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日常編 探索時の俺の仕事
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しおりを挟む「いっちょあがりね。魔物溜まりといっても私たちの相手じゃなかったわね」
メリーが魔物の血が付いたメイスを血振りしながら、周囲の様子を窺っていた。
すでに魔物溜まりにいた魔物たちはドロップ品に変化させられており、戦闘は終息しているため、俺はドロップ品の選別に入っている。
「五〇体近くいたんだがな。一応ここは第一五階層なんだぞ。ランク的にはCランクでもBランク昇格間近のパーティーが縄張りにしているくらいの場所だ」
ドロップ品の鑑定をしつつ、帰り際にダンジョン販売店に卸す物や、納品依頼を受けている物などに選別していた俺に、魔物への警戒を解いたメリーが話しかけてきた。
「だったら、私たちには物足りないのではないかしら? ほら、深層階から帰還してるし。アルマが早くSランク昇格してって泣いてるのはグレイズさんも知ってるでしょ?」
「知っているが、俺たちは急激に強くなりすぎてて、経験が足りなさすぎるのさ。能力の高さと経験は別物ってことだよ。メリーも急激にランクを上げて消えていった冒険者パーティーをいくつも知ってるだろう?」
俺は短期間に冒険者ランクを上げ、深い階層に潜り装備を整えて、更に深くに潜っていったパーティーを幾つも知っているが、大半は一度の大失敗で壊滅し未帰還パーティーとなった事実をたくさん知っている。
伊達にこのブラックミルズに長くは住んでいない。
そういった話は商人の間でも耳にタコができるほど聞かされているのだ。
だから、同じ商人のメリーも俺と同じく、そういった未帰還パーティーの話は聞いて育っているはずである。
「知ってるけどさ……。まぁ、確かにグレイズさんの言う通り経験不足ってのは否定できないわね」
「焦る必要はないさ。地道にコツコツ。冒険者も商売人もやることは同じってことさ」
「ふぅ、グレイズさんにそう言われたら従うしかないわよね……」
「まぁ、そう焦るな。それよりも面白い物を見つけたぞ。掘り出し物だ。『炎帝の剣』なんて珍しい物が出たぞ」
何やらランクアップをしたそうなメリーをなだめると、俺は彼女たちが倒した魔物たちからドロップした装備品にレアの物が混じっていたことを告げた。
メラニアの加入後は彼女の運S+と俺の激運の相乗効果が出ているようで、敵の落とすドロップ装備品がレアリティが常にワンランク上の魔物が落とす物に変化していたのだ。
ドロップ装備品自体はそう多くドロップされる物ではないが、倒した魔物に応じての装備が基本であるはずだ。
だが、なぜだか深層階の魔物が落とす装備品が、この第一五階層で手に入ってしまっていた。
「『炎帝の剣』!? 買い取り値でも一本で二〇〇万ウェルはする剣よね。うちで出すとしたら三五〇万ウェルの値札が付くやつ」
俺が見せた『炎帝の剣』を見たメリーの眼がお金マークに輝き始めていた。
「グレイズさんマジっすかっ! 炎属性の結構いい武器じゃないっすかっ! マジ、かっけー。いやー欲しいなぁ。ソレ、マジでかっけーっす」
メリーに差し出していた『炎帝の剣』を見たジェネシスが、物欲しそうな目で剣を眺めているのが目に入ってきた。
今、ジェネシスが装備している剣よりもランク的に上の部類に入る剣で、属性攻撃も期待できる逸品である。
戦士のジェネシスとしては喉から手が出るほど欲しい武器であると思われた。
「ジェネシス君、これは売り物よ。うん、売り物。三五〇万ウェルのお買い上げ伝票書きましょうか? サイアス宰相宛でいいわよね?」
すかさず、メリーが商談モードに入る。
パーティーの仲間だから譲ってもいいかと思うんだが、どうやらメリーは売りたいらしい。
「マジっすか! いいっすよ。伝票はサイアス宛でよろっす」
三五〇万ウェル即決。さすが金持ちのボンボン。いや、王様か……。
伝票受け取ったサイアスの額の血管が切れるのが想像できてしまう。
「毎度ありー! グレイズさん、それジェネシス君のね。ほら、渡して、渡して」
「お、おぅ。そっちの剣を下取り出すか? 査定してやるぞ」
「大丈夫っす。予備にしますんで。うぉおお、マジかっけー」
『炎帝の剣』を受け取ったジェネシスが、ブンブンと素振りをすると、剣刃が纏っている炎がたなびいていった。
攻撃が当たれば火属性ダメージも自動で入るので、火に弱いゾンビ系などは有利に戦えるようになるだろう。
「今日はみんなに特別ボーナス出せそうよ。もっと、狩りましょう! 次は『氷帝の獣爪』とかでないかしら」
三五〇万ウェルの売り上げ伝票を手にしたメリーがほくほく顔でメンバーたちに発破をかけていた。
この上、『氷帝の獣爪』なんてレアな装備品が出たら何か良からぬことが起きそうな気がする。
「メラニアのおかげでいいもの出る。魔物溜まり、また探す。効率いい」
カーラよ。そう簡単にレアな装備品はでないからな。勘違いしてはならん。
「わたくしはお役に立っているのでしょうか?」
非常に役に立っているな。ドロップ品がランクアップするなんて聞いたことない話だぞ。
「メラニア、いるだけでドロップ品がランクアップする。十分役に立ってる」
「メラニア―、今回はメリーがぼーなす出してくれるらしいのじゃ。奮発して美味しいご飯を頼む」
メリーからのボーナス支給を聞いたクイーンは、メラニアにご飯のグレードアップをねだっていた。
「まだ、探索中だからみんな気を抜かないように」
思わぬ大金が手に入り、気が緩みがちだったメンバーたちへ注意を促しておいた。
こういった時に不意の事故や襲撃を受けることもあるのだ。
「グレイズさん、まだ奥の方に魔物溜まりがあるみたいだよ」
俺たちがドロップ品を集めている間に偵察に出ていたファーマとハクが、新たな魔物溜まりを見つけたようと報告をしてきていた。
やはり、ここまで潜るパーティーが減ったことで、いたる所に魔物溜まりが形成されつつあるようだ。
あまり放置すると上の階層まで中層階の敵が溢れかねないので、探索中に実戦経験を積むことも兼ねて倒せるだけ倒すことに決めた。
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次回更新日は3/22(金)予定です。
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