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六章 本当の終わりと始まり
6‐09 嘘偽りない気持ち
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「そうやって、俺から距離を取ろうと頑張ってるところとか」
ゆっくりと言いながら、大和が人ひとり分も満たない距離を詰めてくる。
まだ隣りに人が居るためこれ以上後ろに下がれず、かと言って立つわけにもいかず、龍冴は身体を強張らせる。
「……好きです、って気持ちが顔に出てるところとか」
言いながら、大和が更に顔を近付けてきた。
ぬいぐるみを抱いているお陰で、ある程度は大和と距離があるものの、無ければどうなっているかあまり考えたくなかった。
仮にも公の場であるため、軽く触れてくる事はあってもキスされる事は十分にある。
丁度ぬいぐるみを持っているというのもあり、隠すなりして口付けてくるだろう。
そんな仮定を想像したからか、意図していた事が起ころうとしているのだ。
(な、なん……いや、違う。先輩は、そんなこと……しない)
心の中で何度も『違う』と唱えても、大和がゆっくりと近付いてくる。
顔を傾ければ唇が触れ合いそうな距離で、しかし大和はそこで止めた。
「可愛いなって。……本当、いじらしくて可愛い。そういう顔もだけど……他の奴に笑い掛けてほしくない、って思ったんだ」
互いの吐息が分かるほどのそれは、公衆の面前だというのに少しも辺りを気にしていないようだった。
他人の視線を気にしているのは自分だけのようで、なのにすぐには大和の言葉を信じられない。
待ち合わせスポットだからか常に誰かがこの近くを通り、龍冴はもちろん大和の座っている隣りにも人が居るというのに。
「先輩は、俺のこと、すき……って、ことでいい、んです……よね?」
震える声もそのままに、なんとかそれだけを口にする。
言葉を紡ぐのはとぎれとぎれながらも、反対に頭の中は目まぐるしく動いている。
改めて大和の声が、言葉が、今ひとつ現実だとは思えないのだ。
まだはっきりと『好き』とは言われていないのに、それ以前に数多の人が居る前で言う事ではないと思う。
公開処刑もいいところだ。
たくさんの衆目に晒され、こちらを見ていないにしても、近くに居る人間は聞き耳を立てているかもしれない。
そう思ってしまうほど、自分は浮かれているか恐怖しているのだ。
(同じ男で、こんな……俺を好きになってくれて)
自分で言うのもなんだが、自己肯定感が高い方だとは思っていない。
むしろ落ち込んでばかりで、ほんの少し誰かに強い言葉を向けられれば一人で泣くほどだ。
むろん、そういうことをする人間は身内はもちろん、友人にもいないのだが。
「……信じてくれない?」
大和がやや眉根を寄せ、そっと尋ねてくるのが視界に入った。
その表情がまるで幼い子供のようで、わざとなのか知らないが、龍冴の中にある庇護欲を唆られると気付いていないのだろうか。
(そんな顔、ずるい……)
なのに大和の瞳の奥には、龍冴も同じ気持ちなのだという確信と、確かな情欲の炎が見え隠れしていた。
感情が顔に出やすいのは自覚していて、直そうと何度も試みている。
けれど大事な時、特に今のようなかすかな緊張感がある中、たった一言ですら唇が縫い付けられてしまったかのような心地になってしまうのだ。
早く早くと思うのに、意思に反して少しも唇が動かないのが嫌でならなかった。
それでも大和は急かすでもなく、じっと待ってくれている。
(ずるいよ、本当に)
「っ……!」
するとぬいぐるみを抱き締めている腕に遠慮がちに触れられ、反射的に大和の方を見やった。
じっと見つめてくる瞳は真剣そのもので、こちらの感情など既に分かっているかのようだった。
そう考えていることすら顔に出ていたのだろう。
大和がかすかに腕に触れているそれに力を込め、ゆっくりと唇を開く。
ゆっくりと言いながら、大和が人ひとり分も満たない距離を詰めてくる。
まだ隣りに人が居るためこれ以上後ろに下がれず、かと言って立つわけにもいかず、龍冴は身体を強張らせる。
「……好きです、って気持ちが顔に出てるところとか」
言いながら、大和が更に顔を近付けてきた。
ぬいぐるみを抱いているお陰で、ある程度は大和と距離があるものの、無ければどうなっているかあまり考えたくなかった。
仮にも公の場であるため、軽く触れてくる事はあってもキスされる事は十分にある。
丁度ぬいぐるみを持っているというのもあり、隠すなりして口付けてくるだろう。
そんな仮定を想像したからか、意図していた事が起ころうとしているのだ。
(な、なん……いや、違う。先輩は、そんなこと……しない)
心の中で何度も『違う』と唱えても、大和がゆっくりと近付いてくる。
顔を傾ければ唇が触れ合いそうな距離で、しかし大和はそこで止めた。
「可愛いなって。……本当、いじらしくて可愛い。そういう顔もだけど……他の奴に笑い掛けてほしくない、って思ったんだ」
互いの吐息が分かるほどのそれは、公衆の面前だというのに少しも辺りを気にしていないようだった。
他人の視線を気にしているのは自分だけのようで、なのにすぐには大和の言葉を信じられない。
待ち合わせスポットだからか常に誰かがこの近くを通り、龍冴はもちろん大和の座っている隣りにも人が居るというのに。
「先輩は、俺のこと、すき……って、ことでいい、んです……よね?」
震える声もそのままに、なんとかそれだけを口にする。
言葉を紡ぐのはとぎれとぎれながらも、反対に頭の中は目まぐるしく動いている。
改めて大和の声が、言葉が、今ひとつ現実だとは思えないのだ。
まだはっきりと『好き』とは言われていないのに、それ以前に数多の人が居る前で言う事ではないと思う。
公開処刑もいいところだ。
たくさんの衆目に晒され、こちらを見ていないにしても、近くに居る人間は聞き耳を立てているかもしれない。
そう思ってしまうほど、自分は浮かれているか恐怖しているのだ。
(同じ男で、こんな……俺を好きになってくれて)
自分で言うのもなんだが、自己肯定感が高い方だとは思っていない。
むしろ落ち込んでばかりで、ほんの少し誰かに強い言葉を向けられれば一人で泣くほどだ。
むろん、そういうことをする人間は身内はもちろん、友人にもいないのだが。
「……信じてくれない?」
大和がやや眉根を寄せ、そっと尋ねてくるのが視界に入った。
その表情がまるで幼い子供のようで、わざとなのか知らないが、龍冴の中にある庇護欲を唆られると気付いていないのだろうか。
(そんな顔、ずるい……)
なのに大和の瞳の奥には、龍冴も同じ気持ちなのだという確信と、確かな情欲の炎が見え隠れしていた。
感情が顔に出やすいのは自覚していて、直そうと何度も試みている。
けれど大事な時、特に今のようなかすかな緊張感がある中、たった一言ですら唇が縫い付けられてしまったかのような心地になってしまうのだ。
早く早くと思うのに、意思に反して少しも唇が動かないのが嫌でならなかった。
それでも大和は急かすでもなく、じっと待ってくれている。
(ずるいよ、本当に)
「っ……!」
するとぬいぐるみを抱き締めている腕に遠慮がちに触れられ、反射的に大和の方を見やった。
じっと見つめてくる瞳は真剣そのもので、こちらの感情など既に分かっているかのようだった。
そう考えていることすら顔に出ていたのだろう。
大和がかすかに腕に触れているそれに力を込め、ゆっくりと唇を開く。
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