【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~

えとう蜜夏

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三十六 ヒロイン計画

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 ガブちゃんが来てから充実した別荘ライフを私は楽しんでいた。但し、お兄様からは外に出るのは禁止されてしまった。日焼けしちゃうからね。だからもっぱら居間でおしゃべりをしている。それも楽しいの。

 だけどガブちゃんはミーシャ商会の名代として来ているらしく、この町の商業ギルドに呼ばれて顔を出しに行ったり、商談に参加したりと結構忙しそう。そんなガブちゃんを見て私も頑張ろうという気になってきたわ。だからガブちゃんがいないときはお兄様のところで何かお手伝いをしようと執務室に入ってみた。

「どうしたのだ? アーシア、遊び飽きたのか?」

「お兄様のお手伝いをしようかと思いまして。私にも何か出来ることはありませんか?」

「お前がそんなことを言い出すとは……。そうか、ミーシャ商会のお嬢さんだな。彼女はどうやらこの町でミーシャ商会の事業のことをいろいろと手伝っているようだな」

「ガブちゃんがそんなことを……」

 初めて会ったときは、攻略ルートのことしか叫んでなかったから、成長したわねぇ……。

「まあ、お前は近日にも我が家にお見えになられるアベル王太子様のお相手と港の開講式では王太子様の横でテープカットをしてもらう予定だ」

「王太子様の横で、テープカット……」

 そんなことするなんて無理無理。そうだわ。ジョーゼットが来てくれたら代わればいいのよ。

「そのためにミーシャ商会には特別なドレスを仕立てて届けてもらったのだ」

 確かにガブちゃんが来るときにドレスとか手袋などのアクセサリーを一緒にもってきてくれた。ガブちゃんはお店のお手伝いをするのね。乙女ゲームじゃなくて経営シュミュレーションにでも変えるつもり?





 そんなことを考えていたら町での戦利品を持ってガブちゃんが戻ってきた。

「海辺の町だからいろいろ変わったものがあったし、それに小さいながら町の細部までいろいろと行き届いている。あなたのお兄さんやり手よね」

「私の、というよりガブちゃんのお兄さんじゃないの。でも、ガブちゃんもお店の手伝い頑張っているのね。『ゆるハー』攻略者の陥落に忙しいと思ってたわ」

「……流石にログアウトできないゲームなんてある筈ないじゃん」

 そう言うとガブちゃんはうちの使用人の方を見遣ったので、私は黙って肯いてみせた。ガブちゃんは私の耳元に口を寄せてきた。

「まあ、記憶が蘇ったときはちょっとハイテンション状態だったけどさあ。私も段々とここが『ゆるハー』に似た世界かもしれないと思うようになってきちゃって。ゲームとはいろいろ違うところもあるし。だけど逆ハー狙いとは別に家業だって盛り上げたいじゃない? チートってやつ? それにイケメンと結婚もしたいし」

 言い終わるとガブちゃんは客間に戦利品を並べてくれた。その中でも一番可愛い貝殻のネックレスを見せてくれた。

「――あとね、これがあるならカメオが作れる筈」

「カメオ?」

 正直言われてもピンとこない。

「ほら、貝に肖像画とか描かれてて、ブローチに良くあるやつよ」

「そうなの?」

「中世じゃあ、貴族が作らせて高級品なんだから……」

 私は特に興味も沸かずガブちゃんのその話を聞いていた。すると私の両手をぎゅっと握ってきた。

「――だから、ルーク様との仲を取り持ってよね」

「え? だって、ここ『ゆるハー』に似てるから、ルークお兄様とは兄妹の可能性があるんじゃない?」

「それもどうだか分からないじゃない。そもそもあんたの評判だって。彗星の如く現れた第二の王太子妃候補って? そんな展開『ゆるハー』に無かったじゃん。新聞のトップを見て吹きだしたんだからね」

「あー、あれね」

 私は連日書きたてる新聞のゴシップ欄にかなりウンザリしていた。あんな根の葉もない噂話ばかり。深窓の麗しい侯爵令嬢って誰の事? 私か?

「ローレン公爵家の焦りなんて煽られて、気をつけなさいよ」

「な、どうして?」

「バカじゃないの? 向うからしたらあなたはぽっと出てきたライバル候補、こんな瀬戸際にね。最悪暗殺なんてされかねないじゃん」

「暗殺……。でもジョーゼットもここに来てくれるのよ。それに向うの別荘に招かれてるし。そもそも私が王太子なんて冗談キツイ」

 ガブちゃんと話していると楽しい夏のバカンスが殺戮めいたものになってしまった。

「だから、早くこの取り違えをリークしてよ。ガブちゃん。『ゆるハー』での展開ってどうだった?」

「あ、あれ思い出そうとしたけど。エンドロールに毛の生えたような感じでしょ?」

「やっぱり……」

「まあ、考えておく、判明するのはお互い早い方が良いしね」

「お願いするわ」

 任せなさいと元気に言うガブちゃんに私は期待して、ジョーゼットとのことを考えた。ライバル役になっている私。さぞかしあの可憐な表情を曇らせていることだろう。ひょっとしたら泣いているかもしれない。でも、この混乱を招いたのはルークお兄様だし。早い所この取り違えのことに気が付いて貰って本来の方に戻るように正してもらった方がいいわよね。

 悪いことにジョーゼットがうちにやってくるのはテープカットの後、折角代わってもらうという私の計画が頓挫してしまった。

 王太子様はお忙しいので開会式の前後しかいらっしゃらない。ジョーゼットと王太子様の仲を取り持つつもりがますます泥沼になっている。いっそ、ガブちゃんの逆ハー計画に協力した方がいいかもね。
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