おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第九章 苦難の道

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 街の隅々まで探したが、メラニアを発見することができず、ブラックミルズで探していない場所はダンジョンのみとなった。

 俺はダンジョン捜索に踏み切り、依頼を受けてくれた駆け出しや中堅になりたての冒険者たちを連れて、メラニア捜索隊を結成し、第一階層から人海戦術を駆使してくまなく捜索していくことにした。

 低層階をゾロゾロと冒険者たちを引き連れて潜っていく。集団で潜れば、単体パーティーで探すよりも格段に捜索範囲を広げられるため、捜索に必要な時間の短縮になっているのだ。

「グレイズさん、第一階層にはメラニアさんの姿はないわ。次に行くわよ」

「おう、分かった。おーし、第二階層に移動する。駆け出しのやつらはくれぐれも魔物には気を付けてくれよ。魔物がいたら、すぐに近場の中堅に声かけろ。メラニアを見つける前に怪我人を出す訳にもいかんからな」

 周囲にいた捜索に参加してくれていた駆け出し冒険者たちに注意を促していく。

 捜索に気を取られ、魔物に不意打ちを受ける可能性がある。

 人の命がかかっている緊急事態とはいえ、捜索者自身の身の安全は確保しなければならないのだ。

「分かっていますって。グレイズさんも心配性っすね。はやく、メラニアちゃん探しましょうよ。オレたちもメラニアちゃんがあの豚貴族のメイドたちに苛められても健気に仕事していたメラニアちゃんが間男引っ張り込んだなんて話は信じられないっすからね」

 捜索に参加している若い駆け出しの男性冒険者が、俺の注意を聞いて気を引き締めていた。

 メラニアに対しての街の人の反応は現状、同情派とアルガド支持派に真っ二つに分かれている。

 一度でもメラニアと喋ったり、メイド仕事をしていたところを見た者は同情派、面識のない者がアルガド支持派といった具合に別れ、今回捜索に参加している冒険者の多くはメラニアと面識があったり、街でお使いをしていたメラニアを見かけていた連中であった。

「ああ、心配性ですまんな。慌てず、迅速にメラニアを保護するとしよう」

 俺たちは第一階層の捜索を終えて、次々に第二階層に続く階段を降りていった。

 その後、第二、第三、第四、第五階層と捜索続けていったが、一向にメラニアは見つからず、大勢が一気に潜ったため、通路は混雑し、第六階層へ降りるためゆるゆるとした捜索行となっていた。

 一緒に潜ったのは二〇パーティー近くあり、人数で言えば一〇〇人近い大所帯で第六階層を目指して移動していた。

「第六階層か。メラニアが優れた召喚術士であったとしても、単体のソロで深い階層までは潜れないと思うのだが……」

『グレイズさんっ!! メラニアさんの匂いしますっ!!』

「ファーマもメラニアさんの気配を察知したよー。この階層にいる!」

 先頭を歩いていたファーマとハクが階段を降りて第六階層に入ると、捜索目標であるメラニアの気配と匂いを感じ取ったようだ。

 俺もメラニアらしき、気配を感じていた。

 と、同時に魔物の気配も感じている。

「マズいぞ! 魔物に襲われているかもしれん。俺たちが先行しよう。すまん、先に行く」

 俺たちは捜索に参加してくれた冒険者たちに後から来るように指示を出し、『追放者アウトキャスト』だけでメラニアらしき気配のする場所へ先行することにした。

「グレイズさん、こっちー!」

『あたしとファーマちゃんが先行してメラニアさんのところに行きます』

 ファーマとハクが混雑した第六階層入り口から抜け出し、メラニアの元へ単独移動を始めていた。

 いつもなら、単独行動はさせないが、今は切迫した状況であるため、二人の先行を追認する。

「頼む、魔物だけ退治してくれ。俺たちもすぐに追いつく」

「りょーかい!」

『お任せください』

 すでに上から降りてきた冒険者たちで入り口がごった返しており、人波を避けて移動するのに時間が掛かり、俺たちが抜け出した頃にはファーマとハクの姿は見えなくなっていた。


「ううぅう、死なせてください。お願いします。わたくしを死なせてぇ……。うぅう」

 救助したメラニアが声を上げて泣いていた。

 血に汚れボロボロになったシーツを身に纏い、髪は乱れ放題、靴も履かずにダンジョンを歩いた足は傷だらけで血を流しており、三日ほど彷徨ったメラニアはかなり衰弱をした様子であった。

「メラニアさん、死んだらダメー!」

『わふう、グレイズさんがきっと何とかしてくれますから、死んではいけませんよ』

 先行して魔物に襲われていたメラニアを助けた二人が心配そうな顔をして彼女を見ていた。

「グレイズ、まずメラニアの傷を癒す。私に任せろ」

「あと、着替えをした方が……。私が見繕ってきてますんで、グレイズさんはあっちを向いていてください」

「アウリース、私も着替えさせるのを手伝うわ。グレイズさんはこっち向きでね」

 メリーが俺の顔をメラニアが見えない方向に向けた。

 まずは、怪我の治療と身綺麗にしてもらって、メラニアに落ち着いてもらうことが先決だと思った俺は、メラニアに背を向けて天井を見上げると眼を閉じた。

「すまん。俺は目を閉じておく」

「皆様の好意を嬉しいのですが、わたくしは自らの不注意でヴィーハイブ伯爵家の家名に泥を塗ってしまいました。この上でおめおめと生き残り生き恥を曝すなどすれば、父に対しても宰相閣下に対しても申し訳がたちませぬ。わたくしの命を以って贖わなければならないのです」

「メラニア、その話。後でする。今は治療が最優先。怪我人、治療士の言うこと聞く」

「カーラの言う通りね。まずは治療と着替え、それと食事。それから、私たちがメラニアの話をキチンと聞くわ。もちろん、グレイズさんもね。それから、どうするかみんなで考えましょう。自分で死ぬのは絶対にダメよ」

「そうですよ。メラニアさんが不貞をしたなんて話は、私はまったく信じてませんよ。ここにいる皆さん全員がそう思っています」

「ファーマはメラニアさんが死ぬのは嫌ー!!」

 背後で衣擦れの音がしている。水筒から綺麗な水を布に含ませ、血に汚れたメラニアの身体を綺麗に清拭してくれているはずだ。

 しばらく、目を閉じていたら背中を軽く叩かれた。

 どうやら、着替えと治療が終わったようだ。

「もう、こっちを見てもいいわよ」

 メリーに促されて、目を開けると、メラニアの居た場所に視線を向ける。

 そこには、先ほどの見るも無残な姿をしていたメラニアはいなかった。

 魔法職の冒険者らしい格好をしたメラニアが、綺麗に整えられた髪と薄っすらと化粧がされている。

 思わず目が釘付けになるほどの美貌を見せていた。

「き、綺麗だな。メラニア。見違えてしまったぞ」

「グ、グレイズ様!? な、何をおっしゃられますか。わたくしはこれから死ぬつもりなのですよ。そ、それを綺麗だなどと……惑わせる言葉を言わないで頂けますか」

 思わず漏れた俺の感想を聞いたメラニアが頬を赤くして照れるようにしぐさを見せた。

 その可憐さに保護欲が大いに刺激されていく。

「死ぬなどと、軽々しく言わないで欲しい。あの夜に何があったのか、キチンと俺に教えてくれ。俺は君は不貞を働くような子だとは絶対に思えないんだ。何かの行き違いでこんなことになったと思っている。絶対に君を守るから本当のことを話してくれないか。頼む、メラニア」

 治療を受け、身綺麗になり、落ち着いたメラニアであるが、眼はまだ不安に揺れているようで、安心できるような感じはしないでいる。

「もう、手遅れですわ。アルガド様はわたくしの言葉を受け入れず、婚約破棄を宣言いたしました。こたびの婚約は家同士の約定に基づき決められた物。それをわたくしの不注意でぶち壊したことに間違いはないのです。この失態は死を以って償うしか……」

 メラニアの眼が不安と後悔で揺れているのを見えた。

「きっと、俺が、俺が真実を証明してみせる! だから、死ぬな! メラニア、生きろ」

 フッとメラニアが微笑みを浮かべると、俺に抱き着いてきていた。

「グレイズ様はお優しいんですね。わたくしも貴族家に生まれず平民であったら、グレイズ様のお傍で暮らせれたかもしれませんね……。でも、わたくしはヴィーハイブ家のために、王家のために、国家のためにその身を捧げてしまったのです」

 抱き着いていたメラニアの目から熱い涙が流れ出し、俺の服を濡らしていく。

「だったら、家を、王家を、国家を捨てればいい。ただのメラニアとしてでもいいから生きてくれ。そのために必要なことは何だってしてやる」

 俺の中でもよく分からない感情が動き出し、何がなんでもこのメラニアという女性を救いたいという気持ちが大きくなっていた。

「グレイズさんが本気出せば、なんでもできるんだからねー。メラニアさんのことも全部上手くやってくれるはずなのー」

「グレイズ、有能な男。メラニアのこと絶対に幸せにすると約束する」

「そうですよ。グレイズさんはすごい力の持ち主ですから、メラニアさんの名誉回復も何もかも全部ひっくるめて面倒見てくれる人ですからっ!」

「メラニアさん、このグレイズさんが何でもやるって言ったら、実現できないことはないわ。すべて、委ねて大丈夫よ。それにわたしたちも全員が貴方の味方よ」

 俺に抱き着いて泣きながらもメラニアはみんなの言葉に耳を傾けていたようで、涙の量が更に増えていく。

「うぅう、皆さん。こんなわたくしのために……。ですが、自分の不始末は自分でつけます。ありがとう、みんなのことは忘れません」

 抱き着いていたメラニアが俺から離れると、手にはベルトポーチに入れてあった小型ナイフが握られていた。

 そして、その刃筋を自らの首元に押し付けると、手前に引こうと腕を動かしていく。

「メラニアぁーーー!!! 早まるんじゃないっ!!!」

 俺は無我夢中でメラニアに向かい駆けだしていた。
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