俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク

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第56話 出金依頼と貨幣

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「ふぃー、至福の朝風呂だった」


「そうですね。朝には朝のお風呂の良さがありました。お休みの日は朝風呂にするのもいいかもしれません」


「それはいいかもしれないな。探索する日と違って、特別感が出るし。ガチャも賛成か?」


 抱きかかえているガチャも賛成を示すようにレバーを回していく。


「では、休日は朝風呂の日といたしましょう」


 昨夜は祝勝会と称した飲み会が深夜まで開催され、そのまま部屋に戻って寝てしまったので、みんなで朝風呂を終え、リアリーさんの店に帰ってきて朝飯を食べているところだ。


「特別な休日っていいわねぇ。私にもそんな時代があった気がするわ」


 昨日の祝勝会の席で、ギルドマスターをしているリアリーさんが昔は探索者だったことを知った。


 品のよい老婦人にしか見えないんだが、探索者時代を知る街の人からしたら、今は別人らしい。


 探索者時代は、男勝りの女戦士リアリーって言われてたそうで、筋力が増える特性でガチガチのタンク職だったそうだ。


 でも、ダンジョンに仕掛けられた罠で筋力が増える特性が消えてしまい、仕方なく引退してホーカムの街のギルドマスター職を先代から引き継いだと聞いた。


「リアリーさんもお休みを取られたらどうですか? 探索者って言っても俺たちとトマスしかいないわけだし」


「これでもいろいろと忙しいのよ。探索者ギルドに送るギルド運営の報告書とか、探索者への通達事項を張り出したりとか、オークション品の受け渡しとか、口座出金の対応とか、雑用がいっぱいあるの」


 俺たちが探索中もリアリーさんたちは忙しくしてるってわけか。


 そう言えば、口座出金で思い出したが、今日は買い物するので手持ちの金を増やしておきたい。


 生活費として持ってる現金も半分くらいになってたし、いろんなもの買い揃えるためにも3000ゴルタくらいは持ってた方がいいかも。


 日々の細かい支払いは、アスターシアに預けてる生活費からしてくれてるが、手持ちで持ち歩く現金は俺の空間収納に入れておけば盗まれる心配はないしな。


「口座出金で思い出しました。今日買い物するんで3000ゴルタほど現金が欲しいんですが、用意できます?」


「3000ゴルタなら、即時で用意できるわね。さすがに3000万ゴルタ用意してくれって言われたら無理だけど。出金するからタグペンダントを貸してもらえるかしら」


 首から下げていたタグペンダントをリアリーさんに差し出す。


 黒い板の上に置かれたタグペンダントが淡く光った。


「承認を押して。そしたら金庫から出してくるから」


 浮かんだウィンドウに触れ、承認する。


「承認してもらえないと、私でも金庫に入れないからね」


「へぇ、厳重ですね」


「お金だからね。現金補充も探索者ギルド本部が雇った身元が確かな人しかやれないし。襲ったら返り討ちにあうわよー。現金輸送任務に就くのは相当強い特性を持った人たちだしね」


「犯罪者になりたくないですし、そんなことしませんよ」


「それがいいわ。探索すれば稼げるわけだしね」


 リアリーさんはそれだけ言い残すと、カウンター奥の事務室に消えた。


「商売人が属する商業ギルドも、探索者ギルドの使ってる統一ダンジョン協会が提供したタグペンダントによる口座システムに相乗りしてますしね」


「商業ギルドもあるのか?」


「はい、探索者以外で商売してる人が加入するギルドですね。どの街にも探索者ギルド内に支部が設置されてると思います。両親も探索者引退後は、商人として商業ギルドに属していたので」


 そりゃあそうか、商取引で大金を扱う場合、口座送金した方が楽だし、贋金を掴まされなくて済む。


 セキュリティも安心だし、何と言っても世界中に支店を持つ巨大な営利組織である探索者ギルドが、預けた金を保証してくれるのが最大のメリットのはずだ。


「商売も探索者もやってない人も使えるんだろうか?」


「それはどうなんでしょうか?」


 アスターシアの答えられない質問に答えたのは、事務室から戻ってきたリアリーさんだった。


「貴族や王族の方は個人的に統一ダンジョン協会から口座システムを提供されてるという話は聞いたことわるわね。それと、一般の人も登録すれば使えるわよ。都市部ならまだしも、田舎だとあんまり使う人はいないけどね」


 へぇ、一般人も使えるのか。でも、稼げる職業でもない限り、預けなきゃいけないほどの貨幣は貯まらないんだろうなぁ。


「はい、これ3000ゴルタ。とりあえず、買い物で使うって聞いたから、細かいのも入れておいたわ。確認したら承認よろしくね」


 リアリーさんが、革袋に入った金貨を差し出してくる。


 中身は1000ゴルタ扱いの大銀貨1枚、500ゴルタ扱いの銀貨1枚、100ゴルタ扱いの大銅貨10枚、10ゴルタ扱いの銅貨45枚 1ゴルタ扱いの陶貨50枚があった。


 トータル3000ゴルタで間違いない。今度出金する時は、貨幣をして出してもらった方がいいな。


 それと、1万ゴルタ扱いの金貨、10万ゴルタ扱いの大金貨、100万ゴルタ扱いの白金貨、1000万ゴルタ扱いの大白金貨とかもあるそうだが、今のところご縁はなさそうだ。


 アスターシアに聞いた話だが、貨幣鋳造は統一ダンジョン協会が行っているらしく、異世界ウィンダミアでは、どの国でもこのゴルタ貨幣が同じ価値を有するらしい。


 貨幣はとても精工に作られており、偽造はしにくいし、贋金づくりがバレたら極刑に処されると聞いている。


 これも貨幣鋳造に命を懸けた職人『渡り人』が、拘り抜いた技術から作られ、普及したものだろうなぁ。


 ご丁寧に貨幣の表面を縁取るデザインがどう見ても『円』を模してる意匠だし。


 あと口座システムも『渡り人』っぽい人の技術が、ふんだんに使われてそうだ。


 影響を与えすぎでしょと思うけど、いろいろと異世界人の生活を助けてる側面もあるんだよなぁ。


「ちゃんとありました」


 浮かんだウィンドウの承認ボタンを押すと、タグペンダントの光が消えた。


「これで出金完了。お買い物にも困らないと思うわ」


「ありがとうございます。これでガチャの首輪も買ってあげられますよ」


「あらあら、ガチャちゃんもついに首輪をつけるのねー。ヴェルデ君にかわいいの選んでもらってね」


 返却されたタグペンダントを首から下げていると、リアリーさんはガチャの頬を撫でた。


 きっと最高に似合う首輪があると思うんで、可愛いガチャの可愛さが300倍くらい増えるはずだ。


「リアリーさん、わたしも大銅貨で500ゴルタほど出金をお願いします。買いたいものがありますので」


「はいはい、いいわよー」


 アスターシアも買い物を楽しみにしてたし、お金を引き出して、朝ご飯を終えたら買い物に出発するとしよう。


 それから俺たちは遅い朝ご飯を終えると、ホーカムの街に繰り出し、買い出しをすることにした。
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