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第55話 調査依頼達成報告
しおりを挟む「ただいま帰りましたー」
「戻りましたー」
靴の土を落とした俺たちは、リアリーさんの経営する探索者ギルドに戻ってきた。
時刻は17時30分を過ぎている。
Dランクダンジョンを攻略して、もう1個Gランクダンジョンを攻略しようと思ったが帰宅時間が気になって断念した。
探索中手に入れた魔導時計のおかげで、街の入口の門の閉門時間に間に合うことができ、外で野宿せずに済んだ。
「おかえり。3人とも無事ね」
「ええ、なんとか」
「はい、大丈夫です。遅くなって申し訳ありません。すぐにウェンリーさんの準備のお手伝いをします。ヴェルデ様、これお願いしますね」
アスターシアは、俺にタグペンダントを渡すと、腕まくりして手を洗い、エプロンを着け、すぐさまキッチンの方へ消えた。
疲れてるだろうし、生活費も貯まってきてるから、あそこまで頑張らなくてもいいと思うんだが。
明日は休みだし、ゆっくり寝てもらってから、買い出しにいくことにしよう。
「はぁー、おかえりガチャ。いつ見ても可愛い子ね」
ガチャは、カウンター裏にいるリアリーさんの近くに駆け寄り、ご飯のおねだりを始めている。
「はい、おやつ」
差し出されたニンジンの野菜スティックを見ると、爆速で俺の方に戻ってきた。
「い、いただきまーす」
ガチャに差し出されたニンジンの野菜スティックは、無事に俺の口の中に納まる。
「ふぅ、飼い主が甘すぎねー」
「すみませんね。厳しくしつけようとは思ってるんですが」
俺は謝りつつも定位置化しつつあるカウンターの席に腰を下ろす。
ガチャが膝の上にきたがったので、抱えて膝の上に載せた。
「ま、今日のお昼用にペーストの中にお野菜細かくしたのが入ってたからいいけどさー」
お昼のペーストにお野菜が細かくして仕込んであったと聞いたガチャが、ビクーンと震え、こちらを見上げる。
え? 俺? そんなの知らない!? 聞いてないよ!
俺も知らなかったと言うように、ガチャに首を振った。
めちゃくちゃうまそうに食ってたのは覚えてるから、味は嫌いじゃないんだろうなぁ。
ガチャは頭がいいから形と色で野菜を認識してるらしい。
野菜を食べたのがショックだったのか、ガチャはカウンターの上に頭を置いて、死にそうな様子でレバーを回し始めた。
さっきまで元気におねだりしてたじゃないっすか! 急に毒物を飲んだみたいな苦しみ方をされても困る! そこまで野菜が嫌いなのか!
「さって、今日はガチャちゃんにお野菜も食べさせてあげられたし、ヴェルデ君たちの依頼の方はどうだったかしら?」
ガチャの頭を優しく撫でたリアリーさんが、今日の俺たちの成果を聞いてきた。
俺は自分とアスターシアのタグペンダントとともに、調査依頼用の黒い板をカウンターの上に置く。
「今日は調査依頼と攻略報告1件ずつしかないですね。ちょっと遠い場所でしたし、意外と手間取りました」
「あら、そう。ヴェルデ君にしては珍しいわね。Gランクダンジョンの調査くらいは――」
リアリーさんは、調査情報が入った黒い板を取ると、カウンター裏の機器に繋げた。
「は? はぁああああっ! Dランク!? Dランクダンジョン!? ホーカムの街にDランクダンジョン? 嘘でしょう !?」
目の前に、知り合ってから一度も見せたことがないくらい狼狽したリアリーがいる。
夕食を食べに来ていた街の人もカウンターの方へ集まってきた。
「嘘だろ! Dランクってそれなりに魔素の濃い場所でしか生成されないはずだろ!」
「Gランクが当たり前の地域で、Dランクまで成長するには何百年もかかるはずだ! 近郊のダンジョンがそんなに見落とされるわけねぇ!」
「Dランクがあるってなると、周辺に強い魔物が這い出してくる可能性も」
静かだった店内が一気に騒がしさを増した。
「と、とりあえず。脅威度判定がおかしくなってないか、統一ダンジョン協会に報告してみれば分かるわ。おかしな点があれば、エラーが出るわけだし」
冷静さを取り戻したリアリーさんは、機器を操作し、調査依頼達成を登録する。
しばらく無言の時が流れ、調査依頼達成の登録が完了した。
「エラーなし!? 本当にDランクだったわね。となると、困ったことになるけど――」
リアリーさんの顔が途端に曇り始めた。
街の人が言ったように、ダンジョンから溢れた強い魔物が街の周辺を徘徊するようになるって話だな。
現状はゴブリンとかスライムくらいしか出てこないので、見かけても大人が数人で挑めば倒せるレベルの魔物だが、Dランクで戦った絡み根草とか、ハンド・オブ・ソーサラーみたいな魔物が這い出して来たら被害は甚大な気がする。
「早急に国と統一ダンジョン協会に探索者派遣を求めないといけないかしら」
心配してるところ悪いと思うが、すでにそのDランクダンジョン攻略しちゃったんだよなぁ。
そんな大事になるランクとは思ってなかったわけだし。ちょっと苦戦したけどさ。
「いや、その必要はないと思いますよ。俺たちが攻略しましたし」
「はい?」
「攻略しました。タグペンダント調べてください」
「へ? あ、うん」
俺に促されたリアリーさんが、2人のタグペンダントを依頼達成確認用の板に載せる。
板が淡い光を発したところで、リアリーさんから吐息が漏れた。
「攻略済みになってるわね……。Dランクよ。Dランク……。それなりに経験を積んだ多人数パーティーがクリアできるランクのやつを2人で攻略してるわ」
リアリーさんの言葉を聞いた街の人たちも安堵の息を吐いた。
俺が攻略したことでDランクダンジョンは消え、強い魔物は這い出してこないと分かったからだ。
「すげえな。ヴェルデ」
「助かった。お前がいてくれて本当に助かったぞ」
「Dランクダンジョンから這い出して来る魔物なんて考えたら、怖くて外も出歩けなかったからな!」
俺の強すぎる褒賞の力も、多少はホーカムの街のために役に立ったらしい。
褒めてもらって悪い気もしないしな。
「とりあえず、調査依頼達成が800ゴルタ。攻略依頼達成が400ゴルタほど支給されるわ。2人で分割して振り込めばいい?」
手続きを進めてくれたリアリーさんが確認を取ってくる。
ダンジョン1つの攻略で1200ゴルタか。アスターシアと割っても600ゴルタで生活費が余裕で稼げる。
熟練の探索者が儲かるってのは間違いなさそうだ。
「それでいいですよ」
「じゃあ、手続きするわね。アスターシアちゃんも確認したら板に手を触れてねー」
「はーい」
キッチンの奥で仕込みの手伝いをしているアスターシアからも返事が聞こえた。
2515ゴルタから600ゴルタ増えて、3115ゴルタか。
これだけあれば、明日の買い物でアスターシアも自分の好きな物が買えるはずだ。
口座の残高を確認すると、俺は黒い板に触れた。
「あとこれはダンジョンの中で倒した魔物と、修行中に倒した魔物の素材なんだが」
魔法の袋と偽った袋から素材を取り出していく。
エント、はぐれウルフ、ジャイアントセンチピード、絡み根草、ホーンラビット、ハンド・オブ・ソーサラーといった魔物の素材を並べた。
Dランクのボスモンスターを倒したので、LV10以上の魔物を倒せてもおかしくない実力だって分かってもらったし、お金に変えた方がいい。
さすがにLV40ゴブリンチャンピオンとか、LV20ロングネイルベアーとかは出せないが。
これで空間収納に余裕ができたな。
明日の買い出しで普通のバッグ類を買い込み、分類して空間収納できるようにしとかないと。
エンチャント装備品の軽量化のバッグを使うまでもないしな。
「ちょっと待ってね。査定するわ。ウェンリー素材の査定手伝ってー」
「はーい、行きます!」
キッチンから駆けてきたウェンリーが俺に頭を下げると、査定の手伝いを始めた。
カウンターに集まっていた客も、Dランクダンジョンが攻略され、目下の安全が確保されたと知ると、席に戻って談笑を始めている。
しばらくして買い取り額が出たらしく、俺の目の前にウィンドウが浮かぶ。
「買い取り額はこちらねー」
3080ゴルタ。点数が少なかったわりに意外と買い取り額がたかいな。
さすが高LV魔物素材ってところか。
副収入が発生する解体スキルを取っておいてよかったぜ。
「これでいいですよ。これも分割で振り込んでおいてください」
「2人とも確認をよろしく」
仕込みの手伝いを終えたアスターシアも駆けつけ、振り込み確認は終わった。
口座残高4655ゴルタっと。
「あーそうそう。ついにオークションに出品してた『逆刃の小手』が入札を締め切って売れたわ」
俺の前に新たなウィンドウが浮かび、落札額が表示される。
お、ついに売れた。
買い取り屋とかだと、エンチャント装備品でも買い叩かれるってアスターシアが言ってたが、本当にそのようだ。
11500ゴルタという大金はとても助かる。
「事前に登録料もらってるから、そのまま入金するわね。これは出品者にしか入れられないから、アスターシアちゃんに分けるならあとで送金してあげて」
「わたしはすでに十分すぎる額をもらってますので、そちらはヴェルデ様のものです!」
アスターシアは手を振って受け取りを拒否した。
とりあえず、生活資金として俺がプールしておけばいいか。
明日の買い出しも探索に必要なものなら、俺から金を出せばいいし。
「じゃあ、俺の方に入れてください」
口座残高16155ゴルタっと。大金だなって思うが、エンチャント装備品とか集めようと思うと、金がいくらあっても足りない気がする。
とはいえ、装備も多少はよいものにしていきたい。
通常武器や防具でよさげなものとかあったら、明日買うか。
特に今の鎧はリアリーさんのところの倉庫にしまってあった中古品で防御効果がほとんどないしな。
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