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六章 本当の終わりと始まり
6‐06 言葉の真意
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「あ、の……」
龍冴は未だ手首を摑まれたまま、小声で問い掛ける。
何も言えないでいる椰一を置いて、ゲーセンのあるビルを出てどれほど経っただろうか。
辺りはいつの間にか繁華街に近付いてきており、けれど大和はどこかへ向かっているようだ。
思っていたよりも足取りが速過ぎて、足がもつれないよう着いていくだけでやっとだった。
「鷹月、先輩。……先輩ってば」
どれほど呼び掛けても、大和は椰一からはもちろん、周囲の人々からも逃げているように見受けられる。
何度も小さく大和のことを呼んでも、こちらを見て足を止めることはおろか、少しも答えてくれなかった。
一方的に摑まれている手首がそろそろ痛くなってきて、同時に気恥ずかしさが大きくなっていく。
周囲を通り過ぎていく人間達は、男二人──片方が引っ張られる形で歩いているのを、気にも留めていないと頭では理解している。
しかし、どうしてか誰かから見られている気がしてならないのだ。
「……い、たっ」
ぴき、と手首が軋む感覚を覚えると同時に堪らず呟くと、そこで手首を拘束する力がわずかに緩んだ。
しかし完全に離してくれる気はないらしく、大和はこちらを振り向くと申し訳なさそうに眉根を寄せる。
「ごめん、俺……必死、で」
どこか戸惑った表情は、本当に先程見た男と同一人物なのか疑ってしまうほどだ。
加えて今の今まで気付かなかったが、大和は小刻みに震えていた。
手首から伝わる温もりにかすかな震えも合わさって、形容し難い感情が頭をもたげた。
(俺のために、こんな……)
それは申し訳なさからか、もしくは何もできずただ黙っているしかできなかった、自分に対する嫌悪感か。
どちらであれ、今は目の前の大和の方が大事だ。
今になって椰一へ放った言葉や失態を自覚したのか、顔面蒼白になっているのだから。
「……巻き込んだのは俺だから。先輩は悪くないです」
安心させるようにやんわりと微笑むも、大和はばつが悪そうな表情でがしがしと頭を掻く。
「あー、……違うんだ」
「ちが、う……?」
何がなのか、と無意識に顔に出ていたのだろう。
大和は淡く口角を上げると、するりと手首を摑んでいた手を離してきた。
じんじんと摑まれていた箇所が痛んだが、これくらいならばどうということはない。
龍冴は大和がUFOキャッチャーで獲ってくれたぬいぐるみを抱え直し、次に繰り出される言葉を待った。
時間にして十秒にも満たなかったものの、ゆっくりと薄い唇が動く。
「……俺、ほんとはこんなこと言わなくて。けど、あの人には一回ざまあみろって、思ったこと言っておきたかったというか」
やがて放たれたそれはぼそぼそと小声で、最後の方は掠れていたというのに加えて、この喧騒だ。
ほとんど聞き取れなかったものの、ぼんやりとながら理解する。
(あいつに喧嘩、売ったんだ)
終ぞ椰一が大和の言葉に応える事はなかったものの、部活で他の仲間達と共にサッカーをしていたのだ。
大和は部活に入っていなかったが、同級生らから椰一のよくない噂を毎日のように聞かされていたのかもしれない。
だから、あれはサッカー部に所属している人間達の嘘偽りない本音だ。
なぜこんな事をするのか、なぜやめようと思わないのか、面と向かって言えない者達を代表して、大和がぶつけたのだろう。
大和の真意こそ分からないが、きっとこの予想は当たっている──そんな予感がした。
龍冴は未だ手首を摑まれたまま、小声で問い掛ける。
何も言えないでいる椰一を置いて、ゲーセンのあるビルを出てどれほど経っただろうか。
辺りはいつの間にか繁華街に近付いてきており、けれど大和はどこかへ向かっているようだ。
思っていたよりも足取りが速過ぎて、足がもつれないよう着いていくだけでやっとだった。
「鷹月、先輩。……先輩ってば」
どれほど呼び掛けても、大和は椰一からはもちろん、周囲の人々からも逃げているように見受けられる。
何度も小さく大和のことを呼んでも、こちらを見て足を止めることはおろか、少しも答えてくれなかった。
一方的に摑まれている手首がそろそろ痛くなってきて、同時に気恥ずかしさが大きくなっていく。
周囲を通り過ぎていく人間達は、男二人──片方が引っ張られる形で歩いているのを、気にも留めていないと頭では理解している。
しかし、どうしてか誰かから見られている気がしてならないのだ。
「……い、たっ」
ぴき、と手首が軋む感覚を覚えると同時に堪らず呟くと、そこで手首を拘束する力がわずかに緩んだ。
しかし完全に離してくれる気はないらしく、大和はこちらを振り向くと申し訳なさそうに眉根を寄せる。
「ごめん、俺……必死、で」
どこか戸惑った表情は、本当に先程見た男と同一人物なのか疑ってしまうほどだ。
加えて今の今まで気付かなかったが、大和は小刻みに震えていた。
手首から伝わる温もりにかすかな震えも合わさって、形容し難い感情が頭をもたげた。
(俺のために、こんな……)
それは申し訳なさからか、もしくは何もできずただ黙っているしかできなかった、自分に対する嫌悪感か。
どちらであれ、今は目の前の大和の方が大事だ。
今になって椰一へ放った言葉や失態を自覚したのか、顔面蒼白になっているのだから。
「……巻き込んだのは俺だから。先輩は悪くないです」
安心させるようにやんわりと微笑むも、大和はばつが悪そうな表情でがしがしと頭を掻く。
「あー、……違うんだ」
「ちが、う……?」
何がなのか、と無意識に顔に出ていたのだろう。
大和は淡く口角を上げると、するりと手首を摑んでいた手を離してきた。
じんじんと摑まれていた箇所が痛んだが、これくらいならばどうということはない。
龍冴は大和がUFOキャッチャーで獲ってくれたぬいぐるみを抱え直し、次に繰り出される言葉を待った。
時間にして十秒にも満たなかったものの、ゆっくりと薄い唇が動く。
「……俺、ほんとはこんなこと言わなくて。けど、あの人には一回ざまあみろって、思ったこと言っておきたかったというか」
やがて放たれたそれはぼそぼそと小声で、最後の方は掠れていたというのに加えて、この喧騒だ。
ほとんど聞き取れなかったものの、ぼんやりとながら理解する。
(あいつに喧嘩、売ったんだ)
終ぞ椰一が大和の言葉に応える事はなかったものの、部活で他の仲間達と共にサッカーをしていたのだ。
大和は部活に入っていなかったが、同級生らから椰一のよくない噂を毎日のように聞かされていたのかもしれない。
だから、あれはサッカー部に所属している人間達の嘘偽りない本音だ。
なぜこんな事をするのか、なぜやめようと思わないのか、面と向かって言えない者達を代表して、大和がぶつけたのだろう。
大和の真意こそ分からないが、きっとこの予想は当たっている──そんな予感がした。
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