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四章 夏本番、近付く距離
4‐07 気付いた気持ち
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昇降口を出て小走りで校門を出ると、きょろきょろと辺りを見回す。
「先輩……っ!」
するとほど近くの道で携帯を操作している男子生徒──大和が居た。
龍冴は脚の動きをわずかに強め、大和の傍に駆け寄る。
龍冴に気付くとふっと微笑み、けれどどこか訝しげに眉を寄せた。
「おー……ってどうしたん、汗だくじゃん」
走ってきたのか、と問い掛けてくる声音はどこまでも優しい。
「っ、待たせたかな、って……」
息も耐え耐えに言うと、頭上から小さな笑い声が降ってきた。
「急がなくていいって言ったろ? 真面目だなぁ雨宮は」
くすくすと低く笑いながら、走ったせいで頬に貼り付いた髪をそっと払われ、無意識に肩が揺れる。
実際、羚架の話を聞き終えてすぐにメッセージアプリを開いたのだ。
すると大和からの返信が来ており、短く『わかった』とだけあった。
返してくれた時間から十五分ほどが経っており、怒らせたと思って急いできたのだ。
けれど既に帰宅していると思っていたところもあって、優しい言葉を掛けられた事実が少し痛かった。
「おこって、ない……ですか」
「それこそなんでだよ。一応俺も一緒に帰ろうって言ったのに、お前のこと置いてくって薄情過ぎんだろ」
恐る恐る問い掛けると、大和が呆れたように頭に手を置いてきた。
「ちょ、先輩……!」
そのままわしゃわしゃと撫でられ、龍冴は慌てて離れようとする。
校門を出てくる生徒が少ないとはいえ、まだ雅玖を始めとした他の友人に見られるとも限らない。
この場面を見られでもして、もし永睦や仁が突っかかってきたら正常な判断をできそうになかった。
「んー?」
なんだ、と口角を上げて尋ねられる。
「っ」
その表情を見た瞬間、とくんと心臓が甘く跳ねた。
抱き締められた事や優しい声、そして聞き間違いであっても『離れたくない』という言葉を、昨日の今日で忘れられるほど鳥頭ではなかった自分を呪う。
(やっぱ俺、おかしいのかもしれない)
少しずつ大和の行動や声音に目がいくと同時に、自分の気持ちを自覚する。
ここまで距離感が近いのはきっと自分だけで、特別なのかと勘違いしてしまいそうだった。
そもそも大和が同級生らと話しているのは見たことがなくて、普段の彼がどんな人間なのかは未知数だ。
他の二年生とはこれといって会話らしい会話をした事がないが、何かしらの噂があるのは知っている。
そこから大和の耳に龍冴の名が入り、ずっと自分と話したかったということも。
「──ま、いっか。帰ろう、雨宮」
頭に触れてくる温もりが離れた代わりに、ぽんと背中を押されて歩くよう促される。
けれどその手で肩を抱き寄せられ、龍冴は目を白黒させた。
「や、こんなくっつかなくて大丈夫ですから!」
喉から絞り出すように叫び、だというのに大和はどこ吹く風で更に密着してくる。
「でも危ないだろ? また勝手にどっか行くだろうし」
「なんの話してるんですか!?」
悲鳴が出そうになるがなんとか気合で持ち堪え、それでも反射的に突っ込むのは変わらない。
龍冴の恋愛対象が男女どちらもだと知っているはずだが、もし自分が同じ立場にあって突然こういうことをされるとどう思うのか、考えた事がないのだろうか。
それほど唐突な行動で、なのに離れたくないと思うのはなぜなのか。
(嬉しい、から……?)
それは自然と芽生えた感情で、次第に形を変えていくのが分かった。
けれど即座に『違う』と心の中で付け足す。
(先輩のことが好き、だからだ)
今の今まで一目惚れには縁遠く、それ以前に寄ってくる者が面倒だったため、無意識に『友達から好きになっていた』だけなのだ。
たとえ泣いている時に優しくされていなくても、どこかで大和の人となりを知って、気付けば好きになっていただろう。
「……もう我慢ならん」
すると低く重厚な声が背後から響いた。
「先輩……っ!」
するとほど近くの道で携帯を操作している男子生徒──大和が居た。
龍冴は脚の動きをわずかに強め、大和の傍に駆け寄る。
龍冴に気付くとふっと微笑み、けれどどこか訝しげに眉を寄せた。
「おー……ってどうしたん、汗だくじゃん」
走ってきたのか、と問い掛けてくる声音はどこまでも優しい。
「っ、待たせたかな、って……」
息も耐え耐えに言うと、頭上から小さな笑い声が降ってきた。
「急がなくていいって言ったろ? 真面目だなぁ雨宮は」
くすくすと低く笑いながら、走ったせいで頬に貼り付いた髪をそっと払われ、無意識に肩が揺れる。
実際、羚架の話を聞き終えてすぐにメッセージアプリを開いたのだ。
すると大和からの返信が来ており、短く『わかった』とだけあった。
返してくれた時間から十五分ほどが経っており、怒らせたと思って急いできたのだ。
けれど既に帰宅していると思っていたところもあって、優しい言葉を掛けられた事実が少し痛かった。
「おこって、ない……ですか」
「それこそなんでだよ。一応俺も一緒に帰ろうって言ったのに、お前のこと置いてくって薄情過ぎんだろ」
恐る恐る問い掛けると、大和が呆れたように頭に手を置いてきた。
「ちょ、先輩……!」
そのままわしゃわしゃと撫でられ、龍冴は慌てて離れようとする。
校門を出てくる生徒が少ないとはいえ、まだ雅玖を始めとした他の友人に見られるとも限らない。
この場面を見られでもして、もし永睦や仁が突っかかってきたら正常な判断をできそうになかった。
「んー?」
なんだ、と口角を上げて尋ねられる。
「っ」
その表情を見た瞬間、とくんと心臓が甘く跳ねた。
抱き締められた事や優しい声、そして聞き間違いであっても『離れたくない』という言葉を、昨日の今日で忘れられるほど鳥頭ではなかった自分を呪う。
(やっぱ俺、おかしいのかもしれない)
少しずつ大和の行動や声音に目がいくと同時に、自分の気持ちを自覚する。
ここまで距離感が近いのはきっと自分だけで、特別なのかと勘違いしてしまいそうだった。
そもそも大和が同級生らと話しているのは見たことがなくて、普段の彼がどんな人間なのかは未知数だ。
他の二年生とはこれといって会話らしい会話をした事がないが、何かしらの噂があるのは知っている。
そこから大和の耳に龍冴の名が入り、ずっと自分と話したかったということも。
「──ま、いっか。帰ろう、雨宮」
頭に触れてくる温もりが離れた代わりに、ぽんと背中を押されて歩くよう促される。
けれどその手で肩を抱き寄せられ、龍冴は目を白黒させた。
「や、こんなくっつかなくて大丈夫ですから!」
喉から絞り出すように叫び、だというのに大和はどこ吹く風で更に密着してくる。
「でも危ないだろ? また勝手にどっか行くだろうし」
「なんの話してるんですか!?」
悲鳴が出そうになるがなんとか気合で持ち堪え、それでも反射的に突っ込むのは変わらない。
龍冴の恋愛対象が男女どちらもだと知っているはずだが、もし自分が同じ立場にあって突然こういうことをされるとどう思うのか、考えた事がないのだろうか。
それほど唐突な行動で、なのに離れたくないと思うのはなぜなのか。
(嬉しい、から……?)
それは自然と芽生えた感情で、次第に形を変えていくのが分かった。
けれど即座に『違う』と心の中で付け足す。
(先輩のことが好き、だからだ)
今の今まで一目惚れには縁遠く、それ以前に寄ってくる者が面倒だったため、無意識に『友達から好きになっていた』だけなのだ。
たとえ泣いている時に優しくされていなくても、どこかで大和の人となりを知って、気付けば好きになっていただろう。
「……もう我慢ならん」
すると低く重厚な声が背後から響いた。
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