俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク

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第69話 野営

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「とりあえず野営の準備するから、トマスはここで休んでてくれ」


「お、おぅ……」


 肩に担いでいたトマスを地面に下ろすと、彼は自分でフラフラと歩きながら、崖にもたれかかって座り込んだ。


 脱出の途中で、水分を補給してもらったので、トマスの意識はかなり鮮明になっている。


「それと、これ飲めば身体もマシになる」


 座り込んだトマスへ、残り1本だったキュアポーションを投げて渡した。


「こいつ、高いポーションだろ? いいのか?」


「気にするな。あとで請求する」


「マジか!」


「嘘だ。とりあえず、飲んで休憩してくれ。聞きたいこともあるしな」


「情報代としてこのポーションはもらうぞ」


 ガラス瓶の蓋を外し、中身を飲み干したトマスは安堵したように目を閉じて眠り始めた。


 これでトマスの病気は治癒するはず。


 起きたら飯が食えるよう野営の準備を進めないとな。


 空間収納から野営に必要な道具を取り出し、地面に並べていく。


「ヴェルデ様、わたしは食事の支度をいたします。トマスさんが起きたら食べられそうなものもお作りしますね」


「ああ、頼む。俺はまずダンジョンの入口から魔物が出られないよう障害物を設置してくるよ。ガチャも手伝ってくれ」


 ガチャはレバーを回して応えると、俺の足元に寄ってきた。


 すでに日は暮れており、辺りは漆黒の闇に包まれている。


 早いところ入口を塞がないと、ゆっくり休む時間も取れない。


 何で塞ぐとすると……。


 光球の光が届く範囲で、入り口を塞げそうなものがないかを探した。


 岩を動かすのは厳しいし、強度的には不足するかもしれないが、どかしやすい木材を使った簡易的な柵の方がいいな。


「ガチャ、ちょっと作業するから入口を見ててくれ!」


 頷いたガチャが、レバーを回すと、ダンジョンの入口の前に陣取った。


「何か出てきそうなら、すぐに俺のところに呼びにきてくれよ」


『任せてください!』と言いたげなガチャが、レバーを勢いよく回す。


 ダンジョンの入口付近は入念に魔物退治をしておいたし、成長が速いとはいえ、まだ溢れてこないはずだ。


 ガチャに入口の見張りを頼むと、俺は柵に使うための木材を切り出すことにした。


 意外と太い木が多い。


 この太さだと打ち刀は刃こぼれするだろうし、刃の厚いチャンピオンソードでぶった斬った方がいいよな。


 空間収納からチャンピオンソードを取り出し構えると、力の限り振り抜いて、目標の木を切り倒す。


 よし、切れる。あと10本くらいあれば、柵を作るのには足りるよな。


 切り倒した木をそのままにして、別の木に狙いを付けると、再びチャンピオンソードを振り抜く。


 続けざまに木を切り倒し、必要な木材を確保すると、柵に使えるよう大きさを切り揃え、地面に刺せるよう短剣で先を尖らせた。


 よし、あとは入口の地面に刺して、縄で縛ればある程度の強度を持ってくれるはず。


 加工した木材を持って入口にいくと、中を見守ってくれていたガチャが足もとに寄ってきた。


 魔物は出てきてないようで、異常なしと伝えてくれているようだ。


「よくやった! すぐに柵を立てるからな。ちょっとだけ、待っててくれ」


 材料を地面に置くと、すぐさま作業に入る。


 先を尖らせた木を狭い間隔で地面にしっかりと突き刺し、縄で頑丈に縛り付ける。


 明日も出入りしないといけないから、端の部分は隙間を作りやすくしとくか。


 大きな魔物が一気に外に出れなければいいし、これくらいの隙間だったらゴブリンとかスライムくらいしか這い出てこないはず。


 破壊音がすれば、すぐに駆け付けられるしな。

 
「よし、完成」


 ガチャが出来上がった柵の前を歩き回り、様子を確認していく。


 満足の出来だったのか、俺の方へ振り返り頷き返してくれた。


 どうやら、オッケーみたいだ。


 これでとりあえず、封鎖はできた。


 残った材料は空間収納にしまっておこう。


 片付けを終えると、ガチャを抱え、食事の支度をしているアスターシアのもとに戻る。


「入口は塞げましたか?」


「ああ、塞げた。あれだけしとけば、溢れ出すことはないと思う。それに破壊されたら大きな音がするはずだしな」


「そうですか。ダンジョンの中の魔物も多少排除しましたし、周辺の村の方へ被害が出ないようにはできた感じですね」


「そうだ。俺たちがここで見張りつつ、中の魔物を退治していけば、探索者ギルドから熟練の探索者が送られてくるはず」


 ダンジョンの成長が速いか、討伐できるほどの探索者が集まるのが先かってところだが。


 そろそろ、村の人がリアリーさんに伝えてくれてるはず。


 俺は暗闇に閉ざされた空を見上げた。


「頑張りどころですね。でも、ヴェルデ様の腕前なら、きっと討伐できちゃいそうな気もしますよ」


 アスターシアが料理する手を止めて、ニコリと笑ってくれた。


 そんな実力が俺にあるんだろうか……。


 明らかに今までのダンジョンとは違う強さ。


 複雑なダンジョンだし、罠もあるし、魔物も強い。


 それに最初に攻略したダンジョンクラスのボスが現れれば、倒しきれるか分からない。


「できたらいいな。とりあえず、今は探索調査が先決だ」


「ですね。あ、そうだ! 探索中に言いそびれてしまってたのですが、ガチャ様が2枚ほど金色コインを出しておられました」


 手を布を拭いたアスターシアがポケットから金色コインを2枚差し出してきた。


「探索中に倒した魔物で貯まったやつか」


「はい、トマスさんのことで言いそびれてました」


 たしかに強い魔物ばっかだったから、経験値が貯まってもおかしくないな。


 2枚だけど、少しでも戦う力が向上するなら、使った方がいい。


「ありがたい。早速使わせてもらう。ガチャ、コイン使うぞー!」


 アスターシアの近くでご飯ができるのを待っていたガチャを呼ぶ。


 コインを見たガチャが喜んでレバーを回すと、俺の前に来てきちんと座った。
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