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六章 本当の終わりと始まり
6‐13 お前が好きだ
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「──おれ、は」
顔を見たのとほとんど同時に、大和の声がやけに大きく響いた。
ほんの少し上擦ったそれは緊張のためか、あまりに頼りなく聞こえた。
「雨宮の……龍冴のこと、好きだよ」
「っ……!」
まっすぐに見つめられながら紡がれるには真剣で、ともすれば泣きたくなるほど真摯な声だった。
呼ばれたのが名前というのももちろん、これほど心からの告白を受けたのはこれが初めてだ。
今の今まで告白される事は何度もあったが、どこか真実味がなかったのは否めない。
本当に自分のことが好きなのか、一目惚れというのは嘘ではないのか、そして何より同じ気持ちを返せるのかが分からなかった。
言動を間違えて面倒事になるのはごめんだったため、無意識に壁を作っていた部分はある。
自分から先に相手のことを好きになっても、こちらから告白する事は無かったし、また振られるのが怖かったから常に受け身だった。
それが大和だとどうだろう。
自分でも知らなかった愛しいという感情を、この男は引き出してくれた。
『友達から』というお決まりのセリフを言わなかったのも、自分から好意を伝えたのもこれが初めてのことだ。
「ほんと、に……?」
すぐには信じたくなくて、空耳かと思いながらぽそりとそれだけを口にする。
「うん、本当」
大和は淡く微笑んで言うと唇を閉ざし、きゅうと真一文字に引き結んだ。
襲い来る衝動を下唇を噛んで懸命に耐えているのか、下手をすれば血が滲んでしまうだろう。
「……だから」
けれど大和は何事もなかったように一歩、龍冴が下がった分だけ距離を詰める。
「あ、っ……」
今度は己が見下ろされる立場で、なのに不思議と期待で胸が震えた。
先の言葉が何か予想出来てしまったからか、どくどくと心臓がうるさく早鐘を打つ。
そんな龍冴の肩をそっと摑み、大和が顔を寄せてきた。
「抱いていいか……?」
まるで哀願するように紡がれたそれは、じわりと龍冴の心の内に入っていく。
もしくは是が非でも了承を得たいという、懇願の滲んだ声だった。
(先輩が、ほんとに……俺の、こと)
好きだと言うだけでなく、身体が欲しいと──はっきりと目を見つめられながら言われれば、誰であっても首肯してしまうだろう。
先程に比べて誤魔化すようなものではなく、ただただ龍冴の瞳を見て言ってくれている。
それは何よりも嬉しく、けれど大和らしいと思った。
頷く前に、堪らずくすりと小さな笑いが漏れる。
「そこは付き合って、じゃないんですか」
くすくすと笑う龍冴を見て、そこでやっと自身が何を口走ってしまったのか理解したらしい。
「い、いいだろそれは……! 抱きたい、のは……ほんとのこと、なんだし」
それでも、やや俯きがちにぼそぼそと口の中で呟く大和が愛おしくて、次第に口角が上がっていく。
いつだったか、あまり恋愛経験が無いと言っていたのは間違っていなかったようで、こうして初々しい反応を含めて可愛らしかった。
(初めてが男ってのもまぁ……珍しいのかもだけど)
大和の反応は改めて見ても童貞のそれで、そんな男を一から自分の好きなように染めるのも楽しそうだと思う。
問題は大和がどう『抱く』のかだが、それはこれから教えていけばいい。
二ヶ月ほどの間で片手で数えられるほどとはいえ、椰一とそういう行為をしてきたのだ。
何をどうすればいいのかは既に分かっているし、多少分からなくてもこれから知っていけばいい。
「──やっぱ気が変わった」
龍冴は低く呟きを落とすと、大和の手首を摑んだ。
「っ、何が……!?」
この行動の意味を呑み込めていないようで、龍冴は人知れず笑う。
自分もしていた事なのに、分からないのがおかしかった。
流れで地面に置いていたぬいぐるみを拾い上げ、ちらりと背後を振り返った。
「何って、するんでしょ」
言いながら大和の耳に唇を寄せる。
──えっちなこと。
囁くように言ってから顔を離すと、大和は生娘のように頬を赤くしていた。
「な、おまっ……!?」
堪らず口元を空いている手の甲で隠す大和は、本当に椰一に啖呵を切った人間なのかと思う。
「大丈夫、俺が教えるから……全部」
そんな大和に笑みを深くし、殊更ゆっくりと紡いだ言葉は自分でも驚くほど艶を帯びていた。
人が変わったみたいだ、と自分でも思う。
けれど紛れもない心からの言葉なため、これでいいのかもしれなかった。
(どっちみち、駄目なら俺が上になればいいし)
最後までできなくても、たとえ抜くだけであっても大和と『したい』と思った。
「早く入ろ、先輩」
龍冴はやや甘えた声で言いながら、大和に向けて微笑んだ。
顔を見たのとほとんど同時に、大和の声がやけに大きく響いた。
ほんの少し上擦ったそれは緊張のためか、あまりに頼りなく聞こえた。
「雨宮の……龍冴のこと、好きだよ」
「っ……!」
まっすぐに見つめられながら紡がれるには真剣で、ともすれば泣きたくなるほど真摯な声だった。
呼ばれたのが名前というのももちろん、これほど心からの告白を受けたのはこれが初めてだ。
今の今まで告白される事は何度もあったが、どこか真実味がなかったのは否めない。
本当に自分のことが好きなのか、一目惚れというのは嘘ではないのか、そして何より同じ気持ちを返せるのかが分からなかった。
言動を間違えて面倒事になるのはごめんだったため、無意識に壁を作っていた部分はある。
自分から先に相手のことを好きになっても、こちらから告白する事は無かったし、また振られるのが怖かったから常に受け身だった。
それが大和だとどうだろう。
自分でも知らなかった愛しいという感情を、この男は引き出してくれた。
『友達から』というお決まりのセリフを言わなかったのも、自分から好意を伝えたのもこれが初めてのことだ。
「ほんと、に……?」
すぐには信じたくなくて、空耳かと思いながらぽそりとそれだけを口にする。
「うん、本当」
大和は淡く微笑んで言うと唇を閉ざし、きゅうと真一文字に引き結んだ。
襲い来る衝動を下唇を噛んで懸命に耐えているのか、下手をすれば血が滲んでしまうだろう。
「……だから」
けれど大和は何事もなかったように一歩、龍冴が下がった分だけ距離を詰める。
「あ、っ……」
今度は己が見下ろされる立場で、なのに不思議と期待で胸が震えた。
先の言葉が何か予想出来てしまったからか、どくどくと心臓がうるさく早鐘を打つ。
そんな龍冴の肩をそっと摑み、大和が顔を寄せてきた。
「抱いていいか……?」
まるで哀願するように紡がれたそれは、じわりと龍冴の心の内に入っていく。
もしくは是が非でも了承を得たいという、懇願の滲んだ声だった。
(先輩が、ほんとに……俺の、こと)
好きだと言うだけでなく、身体が欲しいと──はっきりと目を見つめられながら言われれば、誰であっても首肯してしまうだろう。
先程に比べて誤魔化すようなものではなく、ただただ龍冴の瞳を見て言ってくれている。
それは何よりも嬉しく、けれど大和らしいと思った。
頷く前に、堪らずくすりと小さな笑いが漏れる。
「そこは付き合って、じゃないんですか」
くすくすと笑う龍冴を見て、そこでやっと自身が何を口走ってしまったのか理解したらしい。
「い、いいだろそれは……! 抱きたい、のは……ほんとのこと、なんだし」
それでも、やや俯きがちにぼそぼそと口の中で呟く大和が愛おしくて、次第に口角が上がっていく。
いつだったか、あまり恋愛経験が無いと言っていたのは間違っていなかったようで、こうして初々しい反応を含めて可愛らしかった。
(初めてが男ってのもまぁ……珍しいのかもだけど)
大和の反応は改めて見ても童貞のそれで、そんな男を一から自分の好きなように染めるのも楽しそうだと思う。
問題は大和がどう『抱く』のかだが、それはこれから教えていけばいい。
二ヶ月ほどの間で片手で数えられるほどとはいえ、椰一とそういう行為をしてきたのだ。
何をどうすればいいのかは既に分かっているし、多少分からなくてもこれから知っていけばいい。
「──やっぱ気が変わった」
龍冴は低く呟きを落とすと、大和の手首を摑んだ。
「っ、何が……!?」
この行動の意味を呑み込めていないようで、龍冴は人知れず笑う。
自分もしていた事なのに、分からないのがおかしかった。
流れで地面に置いていたぬいぐるみを拾い上げ、ちらりと背後を振り返った。
「何って、するんでしょ」
言いながら大和の耳に唇を寄せる。
──えっちなこと。
囁くように言ってから顔を離すと、大和は生娘のように頬を赤くしていた。
「な、おまっ……!?」
堪らず口元を空いている手の甲で隠す大和は、本当に椰一に啖呵を切った人間なのかと思う。
「大丈夫、俺が教えるから……全部」
そんな大和に笑みを深くし、殊更ゆっくりと紡いだ言葉は自分でも驚くほど艶を帯びていた。
人が変わったみたいだ、と自分でも思う。
けれど紛れもない心からの言葉なため、これでいいのかもしれなかった。
(どっちみち、駄目なら俺が上になればいいし)
最後までできなくても、たとえ抜くだけであっても大和と『したい』と思った。
「早く入ろ、先輩」
龍冴はやや甘えた声で言いながら、大和に向けて微笑んだ。
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