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日常編 袖触れ合うも多少の縁
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荷崩れしそうになった馬車を元に戻すと、隣で呆然として作業を見ていた初老の老人が俺の手を握り感謝の言葉を告げた。
「兄ちゃんの名前は覚えたぞ。オレは王都で店を構えているヒッグスという者だ。オレは受けた恩は必ず返す主義でな。今は急ぎの仕事で恩返しはできんから後で必ずする」
「別にそんなことしなくてもいいぞ。俺が好きで助けただけだしな」
「いいや、借りは返してこその商人だからな」
ヒッグスは人好きする顔で笑っていた。
不思議とこの男の言葉なら信用してもいいと思わせる気配が周囲に漂っていた。
「兄ちゃんたちが王都に来ることがあったらうちの店を訪ねてくれ。下町でオレの名を出してくれれば店まで案内してくれるようにしておくからな。是非、寄ってってくれ」
「ちょ、ちょっと。別に俺はいいって……」
それだけ言うと、ヒッグスと名乗った老人は荷馬車に飛び乗り、先を急ぐように駆け去っていった。
「あ、慌ただしい男だな……。また事故るぞ」
俺はヒッグスを見送りながらも、また事故らないかの心配をしていた。
「ヒッグス……どっかで聞いたことあるような……どこだったかな……」
「下町のヒッグス様ならわたくしが存じ上げている方で思い当たる人が一人いますが……」
王都出身のメラニアとジェネシスが駆け去った男のことを知っているようである。
男の正体が少し気になったので、二人に聞いてみた。
「ヒッグスって何者だい?」
「わたくしの存じ上げているヒッグス様と言えば、王都で手広く商売をされているマイヤー商会の会頭ヒッグス・マイヤー様かと思いますが……」
「ヒッグス・マイヤー……。会頭って言えば商会のトップだろ? なんで荷馬車を運転して荷物運んでるんだ?」
「あーーーーーっ! ヒッグス・マイヤー!! 姉上、あのヒッグス・マイヤーですか!?」
ジェネシスも思い当たったようで、びっくりしていた。
王であるジェネシスが驚くほどの人物であるヒッグス・マイヤーという男に俄然興味が出てきた。
「ジェネシス、そのヒッグス・マイヤーってすごいのか?」
「すごいも何も、『王都の影王』って呼ばれる人ですよ。彼がいるから王都が機能していると言われるくらいの男ですよ。サイアスも彼にだけは頭が上がらないって言われる男っすからね。食料品始め、王都で流通するモノはすべて彼の息がかかっているんすよ」
「流通を牛耳る王都の影王か……なんで、そんなスゴイ男がこんな街道で荷馬車を走らせているんだ?」
「わたくしの聞いた話では、ヒッグス・マイヤーは何人もいるって聞いたことがあります。彼の『ヒッグス・マイヤー』の一人だと思いますが」
メラニアの話によれば、彼は本物ではなく、影武者の一人であるかもしれなかった。
「なるほど、影武者か……。出来のいい部下に『ヒッグス』を名乗らせ本物は王都で人を動かしているということかな?」
「オレがサイアスに連れられて会ったヒッグス・マイヤーは若くて、嫌味たらしい顔をした金髪野郎でしたからね。あの老人とイメージが繋がらなかった」
ジェネシスが会った『ヒッグス・マイヤー』は今会った男とは似ても似つかない男であったらしい。
この時点で最低でも二人の『ヒッグス・マイヤー』がいるということは判明していた。
ますます、正体不明の気になる男になってきていた。
「さっきのおじいさんいっぱいいるのー?」
「ファーマ、同じ名前の人がいっぱいる。同じ人間がいっぱいる、違う」
「同じ名前を多数の人が使っているんですね。それなら誰が本物か分からなくなりましね」
「あー、私も冒険者ギルド本部に顔出した時に、本部長からヒッグス・マイヤーさんを紹介されましたけど、中年の小太りおじさんだったような」
アルマも王都で『ヒッグス・マイヤー』に会ったことがあるようで、彼女の情報では小太りのおじさんらしい。
ますます、本物が誰なのか分らなくなってきた。
「冒険者ギルドにも顔が利くとなると、王都に行ったら面会くらいはしておいた方がいいのだろうか?」
「うちのお店的にはお得意様を冒険者ギルド以外にも増やしたいから、王都の影王っていう人とは知り合いになってみたいけどね」
メリーは今回の王都行きで新たな販路も拡大したいようで、『ヒッグス・マイヤー』との面会にも積極的だった。
これはまた王都でやることが一つ増えたような気もする。
「来いって言ってくれた人からの誘いを断るのもあれだし、時間が許せば会いにいくことにしょう。さぁ、俺たちも旅を再開するとしようか」
俺は集まっていたみんなを馬車に戻すと、再び街道を王都に向けて旅を再開することにした。
そして、旅は順調に旅程を消化し、途中、本当に様々な個人的問題やトラブルが発生したが、何とか無事おさめて王都の正門に到着することができた。
-----------
おっさん商人第二巻が7月下旬発売予定です。お近くの書店様にてご予約して頂ければ幸いです。
二巻はハク、アルマが追加され、メリーが仲間入りし、ムエル決着編までを収録しております。
書影ももう少ししたら出ると思います。
「兄ちゃんの名前は覚えたぞ。オレは王都で店を構えているヒッグスという者だ。オレは受けた恩は必ず返す主義でな。今は急ぎの仕事で恩返しはできんから後で必ずする」
「別にそんなことしなくてもいいぞ。俺が好きで助けただけだしな」
「いいや、借りは返してこその商人だからな」
ヒッグスは人好きする顔で笑っていた。
不思議とこの男の言葉なら信用してもいいと思わせる気配が周囲に漂っていた。
「兄ちゃんたちが王都に来ることがあったらうちの店を訪ねてくれ。下町でオレの名を出してくれれば店まで案内してくれるようにしておくからな。是非、寄ってってくれ」
「ちょ、ちょっと。別に俺はいいって……」
それだけ言うと、ヒッグスと名乗った老人は荷馬車に飛び乗り、先を急ぐように駆け去っていった。
「あ、慌ただしい男だな……。また事故るぞ」
俺はヒッグスを見送りながらも、また事故らないかの心配をしていた。
「ヒッグス……どっかで聞いたことあるような……どこだったかな……」
「下町のヒッグス様ならわたくしが存じ上げている方で思い当たる人が一人いますが……」
王都出身のメラニアとジェネシスが駆け去った男のことを知っているようである。
男の正体が少し気になったので、二人に聞いてみた。
「ヒッグスって何者だい?」
「わたくしの存じ上げているヒッグス様と言えば、王都で手広く商売をされているマイヤー商会の会頭ヒッグス・マイヤー様かと思いますが……」
「ヒッグス・マイヤー……。会頭って言えば商会のトップだろ? なんで荷馬車を運転して荷物運んでるんだ?」
「あーーーーーっ! ヒッグス・マイヤー!! 姉上、あのヒッグス・マイヤーですか!?」
ジェネシスも思い当たったようで、びっくりしていた。
王であるジェネシスが驚くほどの人物であるヒッグス・マイヤーという男に俄然興味が出てきた。
「ジェネシス、そのヒッグス・マイヤーってすごいのか?」
「すごいも何も、『王都の影王』って呼ばれる人ですよ。彼がいるから王都が機能していると言われるくらいの男ですよ。サイアスも彼にだけは頭が上がらないって言われる男っすからね。食料品始め、王都で流通するモノはすべて彼の息がかかっているんすよ」
「流通を牛耳る王都の影王か……なんで、そんなスゴイ男がこんな街道で荷馬車を走らせているんだ?」
「わたくしの聞いた話では、ヒッグス・マイヤーは何人もいるって聞いたことがあります。彼の『ヒッグス・マイヤー』の一人だと思いますが」
メラニアの話によれば、彼は本物ではなく、影武者の一人であるかもしれなかった。
「なるほど、影武者か……。出来のいい部下に『ヒッグス』を名乗らせ本物は王都で人を動かしているということかな?」
「オレがサイアスに連れられて会ったヒッグス・マイヤーは若くて、嫌味たらしい顔をした金髪野郎でしたからね。あの老人とイメージが繋がらなかった」
ジェネシスが会った『ヒッグス・マイヤー』は今会った男とは似ても似つかない男であったらしい。
この時点で最低でも二人の『ヒッグス・マイヤー』がいるということは判明していた。
ますます、正体不明の気になる男になってきていた。
「さっきのおじいさんいっぱいいるのー?」
「ファーマ、同じ名前の人がいっぱいる。同じ人間がいっぱいる、違う」
「同じ名前を多数の人が使っているんですね。それなら誰が本物か分からなくなりましね」
「あー、私も冒険者ギルド本部に顔出した時に、本部長からヒッグス・マイヤーさんを紹介されましたけど、中年の小太りおじさんだったような」
アルマも王都で『ヒッグス・マイヤー』に会ったことがあるようで、彼女の情報では小太りのおじさんらしい。
ますます、本物が誰なのか分らなくなってきた。
「冒険者ギルドにも顔が利くとなると、王都に行ったら面会くらいはしておいた方がいいのだろうか?」
「うちのお店的にはお得意様を冒険者ギルド以外にも増やしたいから、王都の影王っていう人とは知り合いになってみたいけどね」
メリーは今回の王都行きで新たな販路も拡大したいようで、『ヒッグス・マイヤー』との面会にも積極的だった。
これはまた王都でやることが一つ増えたような気もする。
「来いって言ってくれた人からの誘いを断るのもあれだし、時間が許せば会いにいくことにしょう。さぁ、俺たちも旅を再開するとしようか」
俺は集まっていたみんなを馬車に戻すと、再び街道を王都に向けて旅を再開することにした。
そして、旅は順調に旅程を消化し、途中、本当に様々な個人的問題やトラブルが発生したが、何とか無事おさめて王都の正門に到着することができた。
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おっさん商人第二巻が7月下旬発売予定です。お近くの書店様にてご予約して頂ければ幸いです。
二巻はハク、アルマが追加され、メリーが仲間入りし、ムエル決着編までを収録しております。
書影ももう少ししたら出ると思います。
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