おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

文字の大きさ
179 / 232
※サイアス視点

1

しおりを挟む
※サイアス視点

「サイアス宰相閣下、クレストン家の家臣たちがアルガドの私生児を担ぎあげて、領内で兵を募っております。いかがいたしましょうか?」

 ようやくの思いで帰り着いた王都の執務室には、配下の者たちが詰めかけており、傀儡王であったはずのジェネシスが下した大貴族クレストン家の解体の余波を受け、政情不安が広がっていた。

 私が何十年もかけて築き上げた王国の土台をあのアホ王がいともたやすく崩し去り、戦乱をこの地に呼び込む決定を下していたのだ。

 まったくもって腹立たしい。

 しかも、あのアホ王には、街一つを軽く消し去れるバケモノの守護者が隣に立つことになった。

 あのバケモノ守護者が私の帰り際に平原に向かって無造作に放った魔術を思い出すと、今でも震えが止まらないでいる。

 文献に見かけるダンジョン主と同じような力を持った、あの男の力がこの王国に新たな戦乱の火種をまき散らさないか不安でしょうがない。

 だが、排除しようとすれば首を獲られるのは私の方であった。

 少しでも変な動きをすれば、毒婦マリアンや暗殺者集団モーラッド一族が王に告げ口をして、あの男をけしかけてくるはずである。

 そうなれば、いかに強力な軍隊も高い城壁を持っていても、安心して眠れる日がなくなる。

 そんなことになるくらいなら、アホ王とあの男には関わり合いを持たず、言われた通り私の名で宿敵クレストン家の解体を進めていく方がのちに家を継ぐ者のためになるはずであった。

「内部から切り崩せ。二~三の中規模クラスの領主に懐柔の餌を与え、こちらに情報を流させろ。流したら、それを材料に裏切りを強要しろ。どうせ、最後は一緒に首を並べるが、順番が後になるか先になるかの違いだがな」

「ははっ! 承知いたしました。該当の領主を探し、密偵と使者を送ります」

 報告に来ていた家臣と入れ替わるように毒婦マリアンが私の執務室に入ってきていた。

「旦那様、ジェネシス陛下のためにクレストン家の血筋の者は残らず根絶やしにしてくださいね。もし、一人でも生き残らせたら、王への反逆とみなしますよ」

 王の仲人で私の正室になったマリアンが嫌味たらしい目でこちらを見ている。

 クレストン家に家を潰された商家の令嬢であったため、クレストン家嫡男アルガドを傀儡化する駒として使い、王女暗殺を主導させたが、最後の最後で詰め怠り、グレイズに尻尾を掴まれて寝返った女だ。

 そして今は王の眼として、私が色々と画策しないかを生活を共にして事細かに調べている。

「来客中も食事中も執務中もそしてベッドでもお前の顔を見て生活していると思うと、精神を病みそうだ。その美しい顔の下にある醜さを知っていれば欲情も起きぬ」

「私の方こそ、旦那様のような皺枯れジジイと生活を共にせねばならない不幸を得て、自殺したいくらいですわ」

「お前のように図太い女がそんなしおらしいことをするものか」

「まぁ、する気はありませんけども。こんな無駄話するくらいなら、宰相閣下の名のもとにクレストン家の軍閥を解体するお仕事に邁進された方が身の安全を図れますよ。ああぁ、そういえばモーラッド一族の長が今朝方、私からお伝えせよと文を寄越しましたので、代弁をさせてもらいます。『サイアス宰相閣下の暗殺依頼はかなりの厚さになっている』とのことです。精々、身辺には気を付けてくださいね」

「私が狙われれば、お前も一緒に殺されるのだぞ」

「私はただの買われた女ですので、暗殺者に助命を乞うて、市井に身を隠すという手も取れますから」

 毒婦マリアンは女の武器を最大限に使い、暗殺者の手を逃れる気でいたようだ。

 実際のところ、この女ならやりかねないと思う。

 陛下より相互監視の刑を受けている身ではあるが、私が死ねば権力的に無害なマリアンはほぼ自由に近くなる。

 それはそれで何か納得がいかないので、精々暗殺で消されないように護衛の強化を図るしかない。

「クッ、おい。護衛の強化をしろ。屋敷と執務室には誰も入れるな」

 私は部屋に残っていた家臣に護衛の強化の指示を出すと、顎を扉に向けて突き出し、追い払うようなしぐさをした。

「モーラッド一族の方は入れて差し上げないと、陛下への手紙の筆が滑って『サイアス、叛乱準備』となりかねませんので、護衛強化もよろしいですがお気をつけください」

「クッ! 図に乗りおって」

「あら、私の手紙が一日でも途絶えれば、陛下はモーラッド一族を差し向けますわよ」

 背筋にタラリと冷や汗が流れる。

 感情に任せて彼女を殺せば、次の日には私が冷たい死体となってベッドに転がっているのである。

「お前に言わらずとも、わ、分かっておるわ」

 自分が私の命を握っているとでも言いたげに妖しい笑みを浮かべるマリアンの顔を見て、体中の血液が沸騰するのが感じられた。

 だが、冷静さを保たねばこの首は明日にでも切り離されてしまう。

 私は憎たらしいマリアンの顔から眼を逸らすと、溜まっていた政務を黙々と片付けることにした。

「ああ、そうでした。昨日、陛下から早馬が参りまして、これをサイアス宰相閣下にと」

 執務を始めた私の前に来たマリオンが、一枚の書類を差し出してきた。

 その書類には『炎帝の剣お買い上げ伝票』とグレイズの女が経営する店の名が記載されている。

 そして、金額の方に目を向けていくと……三五〇万ウェルと書かれていた。

「なんだこれは? 私はグレイズの女の店からこのような物をもらういわれはないぞ」

「下のサインと但し書きを確認してもらえれば、ご納得いただけるかと思いますが」

 マリアンに言われる通り、伝票の下にあるサインと但し書きに目を走らせる。

 瞬間、抑えていた血液が再び沸騰し、体中を駆け巡っていた。

「なんだこれはっ!! なにゆえ、私が陛下の買った剣の代金を支払わねばならぬのだっ!!」

 サインは陛下のものであり、但し書きには『なお、この剣の代金は王国宰相のサイアスの個人資産より支払われることとする』と書かれていたのだ。

「旦那様は財産をすべて国庫に没収されたいのですか? そちらがよろしければ、陛下にはそうお伝えしますが?」

 マリアンは妖しい笑いを張り付けたまま、私が支払いを拒否するのかどうか聞いて来ていた。

 ここで拒否すれば、明日にでも私の資産が凍結される手はずになっているのだろう。

 そうなれば、身を守る護衛も、クレストン家解体もできずに無様に死体を野に晒す羽目になる。

 それに残している家族のためにも資産の凍結だけは何としても避けねばならなかった。

「くぅぅううう!!! そのようなこと申しておらぬだろうがっ! 快く陛下のために支払らわさせてもらうつもりだっ!! くぅぅうう!」

「それは良い判断をされました。さぁ、お仕事を進めてくださって構いませんよ。サイアス宰相閣下の名でクレストン家の残党狩りもどんどんと進めてくださいませ」

 マリアンに言われるまでもなく、長年の仇敵であったクレストン家の残党は徹底的にやらせてもらう。

 クレストン家解体をやりきった後、三年の修行期間を終えた陛下が、私をどうするかを考えたら恐怖しか感じない。

 そのため、今は一心不乱に陛下の治世を安定させることで、彼の怒りを解くのが一番の目標となっていた。
しおりを挟む
感想 1,071

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。