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六章 本当の終わりと始まり
6‐08 告白の返事
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(先輩は……平気なのかな)
口を開けば心臓が飛び出しそうで、けれど隣りを見る勇気はひと欠片も無い。
龍冴は努めて道行く人々に視線を向け、それだけでは飽き足らず、ぬいぐるみを抱き締めて溢れそうになる気持ちを抑えつけた。
いつ大和が口を開くか分からないため、時折それとなく耳をそば立てる。
端から見れば互いに無言なのはもちろん、片方は顔を俯けていて、もう片方は何をするでもなく通行人をじっと見ているのだ。
見る人が見ればおかしいと思うかもしれないが、時々通行人の一人と目が合うと少し頬を染めて通り過ぎていくのがなぜなのか分からない。
そこは龍冴の顔面偏差値が高いからだが、本人はただただ大和からの返事を聞き取るのに必死だった。
けれど隣りに座る大和の顔を見れないから、こうなっているのに気付いていない。
「──本当は」
やがて、ぽつりと小さな声が聞こえた。
こうして聴力に意識を集中させていなければ、聞き漏らしてしまいそうなほど小さな声だった。
「本当は、好きって言ってくれて嬉しかった。……ありがとな」
「い、え」
まさか礼を言われるとは思わず、龍冴は反射的に小さく頭を下げる。
同時に断られそうな口調だったため、意図せず心臓が嫌な音を立てたのは内緒だ。
「……正直、俺も好きって返したかったんだ」
大和の声はどこまでも冷静で、なのに寂しげに聞こえた。
それがなぜなのか分かるようで分からず、しかしその疑問はすぐに解消された。
「でも……あの時、雨宮が泣いてるのを見たからかな。優しくしたから、勘違いしてるんだって思った。……思おうとした」
そこで大和は言葉を切り、やや俯けていた顔を上げる。
龍冴が大和の方に視線を向けたのはほとんど同時で、真正面から、それも至近距離で瞳が交わった。
「っ……!」
(近過ぎるんですが……!)
龍冴は反射的に距離を取ろうと、かすかに後ろに下がる。
けれど先程までいなかった人が二十センチほど空けて座っていたため、それも叶わなくなった。
そんな龍冴の反応を見て、大和がくすりと笑うのが気配で分かった。
「せ、先輩……?」
羞恥心を押し殺して大和を呼ぶと、小さく肩を揺らしているのが目に入る。
忍び笑いをするのがあまり大和らしくなくて、なのに心臓が次第に高鳴っていった。
これから放たれる言葉を期待しているかのようで──実際、間違ってはいないのだが──、恐怖もある。
どんな言葉であれ、堪えきれずに泣いてしまう気がしたのだ。
幼い頃はほとんど泣かない、むしろ勝ち気な性格だったが成長するにつれて涙腺が脆くなった。
こうなったのは高校に上がる前からだった気もするが、感情表現が豊かになりつつあるのかもしれない、と場違いなことを考える。
「ごめん、笑って」
くすくすと、まだ笑いの収まっていない声で大和が言う。
けれどすぐに立て直すと、柔らかな声で続けた。
「……早い話、お前があんまり分かりやすい反応するから、何が本当で嘘なのか分からなくなった。なのに」
「え、っ……?」
そこで大和が言葉を切るのと、龍冴が小さく声を上げるのは同時だった。
口を開けば心臓が飛び出しそうで、けれど隣りを見る勇気はひと欠片も無い。
龍冴は努めて道行く人々に視線を向け、それだけでは飽き足らず、ぬいぐるみを抱き締めて溢れそうになる気持ちを抑えつけた。
いつ大和が口を開くか分からないため、時折それとなく耳をそば立てる。
端から見れば互いに無言なのはもちろん、片方は顔を俯けていて、もう片方は何をするでもなく通行人をじっと見ているのだ。
見る人が見ればおかしいと思うかもしれないが、時々通行人の一人と目が合うと少し頬を染めて通り過ぎていくのがなぜなのか分からない。
そこは龍冴の顔面偏差値が高いからだが、本人はただただ大和からの返事を聞き取るのに必死だった。
けれど隣りに座る大和の顔を見れないから、こうなっているのに気付いていない。
「──本当は」
やがて、ぽつりと小さな声が聞こえた。
こうして聴力に意識を集中させていなければ、聞き漏らしてしまいそうなほど小さな声だった。
「本当は、好きって言ってくれて嬉しかった。……ありがとな」
「い、え」
まさか礼を言われるとは思わず、龍冴は反射的に小さく頭を下げる。
同時に断られそうな口調だったため、意図せず心臓が嫌な音を立てたのは内緒だ。
「……正直、俺も好きって返したかったんだ」
大和の声はどこまでも冷静で、なのに寂しげに聞こえた。
それがなぜなのか分かるようで分からず、しかしその疑問はすぐに解消された。
「でも……あの時、雨宮が泣いてるのを見たからかな。優しくしたから、勘違いしてるんだって思った。……思おうとした」
そこで大和は言葉を切り、やや俯けていた顔を上げる。
龍冴が大和の方に視線を向けたのはほとんど同時で、真正面から、それも至近距離で瞳が交わった。
「っ……!」
(近過ぎるんですが……!)
龍冴は反射的に距離を取ろうと、かすかに後ろに下がる。
けれど先程までいなかった人が二十センチほど空けて座っていたため、それも叶わなくなった。
そんな龍冴の反応を見て、大和がくすりと笑うのが気配で分かった。
「せ、先輩……?」
羞恥心を押し殺して大和を呼ぶと、小さく肩を揺らしているのが目に入る。
忍び笑いをするのがあまり大和らしくなくて、なのに心臓が次第に高鳴っていった。
これから放たれる言葉を期待しているかのようで──実際、間違ってはいないのだが──、恐怖もある。
どんな言葉であれ、堪えきれずに泣いてしまう気がしたのだ。
幼い頃はほとんど泣かない、むしろ勝ち気な性格だったが成長するにつれて涙腺が脆くなった。
こうなったのは高校に上がる前からだった気もするが、感情表現が豊かになりつつあるのかもしれない、と場違いなことを考える。
「ごめん、笑って」
くすくすと、まだ笑いの収まっていない声で大和が言う。
けれどすぐに立て直すと、柔らかな声で続けた。
「……早い話、お前があんまり分かりやすい反応するから、何が本当で嘘なのか分からなくなった。なのに」
「え、っ……?」
そこで大和が言葉を切るのと、龍冴が小さく声を上げるのは同時だった。
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一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
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