【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華

文字の大きさ
72 / 91
六章 本当の終わりと始まり

6‐02 暴露

しおりを挟む
「……どういうこと?」

 大和の言葉を上手く呑み込めなかったのか、椰一の隣りに立つ女の子はそれだけを呟く。

 大きく見開かれた瞳は今にも涙が零れそうで、今の今まで絡めていた腕を解くと、椰一の目の前に立った。

『恋人』を見上げる表情が可哀想なくらい歪み、じわじわと修羅場の起こりそうな気配が周囲に満ちていく。

「わたしに嘘いてたってこと? 浮気してないって言ったのに、初めて出来た恋人だって言ってくれたのに……全部嘘だったの……!?」

 周囲の喧騒に負けず劣らず、怒った少女の声はよく響く。

 同時にこちらをちらちらと見つめてくる視線を嫌でも感じ、少し嫌悪感があった。

 けれど椰一に向けられた言葉を同じく付き合った当初に言われたため、面と向かって擁護ようごできない。

 いや、そもそもどんな理由があろうと浮気をされて別れた相手だ。

 こちらに未練がないのならば、偶然を装って話し掛けないだろう。

(本当にとんだクズだ)

 幸いなことに、大和が言いたいことをすべて言ってくれた。

 顔を合わせる事になるとは思わなかったが、他人の口から改めて同じ言葉を聞くと吐き気がしてくる。

 それが椰一の常套句じょうとうくなのか、元からこういう性格なのか、最早『距離を置こう』と言った時に思ったことと同様の感情は無かった。

「うっ……ううっ」

 耐え切れず、ほろほろと涙を零すその子の小さく細い肩を、椰一の手が摑もうとする。

「違う、違うんだ……紬希つむぎ

 弁明する気持ちはあるのか、それでも女の子──紬希にとってこれ以上ないほど逆効果だろう。

 もう少しで肩に触れそうになった刹那、一回り以上は大きな手を少女のそれが払い除けた。

「触らないで……!」

 ぱしっと小気味よい音が大きく響き、同時に椰一の瞳が大きく見開かれる。

「は、っ……?」

 何をされたのか脳が正常に動いていないらしく、みるみるうちに椰一の眉が釣り上がるのが見て取れた。

「もういい。もう……やっくんなんて嫌い!」

 しかし椰一が唇を動かすよりも早く、紬希はそれだけを吐き捨てるように言うと、こけつまろびつ人にぶつかりそうになりながらゲーセンの出入り口へ走っていった。

 椰一は二歩三歩と歩き出し、そのまま後を追い掛けるのかと思ったが、以降は何をするでもなく立ち尽くす形になる。

 丁度龍冴と大和に背を向けているため、その表情は見えない。

「……なぁ」

 けれど椰一の背中から得も言われない寂しさと、それ以上の怒りを感じ取った。

 今言うべきではない、何も言うなと脳は警告しているものの、これを逃がせばそのままになってしまう予感がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小石の恋

キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。 助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。 なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。 果たして律紀は逃げ切ることができるのか。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の (本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である) 異世界ファンタジーラブコメ。 魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、 「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」 そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。 魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。 ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。 彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、 そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』 と書かれていたので、うっかり 「この先輩、人間嫌いとは思えないな」 と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!? この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、 同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、 「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」 「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」 とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑) キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、 そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。 全年齢対象です。 BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・ ぜひよろしくお願いします!

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル
BL
【完結】 ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。 けど、話してみると違和感がある。 これは、嫌っているっていうより……。 どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。 ほのぼの青春BLです。 ◇◇◇◇◇ 全100話+あとがき ◇◇◇◇◇

君の紡ぐ言葉が聴きたい

月内結芽斗
BL
宮本奏は自分に自信がない。人前に出ると赤くなったり、吃音がひどくなってしまう。そんな奏はクラスメイトの宮瀬颯人に憧れを抱いていた。文武両道で顔もいい宮瀬は学校の人気者で、奏が自分を保つために考えた「人間平等説」に当てはまらないすごい人。人格者の宮瀬は、奏なんかにも構ってくれる優しい人だ。そんなふうに思っていた奏だったが、宮瀬は宮瀬で、奏のことが気になっていた。席が前後の二人は知らず知らずにお互いの想いを募らせていって……。/BL。ピュアな感じを目指して描いています。/小説家になろう様でも公開しております。

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

処理中です...