【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華

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六章 本当の終わりと始まり

6‐04 何を言ってるんだ

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「──なんだそれ」

「っ」

 するとすぐ傍から声が聞こえ、龍冴は機械仕掛けの人形のようにそちらを向いた。

「仮にも恋人だったのに、普通そんなこと言わないだろ」

 見れば、大和が一歩進み出ていたのだ。

「……なのに自分が今までやってきた事は言わないどころか、自分は何も知りませんでした、って言おうとしてるのか? 言い訳してんじゃねぇぞ」

 大和はあくまで話し合いに徹しようとしているのか、または迫りくる怒りを懸命に抑えているのか、きつく握り締めている手の平が痛々しい。

「雨宮がどんだけ傷付いて、泣いたと思ってる。助けてって言われた俺が、どんだけ可哀想で……守ってやらないとって」

 しかしそこで言葉を切ると、大和は深く息を吐いた。

 これ以上言ってしまえば殴り掛かりそうな、一歩間違えれば危ない雰囲気をかもし出しているため、椰一の味方という訳ではないが少し安堵する。

 そもそも、今居る場所は機械音ばかりで騒がしいとはいえ、周囲には少なからず人が居るのだ。

 怒りのまま出そうになる声を抑えていても、ほんの少し加減を間違えればすぐに注目されてしまうだろう。

 不特定多数の人間が集まっていて、それぞれが目の前のゲームや友人らと遊ぶ事に夢中になっているが、この声量でも大和は抑えている方なのだと思う。

「……知らねぇだろ、お前はあの日他の奴と──雨宮の友達と、楽しそうに帰ってったから」

「え」

 不意に発されたそれに、龍冴は軽く目を瞠る。

 大和は確かに『龍冴の友達』だと、はっきりと言った。

 けれど『あの日』がいつなのか分からず、加えてそこから先が初耳だったため、すぐには信じられなかった。

「駅前で……なんだっけ、さかってたんだっけ? それ見て、またかって思ったよ。アンタの噂は俺ら後輩サッカー部にまで流れてるし」

 呆れを隠そうともしない声で、大和が椰一を見つめながら続ける。

「な、っ……!」

 椰一はぎりりと拳を握り締める。

 先程よりも大きく見開かれた瞳は、内なる感情を懸命に堪えているようだった。

 もっとも、その他大勢の居る前で殴り掛かったりしたら、必然的に騒ぎになる。

 けれど幸いなことに──大和が静かな声低音で話しているというのもあるが、周囲の雑音に紛れている。

 仮にこちらに視線を寄越す人間が居ても、さして気にしたふうはないのが救いだろう。

 ──怒りに身を任せた椰一が声を荒げでもしない限り、という話だが。

「知らなかった、って顔だな。……そりゃあそうだ、皆アンタに狙われるのが怖くて、大人しくしてたんだ。本当、嫌だったと思うぜ? エースで主将だってのに、二人きりになったら狙われて、犯される手前の事されて」
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