113 / 453
がっこうにいこう!
86話「代行」
しおりを挟む
チャイムが鳴り響き、午前の授業が終わりを告げた。
同時にニーナがヘナヘナと机に崩れる。
「うぅ~、初日からいきなり宿題なんて、ツイてないなぁ。ボクこんなの分かんないよ・・・・・・。」
呆れ顔のリーフが溜め息を吐く。
「ニーナ、今日の宿題は去年までの復習なんだから、キチンとやらないとダメよ。」
「そうは言ってもさぁ~・・・・・・。なんで宿題なんかあるんだろ~・・・・・・。」
気持ちは分からんでもない。
俺も子供の頃、何度同じ事を考えたか。
ただ、基礎学科で出される宿題には重要な意味がある。
「宿題がなかったら基礎学科も試験結果で進級が決められる事になると思うけど・・・・・・それでも良いの?」
「ぅ・・・・・・それはもっと困る。」
基礎学科の試験は、点数が悪い分には進級に影響を及ぼさないが、その場合は一~二週間毎に出される宿題を提出しなければ容赦無く落第となるのである。
まぁ、それさえやっていれば例え試験が0点だろうが進級出来るので、楽と言えば楽だが。
しかもその宿題さえ、名前を書いて白紙で出しても通ってしまうのだ。ただし成績はお察し。
もちろん、試験の点数さえ良ければ宿題を提出しなくても進級することが出来る。
クラスメイト達が昼食の為に教室を出て行く中、一人の生徒が俺の席の前に立った。
名前はローウェル・・・・・・なんとか君。橙色の少し長めのくせ毛と薄い緑色の瞳がトレードマーク。
背恰好はヒノカやリーフに近いので年齢もそうだろう。
どこだったかの貴族の子で、俺の”顧客”だ。
気弱そうではあるが、顔立ちも良く女子達から人気がある。
「あ、あの、アリューシャちゃん。またお願いして・・・・・・いいかな?」
いつも通りオドオドとした口調でそう言うと、俺の机に宿題の用紙と銀貨一枚を置いた。
「あぁ、ごめんねローウェル君。今年から銀貨四枚になるから前金は銀貨二枚でよろしく。」
「ええっ!? ど、どうして!?」
「最初に授業が難しくなってきたら、値段上げるって伝えたけど?」
「だ、だとしてもいきなりそんな・・・・・・!」
「二年生の間は据え置きにしてたし、良いでしょ? ダメなら他を当たってくれても構わないけど。」
「ほ、本当に他の人に頼んじゃうよ!? ホントだよ!?」
「うん、いいよ。」
「う・・・・・・うぅ・・・・・・ば、ばかーーー!!」
銀貨と宿題用紙を引っ掴み、怒った彼女の様な捨て台詞を残してローウェルは駆けて行ってしまった。
その様子を隣で見ていたリーフが話しかけてくる。
「お金を受け取って宿題を代わりにやるなんて感心しないけれど・・・・・・、本当に良かったの? ずっと頼んできていた子じゃない。」
「ん~、まぁ・・・・・・確かに楽に稼げるけどね。私ばっかり稼いでても悪いし。」
俺はギルドの仕事でも稼げるため問題ないが、そうでない者にとっては重要な収入源でもあるのだ。
だから高めの値段に設定しているのだが、宿題の評価も成績に影響するので、金回りの良い貴族は成績の良い俺に「それでも」と頼んできたりする。
宿題を代行させるような奴が試験で良い成績を残せるはずはないのだが、その分を宿題の方で挽回させようという胆なのだろう。
学院側は宿題の代行については黙認している。
誰かのを写そうが誰かにやらせようが、提出さえすれば問題ないのだ。
金もコネも実力の内・・・・・・というのが建前。
貴族の子が落第やら成績が悪かったりすると五月蠅いので、「だったら金で解決しろや」というのが本音である。
ちゃんと勉強すれば良いだけの話なんだけどね。
リーフと会話しながら教室を出る準備をしていると、駆けて行ったローウェルに代わって金髪ドリルツインテが特徴的な少女が俺の前に立つ。
「ちょっと良いかしら、アリューシャさん?」
名前は確か――
「えーっと・・・・・・シェラーテさんだっけ?」
家名は知らないが、普段の立ち居振る舞いから貴族であるということは分かっている。
「そうよ、枠が空いたのなら私の分をお願いするわ。」
彼女が俺の机に銀貨二枚と宿題の用紙を並べた。
「ご新規さんは銀貨六枚で前金は三枚ね。」
「あら、そうでしたの。・・・・・・これで構わないかしら?」
何食わぬ顔で机の上の銀貨を一枚増やす。
こんなものに銀貨六枚も出すなんて、随分太っ腹だな。
「ていうか・・・・・・シェラーテさんには、いつも頼んでる子がいなかったっけ?」
「貴女の方が成績が良いもの。」
「そ、そう・・・・・・分かったよ。お金を払ってくれるなら私も文句は無いし。」
「良い心掛けよ。それじゃあお願いするわね。」
そう言って彼女はさっさと教室を出て行ってしまった。
心の中で仕事を奪ってしまった誰かに謝罪しつつ、銀貨を財布に仕舞う。
別に断っても良かったのだが、それはそれで面倒事が増えるのだ。
「呆れを通り越して感心しちゃうわ、全く。」
「私もまさかあの値段で頼まれるとは思わなかったよ。断られると思ってたんだけど。お金持ちの金銭感覚は分からないね・・・・・・。まぁ、お陰で私達のご飯が豪華になるんだし。」
「他の人はどれくらいで引き受けているのかしら?」
「それは分からないけど・・・・・・さすがに銀貨六枚とかは居ないでしょ。・・・・・・多分。」
「ボクのもついでにやってよアリスぅ~。」
「だーめ、ニーナはちゃんと自分の力でやらないと。」
「はぁ~・・・・・・ボクも貴族に生まれていればなぁ~・・・・・・。」
「いや、例えニーナが貴族でも自分の力でさせるからね。」
「ええーっ!? けちー! じゃあフラムはどうなの? フラムだって宿題なんかやりたくないよね?」
「え・・・・・・ゎ、私は・・・・・・その・・・・・・。」
「やりたくないのはみんな一緒だよ。私だって面倒だし。でも、例えば剣の稽古を代わりに他の人にやらせたって、ニーナが強くなる訳じゃないでしょ?」
「そりゃあそうだけどさ・・・・・・。」
ぐずるニーナにヒノカが一言言い放つ。
「それより、さっさと支度しないと置いて行くぞ、ニーナ。」
ニーナがぐずっている間にみんなは片付けを終えていたのだ。
慌てて机から立ち上がるニーナ。
「えっ、ま、待ってよヒノカ姉ー!」
*****
初日の授業が全て終わって寮の部屋で寛いでいるとノックの音が部屋に響き、リーフが立ち上がった。
「誰かしら?」
「んー、誰かと会う予定はなかった気がするけど・・・・・・。」
みんなも首を横に振り、思い当たる節が無い事を告げる。
「まぁ・・・・・・出てみれば分かるわね。」
リーフが扉を開き、客人に応対した。
「あら、貴方は・・・・・・少し待っていてね。」
こちらへ向き直ったリーフと目が合う。
「アリス、貴女のお客さんよ。」
「はーい。」
リーフに呼ばれ扉の外へ出ると、ローウェルの姿があった。
「どうしたの、ローウェル君?」
「あの・・・・・・アリューシャちゃん。さ、さっきは・・・・・・酷い事言ってご、ごめんなさい。や、やっぱりアリューシャちゃんにお願いしたくて・・・・・・。」
酷い事・・・・・・? 何か言ってたっけ?
ローウェルが宿題の用紙を差し出す。
「別に気にしてないから良いけど・・・・・・枠はもう別の人で埋まったから締め切ってるんだよ、ごめんね。」
「そ、そんなぁ! お、お願いだよアリューシャちゃん! お金なら払うから!」
俺の手を取り、瞳をウルウルさせながら詰め寄ってくるローウェル。
傍から見れば立派な通報案件だ。
そんな職質まっしぐらなローウェルに意外なところから援護射撃が届いた。
「はぁ・・・・・・良いじゃないアリス。一人くらい増えても手間は大して変わらないのでしょう?」
側でやりとりを見ていたリーフである。
「それは、そうだけど・・・・・・。」
「お、お願いします!」
「仕方ないか・・・・・・。新規の人は銀貨六枚だから、前金は銀貨三枚ね。」
「ええっ!? さ、さっきは四枚って・・・・・・。」
「一度契約切ったでしょ。嫌なら他の人に――」
「ご、ごごごごめんなさい、アリューシャちゃん! お金なら払いますからぁ!」
「まぁ、いいか・・・・・・今まで頼んでくれてたし、銀貨五枚にまけてあげる。前金は三枚ね。」
「ほ、ほんとに!? ありがとう!!」
安堵の笑みを浮かべるローウェルから銀貨と用紙を受け取る。
「あ、あの・・・・・・アリューシャちゃん。また、仲良くしてくれるよね?」
「ん? あぁ、今後とも宜しくお願いします。」
俺の返答を聞くと、それは嬉しそうにローウェルは駆けて行ってしまった。
その後ろ姿が消えたのを確認し、リーフがポツリと漏らす。
「・・・・・・行っちゃったわね。」
「わざわざ高いお金出して私に頼まなくてもいいのにね。でもリーフがあんなこと言うなんて思わなかったけど。」
「見ていたら気の毒に思えてきてね・・・・・・。あの子、アリスの事が好きなのよ。」
「いや、流石にそれはないと思うけど。」
相手は貴族の”女の子”だぞ。
特殊な事情があるのか、男として振る舞っているようなので、一応男として接してはいる。
・・・・・・まぁ、貴族の女の子で俺の事を好きだと言ってくれる子が身近にいるけれど、その好意は家族へ向ける様な親愛に近い物だ。多分。
ミアに触発されて少々おかしな方向に行ってしまっているが。
確かにこの世界では禁止されていないため、同姓婚も可能ではある。
しかし、それは王族や貴族がいわゆる政略結婚のためにと黙認しているだけであり、少数派であることに変わりない。
それに結局、同姓の政略結婚の場合は跡取り問題もあるため、大抵は嫁ぐ側の遠い血縁女性が妾となる。
家柄の交わりを男性、血の交わりを女性が担っている訳だ。
要するに”抱き合わせ”という以外は普通の結婚と同じなのである。
難しい顔をしている俺を、くすくすとリーフが口を押さえて小さく笑った。
「ふふっ、自分の事には鈍いのね。」
「それなら・・・・・・もうちょっと吹っかけても良かったかな?」
「・・・・・・鬼ね、貴女。」
同時にニーナがヘナヘナと机に崩れる。
「うぅ~、初日からいきなり宿題なんて、ツイてないなぁ。ボクこんなの分かんないよ・・・・・・。」
呆れ顔のリーフが溜め息を吐く。
「ニーナ、今日の宿題は去年までの復習なんだから、キチンとやらないとダメよ。」
「そうは言ってもさぁ~・・・・・・。なんで宿題なんかあるんだろ~・・・・・・。」
気持ちは分からんでもない。
俺も子供の頃、何度同じ事を考えたか。
ただ、基礎学科で出される宿題には重要な意味がある。
「宿題がなかったら基礎学科も試験結果で進級が決められる事になると思うけど・・・・・・それでも良いの?」
「ぅ・・・・・・それはもっと困る。」
基礎学科の試験は、点数が悪い分には進級に影響を及ぼさないが、その場合は一~二週間毎に出される宿題を提出しなければ容赦無く落第となるのである。
まぁ、それさえやっていれば例え試験が0点だろうが進級出来るので、楽と言えば楽だが。
しかもその宿題さえ、名前を書いて白紙で出しても通ってしまうのだ。ただし成績はお察し。
もちろん、試験の点数さえ良ければ宿題を提出しなくても進級することが出来る。
クラスメイト達が昼食の為に教室を出て行く中、一人の生徒が俺の席の前に立った。
名前はローウェル・・・・・・なんとか君。橙色の少し長めのくせ毛と薄い緑色の瞳がトレードマーク。
背恰好はヒノカやリーフに近いので年齢もそうだろう。
どこだったかの貴族の子で、俺の”顧客”だ。
気弱そうではあるが、顔立ちも良く女子達から人気がある。
「あ、あの、アリューシャちゃん。またお願いして・・・・・・いいかな?」
いつも通りオドオドとした口調でそう言うと、俺の机に宿題の用紙と銀貨一枚を置いた。
「あぁ、ごめんねローウェル君。今年から銀貨四枚になるから前金は銀貨二枚でよろしく。」
「ええっ!? ど、どうして!?」
「最初に授業が難しくなってきたら、値段上げるって伝えたけど?」
「だ、だとしてもいきなりそんな・・・・・・!」
「二年生の間は据え置きにしてたし、良いでしょ? ダメなら他を当たってくれても構わないけど。」
「ほ、本当に他の人に頼んじゃうよ!? ホントだよ!?」
「うん、いいよ。」
「う・・・・・・うぅ・・・・・・ば、ばかーーー!!」
銀貨と宿題用紙を引っ掴み、怒った彼女の様な捨て台詞を残してローウェルは駆けて行ってしまった。
その様子を隣で見ていたリーフが話しかけてくる。
「お金を受け取って宿題を代わりにやるなんて感心しないけれど・・・・・・、本当に良かったの? ずっと頼んできていた子じゃない。」
「ん~、まぁ・・・・・・確かに楽に稼げるけどね。私ばっかり稼いでても悪いし。」
俺はギルドの仕事でも稼げるため問題ないが、そうでない者にとっては重要な収入源でもあるのだ。
だから高めの値段に設定しているのだが、宿題の評価も成績に影響するので、金回りの良い貴族は成績の良い俺に「それでも」と頼んできたりする。
宿題を代行させるような奴が試験で良い成績を残せるはずはないのだが、その分を宿題の方で挽回させようという胆なのだろう。
学院側は宿題の代行については黙認している。
誰かのを写そうが誰かにやらせようが、提出さえすれば問題ないのだ。
金もコネも実力の内・・・・・・というのが建前。
貴族の子が落第やら成績が悪かったりすると五月蠅いので、「だったら金で解決しろや」というのが本音である。
ちゃんと勉強すれば良いだけの話なんだけどね。
リーフと会話しながら教室を出る準備をしていると、駆けて行ったローウェルに代わって金髪ドリルツインテが特徴的な少女が俺の前に立つ。
「ちょっと良いかしら、アリューシャさん?」
名前は確か――
「えーっと・・・・・・シェラーテさんだっけ?」
家名は知らないが、普段の立ち居振る舞いから貴族であるということは分かっている。
「そうよ、枠が空いたのなら私の分をお願いするわ。」
彼女が俺の机に銀貨二枚と宿題の用紙を並べた。
「ご新規さんは銀貨六枚で前金は三枚ね。」
「あら、そうでしたの。・・・・・・これで構わないかしら?」
何食わぬ顔で机の上の銀貨を一枚増やす。
こんなものに銀貨六枚も出すなんて、随分太っ腹だな。
「ていうか・・・・・・シェラーテさんには、いつも頼んでる子がいなかったっけ?」
「貴女の方が成績が良いもの。」
「そ、そう・・・・・・分かったよ。お金を払ってくれるなら私も文句は無いし。」
「良い心掛けよ。それじゃあお願いするわね。」
そう言って彼女はさっさと教室を出て行ってしまった。
心の中で仕事を奪ってしまった誰かに謝罪しつつ、銀貨を財布に仕舞う。
別に断っても良かったのだが、それはそれで面倒事が増えるのだ。
「呆れを通り越して感心しちゃうわ、全く。」
「私もまさかあの値段で頼まれるとは思わなかったよ。断られると思ってたんだけど。お金持ちの金銭感覚は分からないね・・・・・・。まぁ、お陰で私達のご飯が豪華になるんだし。」
「他の人はどれくらいで引き受けているのかしら?」
「それは分からないけど・・・・・・さすがに銀貨六枚とかは居ないでしょ。・・・・・・多分。」
「ボクのもついでにやってよアリスぅ~。」
「だーめ、ニーナはちゃんと自分の力でやらないと。」
「はぁ~・・・・・・ボクも貴族に生まれていればなぁ~・・・・・・。」
「いや、例えニーナが貴族でも自分の力でさせるからね。」
「ええーっ!? けちー! じゃあフラムはどうなの? フラムだって宿題なんかやりたくないよね?」
「え・・・・・・ゎ、私は・・・・・・その・・・・・・。」
「やりたくないのはみんな一緒だよ。私だって面倒だし。でも、例えば剣の稽古を代わりに他の人にやらせたって、ニーナが強くなる訳じゃないでしょ?」
「そりゃあそうだけどさ・・・・・・。」
ぐずるニーナにヒノカが一言言い放つ。
「それより、さっさと支度しないと置いて行くぞ、ニーナ。」
ニーナがぐずっている間にみんなは片付けを終えていたのだ。
慌てて机から立ち上がるニーナ。
「えっ、ま、待ってよヒノカ姉ー!」
*****
初日の授業が全て終わって寮の部屋で寛いでいるとノックの音が部屋に響き、リーフが立ち上がった。
「誰かしら?」
「んー、誰かと会う予定はなかった気がするけど・・・・・・。」
みんなも首を横に振り、思い当たる節が無い事を告げる。
「まぁ・・・・・・出てみれば分かるわね。」
リーフが扉を開き、客人に応対した。
「あら、貴方は・・・・・・少し待っていてね。」
こちらへ向き直ったリーフと目が合う。
「アリス、貴女のお客さんよ。」
「はーい。」
リーフに呼ばれ扉の外へ出ると、ローウェルの姿があった。
「どうしたの、ローウェル君?」
「あの・・・・・・アリューシャちゃん。さ、さっきは・・・・・・酷い事言ってご、ごめんなさい。や、やっぱりアリューシャちゃんにお願いしたくて・・・・・・。」
酷い事・・・・・・? 何か言ってたっけ?
ローウェルが宿題の用紙を差し出す。
「別に気にしてないから良いけど・・・・・・枠はもう別の人で埋まったから締め切ってるんだよ、ごめんね。」
「そ、そんなぁ! お、お願いだよアリューシャちゃん! お金なら払うから!」
俺の手を取り、瞳をウルウルさせながら詰め寄ってくるローウェル。
傍から見れば立派な通報案件だ。
そんな職質まっしぐらなローウェルに意外なところから援護射撃が届いた。
「はぁ・・・・・・良いじゃないアリス。一人くらい増えても手間は大して変わらないのでしょう?」
側でやりとりを見ていたリーフである。
「それは、そうだけど・・・・・・。」
「お、お願いします!」
「仕方ないか・・・・・・。新規の人は銀貨六枚だから、前金は銀貨三枚ね。」
「ええっ!? さ、さっきは四枚って・・・・・・。」
「一度契約切ったでしょ。嫌なら他の人に――」
「ご、ごごごごめんなさい、アリューシャちゃん! お金なら払いますからぁ!」
「まぁ、いいか・・・・・・今まで頼んでくれてたし、銀貨五枚にまけてあげる。前金は三枚ね。」
「ほ、ほんとに!? ありがとう!!」
安堵の笑みを浮かべるローウェルから銀貨と用紙を受け取る。
「あ、あの・・・・・・アリューシャちゃん。また、仲良くしてくれるよね?」
「ん? あぁ、今後とも宜しくお願いします。」
俺の返答を聞くと、それは嬉しそうにローウェルは駆けて行ってしまった。
その後ろ姿が消えたのを確認し、リーフがポツリと漏らす。
「・・・・・・行っちゃったわね。」
「わざわざ高いお金出して私に頼まなくてもいいのにね。でもリーフがあんなこと言うなんて思わなかったけど。」
「見ていたら気の毒に思えてきてね・・・・・・。あの子、アリスの事が好きなのよ。」
「いや、流石にそれはないと思うけど。」
相手は貴族の”女の子”だぞ。
特殊な事情があるのか、男として振る舞っているようなので、一応男として接してはいる。
・・・・・・まぁ、貴族の女の子で俺の事を好きだと言ってくれる子が身近にいるけれど、その好意は家族へ向ける様な親愛に近い物だ。多分。
ミアに触発されて少々おかしな方向に行ってしまっているが。
確かにこの世界では禁止されていないため、同姓婚も可能ではある。
しかし、それは王族や貴族がいわゆる政略結婚のためにと黙認しているだけであり、少数派であることに変わりない。
それに結局、同姓の政略結婚の場合は跡取り問題もあるため、大抵は嫁ぐ側の遠い血縁女性が妾となる。
家柄の交わりを男性、血の交わりを女性が担っている訳だ。
要するに”抱き合わせ”という以外は普通の結婚と同じなのである。
難しい顔をしている俺を、くすくすとリーフが口を押さえて小さく笑った。
「ふふっ、自分の事には鈍いのね。」
「それなら・・・・・・もうちょっと吹っかけても良かったかな?」
「・・・・・・鬼ね、貴女。」
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
見上げた空は、今日もアオハルなり
木立 花音
青春
──私の想いは届かない。私には、気持ちを伝えるための”声”がないから。
幼馴染だった三人の少年少女。広瀬慎吾(ひろせしんご)。渡辺美也(わたなべみや)。阿久津斗哉(あくつとおや)。そして、重度の聴覚障害を抱え他人と上手くうち解けられない少女、桐原悠里(きりはらゆうり)。
四人の恋心が激しく交錯するなか、文化祭の出し物として決まったのは、演劇ロミオとジュリエット。
ところが、文化祭の準備が滞りなく進んでいたある日。突然、ジュリエット役の桐原悠里が学校を休んでしまう。それは、言葉を発しない彼女が出した、初めてのSOSだった。閉ざされた悠里の心の扉をひらくため、今、三人が立ち上がる!
これは──時にはぶつかり時には涙しながらも、卒業までを駆け抜けた四人の青春群像劇。
※バレンタイン・デイ(ズ)の姉妹作品です。相互にネタバレ要素を含むので、了承願います。
※表紙画像は、ミカスケ様にリクエストして描いて頂いたフリーイラスト。イメージは、主人公の一人悠里です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる