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みつ子の訳【地獄の法廷】
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漆の底ぶかい闇に、飈々と吹き荒み、風さえ氷らせる凍えがある。
かの半襟に包まれた胸元、はげしさに、あおのけざまに斃れる自らを、衿かき合わせ、怪しく周囲を見回す。
山あつく畳み、嵐気ひややかに谷ふかく、いよいよ堕ち込んで、いくつめぐった葛折り、闇穴道という道、地獄の底に通る。
ほのぐらい道を、時によろぼい、時にやとびをなして、ちからなき木の葉の抜けるともなく、重巒の峠、のぼりたれば、岸樹の間、森羅殿の額のかかった、その上に顔を出す。
本堂へ通じる塗柱、黒びかる廊下、哈々と笑ういく鬼の牛頭馬頭の、ほどなくもっけ面の見つかったかと思えば、獄卒たちの取り囲みに遭い、ずだ袋を抛られるがごとく、果てしないきざはしの前に、ひきすえられて、我が血を確かめる。
「あれ、そんなにしなくても、エ、ひどいじゃありませんか」
泣音もなきに、くたくたと顔をあげて、そこに見たものは、はるかてっぺん、異形の屏風巌が置かれているかと思えば、そうではない、まっ黒な袍に、金の冠を戴いて、厳しい目を剥き出しに、そこかしこをば大睨み、これぞ、兼てよりうわさに聞く、かの閻魔大王にある。
「こら。その方、貴様はどんな悪事をはたらいた」
閻魔大王のらいの如きつぶやきは、ごろごろ響くにまかせ、罪人の心をつかまんとする。
「こら。答えろ」
「は、はい、わたくしでございますか。わたくしは、何も悪事をはたらきません」
これを聞いて、赤ら顔の大王、鼻の鉄環を鳴らして笑う獄卒らと等しく、どっと笑う。
「その方ここをどこだと思うの? 正直に答えればよし、さもなければ、今すぐにでも、見るも恐ろしい地獄の呵責にあわせるぞ」
「お待ち下さいまし。ほんとうに、ほんとうに、悪事なぞ身に覚えがないのでございます。もしもここが、ひょっとして屏風絵などにあるような、紅蓮大紅蓮の地獄の大門だと致しますれば、これはまちがい、とんだ大まちがいに相違ありませぬ」
口のなかで牙をなめずり、ほどなく、鬼どもの方へ向いて、荒々しく命令を下せば、赤鬼は一斉にかしこまり、奥より大慌てに、大磐石ほどの皮の厚い蔵書を、五鬼がかりで運んで来る。
「どれ。ついさっき、冥官たちが次の書を届けたから、これを読めば貴様の罪のあらましも分かる。ふむふむ。なるほどね」
顔中の髭を手すさみ、
「こらその方、なにが悪事をはたらきません、だ。俺さまを出し抜いて、嘘をつくなど、見あげた根性だ。おい金皷と金皷。こやつに俺さまの恐ろしさを教えてやれ」
吹き来り、吹さる風は、余部の海の大浪のごとく、たえまなく轟き、はげしきは、御殿の瑩柱をひちひちと鳴揺がす。
金皷と金皷、彼らの鋼叉により、髪の毛を絡まれた女、卍に火炎をふき巻かす焦熱地獄へ放られて、艶に胖に、炎のかいさぐりに遭い、風と煙と、燄との混じりに、あらそい、勢い、じゅーじゅーと生焼に焼かれる。
くるしみは、ここに極まり、蜘蛛の死に際のごとくに手足を縮め、白眼をむき出し、けれどもまた、もとのきざはしに、投げ捨てられる。
「どうだ。思い知ったか。もういちど、焦熱に焼かれたくなければ、正直に罪を認め、本式に地獄の呵責をさずかるがいい」
じゃんじゃんと鉄の笏を打ち鳴し、満足気に顎髭をなでる。
これを頂に、熱灰の中に一体のしかばね、なかば焦げ爛れる。
「こら。答えぬか」
「私は………私は………自らの怨みによって、人を呪い殺してございます」
むなしき燼余、声をおさめつつ、いよいよ、肝に徹えたと見える。
「よろしい。はじめから、そう白状さえすれば、あのように無駄にくるしまずに済んだものを。のう金皷と金皷」
金皷と金皷は、ひざまずいて、顔を上げない。
「ではその方、自らの過ちを罪として認め、この手証の八寸角のうちに、朱墨にて署名してから、熊鷹の鳥かごのもとを、くぐって、絶壁にそって歩き、最初に会った獄卒より、三本の藤蔓をもらえ。
今はいくさが絶えん。あとが閊えるから、ぼんやりして呉れるなよ」
鬼どもの、燃えがらを押し出さんと躙り寄って、のめりしままに起きもせず、身をば竦めてうめきながら、
「閻魔さま。どうかお怒りにならずに聞いて下さいまし。私は、確かに私怨のために人を呪い殺してございます。
けれどもそれが、過ちだとは到底思えないのでございます。なぜならば、私は、かの男によって最初に悪事をはたらかれているのでございます。私はただ、その仇を討ったに過ぎないのでございましょう? ですから閻魔さま、あなたがおっしゃる通り、手証に署名などできないのでございます」
これを聞いた閻魔様、顔中の鬚という鬚を剱と逆立て、百雷一所に堕ちたように叫んで、
「なんだと貴様! 悪事をはたらいた罪人が、その過ちを認めぬとは何事か! 人間を殺めておいて、そのぶんには涼しい目をしおって、おおおお、俺様も、数々の悪党を裁いては見たが、貴様のような不心得者は見たことがない!」
激しい怒りの収まらない、その地響きは地獄をも揺るがし、最果ての金牛宮にまで届いたという。
あわてた鬼のかいな、電光のごとく躍り、黒髪を諸づかみに、無図と取って、
「こら女妖。貴様の五体が千離千離にならぬうちに、ちゃんと手証に署名するのだ! どうか、するか! せぬか!」
鬼は逸れど、焦れども、寸分のゆるぎもえず、せめてはと、泣音を立てさせんとすれば、力はいまも絶々に、血声をあげ、身を刳って、
「私が、悪事を受けなければ、私は、仇なぞ取りは致しませぬ。事の始まりにこそ、大罪はあるのではございませぬか」
大王は、太短い眉を打ちひそめて、
「ほう、ではその方、もしも貴様の申す通りだとすると、悪事をはたらかれた者は、みな、人を殺して良いことになるが、貴様はそれでも構わぬと申すか?」
「構いませぬ」
「金皷、金皷、この極悪の罪人に鋼叉を呉れてやれ」
風は猶もよこしまに吹募り、いっそう凝れる寒、生気をば吸い尽した後、さらぬだに、陰森たる夜色は、ますます暗く、ますますすさまじき大叫喚を覗かせる。
金皷と金皷、その二本の鋼叉に狩られし女、くらやみに瑩めく剣山刀樹へうちひかれ、串刺にされ、斃れる間もないまま、手矛にて、かわるがわる、血の叫びを上げる。
気を失う事さえ許されず、まして、力尽きて死ぬ事も叶わず、日々夜々、百の歳月、蒸羊羹のごとく刻々に、劈かれる。
百年の永きを経て、森羅殿のきざはし、斃れたれば、汚穢く黒ぐろと、引き韜まれて、まさしく浮木芥の類とも見えざるもの。
「ほう。これはまた、命を縮めて帰ったな。
貴様が百年も叶わぬ依怙地を張って、ちりっぱ一本もらえぬなか、四兆八億もの罪人が、みずからの罪を大筋に認め、この八寸角のうちへ、柳条をなすほど、署名して行った。
やい貴様、とうとう刃の苦楚に、土性骨をうち砕かれて、己の下らんジタバタを、刪正して参ったか」
忍びて、自らを守りつつ、便無げに佇むこと少時、泣音のほとばしらんとするを、声粛に、
「苦しくて………苦しくて………考えるいとまもございません。どうか………どうか楽にして下さい」
いみじくも爲たりと、鬚面のふと目鞘が走って、大矢立の筆を抽き、その三尺のものを額づく先に放った。
「それで良いのだ。さあ、手証に署名をするが良い」
かの半襟に包まれた胸元、はげしさに、あおのけざまに斃れる自らを、衿かき合わせ、怪しく周囲を見回す。
山あつく畳み、嵐気ひややかに谷ふかく、いよいよ堕ち込んで、いくつめぐった葛折り、闇穴道という道、地獄の底に通る。
ほのぐらい道を、時によろぼい、時にやとびをなして、ちからなき木の葉の抜けるともなく、重巒の峠、のぼりたれば、岸樹の間、森羅殿の額のかかった、その上に顔を出す。
本堂へ通じる塗柱、黒びかる廊下、哈々と笑ういく鬼の牛頭馬頭の、ほどなくもっけ面の見つかったかと思えば、獄卒たちの取り囲みに遭い、ずだ袋を抛られるがごとく、果てしないきざはしの前に、ひきすえられて、我が血を確かめる。
「あれ、そんなにしなくても、エ、ひどいじゃありませんか」
泣音もなきに、くたくたと顔をあげて、そこに見たものは、はるかてっぺん、異形の屏風巌が置かれているかと思えば、そうではない、まっ黒な袍に、金の冠を戴いて、厳しい目を剥き出しに、そこかしこをば大睨み、これぞ、兼てよりうわさに聞く、かの閻魔大王にある。
「こら。その方、貴様はどんな悪事をはたらいた」
閻魔大王のらいの如きつぶやきは、ごろごろ響くにまかせ、罪人の心をつかまんとする。
「こら。答えろ」
「は、はい、わたくしでございますか。わたくしは、何も悪事をはたらきません」
これを聞いて、赤ら顔の大王、鼻の鉄環を鳴らして笑う獄卒らと等しく、どっと笑う。
「その方ここをどこだと思うの? 正直に答えればよし、さもなければ、今すぐにでも、見るも恐ろしい地獄の呵責にあわせるぞ」
「お待ち下さいまし。ほんとうに、ほんとうに、悪事なぞ身に覚えがないのでございます。もしもここが、ひょっとして屏風絵などにあるような、紅蓮大紅蓮の地獄の大門だと致しますれば、これはまちがい、とんだ大まちがいに相違ありませぬ」
口のなかで牙をなめずり、ほどなく、鬼どもの方へ向いて、荒々しく命令を下せば、赤鬼は一斉にかしこまり、奥より大慌てに、大磐石ほどの皮の厚い蔵書を、五鬼がかりで運んで来る。
「どれ。ついさっき、冥官たちが次の書を届けたから、これを読めば貴様の罪のあらましも分かる。ふむふむ。なるほどね」
顔中の髭を手すさみ、
「こらその方、なにが悪事をはたらきません、だ。俺さまを出し抜いて、嘘をつくなど、見あげた根性だ。おい金皷と金皷。こやつに俺さまの恐ろしさを教えてやれ」
吹き来り、吹さる風は、余部の海の大浪のごとく、たえまなく轟き、はげしきは、御殿の瑩柱をひちひちと鳴揺がす。
金皷と金皷、彼らの鋼叉により、髪の毛を絡まれた女、卍に火炎をふき巻かす焦熱地獄へ放られて、艶に胖に、炎のかいさぐりに遭い、風と煙と、燄との混じりに、あらそい、勢い、じゅーじゅーと生焼に焼かれる。
くるしみは、ここに極まり、蜘蛛の死に際のごとくに手足を縮め、白眼をむき出し、けれどもまた、もとのきざはしに、投げ捨てられる。
「どうだ。思い知ったか。もういちど、焦熱に焼かれたくなければ、正直に罪を認め、本式に地獄の呵責をさずかるがいい」
じゃんじゃんと鉄の笏を打ち鳴し、満足気に顎髭をなでる。
これを頂に、熱灰の中に一体のしかばね、なかば焦げ爛れる。
「こら。答えぬか」
「私は………私は………自らの怨みによって、人を呪い殺してございます」
むなしき燼余、声をおさめつつ、いよいよ、肝に徹えたと見える。
「よろしい。はじめから、そう白状さえすれば、あのように無駄にくるしまずに済んだものを。のう金皷と金皷」
金皷と金皷は、ひざまずいて、顔を上げない。
「ではその方、自らの過ちを罪として認め、この手証の八寸角のうちに、朱墨にて署名してから、熊鷹の鳥かごのもとを、くぐって、絶壁にそって歩き、最初に会った獄卒より、三本の藤蔓をもらえ。
今はいくさが絶えん。あとが閊えるから、ぼんやりして呉れるなよ」
鬼どもの、燃えがらを押し出さんと躙り寄って、のめりしままに起きもせず、身をば竦めてうめきながら、
「閻魔さま。どうかお怒りにならずに聞いて下さいまし。私は、確かに私怨のために人を呪い殺してございます。
けれどもそれが、過ちだとは到底思えないのでございます。なぜならば、私は、かの男によって最初に悪事をはたらかれているのでございます。私はただ、その仇を討ったに過ぎないのでございましょう? ですから閻魔さま、あなたがおっしゃる通り、手証に署名などできないのでございます」
これを聞いた閻魔様、顔中の鬚という鬚を剱と逆立て、百雷一所に堕ちたように叫んで、
「なんだと貴様! 悪事をはたらいた罪人が、その過ちを認めぬとは何事か! 人間を殺めておいて、そのぶんには涼しい目をしおって、おおおお、俺様も、数々の悪党を裁いては見たが、貴様のような不心得者は見たことがない!」
激しい怒りの収まらない、その地響きは地獄をも揺るがし、最果ての金牛宮にまで届いたという。
あわてた鬼のかいな、電光のごとく躍り、黒髪を諸づかみに、無図と取って、
「こら女妖。貴様の五体が千離千離にならぬうちに、ちゃんと手証に署名するのだ! どうか、するか! せぬか!」
鬼は逸れど、焦れども、寸分のゆるぎもえず、せめてはと、泣音を立てさせんとすれば、力はいまも絶々に、血声をあげ、身を刳って、
「私が、悪事を受けなければ、私は、仇なぞ取りは致しませぬ。事の始まりにこそ、大罪はあるのではございませぬか」
大王は、太短い眉を打ちひそめて、
「ほう、ではその方、もしも貴様の申す通りだとすると、悪事をはたらかれた者は、みな、人を殺して良いことになるが、貴様はそれでも構わぬと申すか?」
「構いませぬ」
「金皷、金皷、この極悪の罪人に鋼叉を呉れてやれ」
風は猶もよこしまに吹募り、いっそう凝れる寒、生気をば吸い尽した後、さらぬだに、陰森たる夜色は、ますます暗く、ますますすさまじき大叫喚を覗かせる。
金皷と金皷、その二本の鋼叉に狩られし女、くらやみに瑩めく剣山刀樹へうちひかれ、串刺にされ、斃れる間もないまま、手矛にて、かわるがわる、血の叫びを上げる。
気を失う事さえ許されず、まして、力尽きて死ぬ事も叶わず、日々夜々、百の歳月、蒸羊羹のごとく刻々に、劈かれる。
百年の永きを経て、森羅殿のきざはし、斃れたれば、汚穢く黒ぐろと、引き韜まれて、まさしく浮木芥の類とも見えざるもの。
「ほう。これはまた、命を縮めて帰ったな。
貴様が百年も叶わぬ依怙地を張って、ちりっぱ一本もらえぬなか、四兆八億もの罪人が、みずからの罪を大筋に認め、この八寸角のうちへ、柳条をなすほど、署名して行った。
やい貴様、とうとう刃の苦楚に、土性骨をうち砕かれて、己の下らんジタバタを、刪正して参ったか」
忍びて、自らを守りつつ、便無げに佇むこと少時、泣音のほとばしらんとするを、声粛に、
「苦しくて………苦しくて………考えるいとまもございません。どうか………どうか楽にして下さい」
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