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第68話 救出
しおりを挟む「ふぅ、これで3グループ目か」
最初の魔物たちを倒して、ダンジョンを探索すること50分ほど過ぎた。
その間、2度魔物の集団に遭遇している。
ホブゴブリンやゴブリンたちもいたが、それ以外にも見たことない魔物がいっぱいだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
ジャイアントバットLV10
HP0/70
MP0/0
攻撃方法:体当たり かみ砕き(病原体を持つため病気になる可能性あり) 吸血
弱点属性:風
解体時取得物:コウモリの羽 コウモリの牙
解説:洞窟に生息する巨大なコウモリ。巨体でぶつかってきたり、鋭い牙でかみ砕いてくる。血の匂いに敏感に反応し、血を吸うと傷を癒す力を持つ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
他の魔物と戦ってる時に、空を飛んで襲ってきて、牙で噛まれると病気になるかもしれないという、実に面倒な魔物だった。
近接攻撃が当たりにくいから、風魔法のウィンドを当てて撃ち落としたけど、MPを消耗させられる嫌な相手だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
ジャイアントスパイダーLV12
HP0/90
MP0/0
攻撃方法:丸かじり クモの糸
弱点属性:火
解体時取得物:クモの糸
解説:巨大なクモで、ダンジョン内の広い部屋に巣を作り、探索者を待ち受けていることが多い。粘着性の高い糸で作った巣に触れた者は動きを拘束され、身動きできないまま、身体を丸かじりされる。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴブリン集団とセットで出てきて、巣にかかったら味方も関係なく捕食して丸かじりしてた。
糸はものすごく細くて、光量が足らないと非常に見えにくいものになっているし、引っかかると引きはがすのにものすごく時間を喰う。
ジャイアントスパイダーを倒す時は、巣を先に燃やした方がいいという教訓を得た。
巣がなくなれば、糸に絡めとられない限り、そこまで怖い魔物ではない。
―――――――――――――――――――――――――――――――
ジャイアンラットLV11
HP0/60
MP0/0
攻撃方法:噛みつき(病原体を持つため病気になる可能性あり)
弱点属性:氷
解体時取得物:ネズミの肉
解説:洞窟内を徘徊する巨大なネズミ。体内に病原体を持っており、傷を負うと病気(病原体由来)になる可能性を持つ。油断できない相手。
――――――――――――――――――――――――――――――――
動きこそ素早いが、攻撃はそこまで強いとは感じなかった。
だが、鑑定後に病気持ちが発覚したので、見つけたら優先処理するように決めた。
病原体由来の病気は、ポーションとかで治るけど、在庫が少ないので、罹患しないに限る。
「ヴェルデ様、魔素濃度の測定が終わったみたいです」
戦闘を終えた俺のところに、アスターシアが姿を現した。
「そうか、もうダンジョンに入って1時間経つか。それで数値は?」
「435%……です。ありえないですよね? これって、壊れてますよね?」
黒い板から浮かぶ魔素濃度の数字を見たアスターシアの表情は優れない。
400%超え。『重点探索指定地区』の平均値を超えてる……ぞ。
「壊した覚えはないから、その数字が今のこのダンジョン内に満ちる魔素濃度なんだろう」
「それにしても異常値すぎます。仮にこの数字が正しいとしたら、400%超えてる若いダンジョンなので、調査しても数日で内部に新しい通路や部屋が生成されてしまいますよ」
「俺たちが調査する間に、ダンジョン内が勝手に広がって、新たな罠や魔物、部屋などを生成していくってわけか」
「ええ、たぶん。それくらい起きてもおかしくない数字です」
人数をかけて探索して、ボス部屋の位置を早く特定しないと、近隣の村に被害が出る強力なダンジョンへ進化してしまうのが、この数字で判明したな。
リアリーさんが、探索者ギルドを通じて危機を訴えてくれるはずだが。
俺たちだけでどこまで抑え切れるか……。
ボス部屋もまだ見つかってないし、ダンジョンも複雑化してるし。
ありえない魔素濃度の数値に困惑していた俺たちを横目に、ガチャは何かを感じたのか、曲がり角の奥へ向かい駆け出した。
「ガチャ、そっちはまだ探索してないし、魔物がいるかもしれないから、戻ってこい!」
俺の声に一度振り返ったガチャだが、そのまま曲がり角に向かって駆けていく。
そして、曲がり角の突き当りでガチャの姿が消えた。
「はっ! ガチャ! ガチャああああッ!」
「ガチャ様! わ、罠に!」
俺とアスターシアは急いでガチャが消えた曲がり角まで駆け出す。
嘘だろっ! ガチャ、どこに行ったんだよっ! 俺の声を無視して、勝手に行くなんてこと今までしなかったのに!
ガチャが消えた曲がり角まで来ると、周囲を見渡す。
だが、ガチャの姿は曲がり角の奥に続く通路にもなかった。
か、完全に消えた!? もしかして、テレポーターの罠か!? 踏んだらダンジョン内のどこかに飛ばされるとかってやつ!
ダンジョン内に一人で飛ばされ、魔物に囲まれ震えるガチャを想像すると、心臓が締め付けられる。
さっき、もっと強く引き留める言葉を言っていたら、こんなことには――。
クソ、なんてことだ……。ガチャ、どこ行ったんだ。ガチャ。
「ガチャアアアアアアアアア!」
俺は我慢できずに大きな声で叫んでいた。
すると、聞き慣れたレバーが回る音が聞こえる。
幻聴か? 俺の耳がおかしくなったのか?
「ガチャ様ーー!」
アスターシアにも聞こえたらしく、姿の見えないガチャに呼びかけている。
「アスターシアにも聞こえたのか?」
「はい! 聞こえました! 呼びかけに応えてくれてます! ガチャ様ーー! 出てきてください!」
声に反応を示したガチャが、目の前の壁から飛び出してきた。
「おわっ! どこから出てきてるんだよっ! でも、よかった、無事で」
俺は壁から飛び出してきたガチャを抱き抱えると、頬ずりする。
心配させやがって、ちゃんと俺と約束したろ。
ダンジョン内は、言うことをちゃんと聞くってさ。
ガチャの無事な姿を見て安堵した俺は、目から雫が零れだしそうになった。
「ヴェルデ様、こちらの壁、偽物です。隠蔽されてるんじゃなくて、壁の映像が投影されてるだけです」
声に釣られ視線を向けると、アスターシアの身体が半分だけ壁から出ていた。
触れると、壁の感触はなく、空を切る。
視覚を映像で誤魔化してるだけか。ダンジョンが作り出した仕掛けか?
でも、ダンジョンなら出入り口を隠蔽をして、隠し部屋にしそうだが。
ガチャを抱えて壁の向こう側に行くと、地面に映像を映し出している魔導具らしきものが落ちている。
魔導具……。魔物が魔導具を使うわけもないし、まさか、人がいるのか? もしかしてトマス!?
「トマス! いるのか? トマス、居るなら返事しろ!」
突き当りは小部屋になってるのか。
「トマスさんがいるんですか!?」
「ダンジョンが作り出した隠し部屋なら、魔導具なんて使わないだろ。人が居る証拠だ。ホーカムの街の探索者は俺たち以外にはトマスしかいない。ガチャ、トマスの匂いするから、俺の制止を振り切って駆け出したのか?」
抱えていたガチャが頭を振って頷く。
「だそうだ。アスターシア、ガチャを頼む」
俺はガチャをアスターシアに預けると、壁を映し出していた魔導具を拾い、腰の刀に手を添える。
「トマス、居たら返事しろ。ここのダンジョンはヤバい。一度外に出よう」
突き当りの小部屋にも聞こえるように声をかける。
生きててくれよ。頼むからウェンリーを泣かせるな。
慎重に近づき、小部屋の入口である扉に手を掛け、ゆっくりと開けた。
光球の照らす光が小部屋の中を少しずつ明るくしていく。
奥には壁を背にして、倒れ込む男の姿が見えた。
「トマス! 生きてるか! おい! 返事しろ!」
トマスは返事をせず、荒い息を吐くばかりだった。
中の安全を確認した俺は、荒い息をするトマスに駆け寄ると、診療スキルを発動させる。
―――――――――――――――
トマス 男性
状態:腕の怪我(噛み傷) 病原体由来の病気(鼠咬症) 発熱 四肢の関節痛
—―――――――――――――――
ラットに噛まれた傷から病気を発病してるのか、熱も出てるし、関節の痛みで動けなくなった感じに思える。
探索中に体調に異変を感じ、魔道具で幻影を映し出し、魔物の目を欺き、この小部屋の中で自身の特性『気配消し』で気配を消して休憩してたから、見つからずに済んだってところか。
「トマス、俺が担いでいく。ここから出るぞ!」
俺は肩に乗せてトマスを担ぎ上げ、小部屋を出る。
「アスターシア、今日はここで探索を打ち切る! トマスを連れて戻るぞ!」
「は、はい! 承知しました! トマスさん無事ですよね?」
「ああ、死んではいない。だが、ラットに噛まれて病気を発症してる。幸いポーションで対応できると思うから、外で野営する」
「承知しました!」
俺たちは今来た道を急いで戻り、ダンジョンから出ると、入り口を見張れる場所で野営の準備を始めた。
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