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第二部 第一五章 情報収集
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※メラニア視点
わたくしは変身の腕輪の力により、人族の若い男の子となり、同じく人族のおばあさんに変身したカーラさんとともに問題の発端となった広場に面した宿を訪れていた。
「僕たちはヴィーハイブ家の者です。実は当主様より、この地でのことを詳細に聞いてこいと命じられまして。色々と聞いて回っているのです」
夜更けに老婆と若い男の二人組が訪れたことで、宿の主は訝しんでいた視線を多少緩めてくれた。
ここに来るまでにカーラさんと話し合った結果、ヴィーハイブ家の者を名乗るのが事情を詮索するのに最適だとの話し合いがついていた。
なので、わたくしはヴィーハイブ家の当主である父からわたくしに送られた紋章入りの印璽を押してこしらえた書状を見せて情報収集をしている。
「ヴィーハイブ家……。ああ、じゃあメラニア様の件だね。あの子は悪い子じゃなかったと私は思うんだがね。色々と世間では言われているけども」
宿の主はわたくしが本人だとは知らないため、本音をポロリと吐露してくれていた。
「街での噂は僕も聞きました。噂ではこちらの宿でアルガド様との婚約の式典をあげた翌日に間男を自分のベッドに引き込んでいたとか……。僕は昔からメラニア様に仕えていましたが、そのようなことをされる方とは思えなくて……」
「婆も、メラニア様、そんなことをしないと思う。だから、あの日何があったか、主殿が知っていること教えて欲しい」
カーラさんもおばあさんに化けているため、宿の主から情報を引き出そうとしていた。
「あなた方がヴィーハイブ家の者だから話すが、あの日のことはアルガド様から他言はするなと言い含められてましてね……」
宿の主が言いにくそうな顔をして、わたくしたちを見ていた。
「そこを何とかお願いします。僕たちも真相を当主様に報告せねばならぬ身。主殿には危害が及ばぬよう情報提供されたことは内密に致しますので」
「そうですか……。でも、私もあの日は駆け付けた時にはメラニア様の隣で寝ていた男がアルガド様に首を刎ねられたところしか見てませんからねぇ……。なんとも……」
「なら、前日。メラニア様とアルガド様の婚約式典の日、首を刎ねられた男がきたのを見た者いないか?」
宿の主の口が動いたことで、カーラさんが事前に疑問に思っていたことを聞き出していく。
わたくしの隣で殺された男がいつあの場所にいたのかを自分自身も知らないので、まずはそこからハッキリとさせたかった。
「わたしも自分の店で起きた事件でしたので、店の評判に関わってはと思い、個人的に調べたのですが前日に勤務していた者の中であの男を見た者が誰一人もいなかったのですよ。あの日はアルガド様の関係者でこの店の全室は貸し切りでしたからね」
宿の主の話からすると、男は店の従業員に見つかることなく、わたくしの部屋にきて、隣で寝たことになる。
ただ、この店は高級な宿であり、従業員の数は多く、あの日は貴族であるアルガドの貸し切りということもあり、従業員の数は多かったと記憶していた。
「出入口はここだけ?」
「いや、厨房に食材搬入口と従業員用の出入り口ありますが、従業員たちが部外者を見ればすぐに出入りを止めますので、客が入れるのはこのエントランスからだけです」
「けれど、男を見た人はいないと……」
「はい、宿泊客はアルガド様とメラニア様、それとアルガド様の屋敷のメイドたちだけでしたからね」
宿の主の話を聞いて、わたくしの隣で寝ていた男がまるで瞬間転移して隣にいた気がしてならなかった。
けれど、そういった魔法もないし、アイテムも聞いたことがない。
「……いったい、どこから……」
「じゃあ、質問変える。あの日、アルガド様の関係者が荷物を持ち込んだという事実はないか?」
カーラさんが、新たな疑問点を覚えたらしく、宿の主に質問していた。
「荷物ですか……。あの日は色々と祝いの品が届けられてましたからねぇ……」
「大きな箱や袋を持ち込んだ者だけでいい。覚えてたら、教えて欲しい」
カーラさんは何かを確信したようで、追加の質問を宿の主に投げかけていた。
「……大きな箱や袋ですか……。ああっ! ありましたよ。ありました。あの日、やたらとデカイ箱を夜に持ち込んできた商人風の男たちがいました。たしか、三人がかりで箱を持って、アルガド様の家のメイド長であるマリアン様が先導してアルガド様たちのいたお部屋の方へ行かれました。私がお手伝いしましょうかというと、壊れ物だからと拒否されたので印象に残ってます。たしか、大きな箱を持ちこんだのはその方だけだったはず」
宿の主が大きな箱を運ぶマリアンと商人の姿を見ていたと話していた。
その言葉を聞いたカーラさんが腕を組んで頷いていた。
「きっと、その箱の中身が殺された男。薬で眠らせて運び込んだに違いない。そして、同じく薬を飲まされて眠らされたメラニア様の隣に寝かせた」
「え? え? なんでそのようなことに。アルガド様の屋敷の者が関与して」
「いや、婆の当て推量。状況から想像したにすぎない」
宿の主の顔が『聞いてはいけないことを聞いたかも』という風に曇っていた。
カーラさんの推測が正しければ、男が急にわたくしの隣で寝ていたことに説明が付く。
ただ、それを確証にするには、あの場で携わった者からの証言が必要になる。
「これ以上は主殿にご迷惑がかかるかも知れませんので、最後に一つだけ僕から質問を。その運んでいた者たちで顔を知っている者はいましたか?」
あまり宿の主を深入りさせると、アルガドたちの情報網に捉えられて危害を加えられる可能性があるため、わたくしは最後に一つだけ確認して立ち去ることに決めた。
「あの場で顔を知っているのは……。箱を運んでいた荷役屋の男たちくらいですね。ブラックミルズの街の入り口で、主に商人たちの荷を運ぶために雇われる人夫たちを纏めてる店が幾つかあるんですが、荷物を運んでいたのはその中の『健脚亭』に出入りしてる男だったと記憶してます。何回か、うちで商取引をしていた商人の荷物を運んできてましたからね。顔と、後は名前は確かマドーラとかいう人が担当者だった気がします」
この宿は歓楽街の中でも高級な宿であるため、外部の商人が治安の安全性を求めて商取引にも使っていたそうだ。
「荷役屋、『健脚亭』のマドーラ。主殿、情報提供感謝する。ただ、この話は公にしないことをお薦めする。話せば、ギルドマスターの怒りを買う。口をつぐむが妥当」
「こ、心得ております。私も長生きはしたいので……」
宿の主は口をつむぐことに同意したようで、わたくしたちは得た情報を元に翌日の朝早くに問題の『健脚亭』を訪ねることにした。
わたくしは変身の腕輪の力により、人族の若い男の子となり、同じく人族のおばあさんに変身したカーラさんとともに問題の発端となった広場に面した宿を訪れていた。
「僕たちはヴィーハイブ家の者です。実は当主様より、この地でのことを詳細に聞いてこいと命じられまして。色々と聞いて回っているのです」
夜更けに老婆と若い男の二人組が訪れたことで、宿の主は訝しんでいた視線を多少緩めてくれた。
ここに来るまでにカーラさんと話し合った結果、ヴィーハイブ家の者を名乗るのが事情を詮索するのに最適だとの話し合いがついていた。
なので、わたくしはヴィーハイブ家の当主である父からわたくしに送られた紋章入りの印璽を押してこしらえた書状を見せて情報収集をしている。
「ヴィーハイブ家……。ああ、じゃあメラニア様の件だね。あの子は悪い子じゃなかったと私は思うんだがね。色々と世間では言われているけども」
宿の主はわたくしが本人だとは知らないため、本音をポロリと吐露してくれていた。
「街での噂は僕も聞きました。噂ではこちらの宿でアルガド様との婚約の式典をあげた翌日に間男を自分のベッドに引き込んでいたとか……。僕は昔からメラニア様に仕えていましたが、そのようなことをされる方とは思えなくて……」
「婆も、メラニア様、そんなことをしないと思う。だから、あの日何があったか、主殿が知っていること教えて欲しい」
カーラさんもおばあさんに化けているため、宿の主から情報を引き出そうとしていた。
「あなた方がヴィーハイブ家の者だから話すが、あの日のことはアルガド様から他言はするなと言い含められてましてね……」
宿の主が言いにくそうな顔をして、わたくしたちを見ていた。
「そこを何とかお願いします。僕たちも真相を当主様に報告せねばならぬ身。主殿には危害が及ばぬよう情報提供されたことは内密に致しますので」
「そうですか……。でも、私もあの日は駆け付けた時にはメラニア様の隣で寝ていた男がアルガド様に首を刎ねられたところしか見てませんからねぇ……。なんとも……」
「なら、前日。メラニア様とアルガド様の婚約式典の日、首を刎ねられた男がきたのを見た者いないか?」
宿の主の口が動いたことで、カーラさんが事前に疑問に思っていたことを聞き出していく。
わたくしの隣で殺された男がいつあの場所にいたのかを自分自身も知らないので、まずはそこからハッキリとさせたかった。
「わたしも自分の店で起きた事件でしたので、店の評判に関わってはと思い、個人的に調べたのですが前日に勤務していた者の中であの男を見た者が誰一人もいなかったのですよ。あの日はアルガド様の関係者でこの店の全室は貸し切りでしたからね」
宿の主の話からすると、男は店の従業員に見つかることなく、わたくしの部屋にきて、隣で寝たことになる。
ただ、この店は高級な宿であり、従業員の数は多く、あの日は貴族であるアルガドの貸し切りということもあり、従業員の数は多かったと記憶していた。
「出入口はここだけ?」
「いや、厨房に食材搬入口と従業員用の出入り口ありますが、従業員たちが部外者を見ればすぐに出入りを止めますので、客が入れるのはこのエントランスからだけです」
「けれど、男を見た人はいないと……」
「はい、宿泊客はアルガド様とメラニア様、それとアルガド様の屋敷のメイドたちだけでしたからね」
宿の主の話を聞いて、わたくしの隣で寝ていた男がまるで瞬間転移して隣にいた気がしてならなかった。
けれど、そういった魔法もないし、アイテムも聞いたことがない。
「……いったい、どこから……」
「じゃあ、質問変える。あの日、アルガド様の関係者が荷物を持ち込んだという事実はないか?」
カーラさんが、新たな疑問点を覚えたらしく、宿の主に質問していた。
「荷物ですか……。あの日は色々と祝いの品が届けられてましたからねぇ……」
「大きな箱や袋を持ち込んだ者だけでいい。覚えてたら、教えて欲しい」
カーラさんは何かを確信したようで、追加の質問を宿の主に投げかけていた。
「……大きな箱や袋ですか……。ああっ! ありましたよ。ありました。あの日、やたらとデカイ箱を夜に持ち込んできた商人風の男たちがいました。たしか、三人がかりで箱を持って、アルガド様の家のメイド長であるマリアン様が先導してアルガド様たちのいたお部屋の方へ行かれました。私がお手伝いしましょうかというと、壊れ物だからと拒否されたので印象に残ってます。たしか、大きな箱を持ちこんだのはその方だけだったはず」
宿の主が大きな箱を運ぶマリアンと商人の姿を見ていたと話していた。
その言葉を聞いたカーラさんが腕を組んで頷いていた。
「きっと、その箱の中身が殺された男。薬で眠らせて運び込んだに違いない。そして、同じく薬を飲まされて眠らされたメラニア様の隣に寝かせた」
「え? え? なんでそのようなことに。アルガド様の屋敷の者が関与して」
「いや、婆の当て推量。状況から想像したにすぎない」
宿の主の顔が『聞いてはいけないことを聞いたかも』という風に曇っていた。
カーラさんの推測が正しければ、男が急にわたくしの隣で寝ていたことに説明が付く。
ただ、それを確証にするには、あの場で携わった者からの証言が必要になる。
「これ以上は主殿にご迷惑がかかるかも知れませんので、最後に一つだけ僕から質問を。その運んでいた者たちで顔を知っている者はいましたか?」
あまり宿の主を深入りさせると、アルガドたちの情報網に捉えられて危害を加えられる可能性があるため、わたくしは最後に一つだけ確認して立ち去ることに決めた。
「あの場で顔を知っているのは……。箱を運んでいた荷役屋の男たちくらいですね。ブラックミルズの街の入り口で、主に商人たちの荷を運ぶために雇われる人夫たちを纏めてる店が幾つかあるんですが、荷物を運んでいたのはその中の『健脚亭』に出入りしてる男だったと記憶してます。何回か、うちで商取引をしていた商人の荷物を運んできてましたからね。顔と、後は名前は確かマドーラとかいう人が担当者だった気がします」
この宿は歓楽街の中でも高級な宿であるため、外部の商人が治安の安全性を求めて商取引にも使っていたそうだ。
「荷役屋、『健脚亭』のマドーラ。主殿、情報提供感謝する。ただ、この話は公にしないことをお薦めする。話せば、ギルドマスターの怒りを買う。口をつぐむが妥当」
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