おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第十六章 ブラックミルズ流悪だくみ

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「準備はいいか? ちょっと激しく動くから息は止めておいた方がいいぞ」

「はい、わたくしのことは気にせずに、グレイズ様のタイミングで動いて貰えれば結構です」

「分かった。ヨシュア、お前たちも手伝いを頼む。まずは俺たちが生還してきていると知っているマリアンの身柄を押えるぞ。共闘の約束はしたが、あっちの自由にやらせるとは言ってないからな」

「承知。マリアンと繋がりのあるメイドたちにもご同行願いましょう。あれから見張ってましたが、マリアンは帳簿を手に入れていないため、まだ宰相サイドと連絡はとってないようです」

「それはよかった。宰相に知られると色々と厄介だからな。よし、行くとするか」

 幽鬼の外套を纏ったメラニアを両手で抱えると、ヨシュアたちとともに目の前にあるアルガドの屋敷に気配を消して侵入していった。

 
 マリアンの部屋はすでにヨシュアたちによって把握されていた。

 アルガドの住む屋敷の中でも二番目に大きな部屋を与えられており、二階の角に部屋がある。

 その部屋に音もなく侵入をすると、眠っていたマリアンをメラニアが揺すって起こしていた。

「う、う~ん。誰? 私を起こすのは…………!? ひぃい――んぐっ」

 口の端から血に偽装した絵の具を付けたメラニアを見たマリアンが驚きのあまりに声を出そうとしていたので、とっさに口を塞ぐ。

『マリアン、共闘すると言ったが、状況か変化した。悪いがお前にはここで退場してもらうぞ』

 俺は手で口を塞いだマリアンの耳元で声を潜めて喋る。

『アルマを死んだことにしてくれた件は感謝しとくが、メラニアの婚約破棄の件、許すわけにはいかないからな』

 メラニアの件を持ち出すとマリアンが身を固くしていた。

 身に覚えがあり過ぎるのだろう。

 何か抗弁をしたそうにしているが、ここで声を出させるわけにはいかないので、当身を喰らわせて気を失わせる。

「グレイズ様、マリアン様に手荒なことは……」

「大丈夫だ。気を失わせただけで、怪我はさせていない。それにしても、このマリアンはメラニアをいたぶったやつなのに心配をするのか?」

「理由があってのことでしょうし……」

 メラニアは俺以上のお人よしな女性であった。自分を苦しめた相手すら心配できる彼女は本当にいい女だと思える子であった。

「メラニアはいい子だな。だけど、怒るときは怒らないとダメだぞ。俺に対しても仲間に対しても我慢しちゃいかんからな。言いたいことを言い合えるってのが『本当の仲間』だしな」

「グレイズ様に怒るなんて……。でも、言いたいことは我慢しないようにします。だから、今言いたいことを言わせてもらいますね。グレイズ様、わたくしのために怒ってくれてありがとうございます」

 メラニアがぺこりと俺に対して頭を下げた。

「ああ、メラニアはもっとワガママを言っていいと思うぞ」

 俺は小柄なメラニアの頭をポンポンと撫でると、気を失ったマリアンをヨシュアに引き渡した。

「マリアンを神殿に送り込んでおいてくれ。俺とメラニアはアルガドに挨拶してから帰る」

「承知しました。部下と合流して撤退します」

 すでに屋敷内に侵入したヨシュアの手下によって、マリアンと繋がりのあるメイドたちも捕縛されて連れ出されているはずだ。

 ヨシュアを別れると、屋敷の一番大きな部屋で寝ているアルガドのもとにそっと忍び込んでいく。

 潜入する前からアウリースによってかけられていた魔法の光ライトによって、俺たちの姿はゴーストそのものに見える格好になっている。

 そして、アルガドの耳元で恨み言を囁いていった。

『お前のせいで……。お前のせいで……。仲間も、メラニアも……全部、失った。俺の命までも……。お前のせいで……』

『わたくしをはめて、貶めて、命までも……』

 耳元でささやき始めると同時にアルガドが眠りから覚醒する様子を見せていた。

「……んんっ、誰だ。わたしの耳元で囁くのは……うるさいぞ……」

『おまえのせいだ……。アルガド・クレストン。お前のせいで俺は……』

 目覚めさせるように耳元で囁く声を大きくしていった。

「ん、んん…………!?」

 半分寝ぼけていたアルガドが目を開けたので、死人のメイクを施した俺とメラニアが顔を近づけた。

 やがて、目の焦点があったアルガドの顔色が真っ青に変化していた。

「ぶひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!! おま、おま、お前ら死んでるはずだろ」

 豚の泣き声に似た悲鳴を上げたアルガドがベッドから転げ落ちていた。

「お前のせいで死んだ。お前のせいだ。仲間を失ったのも、自分の命をうしなったのも……返せ、俺の命」

「わたくしをはめて、貶めて、命を失わせたのは貴方……。返して……返して……」

 俺たちはゴーストらしく抑揚を抑えて、同じフレーズを繰り返し、後ろめたい気持ちがあるアルガドを怯えさせていく。

 案の定、アルガドは俺たち二人の姿を見て、腰を抜かしたようでズリズリと壁際に向けて這いずっていた。

「違うっ! 違うんだ! お前ら、わたしを祟るのは筋違いだぞ! わたしは別にお前らを殺したわけじゃないんだ。お前らを殺したのはノーライフキングだろ! ふひぃいいいいい!!」

 俺たちの姿が余りにもゴーストらしかったらしく、アルガドは鼻水と涙を流しながら怯えていいわけを口にしている。

 その姿を見て、もっと脅す必要があると思った俺はポケットから出した小石で部屋を薄暗く照らしていたランプを割っていった。

「ひぃいいいいいいいいいいいいいっ! 違うんだ! わたしではない! わたしではないんだっ!」

 ランプが弾け飛んだことで、アルガドの股の間から水分が漏れ出していた。

 どうやら恐怖のあまりに失禁をしてしまったらしい。

「お前だ。お前が俺たちを殺した。この恨み、必ず晴らす。すでにお前の大事な者の魂はすでに頂いた。これから、夜は眠れると思うな。アルガド・クレストン」

「わたくしも恨みます。わたくしの命を返して……お願い、返して……」

 壁際に追い詰められたアルガドに向けて顔を近づけていく。

「ひぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!! くるなぁ! くるなぁああああああああ!!!」

 這いずって逃げようとしたアルガドであったが、恐怖によって脳が思考停止に陥ったようで、カクンと頭が垂れると気絶して床に倒れ込んでいった。

「ちょっとやりすぎましたかしら……」
 
 気絶したアルガドを見て、メラニアが心配そうな顔をしていた。

 人間は恐怖を感じすぎると、脳がそれ以上の情報処理を停止させ、意識を落とすため簡単には死にはしない。

「大丈夫。これくらいじゃ、死ぬことはないさ。さて、衛兵も来ているみたいだし、あとはこれを置いて立ち去るとしよう」

 俺は背負ってきた豚の頭をアルガドのベッドに乗せ、その額に短剣を突き立てると、メラニアを再び抱えて窓から屋敷を後にしていった。
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