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日常編 メラニアの召喚術
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ダンジョンの床に白く輝く錬成文字が刻まれていくと、やがて錬成陣が完成し、召喚対象と自分を繋ぐ魔力でできた通路が開く。
「魔物の子もこちらの呼び掛けに答えました。もうすぐきます」
そう言われたので、俺は白く輝く錬成陣の上に浮かんだ漆黒の穴の奥を覗き込んでみた。
だが、穴の中は動くものを見ることすらかなわない闇しかなかった。
「これは次元を繋げる道らしい。普通の人間はいると、一瞬で存在が消え去る。入ったら最後、誰も見つけられない」
「入ったら死んじゃうのー?」
「多分ね。死なないにしても存在を感知できなくなる世界には旅立つことになりそうよ」
「冒険者の間で言われている魔物が生まれる場所って言われてるところですかね?」
「しっ、静かに穴の中から気配が近づいてきたぞ。一応、戦闘態勢は整えておくように」
メラニアの召喚術はまだ不安定であるため、万が一にも契約が失敗し、魔力が尽きて昏倒した場合、魔物が暴れ出す可能性もある。
そのため、契約が成功するまでは気を抜かない方がよさそうだ。
「来ます!」
メラニアがそう言うと、漆黒の穴の淵が揺れ出し、魔物が一匹飛び出してきていた。
「馬鹿な召喚者めっ! ノーライフキングたる妾を呼び出すとは愚かにもほどがあるのじゃ。さぁ、妾に魂を差し出す……のじゃ?」
飛び出してきた魔物は丈の合わない真紅のローブを引きずりながら、尖った耳と銀色の長髪をたなびかせ、青白い肌をした幼女化したノーライフキングだった。
その飛び出したノーライフキングの先にいたのは、幼女化させた張本人である俺である。
「よ、よう。元気してたか?」
「あーっ! ノーライフキングちゃんだぁ!! 久しぶりー!」
「あらあら、大変な子が釣れたわね」
「確かに弱ってたはず。メラニアと相性がいいとは奇遇」
「でも、なんで呼びかけに応じたのですかね。不死王の宮殿に帰るって言ってたはずですが……」
飛び出してきたノーライフキングを見たメンバーたちが次々に彼女に群がり、頭を撫でて再会を喜んでいた。
「わたくし、大変な方を呼び出してしまったのでしょうか?」
ノーライフキングが幼女化したことを知らないメラニアが、目をしばたかせて驚いている。
「グ、グ、グレイズぅーーー!! そちは妾の力を失わせたばかりか、召喚術士などを使って使役するつもりなのか。このケダモノめ」
「い、いや。別にそんな気はないぞ」
「嘘じゃ。グレイズのせいで力を失ったおかげで、妾は棲家のある第二二階層まで帰ることができなくなって、ひもじい思いをさせられていたのじゃ。そのような男の言うことなど信用できぬ」
ノーライフキングが目に涙を溜めて俺を見上げていた。
どうやら、あの後棲家に向かって帰ろうとしたようだが、多くの力を失った彼女には深層階の棲家まで帰る力が残されていなかったようである。
「わたくしの呼び掛けに応じてくれたのは、ひもじさからでしたか?」
「そうじゃ。人の良さそうな気配だったから、呼び出しに応じてやって、油断に乗じて魂を喰ってやろうと思っておったのに……。グレイズの罠だったとは不覚なのじゃ」
「ノーライフキングちゃん、お膝大丈夫だったー? ファーマ、あの時こけたのを心配してたのー」
ファーマがノーライフキングの膝を心配そうに撫でていた。
「だ、大丈夫じゃ。妾はその程度の傷で泣いたりはしない」
強がっているが、確か帰り際にこけた時に泣いていた記憶がある。
だが、アンデッドの魔物であるため回復魔法をかければ逆にダメージを与えてしまうのであった。
そんなノーライフキングを見ていたメラニアが何かを閃いたようであった。
「そうだ! お腹が空いていらっしゃるのなら、これをどうぞ。魔物の方がこれでお腹が膨れるのか分かりませんが……」
メラニアは、ベルトポーチに詰めていた保存食からクッキーを取り出すと、ノーライフキングの手に渡していた。
さすがに魔物であるノーライフキングに人間の食い物は――
「食い物っ! 妾のものじゃ。寄越すがよい」
食ってるーーー
ノーライフキングはメラニアから手渡されたクッキーを貪り食っていた。
「グレイズによって妾は半分生身にされたのじゃ。おかげで腹も減るようになってしまったし、眠気も感じるようになってしもうたのじゃ。どう責任を取るつもりなのじゃ! グレイズ」
食い散らかしたクッキーの欠片をほっぺたに付けたノーライフキングが、指先を俺に突き付けていた。
そんなことを言われても、俺もしたくてそうした訳ではないので責任の取りようもないのである。
「半分、生身。非常に気になる」
カーラが半分だけ生身となったノーライフキングに興味を抱いたようで、彼女の身体をペタペタと触り始めている。
「あら、人間のご飯食べられるなら、うちで一緒に生活できるわね。うちの子になる?」
メリーも自分のベルトポーチからクッキーを取り出すと、ノーライフキングに手渡していた。
「はむぅ。久々の人間の食事も悪くないのじゃ」
「なら、私の分もどうぞ。お腹空いてそうですしね」
アウリースも自分の分を出して、ノーライフキングに手渡していく。
「ファーマもあげるー! ノーライフキングちゃんには、ファーマ特製クッキーあげるのー!」
「苦しゅうない。妾は食い物に関しては遠慮せぬぞ」
みんなから差し出されたクッキーを頬張り続けるノーライフキングを見ていると、なんだか野生動物を餌付けしているような感覚に陥ってきた。
-------------
来週21日(木)には第一巻の出荷日を迎えますので、書店でお見かけの際はよろしくお願いしまーす。
書影に関しては書店でのご確認となるかなー。
「魔物の子もこちらの呼び掛けに答えました。もうすぐきます」
そう言われたので、俺は白く輝く錬成陣の上に浮かんだ漆黒の穴の奥を覗き込んでみた。
だが、穴の中は動くものを見ることすらかなわない闇しかなかった。
「これは次元を繋げる道らしい。普通の人間はいると、一瞬で存在が消え去る。入ったら最後、誰も見つけられない」
「入ったら死んじゃうのー?」
「多分ね。死なないにしても存在を感知できなくなる世界には旅立つことになりそうよ」
「冒険者の間で言われている魔物が生まれる場所って言われてるところですかね?」
「しっ、静かに穴の中から気配が近づいてきたぞ。一応、戦闘態勢は整えておくように」
メラニアの召喚術はまだ不安定であるため、万が一にも契約が失敗し、魔力が尽きて昏倒した場合、魔物が暴れ出す可能性もある。
そのため、契約が成功するまでは気を抜かない方がよさそうだ。
「来ます!」
メラニアがそう言うと、漆黒の穴の淵が揺れ出し、魔物が一匹飛び出してきていた。
「馬鹿な召喚者めっ! ノーライフキングたる妾を呼び出すとは愚かにもほどがあるのじゃ。さぁ、妾に魂を差し出す……のじゃ?」
飛び出してきた魔物は丈の合わない真紅のローブを引きずりながら、尖った耳と銀色の長髪をたなびかせ、青白い肌をした幼女化したノーライフキングだった。
その飛び出したノーライフキングの先にいたのは、幼女化させた張本人である俺である。
「よ、よう。元気してたか?」
「あーっ! ノーライフキングちゃんだぁ!! 久しぶりー!」
「あらあら、大変な子が釣れたわね」
「確かに弱ってたはず。メラニアと相性がいいとは奇遇」
「でも、なんで呼びかけに応じたのですかね。不死王の宮殿に帰るって言ってたはずですが……」
飛び出してきたノーライフキングを見たメンバーたちが次々に彼女に群がり、頭を撫でて再会を喜んでいた。
「わたくし、大変な方を呼び出してしまったのでしょうか?」
ノーライフキングが幼女化したことを知らないメラニアが、目をしばたかせて驚いている。
「グ、グ、グレイズぅーーー!! そちは妾の力を失わせたばかりか、召喚術士などを使って使役するつもりなのか。このケダモノめ」
「い、いや。別にそんな気はないぞ」
「嘘じゃ。グレイズのせいで力を失ったおかげで、妾は棲家のある第二二階層まで帰ることができなくなって、ひもじい思いをさせられていたのじゃ。そのような男の言うことなど信用できぬ」
ノーライフキングが目に涙を溜めて俺を見上げていた。
どうやら、あの後棲家に向かって帰ろうとしたようだが、多くの力を失った彼女には深層階の棲家まで帰る力が残されていなかったようである。
「わたくしの呼び掛けに応じてくれたのは、ひもじさからでしたか?」
「そうじゃ。人の良さそうな気配だったから、呼び出しに応じてやって、油断に乗じて魂を喰ってやろうと思っておったのに……。グレイズの罠だったとは不覚なのじゃ」
「ノーライフキングちゃん、お膝大丈夫だったー? ファーマ、あの時こけたのを心配してたのー」
ファーマがノーライフキングの膝を心配そうに撫でていた。
「だ、大丈夫じゃ。妾はその程度の傷で泣いたりはしない」
強がっているが、確か帰り際にこけた時に泣いていた記憶がある。
だが、アンデッドの魔物であるため回復魔法をかければ逆にダメージを与えてしまうのであった。
そんなノーライフキングを見ていたメラニアが何かを閃いたようであった。
「そうだ! お腹が空いていらっしゃるのなら、これをどうぞ。魔物の方がこれでお腹が膨れるのか分かりませんが……」
メラニアは、ベルトポーチに詰めていた保存食からクッキーを取り出すと、ノーライフキングの手に渡していた。
さすがに魔物であるノーライフキングに人間の食い物は――
「食い物っ! 妾のものじゃ。寄越すがよい」
食ってるーーー
ノーライフキングはメラニアから手渡されたクッキーを貪り食っていた。
「グレイズによって妾は半分生身にされたのじゃ。おかげで腹も減るようになってしまったし、眠気も感じるようになってしもうたのじゃ。どう責任を取るつもりなのじゃ! グレイズ」
食い散らかしたクッキーの欠片をほっぺたに付けたノーライフキングが、指先を俺に突き付けていた。
そんなことを言われても、俺もしたくてそうした訳ではないので責任の取りようもないのである。
「半分、生身。非常に気になる」
カーラが半分だけ生身となったノーライフキングに興味を抱いたようで、彼女の身体をペタペタと触り始めている。
「あら、人間のご飯食べられるなら、うちで一緒に生活できるわね。うちの子になる?」
メリーも自分のベルトポーチからクッキーを取り出すと、ノーライフキングに手渡していた。
「はむぅ。久々の人間の食事も悪くないのじゃ」
「なら、私の分もどうぞ。お腹空いてそうですしね」
アウリースも自分の分を出して、ノーライフキングに手渡していく。
「ファーマもあげるー! ノーライフキングちゃんには、ファーマ特製クッキーあげるのー!」
「苦しゅうない。妾は食い物に関しては遠慮せぬぞ」
みんなから差し出されたクッキーを頬張り続けるノーライフキングを見ていると、なんだか野生動物を餌付けしているような感覚に陥ってきた。
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来週21日(木)には第一巻の出荷日を迎えますので、書店でお見かけの際はよろしくお願いしまーす。
書影に関しては書店でのご確認となるかなー。
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