【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~

えとう蜜夏

文字の大きさ
32 / 49

三十二 とんだ大舞踏会

しおりを挟む
 挨拶の人波は途切れる様子は無く私はルークお兄様に休憩をとりたいとお願いしたの。しぶしぶ承諾されてやっとお母様とレストルームへ。でも、そこは女の園でしたわ。お母様がいたから大丈夫だったわ。噂話をしていた女性陣がお母さまの扇をぱたりとさせただけで黙ってしまわれたわ。流石は宮廷を泳ぎ切っているお母様よ。私と並ぶと姉妹のような若々しさも素晴らしいものです。

 そこへジョーゼットも休憩にいらしたのだけれど好奇心露わな視線に耐えられず、部屋を出てしまったのよ。私は慌てて後を追ったわ。

「ジョーゼット。お待ちになって!」

 ドレスが足に絡んで走りにくいものだわ。裾を持ち上げるのも一苦労よ。でもジョーゼットはやはり深窓のお嬢様だから早くなくて、追いつくことが出来たわ。

「もう、大舞踏会ではお話できると言ってたじゃない。何よ。逃げるなんて」

「……アーシア」

「あのデビューのことは、あれはルーク……お兄様が勝手にお願いしてあったことで、私はアベル様とは何も無いのよ」

 私の婚約者はユリアン様なのよ。小さな頃からそれは変わらないわ。でも、それもこれからどうなるか分からないし、そっとこの思いは胸の中にしまっておくつもりよ。だって、今の私を取り巻いている人達は庶民になったら誰も見向きなんてしないだろうしね。庶民になってから、運命の人を探すわ。きっと見つかるわよ。……くすん。

「本当? 信じていいのね」

 涙を浮かべて手を握ってくるジョーゼットに私は力強く肯いた。

「勿論。信じて頂戴。アベル王太子様にはジョーゼットの方がお似合いよ」

 こんな可憐な少女は日本のときだって今までだって見たことなかったわ。私より可憐と言う言葉はジョーゼットにこそ相応しいの。

「ありがとう。アーシア。私は小さい頃からアベル様しか見ていなかったから。……もし、アーシアがアベル王太子様のことを好きになって、アベル様もアーシアのことをお気に召したなら……。そう考えたら堪らなくなってしまって……」

「そんな。私のデビューでジョーゼットを悲しませるつもりは無かったの。もう、こんなことならいっそ、デビューなんてしなかったら良かったわ。もともと私は家でいたんだもの」

 私が大げさに肩を竦めるとジョーゼットは微かに微笑んでくれた。

「それより、いよいよ。このバカげたデビューが済んだらバカンスよ! 私はジョーゼットの別荘に招待されるを楽しみにしてるのよ? なんならうちの海辺の別荘でも良くてよ。ああ、そうするともれなく家の陰険腹黒のルークお兄様がいるけどね」

 約束したけどそれが社交辞令かもしれないもの。念押ししておかないと。

「ええ、勿論よ。シーズンが終わったら向かうわ。そのときお知らせするわね」

 やっとジョーゼットが笑みを見せてくれたのでほっとしたわ。本当にルークお兄様には迷惑してるのよ。大体中身が庶民の私が王太子妃なんて務まらないわ。

 でもバカンスよ! お友達とね。内心私は叫びだしたいのを我慢したわ。今ムチを持たせたら最高の振り具合になりそうよ。今宵のムチの音は一味違うわとか言いたいぐらい。

 ジョーゼットと仲良く会場まで戻ったわ。そこでは興味津々な視線が注がれた。そりゃそうよね。今までの王太子の婚約者とされていた令嬢といきなり現れてデビューの際に王太子様の絶賛を受けたダークホースが仲良くしてるんだから。当人たちを置き去りにして噂だけが走るのはどこの世界も同じよね。

 こうして私のデビューは無事幕を閉じた。翌日からはあちらのお茶会こちらの夜会にと普通のご令嬢のようにお呼ばれすることになったわ。社交界にでた未婚の男女は結婚相手を探すというのが相場だから。それも女性は早くしないと嫁き遅れのレッテルが貼られて誰にも声が掛からない壁の花になってしまうのよ。

 私もお兄様に連れられて夜会なんだお茶会に出る。ジョーゼットもいることが多いので二人で話に花が咲くわ。二人でいると自然と他の学園の女性達も集まって楽しいわ。いいのかしら?

「アーシア様はこの夏の社交界の華ですわね。でも、残念ですわ。ドレス姿より凛々しい男装姿の方がよく似合ってますのに」

 そんなこともひらほら聞こえたけれど社交界まで噂になりたくないわ。目立たないようにしないとね。それにしてもガブちゃんとは会えないわね。庶民とはやはり違うんだわ。こっそりお店に行ってみたいけれどデビューしてから監視がきついのよ。気楽にお出かけなんてできやしない。このまま三年は何気にきついわ。早く入れ違いを直してもらわないといけないわ。

「あら、あなた素敵。その扇はどうしたの? 孔雀のように光っているじゃないの」

 濃緑の美しい扇を持っているご令嬢がいて、孔雀の羽を使っているみただった。

「ああ。これは特別に……。ミーシャ商会で手に入れましたの。おほほ。大したものではありあせんわ」

 そういいながら鼻高々な感じだった。

「ミーシャ商会。ええ、商工ギルドの長のお店ね。あそこは良いものがそろっているわよね。私も取り寄せしようかしら」

 口々にミーシャ商会の話がでて、いずれはお世話になる所の評判が良いことに少し私も嬉しかった。今度、お店に行って夏休みにうちの別荘に誘おうかしら? それかお兄様にお願いしてお店に行くのもいいわよね。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

処理中です...