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第七章【氷山帝国】
7-19 旅路は続く
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―――氷山帝国B区・馬車乗り場。
今日も朝から雪が降りしきり、厚着をしているというのに寒いと感じるほど気温は低かった。
魔剣士らは氷山帝国の馬車に乗車すべく、朝早くから乗り場にて待機。セージ、警備隊長の二人は彼らを見送る様、三人へと着いて来ていたようだった。
セージ「もう行っちゃうのね……」
猛竜騎士「ここがセントラルの手中であったという以上、余り長居も出来ないだろう」
セージ「……そっか。ごめんなさい」
猛竜騎士「なぜ謝る?」
セージ「ここは特級区とか安全とか言って、本当は何よりも危険な場所だったってこと……」
猛竜騎士「お前も知らなかったことだ。それに結果的には温泉に浸かったりして羽を伸ばせたことは事実なんだ…謝ることはないさ」
セージ「そういってもらえると…本当に嬉しい」
猛竜騎士「いや何、気にしないでくれ」
セージ「うん。それじゃ…有難う猛竜騎士」
猛竜騎士「む…そうだな……」
セージは右手を差出し、猛竜騎士もそれに応じて握手を交わした。
魔剣士「……おーい、オッサン」
猛竜騎士「なんだ?」
魔剣士「俺らは次はどこへ行くんだ?」
猛竜騎士「あ~…そうだったな」
魔剣士「今回は魔法とかの勉学ついでにバウンティハンターから逃げる意味もあったから…氷山帝国に来たんだろ?」
猛竜騎士「そうだな」
魔剣士「んじゃ、次の目的地は?」
猛竜騎士「んーむ…その事なんだがな……」
魔剣士「ん…」
猛竜騎士の眼つきが変わる。
猛竜騎士「闇魔法の会得方法は既にセントラルへと出発してしまったのは知っているな」
魔剣士「あ、あぁ……」
猛竜騎士「少なくとも、俺らが関わってしまったのは事実だと分かるな?」
魔剣士「……当たり前だ」
セージ「待って猛竜騎士、それは私が…!」
猛竜騎士「もうなってしまったことに、何も言う気はない」
セージ「…」
猛竜騎士「問題はそこからだ。どうにかセントラルを止められないかと考えたが…今さら難しいことだろう」
魔剣士「王をぶちのめす他はねぇってことか」
猛竜騎士「お前が城へ忍び込んでから、王国の兵士らも前の面子ではない。そう簡単に俺らだけでどうにかできるようなことではないはずだ」
魔剣士「じゃあどうすんだよ…」
猛竜騎士「……だからこそ、そこでセージの考えに繋がるはずなんだ」
セージ「私?」
猛竜騎士「君も思いついていたんじゃないか?」
セージ「……え?」
猛竜騎士は長年の勘から、セージの考えも読んでいたのだ。
恐らく、自分たちの別れの際に"それ"をお願いするのではないかと。
猛竜騎士「君は、東方大地に対して考えを持っているんじゃないかと思ったんだが…違うか?」
セージ「ッ!!」
魔剣士「と、東方大地!?」
白姫「あの荒廃しているっていう大地ですか?」
猛竜騎士「……そうだ」
魔剣士「どうしてそんな場所に行くんだよ?」
猛竜騎士は一呼吸置いたあと、セージを見つめた。
猛竜騎士「セージ、君はそういうお使いを俺らに頼もうとしていたんじゃないか?」
セージは"うっ"とした表情をして、口を開く。
セージ「……何でもお見通しってわけね」
魔剣士「な、なぬ?」
猛竜騎士「やはりな。俺が君の立場なら、動ける人に頼むしかない…つまり、俺らに頼むハズだと思っていたよ」
セージ「流石ね…」
魔剣士「ど、どういうことだ?」
猛竜騎士「落ち着け魔剣士。セージに改めて話を聞くんだ」
魔剣士「お、おう……?」
セージ「……よく聞いてね。私は、東方大地にある"砂国(サコク)"へ氷山帝国との締結状を届けてほしいと思っていたの」
セージ「今後、セントラルが暴れた時に手を組んでそれを抑える様に。あそこなら、セントラルには堕ちていないはずだから……」
魔剣士「はい?」
白姫「東方大地の砂国ですか…?」
猛竜騎士「お前たちはあまり知らない国ではあるだろうが……」
―――砂国。
東方大地に存在する"小さい国"だったが、冒険者たちにおいて話題には事欠かない国家でもあった。
その理由は、実に単純である。
世界においても非常に珍しい、戦闘国家とも呼べる国だったのだから。
猛竜騎士「……戦闘国家とも呼ばれる、特殊な国なんだ」
魔剣士「んだそりゃ?」
猛竜騎士「治安の悪い東方大地において、自らを守るため、民の全てが戦いに身を投じているに等しい国だ」
白姫「ぜ、全員がですか!?」
猛竜騎士「盗賊団などの賊が多い大地において、あそこほど戦闘民族の国はない」
魔剣士「あぁ…なるほど……」
魔剣士「だからセントラルが戦争をしかけたら、一緒に戦ってくれっつーお願いをするっつーことか……?」
猛竜騎士「珍しく頭が回ったな」
魔剣士「やかましい」
猛竜騎士「だがな、そうも単純に事が進めばいいのだが」
魔剣士「どういうことだ?」
……ここで、セージが口を開く。
セージ「その理由も単純なのよ」
魔剣士「お?」
セージ「東方大地はどんな場所?」
魔剣士「そりゃ…荒れた土地だろ?」
セージ「そうなのよ。だから全員が生きることに必死で、生きるために奪い合い…戦い合う。本当に治安の悪さが他の比じゃないのよ……」
猛竜騎士「それに、水魔力の浮遊も皆無だからな。魔剣士の無造作魔力だろうが、水魔力がなけりゃ水も別途必要になる」
セージ「準備が整っている冒険者は、ただの餌に等しいってわけ……」
魔剣士「お、おいおい……」
白姫「そんな場所なんですか……」
セージ「うん…そんな場所なんだけどね……」
セージ「どんなに危険なのかは分かってるけど…この状況で頼めるのは貴方たちしかいなくて……!」
魔剣士「…」
白姫「…」
猛竜騎士「……ッ」
セージからの依頼には快諾もしてやりたかったのだが、"東方大地"という危険な土地な以上、考える必要があった。
西方大地は"大いなる恵みの大地"。
北方大地は"自然が猛威を振いし大地"。
――…だが。
東方大地は"自然が恐怖する大地"であり、荒廃された土地が広がるばかりの死の大地であった。
セージの説明通り、「生きるために争うことが生きる術」の大地だったのだ。
猛竜騎士(砕けた山々もあれば、砂漠も多い。谷底、自然の罠、そしてそこに住む脅威たる魔族)
猛竜騎士(痩せ干せた土地に住む人間たちは、当然の如く奪い合いが基本。戦争だ……)
猛竜騎士(砂国は唯一の"オアシス"に出来た国で戦闘民族として統治はされている…が、そこまで行くのがこれまでの旅の比ではない……)
グラウンド・ロックと呼ばれる岩山に、アイアンと呼ばれる底の見えぬ谷。砂国は更にその先、その険しい道のりを抜けた先に存在している。しかも、どの場所においても追剥等の盗賊類、あらゆる暴虐者が潜んでおり、魔物も命を懸けて互いを喰い合う凶暴な存在ばかり。これがどれほどの危険区かはよく分かるだろう。
猛竜騎士(……しかし)
今後、世界をセントラルに恐怖政治にされる前に動けることは先手を打たなければならない。彼女の言う"締結条約"とは、お互いの利害が一致した時に協力して戦うということであろう。
猛竜騎士(世界平和の為か、己の為か。この旅の決断者は俺だが、パーティとしても……)
ふと魔剣士と白姫に振り返る。
猛竜騎士「魔剣士、白姫!」
魔剣士「んだよ」
白姫「はいっ!」
猛竜騎士「お前ら、世界平和と自分の平和どっちが好きだ」
魔剣士「雑な質問だな!?」
猛竜騎士「まぁ、俺がこう聞いたところで…お前らはどうせ答えは決まってるんだろ?」
魔剣士「フン」
白姫「……そんな質問されたら、答えは一つしかないです!」
……
…
猛竜騎士「世界平和の為、だな」
白姫「世界平和の為の活動です!」
魔剣士「自分の平和」
…
……
猛竜騎士「……って、オイ!?」
魔剣士「…冗談よ?」
猛竜騎士「ここは全員で意気込む場面なんだが」
魔剣士「ハッハッハ、気にするな。俺だって本心は世界の平和の為のほうが良いって思ってるよ」
猛竜騎士「本当かぁ?」
魔剣士「……それはセントラルに対しての意味合いがあるんだろ。だったら尚更だ」
白姫「うん、私も同じ気持ちだから…!」
白姫は魔剣士の言葉に大きく頷いた。彼女の"父親を敵とする"ことに対し、もはや決断が鈍ることはない。
猛竜騎士「…そうだな。分かった、改めて俺らからも"その依頼をやらせてほしい"と思う。いいか、セージ」
セージ「有難う…。本当に助かる……」
猛竜騎士「協力はするさ。ここで逃げていたら、俺がこの二人にドヤされちまうからな」
セージ「本当に強い子たちなのね」
猛竜騎士「自慢の弟子だ」
セージ「闇魔法の会得者が弟子って、時代が時代なら歴史に名を刻んでいたかもね」
猛竜騎士「ハハハッ!」
セージ「フフッ…」
魔剣士「…」
魔剣士「……おっ」
雑談に笑い合っているうち、向こう側から例の"耐性馬"がドウドウと足音を鳴らしながら此方へ走って来るのが見えた。
セージ「あ、もうお別れなのね……。それじゃこれが締結の懇願状よ……」
懐から紙を取り出すと、それを猛竜騎士へと手渡した。
猛竜騎士「うむ、確かに受け取った」
セージ「……そうそう、その手紙にはサービスが付いているんだからね?」
猛竜騎士「何だ?」
セージ「少し温かいのは、私の生胸でずーっとね……」
猛竜騎士「い、いらぬ世話だ!」
確かに少し生温かいとは思っていたが…。理由を知ると、猛竜騎士は慌ててそれを内側のポケットへと仕舞いこんだ。
セージ「もー、いけず……」
猛竜騎士「ほら、魔剣士も白姫も行くぞ!準備をしろよ!」
魔剣士「出来てるっつーの」
白姫「お馬さんが来ればいつでも!」
猛竜騎士「よし」
そして、いよいよ馬車は三人の前に停車した。
セージ「……また、いつか」
猛竜騎士「もちろんだ。またな」
セージ「待ってるからね?私」
猛竜騎士「う、うむ?」
セージ「その時まで、次のキスは我慢してあげるから」
猛竜騎士「別にキスをしなくてもな……」
セージ「……鈍っ。断るなら断った方が楽なんだけど」
猛竜騎士「何をだ?」
セージ「…」
セージ「…ッ!!」
セージ「……そ、そんなんだから前の好きな娘さんも逃がしたのよっ!!」
セージ「もう!いいから早く行きなさい!さっさと渡して、いつか戻ってきたら答えを教えてあげるからッ!!」
猛竜騎士「わ、分かった分かった!?」
白姫「あはは……」
魔剣士「オッサンは放っといて俺らだけで乗ろうぜー白姫ー」
白姫「えぇっ!?」
猛竜騎士「ま、待たないかお前らっ!!」
魔剣士「はいはーい、出発だ出発!」
白姫「魔剣士ったら~…」
猛竜騎士「おいおい……」
魔剣士「出発~ッ!!」
……………
………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――北方大地「氷山帝国」。
魔法道具の技術「錬金術」を発展させ、魔法連合本部もあるその国家は、裏でセントラルと手を組み世界を恐怖にせんと計画していたが、魔剣士らは連合の幹部である"セージ"と共にそれを打破することに成功する。
しかし、闇魔法の"簡易な生み出す方法"は既にセントラルと出発してしまった。
それを危惧した新氷山帝国の指導者となったセージは、猛竜騎士らに"東方大地"にある砂国へ、緊急事態に陥った時に共に戦う為の締結状を渡すように依頼する。
勿論、三人はそれを快諾し、東方大地の港"イエロー・ノースポート"へと向かう船へと乗り込み、北方大地をあとにしたのだった―――…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【 次回 八章:東方大地編 予告】
………………………………………………
魔剣士「何?」
テイル「フンッ…特別だから!私の従者になることを許してあげる!」
魔剣士「ちょっと何の話」
テイル「では、誓いの接吻を~……」
魔剣士「おまちょっと待っ……!」
………………………………………………
白姫「…知らない!」
魔剣士「だから違うって!」
白姫「うー…!」
魔剣士「誤解だって!突然言われて、突然…その、キスを……」
白姫「私も!」
魔剣士「はいっ!?」
………………………………………………
魔剣士「国が…滅ぼされた……?」
猛竜騎士「バカな…!そんなバカなッ……!!」
ゴルド「ハハッ…!ハハハハッ!!」
………………………………………………
猛竜騎士「…アサシン盗賊団か…!早く追うぞ!」
魔剣士「……んだよ、二人の姫様を取り戻すってどこのファンタジーだよ!」
………………………………………………
…………
……
…
次回八章「東方大地 編」は近日公開予定です。よろしくお願いいたします。
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