おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第一五章 情報収集

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 ※メリー視点

 グレイズさんと別れた私は変身の腕輪で小太りの商人になりすまし、ヨシュアの部下が監視している衛兵隊の宿舎の近くに来ていた。

 すでに夜もだいぶふけているが、衛兵隊の宿舎は煌々と明りを灯し、屋敷内では集まっている商人たちが何かを話し合っている姿がチラチラと見える。

 私はグレイズさんに寝返ったSランク冒険者たちの伝手を使い、彼らの昔なじみの商人という触れ込みで、屋敷の中に潜入するのに成功していた。

『こんな場所で開催されてたとはね。それも外部の人間だけを選んでなんて……。これじゃあ、発覚しないわけね』

 ヨシュアの部下が私を護衛するために荷物持ちに変装して脇に控えている。

 そして、紹介役の冒険者も心酔するグレイズさんの嫁と思われている私を警護するため、近くにいた。

『もうすぐ、屋敷の中です。衛兵隊の目は誤魔化せていますが、ヴィケットは疑り深い男ですので余り目立つ行動は控えてください』

『おっけー。闇市の規模と参加者の顔ぶれ、警備体制とか、扱ってる商品とかの確認ができればいいわ』

 すでに敵のたくさんいる本拠地に潜入しているため、声を潜めて会話している。

 姿が変わっているとはいえ、怪しまれれば危険にさらされる場所だ。

 紹介役を頼んだ冒険者が先導して、屋敷の前を警備している衛兵隊に挨拶をしていく。

 私は紹介があるとはいえ新顔のため、冒険者の男が衛兵の手に金貨を入れた革袋を掴ませていた。

「すまんな。こいつらはオレが向こうで懇意にしてた商人だ。どうしても、ブラックミルズの闇市に食い込みたいと言ってな。少ないが取っておいてくれ」

「そ、そうか。まぁ、あんたらの紹介なら身内みたいなもんだな。ヴィケット様には適当に言っておくから、あまり目立たないでくれよ」

「ああ、ちゃんと言い聞かせておくさ。まずは実績積むために色々と勉強しろってな」

 冒険者の男と衛兵の間で交渉が成立したようで、屋敷の扉が開かれ中にいざなわれていく。

 入ってすぐのエントランスはまるで酒場のように改装され、給仕の女性や酒を飲む商人、冒険者たちで溢れ返っている。

「ここは買い物を終えた商人や、到着したばかりの商人たちが寛ぐスペースだ。酒は自由に飲んでいいし、何を食ってもいい。全部、ヴィケット持ちだからな。女も抱けるぞ」

 案内役になった冒険者の男がエントランスに作られた酒場のことを説明してくれる。

 言葉遣いから変な勘繰りをされないように、わざとぶっきらぼうな説明をしてくれているようだ。

「酒も食事も女も自由なのか……。これりゃあ、豪勢なことで……」

 一応、私も小太りの商人に変身しているため、男言葉で返すことにしていた。

 肌も露わな格好をした女性がしなを作り、商談を終えた商人や酒を飲む冒険者や衛兵たちと嬌声を上げていた。

「宿泊も可能なのか?」

「ああ、二階は完全に宿泊施設だ。衛兵隊は屋敷外の兵舎を建ててもらっているからな。こっちの屋敷は完全に冒険者と商人のために開放されている」

「へぇ、いたせり尽せりだなぁ」

「奥の扉を開けると、闇市が開催されている競売場に入れるからな。一度、見るか?」

「ああ、頼む。どんな品があるか確認しておきたいからな」

 私は案内役の冒険者に先導を任せ、エントランス兼酒場を去ると、問題の闇市が開催されている競売場へ続く通路へ入っていった。

 しばらく、通路を進むと突き当りになり、その扉を開けると数十名は座れる椅子が設置され、前方の壇上には演台が置かれた大きな部屋が目に飛び込んできた。

 室内には夜更けでも十数名の商人らしき男たちがたむろっている。

 そして、演台には男が一人立ってなにかをがなり立てていた。

「ここが、競売場だ。今もちょうど競売が開催されているぞ。屋敷にいる者は金さえ払えれば誰でも参加できるようになっているからな。見ていくなら、そこの席に座るといいぞ」

「ああ、すまない。ちょっと見させてもらう」

 私は冒険者に勧められた会場後部の席に腰を下ろすと競売にかけられている商品に目を向けていった。

「では、続きまして。商品番号二五九番。魅了のポーション。最低値は五〇万ウェルから~」

 女性がピンクの液体を満たしたポーションの瓶を壇上でこちらに見せる。

「あれって、鑑定できるのか? 偽物を掴まされることは」

「競売前に競売品の鑑定は許可されている。オレたちが来たときはすでに始まっていたから、鑑定できなかったがな。『商人』たちなら鑑定スキルで真贋のチェックはされるし、ここは『本物』しかでてこないさ」

「なるほどね」

 魅了のポーションは王国から禁制品扱いされている精神への影響を持つポーションであり、普通のポーション屋では流通させられない物である。

 所持しているのがバレるだけでも、捕えられ牢獄送りにされる危険な品物であった。

「五五万!」

「六〇万!」

「八〇万!」

「一六〇万!!」

 競売にかけられている魅了のポーションの競り値がドンドンと上がっていく。

「一六〇万! 他ありませんか? ありませんか? 一二一番様落札!」

 演台の男が一六〇万の値をつけた男を指して、木槌を叩いて落札したことを告げた。

 ポーション一本が一六〇万ウェル……。とんでもない値段ね。でも、欲しい人なら一本五〇〇万ウェルとかでも出すだろうし。

 通常のポーションであれば信じられないほどの高額な取引、しかも利幅も大きいとなると危険を冒して仕入れたがる商人も多いと思われた。

「ポーション一本、一六〇万ウェルね……」

「最高は五〇〇〇万ウェルも出たからなぁ……。ここは貴族の後援を受けた商人も出入りしてるから、通常の金の感覚が通じない世界さ」

「こんなのはまともな商売じゃないけど、利益は出るということか……」

 案内役の冒険者と闇市の様子を見定めていく。

 壇上では次の商品が運ばれてきていた。

「続きまして、人気商品である商品番号二六〇番、隷属の首輪。こちらは八〇万ウェルから」

 別の女性が壇上に持ってきたのは、対となる指輪の持ち主に相手を隷属させるための首輪で、指輪の持ち主に反抗するとかなりの苦痛を与えられるというドロップ装備であった。

 鑑定屋で鑑定されたら、冒険者から強制買い取り指定されており、買い取った隷属の首輪は冒険者ギルドに持ち込まないと逮捕される品物である。

 本来は犯罪者を管理するための刑務所で使われる品物だが、闇で流れる物は貴族がお気に入りの者を隷属化させるため使うと聞いたことがあった。

「五〇〇万ウェル!」

 いきなりの高額な競り値に会場からどよめきが起こる。人気の商品というだけあって、一気に値を上げてライバルを蹴散らす意図があったのかもしれない。

「六〇〇万ウェル!」

「七〇〇万ウェル!」

「一〇〇〇万ウェル!!」

「一〇〇〇万ウェル、他いませんか? ……五九番様に一〇〇〇万ウェルで落札」

 演台の男が木槌を叩き落札者を告げた。

 一〇〇〇万ウェルで落札された隷属の首輪だけど、原価は冒険者たちに支払った探索費用の十数万ウェルくらいだと思われる。ハッキリ言って、ぼろ儲けだろう。

「これは闇市を開きたくなるな」

「だろ? ここの儲けはヴィケットの展開するフラマー商会を支えてもいるんだ」

 その後、何個か競売にかけられた品物を確認したが、すべて王国が一般の市場への販売を禁止している危険な品物ばかりが出品されており、この闇市が一晩で莫大な金を発生させていることが確認できた。

 私は夜明け前に案内役の冒険者に屋敷の外まで送ってもらい、隠れ家にすると言っていた神殿へ向かうことにした。
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