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日常編 メラニアの召喚術
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ダンジョンの第一階層に下りると、俺たちは人通りの少ない場所に移動し、メラニアの召喚術の練習を行うことにした。
メラニアが上手く召喚術を扱えるようにならないと、咄嗟の時に強力すぎる魔物が召喚されて魔力を使い果たし昏倒されては困るためだ。
そのため、おばばの旦那が書き残した書物に書かれている通りに練習を行うことにした。
「メラニア、この本によると、召喚術、魔物の気配探る、重要と書かれている」
カーラがおばばの旦那の書き残した書物をめくり、練習に必要なことをメラニアへ伝えている。
「け、気配ですか? 大きな魔物の気配は目を閉じると感じられますけど……。かなり、深い位置にいますけど……」
メラニアが目を閉じて、周囲の気配を探っているようにしているが、あまり弱い魔物の気配は探れないでいる様子であった。
「メラニアさん。魔物の気配はねー。ふわっとしてて、チクチクしてて、ねっとりしてるのー。それを感じ取るだけだよー」
ファーマがメラニアに気配の探り方を伝授していた。
だが、ファーマよ。それは、ファーマだからできる気配の感じ取り方だぞ。言いたいことは俺には理解できるが、メラニアには無理な気がするぞ。
「わふぅーー(匂いです。匂い。魔物の放つ嫌な匂いを感じるのです)」
ハクがメラニアの法衣にじゃれつきながら、気配の察知の仕方を教えようともしている。
しかしな、匂いは無理だ。匂いは。人間種に狼ほどの嗅覚はないのだよ。
「二人とも、それメラニアにはできないと思う。おばばの旦那さん、その点も言及している。召喚術士の気配察知は目を閉じて、光の明滅が見えるはず、メラニアの言う大きな魔物はきっと光の明滅が強い魔物。光強い奴を意識から消すようにしていくと書かれている。強い光に意識を向けて『去れ』と思うだけでいい。そう書かれている」
カーラが書物をめくりながら、召喚術士の気配の探り方をメラニアへ教えていた。
「強い光の子を『去れ』と思うのですね……。ああ、なるほど。強い光の子が去ると、別の光の子たちが出てきました。これが、召喚術士の行う召喚前の気配察知なんですね。勉強になります」
メラニアが別の魔物の光を見つけたようで、召喚術士としての素養はかなり高いようだ。
きっと、メラニアの召喚術士の素養が高すぎて、無意識化で最高クラスの魔物を察知するようにされており、生命の危険に晒されると自動的に錬成陣を発動させ、高ランクの魔物が呼び出されていたと思われる。
冒険者に襲われて命の危険を感じた時にグレーターデーモンが呼び出されたのは、そういった事情が関係していたものと思われる。
「段々と強い光の子に去ってもらうと、弱弱しい光の子たちが見えるようになってきました」
メラニアは自分の意識内で徐々に弱い魔物を探り出しているようであった。
「あら、この子。すごく弱弱しい光。それにお腹が空いたって泣いていらっしゃるわ。可哀想に……」
「メラニア、魔物の意識を感じ取れる。すごい。この書物によると、それは相性の良い魔物であるらしい。言い換えると契約を交わしやすい相手。契約時の魔力消費も少なくなると書かれている」
召喚術士は魔物気配だけじゃなく、意識も感じ取れるのか。
魔物はダンジョン主が生み出す生物だが、自意識を持つ者をいるため、メラニアの自意識の中を色々と魔物の意識が飛び交っているのかもしれない。
「弱い子は魔力の消費少ないから契約しやすい。契約し召喚し名を与えれば、今後は名を呼ぶだけで召喚できるようになると書かれている。名を与えない場合はその場限りの契約。次もまた同じように見つけ出す必要ある」
召喚術は魔物と契約を交わし、使役できるようになるとは知っていたが、名を与えることでその魔物を随時呼び出せるようになるとは初耳だった。
名を与えた魔物は召喚術士の呼び掛けに即時応えて、錬成陣を通じて呼び出せるようになるらしい。
名を与えることは召喚手順を簡略化できることになると思われた。
『アクセルリオン神も元々は召喚術士だったんですよねー。その後、賢者になられ、神様になりましたが。あたしも使役された魔獣でしたし』
創造の女神と言われるアクセルリオン神も元は人間かよ。
まぁ、確かに直に会うと神様も人間臭いからな。
幼女女神が案外と人間臭いのを知るのは、この場では俺とハクくらいであった。
「グレイズ様、この子がとても可哀想に感じますので契約を交わし、名を与えたいのですが……。かなり弱い光の子ですので」
メラニアは見つけ出した相性の良い魔物を召喚して名を与えたいと申し出ていた。
元々、メラニアの召喚術の練習をするためにダンジョンに来ているため、特に反対する理由はない。
「ああ、いいぞ。契約の練習にもなるしな」
「名を与えた魔物のうち一番相性の良い魔物が、無意識化の召喚では最初に呼び出されるようになるはず。この本にはそう書かれている」
メラニアの召喚術が制御できるようになれば、いきなり昏倒されて召喚した魔物が暴走することもなくなるので、弱い魔物との契約は早急に行った方が良いと思われた。
「契約し名を与えた魔物。召喚獣となり、戦って経験を積むと強くなる。弱くても成長するなら契約しとくのもアリ」
召喚獣となった魔物の成長も俺が知らない知識であった。
召喚術士は昔からなり手の人数が少なかったこともあり、意外と知られていない知識が多いのだ。
「では、この子と契約を交わすことにします」
そういったメラニアは、目を閉じたまま、更に意識を集中させていったようで、身体が白い光に包まれてかと思うと、ダンジョンの床に錬成陣が形成されていった。
メラニアが上手く召喚術を扱えるようにならないと、咄嗟の時に強力すぎる魔物が召喚されて魔力を使い果たし昏倒されては困るためだ。
そのため、おばばの旦那が書き残した書物に書かれている通りに練習を行うことにした。
「メラニア、この本によると、召喚術、魔物の気配探る、重要と書かれている」
カーラがおばばの旦那の書き残した書物をめくり、練習に必要なことをメラニアへ伝えている。
「け、気配ですか? 大きな魔物の気配は目を閉じると感じられますけど……。かなり、深い位置にいますけど……」
メラニアが目を閉じて、周囲の気配を探っているようにしているが、あまり弱い魔物の気配は探れないでいる様子であった。
「メラニアさん。魔物の気配はねー。ふわっとしてて、チクチクしてて、ねっとりしてるのー。それを感じ取るだけだよー」
ファーマがメラニアに気配の探り方を伝授していた。
だが、ファーマよ。それは、ファーマだからできる気配の感じ取り方だぞ。言いたいことは俺には理解できるが、メラニアには無理な気がするぞ。
「わふぅーー(匂いです。匂い。魔物の放つ嫌な匂いを感じるのです)」
ハクがメラニアの法衣にじゃれつきながら、気配の察知の仕方を教えようともしている。
しかしな、匂いは無理だ。匂いは。人間種に狼ほどの嗅覚はないのだよ。
「二人とも、それメラニアにはできないと思う。おばばの旦那さん、その点も言及している。召喚術士の気配察知は目を閉じて、光の明滅が見えるはず、メラニアの言う大きな魔物はきっと光の明滅が強い魔物。光強い奴を意識から消すようにしていくと書かれている。強い光に意識を向けて『去れ』と思うだけでいい。そう書かれている」
カーラが書物をめくりながら、召喚術士の気配の探り方をメラニアへ教えていた。
「強い光の子を『去れ』と思うのですね……。ああ、なるほど。強い光の子が去ると、別の光の子たちが出てきました。これが、召喚術士の行う召喚前の気配察知なんですね。勉強になります」
メラニアが別の魔物の光を見つけたようで、召喚術士としての素養はかなり高いようだ。
きっと、メラニアの召喚術士の素養が高すぎて、無意識化で最高クラスの魔物を察知するようにされており、生命の危険に晒されると自動的に錬成陣を発動させ、高ランクの魔物が呼び出されていたと思われる。
冒険者に襲われて命の危険を感じた時にグレーターデーモンが呼び出されたのは、そういった事情が関係していたものと思われる。
「段々と強い光の子に去ってもらうと、弱弱しい光の子たちが見えるようになってきました」
メラニアは自分の意識内で徐々に弱い魔物を探り出しているようであった。
「あら、この子。すごく弱弱しい光。それにお腹が空いたって泣いていらっしゃるわ。可哀想に……」
「メラニア、魔物の意識を感じ取れる。すごい。この書物によると、それは相性の良い魔物であるらしい。言い換えると契約を交わしやすい相手。契約時の魔力消費も少なくなると書かれている」
召喚術士は魔物気配だけじゃなく、意識も感じ取れるのか。
魔物はダンジョン主が生み出す生物だが、自意識を持つ者をいるため、メラニアの自意識の中を色々と魔物の意識が飛び交っているのかもしれない。
「弱い子は魔力の消費少ないから契約しやすい。契約し召喚し名を与えれば、今後は名を呼ぶだけで召喚できるようになると書かれている。名を与えない場合はその場限りの契約。次もまた同じように見つけ出す必要ある」
召喚術は魔物と契約を交わし、使役できるようになるとは知っていたが、名を与えることでその魔物を随時呼び出せるようになるとは初耳だった。
名を与えた魔物は召喚術士の呼び掛けに即時応えて、錬成陣を通じて呼び出せるようになるらしい。
名を与えることは召喚手順を簡略化できることになると思われた。
『アクセルリオン神も元々は召喚術士だったんですよねー。その後、賢者になられ、神様になりましたが。あたしも使役された魔獣でしたし』
創造の女神と言われるアクセルリオン神も元は人間かよ。
まぁ、確かに直に会うと神様も人間臭いからな。
幼女女神が案外と人間臭いのを知るのは、この場では俺とハクくらいであった。
「グレイズ様、この子がとても可哀想に感じますので契約を交わし、名を与えたいのですが……。かなり弱い光の子ですので」
メラニアは見つけ出した相性の良い魔物を召喚して名を与えたいと申し出ていた。
元々、メラニアの召喚術の練習をするためにダンジョンに来ているため、特に反対する理由はない。
「ああ、いいぞ。契約の練習にもなるしな」
「名を与えた魔物のうち一番相性の良い魔物が、無意識化の召喚では最初に呼び出されるようになるはず。この本にはそう書かれている」
メラニアの召喚術が制御できるようになれば、いきなり昏倒されて召喚した魔物が暴走することもなくなるので、弱い魔物との契約は早急に行った方が良いと思われた。
「契約し名を与えた魔物。召喚獣となり、戦って経験を積むと強くなる。弱くても成長するなら契約しとくのもアリ」
召喚獣となった魔物の成長も俺が知らない知識であった。
召喚術士は昔からなり手の人数が少なかったこともあり、意外と知られていない知識が多いのだ。
「では、この子と契約を交わすことにします」
そういったメラニアは、目を閉じたまま、更に意識を集中させていったようで、身体が白い光に包まれてかと思うと、ダンジョンの床に錬成陣が形成されていった。
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