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#7 あの後のこと (田上 智の回想)
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アパートのドアを閉めたとたん、張りつめていた何かが、音を立てて崩れた。
ヒールを脱ぎ捨てると足が床に沈むような感覚に襲われ……ベッドに辿り着く前に、その場に座り込んでしまった。
「ふっ……うぅ……ぅ……」
涙と一緒に吐き出した息が空気の温度を下げる。
「……逃げてきちゃった」
独り言が、薄暗い部屋の空気に溶けて消えた。
それでも、胸の奥はざわざわと騒いで、静まる気配がなかった。
田上さんの顔が、ふいに浮かぶ。
落ち着いた声。視線がぶつかった時に緩む目元。さりげない優しさ。
——そして、何かを言いかけた時の、少しだけ切なそうな表情。
「だめだよ……」
小さく呟いて、両手で顔を覆った。
思い出したくないのに、田上さんの声が耳に残っている。
「花田さん、俺は」
あの続きを、聞きたかった。
聞きたかったのに——怖くて、逃げた。
"また傷つきたくない"
そう思った瞬間、胸の奥が冷たく凍りついていく。
隆との恋が壊れた日、この世の終わりみたいに泣いた。
たくさん泣いて、泣き疲れて、それでもいつまでも気持ちは晴れなくて。立ち直るのに、どれほどの時間がかかったか。どれだけの夜を、一人で抱えてきたか。
信じていたから、裏切られた時の痛みは深かった。
愛していたから、突き放された時の傷は癒えなかった。
「……馬鹿みたい」
無意識にそう呟いた。
「恋なんてしたって……消費期限が切れたらあっさり捨てられるんだから」
期待なんてしない。
これは恋じゃない。
あんなイケメンと二人きりでお酒を飲めば、誰だって胸が高鳴るだけだ。
きっと、私はただ酔っていただけ——。
そう言い聞かせても、涙が頬を伝った。
拭おうともせず、ただ暗闇の中で膝を抱えた。
もう一度誰かを好きになるのが、怖い。
もう一度誰かに期待するのが、怖い。
もう一度、あの痛みを味わうのが——怖い。
田上さんの優しさが、胸に刺さる。
優しくされればされるほど、失った時の痛みを想像してしまう。
「……ごめんなさい」
誰にともなく呟いた言葉は、静かな部屋に吸い込まれて消えた。
灯りをつける気力もなく床に座り込んだまま、暗闇の中で一人きりの安心感と……それ以上に深い、孤独が私を包み込んだ。
ヒールを脱ぎ捨てると足が床に沈むような感覚に襲われ……ベッドに辿り着く前に、その場に座り込んでしまった。
「ふっ……うぅ……ぅ……」
涙と一緒に吐き出した息が空気の温度を下げる。
「……逃げてきちゃった」
独り言が、薄暗い部屋の空気に溶けて消えた。
それでも、胸の奥はざわざわと騒いで、静まる気配がなかった。
田上さんの顔が、ふいに浮かぶ。
落ち着いた声。視線がぶつかった時に緩む目元。さりげない優しさ。
——そして、何かを言いかけた時の、少しだけ切なそうな表情。
「だめだよ……」
小さく呟いて、両手で顔を覆った。
思い出したくないのに、田上さんの声が耳に残っている。
「花田さん、俺は」
あの続きを、聞きたかった。
聞きたかったのに——怖くて、逃げた。
"また傷つきたくない"
そう思った瞬間、胸の奥が冷たく凍りついていく。
隆との恋が壊れた日、この世の終わりみたいに泣いた。
たくさん泣いて、泣き疲れて、それでもいつまでも気持ちは晴れなくて。立ち直るのに、どれほどの時間がかかったか。どれだけの夜を、一人で抱えてきたか。
信じていたから、裏切られた時の痛みは深かった。
愛していたから、突き放された時の傷は癒えなかった。
「……馬鹿みたい」
無意識にそう呟いた。
「恋なんてしたって……消費期限が切れたらあっさり捨てられるんだから」
期待なんてしない。
これは恋じゃない。
あんなイケメンと二人きりでお酒を飲めば、誰だって胸が高鳴るだけだ。
きっと、私はただ酔っていただけ——。
そう言い聞かせても、涙が頬を伝った。
拭おうともせず、ただ暗闇の中で膝を抱えた。
もう一度誰かを好きになるのが、怖い。
もう一度誰かに期待するのが、怖い。
もう一度、あの痛みを味わうのが——怖い。
田上さんの優しさが、胸に刺さる。
優しくされればされるほど、失った時の痛みを想像してしまう。
「……ごめんなさい」
誰にともなく呟いた言葉は、静かな部屋に吸い込まれて消えた。
灯りをつける気力もなく床に座り込んだまま、暗闇の中で一人きりの安心感と……それ以上に深い、孤独が私を包み込んだ。
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