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一章 新たな出会い
1‐04 確信したこと
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◆◆◆
午後の授業を終え、放課後になった。
永睦と仁はホームルームが終わるとひと足先に三年生の教室がある別棟へ出向いたため、少し遅れて雅玖と共に向かっている。
「──なぁ、龍冴」
「ん?」
しばらくなんでもない話をしながら廊下を歩いていると、不意に雅玖に名を呼ばれ、龍冴はちらりと親友に視線を向けた。
「その……大丈夫、か?」
「あの二人もだけど、お前もお前で心配性だよなぁ」
常に明るい雅玖にしてはあまりに悲しそうな表情をするため、龍冴は軽く苦笑した。
「……大丈夫だよ、俺は」
自分に言い聞かせるように、今日三度目の言葉を唇に乗せる。
事実、雅玖はこちらが何でもないふうを装っていても、こうして気に掛けてくれる事が何度もあった。
それは友人としてではなく、それよりももっと深い──大切な存在として言ってくれているのだと理解している。
それがどんなにありがたく、また申し訳ないかこの男は分かっているのだろうか。
(嘘つけないんだよな、そこがいいとこなんだけど)
すると雅玖が居心地悪そうに頭を掻いた。
「あのさ、久世……幸と付き合ってすぐ、トラウマがあるって教えてくれたんだ。それと永睦が言ってた話が……どうも似てるんだよな」
だから、と雅玖はその場で立ち止まる。
同時に龍冴は踏み出そうとした体勢のまま固まった。
「──もしかして、お前の恋人『も』そうなんじゃないのか?」
その言葉に、頭から冷水を浴びせられた心地になる。
自分自身にどれほど 『違う』と言い聞かせても、第三者から指摘されるのとではまるきり意味合いが違った。
そして実際に合点がいってしまうのだ。
龍冴は震えそうになる声を叱咤して、なんとか声を出そうとする。
「な、……か、な」
なのに出てくるのは意味を成さない声ばかりで、ほとんど言葉として形成されない。
「……な、わけ……な、いだろ」
それでも痛いほど手を握り締め、なんとかそれだけを絞り出すと、ややあって背後に居る親友を振り向いた。
「馬鹿だな、雅玖は。そもそもあいつが言ってることは半分嘘だろうし。……いや、そう思いたい」
上手く笑えたか怪しいが、雅玖のなんとも言えない苦しげな表情を見るに失敗したのだと気付く。
龍冴はきゅうと唇を噛み締め、ぼそりと呟いた。
「……もし本当だったら、どうしたらいいんだろうな」
それこそ幸の二の舞に自分がなったも同然で、あの時の表情にも納得がいく。
けれど、どう足掻こうと椰一が自分を大切にしてくれたのは本当なのだ。
手を繋いでキスをして、つい先日も初めて身体を繋げた。
涙を流しながら『好き』や『愛してる』と言えば、『俺も』と返してくれた。
(あ、そうか……)
そこではたと気付く。
椰一の方から好意を伝えられたのは最初だけで、付き合ってからは龍冴の方から言わないと何も言ってくれなかったのだ。
といっても、やはり濁されるばかりで、はっきりとした好意は告白してくれた一回きりなのだが。
「は、っ……ははっ」
無意識に乾いた笑いが漏れる。
最後まで己を律しようとしたというのに、これでは駄目だ。
いつになく真剣な表情をする雅玖を見ていると、すべてをぶちまけてしまいたくなる。
そして、椰一が自分にしてきた数々の言葉や行為に気付いてしまったからか、信じようとした気持ちがバラバラに崩れていくのが分かった。
好きだった相手に冷める時はこんな感じなのか、と頭の片隅で思う。
唐突に笑い出した龍冴に、雅玖は何も言わず肩を抱き寄せてくれた。
普段ならば手を払いのけるところだが、今ばかりはその優しさに甘えたくなる。
ぽつぽつと他の生徒も廊下を通る中、いつしか龍冴は雅玖の背中に己の手を回して静かに泣いた。
午後の授業を終え、放課後になった。
永睦と仁はホームルームが終わるとひと足先に三年生の教室がある別棟へ出向いたため、少し遅れて雅玖と共に向かっている。
「──なぁ、龍冴」
「ん?」
しばらくなんでもない話をしながら廊下を歩いていると、不意に雅玖に名を呼ばれ、龍冴はちらりと親友に視線を向けた。
「その……大丈夫、か?」
「あの二人もだけど、お前もお前で心配性だよなぁ」
常に明るい雅玖にしてはあまりに悲しそうな表情をするため、龍冴は軽く苦笑した。
「……大丈夫だよ、俺は」
自分に言い聞かせるように、今日三度目の言葉を唇に乗せる。
事実、雅玖はこちらが何でもないふうを装っていても、こうして気に掛けてくれる事が何度もあった。
それは友人としてではなく、それよりももっと深い──大切な存在として言ってくれているのだと理解している。
それがどんなにありがたく、また申し訳ないかこの男は分かっているのだろうか。
(嘘つけないんだよな、そこがいいとこなんだけど)
すると雅玖が居心地悪そうに頭を掻いた。
「あのさ、久世……幸と付き合ってすぐ、トラウマがあるって教えてくれたんだ。それと永睦が言ってた話が……どうも似てるんだよな」
だから、と雅玖はその場で立ち止まる。
同時に龍冴は踏み出そうとした体勢のまま固まった。
「──もしかして、お前の恋人『も』そうなんじゃないのか?」
その言葉に、頭から冷水を浴びせられた心地になる。
自分自身にどれほど 『違う』と言い聞かせても、第三者から指摘されるのとではまるきり意味合いが違った。
そして実際に合点がいってしまうのだ。
龍冴は震えそうになる声を叱咤して、なんとか声を出そうとする。
「な、……か、な」
なのに出てくるのは意味を成さない声ばかりで、ほとんど言葉として形成されない。
「……な、わけ……な、いだろ」
それでも痛いほど手を握り締め、なんとかそれだけを絞り出すと、ややあって背後に居る親友を振り向いた。
「馬鹿だな、雅玖は。そもそもあいつが言ってることは半分嘘だろうし。……いや、そう思いたい」
上手く笑えたか怪しいが、雅玖のなんとも言えない苦しげな表情を見るに失敗したのだと気付く。
龍冴はきゅうと唇を噛み締め、ぼそりと呟いた。
「……もし本当だったら、どうしたらいいんだろうな」
それこそ幸の二の舞に自分がなったも同然で、あの時の表情にも納得がいく。
けれど、どう足掻こうと椰一が自分を大切にしてくれたのは本当なのだ。
手を繋いでキスをして、つい先日も初めて身体を繋げた。
涙を流しながら『好き』や『愛してる』と言えば、『俺も』と返してくれた。
(あ、そうか……)
そこではたと気付く。
椰一の方から好意を伝えられたのは最初だけで、付き合ってからは龍冴の方から言わないと何も言ってくれなかったのだ。
といっても、やはり濁されるばかりで、はっきりとした好意は告白してくれた一回きりなのだが。
「は、っ……ははっ」
無意識に乾いた笑いが漏れる。
最後まで己を律しようとしたというのに、これでは駄目だ。
いつになく真剣な表情をする雅玖を見ていると、すべてをぶちまけてしまいたくなる。
そして、椰一が自分にしてきた数々の言葉や行為に気付いてしまったからか、信じようとした気持ちがバラバラに崩れていくのが分かった。
好きだった相手に冷める時はこんな感じなのか、と頭の片隅で思う。
唐突に笑い出した龍冴に、雅玖は何も言わず肩を抱き寄せてくれた。
普段ならば手を払いのけるところだが、今ばかりはその優しさに甘えたくなる。
ぽつぽつと他の生徒も廊下を通る中、いつしか龍冴は雅玖の背中に己の手を回して静かに泣いた。
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