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日常編 メラニアの召喚術
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しおりを挟むとはいえ、相手は人の魂を喰う魔物であることには変わりはないのだ。
ペットみたいに飼うわけにいかない存在である。
「あー、そうでした。召喚獣になってもらうには、わたくしと契約を交わさないといけませんでしたね。カーラさん、契約の仕方を教えてもらえますか?」
「すでに意思疎通ができているので、その場限りの限定使役は可能な状態になっている。永続契約には名を与え、相手が了承すればよいと書いてある。召喚獣となれば、召喚主の魔力を糧にしてダンジョン以外でも生活は可能になるらしい」
「ちょ、ちょっと待て! こいつをメラニアの召喚獣にするのか? 力を失ったとはいえノーライフキングだぞ?」
「大丈夫です。わたくしが責任を持ってキチンとお世話します。魔力消費もそれほど多くないようですし。最初にキチンと召喚に成功した子ですから、これはきっとわたくしとの縁があると思います」
「仮にメラニアの魔力が尽きて暴走しても、グレイズさんがまた魂吸わせまくって破裂させちゃうんだから、特に問題はないような気もするしね。下手にダンジョンに帰らせて、不死王の宮殿で力を取り戻して、また自由に魂を狩りに生かせるよりは、メラニアの召喚獣にしておいた方がマシな気もするわよ」
メリーがノーライフキングをダンジョンで野放しにする危険性を説いて、メラニアの召喚獣にすることに賛成していた。
確かに不意に魂を狩りに出てくるノーライフキングは、昔から冒険者たちの間で恐れられ、何度も討伐隊が組まれていたが、一度も成功しなかった魔物である。
そのため、ノーライフキングに出会ったら、すべてを捨てて逃げろというのが、冒険者たちの中で不文律とされているのだ。
そんなノーライフキングが一召喚術士の召喚獣として管理されれば、ブラックミルズのダンジョン内での魂狩りに遭うパーティーも減ると思われた。
珍しい召喚術士がいるパーティーの召喚獣がノーライフキングとか知られたら、またみんなに驚かれるんだろうな……。
だが、メリーの言うことにも一理あるしな。
危険な魔物をダンジョン内で放し飼いにするよりは、うちで面倒見ておいた方がよい気がしてきた。
「おばばの旦那が書き残した本によれば、召喚獣であれば、ダンジョン内で同個体の魔物が再生成されることもない。ノーライフキング、ダンジョンに一個体しか確認されてない。つまり冒険者たち安全に探索進められる」
カーラも半分生身になったノーライフキングにとても興味があるらしく、メラニアの召喚獣にすることを猛烈にプッシュしてきていた。
「ふぅ、分かった。分かった。その変わりにキチンと世話をしてやってくれよ」
みんなから貰ったクッキーを貪っているノーライフキングを見ながら俺はため息を吐いていた。
俺の率いるパーティーはドンドンと普通の冒険者パーティーから逸脱してきている気がしてならない。
極めて希少な能力を持つ天啓子やアクセルリオン神の使徒に加えて、王様や王女様がいるってのも大概だが、今度は不死王と言われるノーライフキングまでパーティーに加わるようである。
「ありがとうございますっ! 名前は決めました。クイーンちゃんにしましょう。ノーライフキングのクイーンちゃんです。よろしくね」
メラニアがクッキーを貪っているノーライフキングに向かい手を差し出していく。
「クイーンか。悪くない名である。よし、妾はメラニアの召喚獣となるのじゃ。今後は妾のお世話をするように」
クイーンと名を与えられたノーライフキングは、メラニアの手を握ると、彼女をグッと引き寄せてほっぺたにキスをしていた。
すると、錬成陣が光を発して二人を包み込んでいく。
やがて、光が収まるとクイーンがメラニアの腕輪の宝玉に吸い込まれていった。
「永続契約に成功したみたい。これでクイーンはいつでも呼び出せるし、クイーンの五感はメラニアと共有されるはず。呼び出すときは名を呼べば宝玉から解き放たれるはず。呼んでみるがよい」
「クイーン」
メラニアが腕輪の光る宝玉に向けて名を呼び掛けると、光とともにクイーンが外に飛び出してきた。
「ふむ、宝玉の中は中々に住みよい環境になっておるようじゃ。それにメラニアから魔力を吸えるしのぅ。わざわざダンジョンで魂狩りをせずとも生きていけそうじゃ。召喚獣も案外悪くないのぅ」
どうやら住環境も気に入ったようである。宝玉内は召喚獣の魔力消費が抑えられるようにしてあるようで、クイーンには住みやすいらしい。
「これからよろしくお願い致しますね。クイーンさん」
「妾が召喚獣となれば、メラニアを大陸一の召喚術士にしてやってもよいぞ。街一つくらいは朝飯前で滅ぼしてくれるのじゃ」
傍目には幼女が胸を張って街を滅ぼすと冗談を言っているように見えるが、彼女が力を取り戻せば達成可能なことでもあるので、召喚獣になったとはいえ引き続き注意深く観察をしていく必要はある気がしていた。
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