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拒絶
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それでも、どうしても諦められなかった。
思わず、千紘の肩を掴んで引き寄せる。
千紘の身体が小さく震えた。
「もう、やめて……」
両手で押し返す力は弱く、それが余計に胸を締めつけた。
そして次の瞬間、千紘の頬を涙が伝った。
「帰ってください。」
静かな声だった。
けれど、その響きは彼の心を真っ二つに裂くには十分だった。
蒼介は力なく手を離し、視線を落とした。
「……わかった。」
そう言うと、店の扉を開けて店を出た。
雨上がりの空が灰色に見えた。
車に乗り込み、キーを回す。
エンジンの音が夜を裂くように響いた、そのとき――
ドアを叩く音がした。
顔を上げると、千紘が息を切らして立っていた。
目は真っ赤に腫れていて、手には紙袋を抱えている。
窓を開けると、彼女は何も言わず、その紙袋を押し込むように渡した。
唇をかすかに噛みしめたまま、背を向けて店の中へ戻っていく。
暖簾が揺れ、再び静寂が戻る。
蒼介は紙袋を膝に置いた。
袋の底が少し湿って、手のひらに熱が伝わる。
開けてみると、タッパーが三つ並んでいた。
カレー味の唐揚げ。
蓮根のきんぴら。
肉じゃが。
全部、蒼介の好きなものだった。
家で千紘がよく作ってくれた、日下部家の味だ。
タッパーの蓋を開けると、カレーの香りがふわりと広がる。
少し甘くて、少し焦げた油の匂い。
蒼介は箸も持たず、ただその匂いを吸い込んだ。
胸の奥に、懐かしい痛みがひろがる。
それは、失った時間の匂いだ。
彼は唇を結び、タッパーをそっと閉じた。
車の外では、川の音だけが流れている。
――さよなら……か。
そう思いながら、蒼介はゆっくりとアクセルを踏んだ。
店の明かりが、バックミラーの中で小さく滲み、やがて闇に溶けていった。
思わず、千紘の肩を掴んで引き寄せる。
千紘の身体が小さく震えた。
「もう、やめて……」
両手で押し返す力は弱く、それが余計に胸を締めつけた。
そして次の瞬間、千紘の頬を涙が伝った。
「帰ってください。」
静かな声だった。
けれど、その響きは彼の心を真っ二つに裂くには十分だった。
蒼介は力なく手を離し、視線を落とした。
「……わかった。」
そう言うと、店の扉を開けて店を出た。
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車に乗り込み、キーを回す。
エンジンの音が夜を裂くように響いた、そのとき――
ドアを叩く音がした。
顔を上げると、千紘が息を切らして立っていた。
目は真っ赤に腫れていて、手には紙袋を抱えている。
窓を開けると、彼女は何も言わず、その紙袋を押し込むように渡した。
唇をかすかに噛みしめたまま、背を向けて店の中へ戻っていく。
暖簾が揺れ、再び静寂が戻る。
蒼介は紙袋を膝に置いた。
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タッパーの蓋を開けると、カレーの香りがふわりと広がる。
少し甘くて、少し焦げた油の匂い。
蒼介は箸も持たず、ただその匂いを吸い込んだ。
胸の奥に、懐かしい痛みがひろがる。
それは、失った時間の匂いだ。
彼は唇を結び、タッパーをそっと閉じた。
車の外では、川の音だけが流れている。
――さよなら……か。
そう思いながら、蒼介はゆっくりとアクセルを踏んだ。
店の明かりが、バックミラーの中で小さく滲み、やがて闇に溶けていった。
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