更なる治安向上に意欲があると喋っていた。

 容姿や事前情報からは経験豊富なジェイミーを解雇した貴族のボンボンというイメージしかなかったが、会って話してみた後のイメージは実は案外やり手の男なのかもしれないと思っていた。

 その後、二人でブラックミルズの街の未来に関して色々と意見を交換させてもらうことになった。

 それとともに冒険者を目指す者へ最低限のルールとマナー、知識、経験を教える教育機関の設立の話しもさせてもらった。

 アルガドは終始真剣な表情で俺の話に耳を傾けくれていた。

「いやー。グレイズ君の考えるブラックミルズが実現すれば、わたしも父も枕を高くして眠れるようになる。今日はいい話を聞かせてもらった。今後とも色々と意見交換させてもらおう。今日は会えて良かった」

「こちらも色々とアルガド様の構想を聞かせてもらい感謝しております。商店街連合会の会長としてお手伝いできることは手伝わせてもらいますよ」

 最初の印象は癖のある貴族のボンボンかと思ったが、アルガドは実に緻密で物事を順序立てて考え、それを人に実行させる指導力を持った男であると感じられた。

 俺はアルガドと面会を終えると執務室から出る。有意義な会談を終え、階下で待つ皆のもとへ向かっていくと、前の部屋からアルマが出てきていた。

「よぉ~アルマ元気か! 久しぶりだな。忙しそうに――」

 部屋から出たアルマの顔は以前の溌溂さは感じられず、何か深い懊悩に苦しんでいるのか、目の下にはくっきりと分かる隈が浮き出ており、明らかに疲れた顔をしていた。

「あ、グ、グレイズさん。聞きましたよ。商店街連合会の会長になられるみたいですね。良かった。グレイズさんならブラックミルズの街を良くしてくれると思ってますから」

「だ、大丈夫か? かなり顔色が悪いようだが」

「私は大丈夫ですよ。ちょっとお仕事が重なって忙しくて寝られてなくて……。大丈夫、私もグレイズさんみたいに街のため、冒険者のために頑張りますよ」

 アルマが無理矢理元気を出したように、俺に対して微笑んでいたが、かなり仕事が忙しいのか、その笑みは力のない笑みだと感じられた。

「ちょっと仕事をセーブした方がいいぞ。今、アルマが倒れたら冒険者ギルドも大変だからな。全部仕事を抱え込まない方がいい。そうだ、今下の喫茶スペースにみんなが居るんだ。休憩がてら一緒に飯食わないか?」

 アルマの目尻にジワリと涙が浮かんでいく。元々、責任感の強い子であることもあり、ジェイミーが居なくなったバタバタとしている冒険者ギルド内で孤軍奮闘しているのは感じ取れていたので、たまの息抜きくらいは必要に感じられた。

「でも、すみません。この仕事、納期が明日までなんで今日中に終わらせないといけないんで……。皆さんにはよろしく言っておいて下さい」

 アルマはペコリと頭を下げると書類を手に逃げ去るようにギルドマスターの執務室に入っていった。

「あんまり、根を詰めるのは身体によくないんだがなぁ……」

 見送ったアルマの姿が前よりも小さく見えたのは俺の気のせいだったのだろうか。
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