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第八章【東方大地】
8-1 身を持って
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【章前述】
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―――北方大地「氷山帝国」。
魔法道具の技術「錬金術」を発展させ、魔法連合本部もあるその国家は、裏でセントラルと手を組み世界を恐怖にせんと計画していたが、魔剣士らは連合の幹部である"セージ"と共にそれを打破することに成功する。
しかし、闇魔法の"簡易な生み出す方法"は既にセントラルと出発してしまった。
それを危惧した新氷山帝国の指導者となったセージは、猛竜騎士らに"東方大地"にある砂国へ、緊急事態に陥った時に共に戦う為の締結状を渡すように依頼する。
勿論、三人はそれを快諾し、東方大地の港"イエロー・ノースポート"へと向かう船へと乗り込み、北方大地をあとにしたのだった―――…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――そして、約4日後。
燃料補給を兼ねて船は進み、その道中も大きな問題に巻き込まれることもなく魔剣士一行は"東方大地イエロー・ノースポート"へと到着していた。
魔剣士「おぉ…ここが…東方大地か……?」
白姫「ついに、第四の大地まで来ちゃったんだね…!」
猛竜騎士「まさか、いきなりココまで来ることになるとは思ってもみなかったがな……」
"東方大地は荒廃した大地"と言われるだけあって、港も従来と比べるとだいぶくたびれた印象を受ける。
降船する人は少なく、港の建物や船はサビつき廃れ、その土地に住んでいると思わしき住民たちは顔を長い布のマスクで隠して他人を寄せ付けないようなオーラを放っていた。
魔剣士「……なんか全てが腐ってるな」
猛竜騎士「お前な、そう思っても口にするんじゃない」
魔剣士「だって陰気くさくねぇか?」
猛竜騎士「土地柄がそういうものなんだ。仕方がないだろう」
魔剣士「と、土地柄って……」
地面は整備されていたが、赤い土がそこら中に散らばり"じゃりじゃり"と音を立てる。
また、遠くには同じ色をした山々が見えていたが、それが緑など存在しない、生命という名が一切ないことが良く分かった。
魔剣士「……こんな不便で汚ぇ場所に人が住んでいるってのが信じられねぇよ」
猛竜騎士「…」
魔剣士「あ、いえ冗談ですよ!?」
猛竜騎士「まぁいい…。それよりさっさと行くぞ」
魔剣士「どこにだ?」
猛竜騎士「旅の出発には準備が必要になるだろうが」
魔剣士「あぁ、準備ね……」
この荒れた大地を抜けるには、相当な準備を必要とする。
このイエロー・ノースポートは見た目が寂しくとも、船が行き来することから東方大地の中では他国家との交流は多いほうであり、栄えている部類に入っていた。
もちろん過去に猛竜騎士はこの土地に訪れていたこともあって、その港で一番準備が整えられる物販店を知っていたわけで、猛竜騎士の案内で歩いて5分程度…三人は港で最も巨大な市場も兼ね備えた店舗へと足を運んだ。
魔剣士「ここが一番の店なの……か?」
猛竜騎士「見た目は店らしくはないがな」
白姫「そうですね、どっちかっていうと補給村で見た市場っぽいですね…?」
鉄骨と木造が丸出しの崩れそうな屋根の下、商品の入った木箱の前で誠意のない顔をした商人たちが地べたへと直接座り込んで接客をしていた。
猛竜騎士「座ってるのは全員が従業員で、港にある全ての店に対しての卸売の役目もしているからな…確かに市場に近いものはあるな」
魔剣士「ははぁ…」
猛竜騎士「一番活気づいている場所ではあるんだが……」
魔剣士「……そう言われてもな」
活気づいたと言われても、やせ細って死にそうな顔をしていたり、マスクやターバンで身を隠しながら睨みを利かせていたり。
猛竜騎士「……ま、とりあえず買いそろえるぞ」
魔剣士「へいへい」
白姫「はいっ」
三人は市場へ足を踏み入れると、時計回りに商品に目を通した。
魔剣士(……売ってるモンも寂しいっつーかなんつーか)
猛竜騎士(俺が訪れた時よりも数段質が悪くなっているな……)
白姫(こういうものも売れるのかなぁ?)
腐りかけた果物や、錆びたナイフが一般的な価格で売られていることには驚かされる。また、それに伴って新品の品々は倍近い値段が付いていたが、やせ細ったこの土地は輸入品の全てが高級な扱いに違いない。
猛竜騎士「…」
魔剣士「…」
白姫「…」
それから三人は暫く見て回りつつ、値段は高かったが買わないわけにはいかない道具・食料品を無愛想な商人らに金を払い、何とか最低限の装備は買い揃えることが出来たのだった。
そして市場をあとにし、人気のない海沿いの港に足を運ぶと重苦しい空気から解放された魔剣士は大きく「ふぅ!」とため息をついた。
魔剣士「……クッソ重い空気だったな!?何もねぇし!」
白姫「なんか凄い市場だったね……」
猛竜騎士「雰囲気は昔のままだが、商品の質も悪さはその非じゃない。この大地もどんどん人が住めない土地になっているのかもしれんな」
魔剣士「元々住めないような土地だと思うんだが…って、オッサンはやっぱりココへ来たことあるんだな」
猛竜騎士「さすがに砂国は行った事がないが。それと正直な話…相当な食料や道具を買ったが、準備が整ってるとは思えん」
白姫「えっ!結構な量を買った気がしますが……」
猛竜騎士の購入した内容は確認している限り、小型の保存食を約2週間近く、日持ちする清水を数キロ、この大地では貴重な水源(水魔法)をどこでも確保するための水魔石、大地に棲む魔物に対する毒の血清など数えたらキリがないほど、使えると思ったモノは衝動買いのようにしていたように見えた。
魔剣士「衝動買いってレベルじゃない気もすっけどな」
猛竜騎士「まだ足りないくらいだ。途中で村があったはずだが、そこも残っているかどうか……」
白姫「そ、そんなに酷い土地なんですか…?」
猛竜騎士「砂嵐による砂漠化、水源がないために緑は宿らず、弱肉強食が当然の大地だ。治安もお察しといったところか」
白姫「その村も砂漠化や盗賊とかに襲われちゃったり…無事なのか分からないってことですね……」
猛竜騎士「そういうことだ」
魔剣士「…」
いざ、自分たちが向かおうとしている場所がどれくらい厳しく険しい道のりなのか改めて理解する。しかし、この世界の未来のためにその歩みを止めるわけにはいかない。セージに渡された"締結状"は世界を救うため、必ず届けなければならないのだから。
魔剣士「……まぁ、どのみち出発するんだろ」
猛竜騎士「もちろんだ」
白姫「頑張ります。絶対にこの締結状を届けます!」
猛竜騎士「その意気だ。お前たちもこの大地を越える力は持っていると思っているからな」
三人は頷き合い、極東へと向けて歩き出す。この先、どんな道が待っていようとも―――…。
魔剣士「……んあ?」
――…と、出発しようとした矢先のこと。
「…」
三人の前にフードを深く被った男性と思わしき二人組が現れた。
魔剣士「……ンだ、てめぇら」
猛竜騎士「治安も悪い港町だとは知っていたがな」
魔剣士と猛竜騎士は、その二人の男が雰囲気で"敵対"していることにすぐに気が付く。
そして、普通は「何者か」と尋ねるべきだろうが、魔剣士は先に彼らに一撃を食らわそうと剣撃を行った。
魔剣士「オラァァッ!油断すっからそういうことに……!」
魔剣士「……って、アラッ!?」
強烈な一撃を喰らわしたハズだったのだが、実際に吹き飛ばしたのは彼らが脱いだ"コート"であった。
猛竜騎士「魔剣士、後ろだ!」
魔剣士「ぬっ!」
猛竜騎士の声にすかさず後ろを振り向く。
すると、金髪と銀髪の若い男の二人組みが剣を振りかざす瞬間だった。
白姫「魔剣士っ!!」
魔剣士「ぬぐぅおあっ!?」
魔剣士は声をあげながらも、その剣が胴体を切り裂く寸前に身を低くしてそれをかわす。更に身体を回転させながら金髪の足を蹴り飛ばし、転んだ所へ鞘から剣を抜くとそのまま突きつけた。
「……!」
金髪の男は驚いた表情をしたものの、ニヤリと笑みを浮かべる。
魔剣士「ん…」
それもそのはず、後方には"銀髪"が構えており、魔剣士へと短剣を刺そうと突っ込んできていた。
しかし、こちらも一人ではない。しかもその仲間は実力として申し分のない"猛竜騎士"である。
猛竜騎士「甘いぞ」
銀髪の短剣が魔剣士へ刺さる前に、猛竜騎士の"槍柄"の部分が脇腹へと痛烈な一撃を食らわした。ボキリと鈍い音が響き、銀髪は痛みの余り地面へと倒れ込み、唸り声を上げた。
魔剣士「……勝負有りだな、金髪野郎」
ギロリと睨み、金髪の首に刃をつきたてる。
魔剣士「てめぇら何モンだ。バウティハンターか」
金髪はその問いに、微かな声で「あんな面子と一緒にするな」と答えた。
魔剣士「じゃあ何モンだ!どうして俺らを狙った!名を言え!」
魔剣士は真っ赤な炎の魔力を宿し、剣を首に突き付けながら顔へと近づける。
「……くっ!」
さすがに不味いと思ったのか、金髪は悔しそうな表情を見せ、「あ、アサシン盗賊団…!名は…ゴルド……」と小さく漏らした。
魔剣士は「何だ盗賊ごとき」かと反応したが、意外にも猛竜騎士は驚いた様子を見せた。
猛竜騎士「あ、アサシン盗賊団だと!?」
魔剣士「知ってるのか?」
猛竜騎士「この一帯で有名な盗賊団ではあるんだが……」
魔剣士「厄介な奴らなら、さっさと気絶させちまうか?」
猛竜騎士「いや、待て」
魔剣士「ん?」
猛竜騎士「コイツらは本当にアサシン盗賊団なのか気になってな」
魔剣士「な、何?」
猛竜騎士は、痛みにのたうち回っていた銀髪を掴みあげ、「俺の質問に答えれば痛みから助けてやる」と囁いた。
傍から見れば魔剣士らこそ悪者にしか見えないだろうが、殺し合いを迫った相手に情けをかける意味はない。
白姫もそれを分かっており、痛みに悶えて恐怖する二人を見るのは辛かったが、今後戦いに身を投じるであろうことも理解しており、目を背けたりはしなかった。
猛竜騎士「お前の名は」
シルバ「し、シルバ……」
猛竜騎士「本当にアサシン盗賊団なのか」
シルバ「そ…そうだ……!」
猛竜騎士「お前らは人里降りることはなかったハズだ。何故、二人組でここにいる」
シルバ「…」
猛竜騎士「答えろ」
シルバ「…」
猛竜騎士「……仕方ない」
猛竜騎士は"折れている"であろう骨に槍の柄で軽く突いた。
シルバ「がっ…!あがあああああっ!!」
息が出来ない程の激痛がシルバを襲う。
猛竜騎士「俺らも命が掛かっているんだ。少しでも情報は入手しておきたいんでな…容赦はしない」
シルバ「がはっ…!はぐっ……!!」
猛竜騎士「もう一度最初から問う。お前らはアサシン盗賊団…なのか?」
シルバ「そ、そう…です……!」
猛竜騎士「何故二人組でいる。普段は町には降りないハズだろう」
シルバ「党首…あ、アサシン様のご命令です……ッ!」
猛竜騎士「命令内容は」
シルバ「奴隷の…輸送で……!」
猛竜騎士「……奴隷だと?」
魔剣士「奴隷!?」
白姫「ど、奴隷って……!」
"奴隷"という言葉に、猛竜騎士は更に詰め寄る。
猛竜騎士「それがどうして俺らを襲った」
シルバ「ぼ、冒険者の女連れ…!女は…売れる……から……!」
猛竜騎士「……なるほど、奴隷輸送のついでに冒険者の女を狙ったというわけか」
シルバ「は、はいっ……!」
猛竜騎士「その輸送はどうやっている。俺らを襲ったということは、まだ輸送はしていないんだろう」
シルバ「外の馬車に…!」
猛竜騎士「……そうか、それだけ聞ければ充分だ」
シルバ「助けて…くれるんです……!?」
猛竜騎士「あぁそうだな。魔剣士、どちらにも雷撃魔法を食らわせてやれ」
シルバ「えっ…!」
ゴルド「ちょっ…!」
魔剣士「……へっへっへ、そうこなくっちゃな!!」
"食らわせろ"との声に、雷撃属性を練り込むと、魔剣士は雷撃を繰り出してゴルドとシルバに一撃を食らわした。
二人は「ぐああっ!」と悲鳴を上げたのち、ガクリと気絶したのだった。
魔剣士「……しゃアッ!」
猛竜騎士「さすがだな」
魔剣士「ガハハッ、まぁなっ!!」
魔剣士「…」
魔剣士「……って、オッサンよ」
猛竜騎士「ん?」
魔剣士「いや、別に俺は気にしないけどよ…コッチのシルバってやつは肋骨が折れてたら死ぬんじゃねぇの?」
猛竜騎士「肋骨が折れても肺には刺さっていないだろう。血も吐かなければ呼吸も出来ているからな」
魔剣士「オッサンがそういうなら良いんだけどよ」
白姫「……でも、猛竜騎士さんがそこまで言うのなら…本当に容赦は出来ない相手なんですね」
白姫の言葉に、猛竜騎士は「あぁ」と頷いた。
猛竜騎士「後々に説明しようとはしていたが…、」
猛竜騎士「アサシン盗賊団は、この東方大地に棲みつく盗賊団の中でも力を持つ存在なんだ」
猛竜騎士「他の山賊や、別の盗賊団もいるが、アサシンらには面倒な相手ということで注意をしなければならん」
猛竜騎士「極力は抑えたいが、最悪…その手を汚すことになるかもしれないのは分かっていてくれ」
魔剣士「……分かった」
白姫「わ、分かりました…」
二人は静かに了承した。
魔剣士「……しっかしよ、町中でこんな堂々と誘拐しようとするかね?」
猛竜騎士「ま、これが東方大地ということだ」
こんな町中で殺しと誘拐、それを人目も気にせず行おうとしている時点で東方大地が如何なる土地なのか理解できる。
また、この騒ぎを聞きつけているはずの町民たちも姿を現すことはないということは、これが日常茶飯事ということなのだろう。
猛竜騎士「だが、ラッキーといえばラッキーだな」
魔剣士「襲われといてラッキーだと……」
猛竜騎士「そうさ。奴隷は逃がすとして、馬車は手に入るだろう?」
魔剣士「……あん?」
猛竜騎士「この土地で馬車は貴重な存在でな。雪山に特化した魔馬がいたように、この大地に順応した魔馬がいるわけだ」
猛竜騎士「アサシン盗賊団が奴隷を運ぶくらいに利用している馬なら、歩くよりも楽になるはずだろう?」
魔剣士「ア、アサシン盗賊団のを奪うのか?」
猛竜騎士「貸してもらうだけさ」
魔剣士「ほぉぉ、オッサンがそういうのは珍しいな」
猛竜騎士「まぁ…馬車にも見張りがいるだろうから先ずは倒すのが先になるだろうがな」
魔剣士「オッサンがそこまで言うのなら、それに従うけどよ」
猛竜騎士「アサシン盗賊団…そんな族から魔馬を奪うことは相手にとって痛手となるわけで、俺らも楽が出来るということで一石二鳥、利用させてもらうだけだ」
魔剣士「へいへい、奴隷がいいモンだとは思ってねぇし、賛成だよ」
白姫「じゃあ、奴隷さんたちも捕まっちゃってるし…早く助けたほうが良いですよね!」
猛竜騎士「その通りだ。外にあると言っていた馬車にすぐに向かうぞ!」
魔剣士「おうよ!」
白姫「はいっ!」
……まるで予想のしない形となってしまったが、三人にとって、第四の大地となる"東方大地"の旅がここに始まった。
―――しかし。
魔剣士たちの進むべき道はまるで解けない呪いのように。
身を持って、この大地へ深く沈んでいくこととなる―――…。
…………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――北方大地「氷山帝国」。
魔法道具の技術「錬金術」を発展させ、魔法連合本部もあるその国家は、裏でセントラルと手を組み世界を恐怖にせんと計画していたが、魔剣士らは連合の幹部である"セージ"と共にそれを打破することに成功する。
しかし、闇魔法の"簡易な生み出す方法"は既にセントラルと出発してしまった。
それを危惧した新氷山帝国の指導者となったセージは、猛竜騎士らに"東方大地"にある砂国へ、緊急事態に陥った時に共に戦う為の締結状を渡すように依頼する。
勿論、三人はそれを快諾し、東方大地の港"イエロー・ノースポート"へと向かう船へと乗り込み、北方大地をあとにしたのだった―――…。
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―――そして、約4日後。
燃料補給を兼ねて船は進み、その道中も大きな問題に巻き込まれることもなく魔剣士一行は"東方大地イエロー・ノースポート"へと到着していた。
魔剣士「おぉ…ここが…東方大地か……?」
白姫「ついに、第四の大地まで来ちゃったんだね…!」
猛竜騎士「まさか、いきなりココまで来ることになるとは思ってもみなかったがな……」
"東方大地は荒廃した大地"と言われるだけあって、港も従来と比べるとだいぶくたびれた印象を受ける。
降船する人は少なく、港の建物や船はサビつき廃れ、その土地に住んでいると思わしき住民たちは顔を長い布のマスクで隠して他人を寄せ付けないようなオーラを放っていた。
魔剣士「……なんか全てが腐ってるな」
猛竜騎士「お前な、そう思っても口にするんじゃない」
魔剣士「だって陰気くさくねぇか?」
猛竜騎士「土地柄がそういうものなんだ。仕方がないだろう」
魔剣士「と、土地柄って……」
地面は整備されていたが、赤い土がそこら中に散らばり"じゃりじゃり"と音を立てる。
また、遠くには同じ色をした山々が見えていたが、それが緑など存在しない、生命という名が一切ないことが良く分かった。
魔剣士「……こんな不便で汚ぇ場所に人が住んでいるってのが信じられねぇよ」
猛竜騎士「…」
魔剣士「あ、いえ冗談ですよ!?」
猛竜騎士「まぁいい…。それよりさっさと行くぞ」
魔剣士「どこにだ?」
猛竜騎士「旅の出発には準備が必要になるだろうが」
魔剣士「あぁ、準備ね……」
この荒れた大地を抜けるには、相当な準備を必要とする。
このイエロー・ノースポートは見た目が寂しくとも、船が行き来することから東方大地の中では他国家との交流は多いほうであり、栄えている部類に入っていた。
もちろん過去に猛竜騎士はこの土地に訪れていたこともあって、その港で一番準備が整えられる物販店を知っていたわけで、猛竜騎士の案内で歩いて5分程度…三人は港で最も巨大な市場も兼ね備えた店舗へと足を運んだ。
魔剣士「ここが一番の店なの……か?」
猛竜騎士「見た目は店らしくはないがな」
白姫「そうですね、どっちかっていうと補給村で見た市場っぽいですね…?」
鉄骨と木造が丸出しの崩れそうな屋根の下、商品の入った木箱の前で誠意のない顔をした商人たちが地べたへと直接座り込んで接客をしていた。
猛竜騎士「座ってるのは全員が従業員で、港にある全ての店に対しての卸売の役目もしているからな…確かに市場に近いものはあるな」
魔剣士「ははぁ…」
猛竜騎士「一番活気づいている場所ではあるんだが……」
魔剣士「……そう言われてもな」
活気づいたと言われても、やせ細って死にそうな顔をしていたり、マスクやターバンで身を隠しながら睨みを利かせていたり。
猛竜騎士「……ま、とりあえず買いそろえるぞ」
魔剣士「へいへい」
白姫「はいっ」
三人は市場へ足を踏み入れると、時計回りに商品に目を通した。
魔剣士(……売ってるモンも寂しいっつーかなんつーか)
猛竜騎士(俺が訪れた時よりも数段質が悪くなっているな……)
白姫(こういうものも売れるのかなぁ?)
腐りかけた果物や、錆びたナイフが一般的な価格で売られていることには驚かされる。また、それに伴って新品の品々は倍近い値段が付いていたが、やせ細ったこの土地は輸入品の全てが高級な扱いに違いない。
猛竜騎士「…」
魔剣士「…」
白姫「…」
それから三人は暫く見て回りつつ、値段は高かったが買わないわけにはいかない道具・食料品を無愛想な商人らに金を払い、何とか最低限の装備は買い揃えることが出来たのだった。
そして市場をあとにし、人気のない海沿いの港に足を運ぶと重苦しい空気から解放された魔剣士は大きく「ふぅ!」とため息をついた。
魔剣士「……クッソ重い空気だったな!?何もねぇし!」
白姫「なんか凄い市場だったね……」
猛竜騎士「雰囲気は昔のままだが、商品の質も悪さはその非じゃない。この大地もどんどん人が住めない土地になっているのかもしれんな」
魔剣士「元々住めないような土地だと思うんだが…って、オッサンはやっぱりココへ来たことあるんだな」
猛竜騎士「さすがに砂国は行った事がないが。それと正直な話…相当な食料や道具を買ったが、準備が整ってるとは思えん」
白姫「えっ!結構な量を買った気がしますが……」
猛竜騎士の購入した内容は確認している限り、小型の保存食を約2週間近く、日持ちする清水を数キロ、この大地では貴重な水源(水魔法)をどこでも確保するための水魔石、大地に棲む魔物に対する毒の血清など数えたらキリがないほど、使えると思ったモノは衝動買いのようにしていたように見えた。
魔剣士「衝動買いってレベルじゃない気もすっけどな」
猛竜騎士「まだ足りないくらいだ。途中で村があったはずだが、そこも残っているかどうか……」
白姫「そ、そんなに酷い土地なんですか…?」
猛竜騎士「砂嵐による砂漠化、水源がないために緑は宿らず、弱肉強食が当然の大地だ。治安もお察しといったところか」
白姫「その村も砂漠化や盗賊とかに襲われちゃったり…無事なのか分からないってことですね……」
猛竜騎士「そういうことだ」
魔剣士「…」
いざ、自分たちが向かおうとしている場所がどれくらい厳しく険しい道のりなのか改めて理解する。しかし、この世界の未来のためにその歩みを止めるわけにはいかない。セージに渡された"締結状"は世界を救うため、必ず届けなければならないのだから。
魔剣士「……まぁ、どのみち出発するんだろ」
猛竜騎士「もちろんだ」
白姫「頑張ります。絶対にこの締結状を届けます!」
猛竜騎士「その意気だ。お前たちもこの大地を越える力は持っていると思っているからな」
三人は頷き合い、極東へと向けて歩き出す。この先、どんな道が待っていようとも―――…。
魔剣士「……んあ?」
――…と、出発しようとした矢先のこと。
「…」
三人の前にフードを深く被った男性と思わしき二人組が現れた。
魔剣士「……ンだ、てめぇら」
猛竜騎士「治安も悪い港町だとは知っていたがな」
魔剣士と猛竜騎士は、その二人の男が雰囲気で"敵対"していることにすぐに気が付く。
そして、普通は「何者か」と尋ねるべきだろうが、魔剣士は先に彼らに一撃を食らわそうと剣撃を行った。
魔剣士「オラァァッ!油断すっからそういうことに……!」
魔剣士「……って、アラッ!?」
強烈な一撃を喰らわしたハズだったのだが、実際に吹き飛ばしたのは彼らが脱いだ"コート"であった。
猛竜騎士「魔剣士、後ろだ!」
魔剣士「ぬっ!」
猛竜騎士の声にすかさず後ろを振り向く。
すると、金髪と銀髪の若い男の二人組みが剣を振りかざす瞬間だった。
白姫「魔剣士っ!!」
魔剣士「ぬぐぅおあっ!?」
魔剣士は声をあげながらも、その剣が胴体を切り裂く寸前に身を低くしてそれをかわす。更に身体を回転させながら金髪の足を蹴り飛ばし、転んだ所へ鞘から剣を抜くとそのまま突きつけた。
「……!」
金髪の男は驚いた表情をしたものの、ニヤリと笑みを浮かべる。
魔剣士「ん…」
それもそのはず、後方には"銀髪"が構えており、魔剣士へと短剣を刺そうと突っ込んできていた。
しかし、こちらも一人ではない。しかもその仲間は実力として申し分のない"猛竜騎士"である。
猛竜騎士「甘いぞ」
銀髪の短剣が魔剣士へ刺さる前に、猛竜騎士の"槍柄"の部分が脇腹へと痛烈な一撃を食らわした。ボキリと鈍い音が響き、銀髪は痛みの余り地面へと倒れ込み、唸り声を上げた。
魔剣士「……勝負有りだな、金髪野郎」
ギロリと睨み、金髪の首に刃をつきたてる。
魔剣士「てめぇら何モンだ。バウティハンターか」
金髪はその問いに、微かな声で「あんな面子と一緒にするな」と答えた。
魔剣士「じゃあ何モンだ!どうして俺らを狙った!名を言え!」
魔剣士は真っ赤な炎の魔力を宿し、剣を首に突き付けながら顔へと近づける。
「……くっ!」
さすがに不味いと思ったのか、金髪は悔しそうな表情を見せ、「あ、アサシン盗賊団…!名は…ゴルド……」と小さく漏らした。
魔剣士は「何だ盗賊ごとき」かと反応したが、意外にも猛竜騎士は驚いた様子を見せた。
猛竜騎士「あ、アサシン盗賊団だと!?」
魔剣士「知ってるのか?」
猛竜騎士「この一帯で有名な盗賊団ではあるんだが……」
魔剣士「厄介な奴らなら、さっさと気絶させちまうか?」
猛竜騎士「いや、待て」
魔剣士「ん?」
猛竜騎士「コイツらは本当にアサシン盗賊団なのか気になってな」
魔剣士「な、何?」
猛竜騎士は、痛みにのたうち回っていた銀髪を掴みあげ、「俺の質問に答えれば痛みから助けてやる」と囁いた。
傍から見れば魔剣士らこそ悪者にしか見えないだろうが、殺し合いを迫った相手に情けをかける意味はない。
白姫もそれを分かっており、痛みに悶えて恐怖する二人を見るのは辛かったが、今後戦いに身を投じるであろうことも理解しており、目を背けたりはしなかった。
猛竜騎士「お前の名は」
シルバ「し、シルバ……」
猛竜騎士「本当にアサシン盗賊団なのか」
シルバ「そ…そうだ……!」
猛竜騎士「お前らは人里降りることはなかったハズだ。何故、二人組でここにいる」
シルバ「…」
猛竜騎士「答えろ」
シルバ「…」
猛竜騎士「……仕方ない」
猛竜騎士は"折れている"であろう骨に槍の柄で軽く突いた。
シルバ「がっ…!あがあああああっ!!」
息が出来ない程の激痛がシルバを襲う。
猛竜騎士「俺らも命が掛かっているんだ。少しでも情報は入手しておきたいんでな…容赦はしない」
シルバ「がはっ…!はぐっ……!!」
猛竜騎士「もう一度最初から問う。お前らはアサシン盗賊団…なのか?」
シルバ「そ、そう…です……!」
猛竜騎士「何故二人組でいる。普段は町には降りないハズだろう」
シルバ「党首…あ、アサシン様のご命令です……ッ!」
猛竜騎士「命令内容は」
シルバ「奴隷の…輸送で……!」
猛竜騎士「……奴隷だと?」
魔剣士「奴隷!?」
白姫「ど、奴隷って……!」
"奴隷"という言葉に、猛竜騎士は更に詰め寄る。
猛竜騎士「それがどうして俺らを襲った」
シルバ「ぼ、冒険者の女連れ…!女は…売れる……から……!」
猛竜騎士「……なるほど、奴隷輸送のついでに冒険者の女を狙ったというわけか」
シルバ「は、はいっ……!」
猛竜騎士「その輸送はどうやっている。俺らを襲ったということは、まだ輸送はしていないんだろう」
シルバ「外の馬車に…!」
猛竜騎士「……そうか、それだけ聞ければ充分だ」
シルバ「助けて…くれるんです……!?」
猛竜騎士「あぁそうだな。魔剣士、どちらにも雷撃魔法を食らわせてやれ」
シルバ「えっ…!」
ゴルド「ちょっ…!」
魔剣士「……へっへっへ、そうこなくっちゃな!!」
"食らわせろ"との声に、雷撃属性を練り込むと、魔剣士は雷撃を繰り出してゴルドとシルバに一撃を食らわした。
二人は「ぐああっ!」と悲鳴を上げたのち、ガクリと気絶したのだった。
魔剣士「……しゃアッ!」
猛竜騎士「さすがだな」
魔剣士「ガハハッ、まぁなっ!!」
魔剣士「…」
魔剣士「……って、オッサンよ」
猛竜騎士「ん?」
魔剣士「いや、別に俺は気にしないけどよ…コッチのシルバってやつは肋骨が折れてたら死ぬんじゃねぇの?」
猛竜騎士「肋骨が折れても肺には刺さっていないだろう。血も吐かなければ呼吸も出来ているからな」
魔剣士「オッサンがそういうなら良いんだけどよ」
白姫「……でも、猛竜騎士さんがそこまで言うのなら…本当に容赦は出来ない相手なんですね」
白姫の言葉に、猛竜騎士は「あぁ」と頷いた。
猛竜騎士「後々に説明しようとはしていたが…、」
猛竜騎士「アサシン盗賊団は、この東方大地に棲みつく盗賊団の中でも力を持つ存在なんだ」
猛竜騎士「他の山賊や、別の盗賊団もいるが、アサシンらには面倒な相手ということで注意をしなければならん」
猛竜騎士「極力は抑えたいが、最悪…その手を汚すことになるかもしれないのは分かっていてくれ」
魔剣士「……分かった」
白姫「わ、分かりました…」
二人は静かに了承した。
魔剣士「……しっかしよ、町中でこんな堂々と誘拐しようとするかね?」
猛竜騎士「ま、これが東方大地ということだ」
こんな町中で殺しと誘拐、それを人目も気にせず行おうとしている時点で東方大地が如何なる土地なのか理解できる。
また、この騒ぎを聞きつけているはずの町民たちも姿を現すことはないということは、これが日常茶飯事ということなのだろう。
猛竜騎士「だが、ラッキーといえばラッキーだな」
魔剣士「襲われといてラッキーだと……」
猛竜騎士「そうさ。奴隷は逃がすとして、馬車は手に入るだろう?」
魔剣士「……あん?」
猛竜騎士「この土地で馬車は貴重な存在でな。雪山に特化した魔馬がいたように、この大地に順応した魔馬がいるわけだ」
猛竜騎士「アサシン盗賊団が奴隷を運ぶくらいに利用している馬なら、歩くよりも楽になるはずだろう?」
魔剣士「ア、アサシン盗賊団のを奪うのか?」
猛竜騎士「貸してもらうだけさ」
魔剣士「ほぉぉ、オッサンがそういうのは珍しいな」
猛竜騎士「まぁ…馬車にも見張りがいるだろうから先ずは倒すのが先になるだろうがな」
魔剣士「オッサンがそこまで言うのなら、それに従うけどよ」
猛竜騎士「アサシン盗賊団…そんな族から魔馬を奪うことは相手にとって痛手となるわけで、俺らも楽が出来るということで一石二鳥、利用させてもらうだけだ」
魔剣士「へいへい、奴隷がいいモンだとは思ってねぇし、賛成だよ」
白姫「じゃあ、奴隷さんたちも捕まっちゃってるし…早く助けたほうが良いですよね!」
猛竜騎士「その通りだ。外にあると言っていた馬車にすぐに向かうぞ!」
魔剣士「おうよ!」
白姫「はいっ!」
……まるで予想のしない形となってしまったが、三人にとって、第四の大地となる"東方大地"の旅がここに始まった。
―――しかし。
魔剣士たちの進むべき道はまるで解けない呪いのように。
身を持って、この大地へ深く沈んでいくこととなる―――…。
…………
……
…
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