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二章 復讐のその後
58 番外編3 ウインドウショッピング
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春夜君に行きたいお店を聞いた。彼は自らの頬を人差し指で掻き「えっと……」と呟いた後、口ごもった。
「春夜君?」
「そうですね……あっ! あっちの方に靴専門の店がありましたよね? 見に行きませんか?」
「う、うん! 行こう!」
春夜君の探している物は靴なのかもしれない。
それにしても。今日の春夜君、ちょっとどこか……様子がおかしい? まだ考え事をしているのかな?
ショッピングモールの中央に幅の広い通路がある。靴屋さんの方向へ歩いた。もちろん春夜君にくっついた状態で。
途中、右手にあるお店のショーウィンドウを眺めていた。マネキンにコーディネートされた物の一つに視線を奪われる。ふわふわした素材の白いマフラーで「いいな、あったかそうだなぁ」と、ぼーっと思考しつつ通り過ぎた。
直後にハッとした。振り向く。もう一度ショーウィンドウを見た。
「明?」
私が後ろを気にしたので春夜君も立ち止まった。
「あっ、ごめんね。何でもないの。早く靴屋さんに行こう?」
焦って促した。ここで気取られる訳にはいかない。
白いマフラーを見て思った。春夜君へのクリスマスプレゼントをマフラーにしたらどうかなって。
ただ、色は白じゃない方がいいかも。春夜君に似合いそうな色のマフラーを今度探してみよう。
靴屋さんの前に到着した。「春夜君の探し物をチェックしながら、私も自分の気になる靴を試してみたいな」と考えていた。
「こんにちは」
耳に届いた声に顔を上げた。靴屋さんの右にあるお店の店員さんらしい女性に朗らかな笑顔で会釈された。
「あ……っ、こんにちは!」
春夜君がどこか嬉しそうに挨拶を返している。
「もしかして知り合いの人かな?」と感じた。春夜君の顔を窺い見る。彼は私の視線に気付いてくれた。
「実は先週、用事があってここに来たんですが……その時にちょっと」
説明してもらえたけど何だろう。歯切れが悪いような……?
店員のお姉さんは二十代くらいに見える。キラキラと明るい笑顔で言われた。
「どうぞ」
『どうぞ』? 内心で引っ掛かっていた。
お姉さんはそのまま、目的の店の隣にあるお店の中へ案内しようとしてくる。
彼女の案内しようとしているお店は宝飾店で、私のお財布事情では手も足も出ない品々の並ぶ……眩しくて高級なイメージを孕む場所だった。
アクセサリーは好きだけど、ここでは買えないよ。
即断ろうとした。
「あっ! すみません。私たち、お隣の靴屋さんに……」
「明」
春夜君に呼ばれた。落ち着いた微笑みを向けられている。提案された。
「もしよかったら見て行きませんか? 折角なので。見るだけならタダだし」
誘い文句に心が揺らぐ。返事をした。
「う、うん……」
そうだね。普段見る機会のない美しい宝石の付いたネックレスやおしゃれな指輪にも、本当は興味がある。
お姉さんに案内され入店した。ショーケースの中に並ぶアクセサリーに感嘆が零れる。
「わぁ、綺麗……!」
好みなデザインの指輪にうっとりした。小さいダイヤモンドのような石が中央に一つ付いている。
いつか……春夜君とお揃いの指輪をしたい。想像して口元が緩むけど、すぐに我に返った。
私の馬鹿! 春夜君に嫌われているかもしれないのに。幸せな未来を夢想している場合じゃないよ。
下唇を噛む。指輪から目を逸らそうとしていたのに。
試しに着けてみるようにと同じデザインでサイズの合う指輪を勧められた。
私の指に銀色に輝いている。その存在感に圧倒され、語彙力のない感想を呟いた。
「凄い」
ダメだよ。こんなの。欲しくなっちゃうもん。買えないのに。指輪との別れがつらくなってしまう。
だからわざと明るく微笑んだ。お礼を言って指輪を返した。
一生に一度は好きな人とお揃いの指輪を持ちたい。
だけどそれ以上に今は。春夜君と一緒にいたい。できれば、ずっと。
「春夜君?」
「そうですね……あっ! あっちの方に靴専門の店がありましたよね? 見に行きませんか?」
「う、うん! 行こう!」
春夜君の探している物は靴なのかもしれない。
それにしても。今日の春夜君、ちょっとどこか……様子がおかしい? まだ考え事をしているのかな?
ショッピングモールの中央に幅の広い通路がある。靴屋さんの方向へ歩いた。もちろん春夜君にくっついた状態で。
途中、右手にあるお店のショーウィンドウを眺めていた。マネキンにコーディネートされた物の一つに視線を奪われる。ふわふわした素材の白いマフラーで「いいな、あったかそうだなぁ」と、ぼーっと思考しつつ通り過ぎた。
直後にハッとした。振り向く。もう一度ショーウィンドウを見た。
「明?」
私が後ろを気にしたので春夜君も立ち止まった。
「あっ、ごめんね。何でもないの。早く靴屋さんに行こう?」
焦って促した。ここで気取られる訳にはいかない。
白いマフラーを見て思った。春夜君へのクリスマスプレゼントをマフラーにしたらどうかなって。
ただ、色は白じゃない方がいいかも。春夜君に似合いそうな色のマフラーを今度探してみよう。
靴屋さんの前に到着した。「春夜君の探し物をチェックしながら、私も自分の気になる靴を試してみたいな」と考えていた。
「こんにちは」
耳に届いた声に顔を上げた。靴屋さんの右にあるお店の店員さんらしい女性に朗らかな笑顔で会釈された。
「あ……っ、こんにちは!」
春夜君がどこか嬉しそうに挨拶を返している。
「もしかして知り合いの人かな?」と感じた。春夜君の顔を窺い見る。彼は私の視線に気付いてくれた。
「実は先週、用事があってここに来たんですが……その時にちょっと」
説明してもらえたけど何だろう。歯切れが悪いような……?
店員のお姉さんは二十代くらいに見える。キラキラと明るい笑顔で言われた。
「どうぞ」
『どうぞ』? 内心で引っ掛かっていた。
お姉さんはそのまま、目的の店の隣にあるお店の中へ案内しようとしてくる。
彼女の案内しようとしているお店は宝飾店で、私のお財布事情では手も足も出ない品々の並ぶ……眩しくて高級なイメージを孕む場所だった。
アクセサリーは好きだけど、ここでは買えないよ。
即断ろうとした。
「あっ! すみません。私たち、お隣の靴屋さんに……」
「明」
春夜君に呼ばれた。落ち着いた微笑みを向けられている。提案された。
「もしよかったら見て行きませんか? 折角なので。見るだけならタダだし」
誘い文句に心が揺らぐ。返事をした。
「う、うん……」
そうだね。普段見る機会のない美しい宝石の付いたネックレスやおしゃれな指輪にも、本当は興味がある。
お姉さんに案内され入店した。ショーケースの中に並ぶアクセサリーに感嘆が零れる。
「わぁ、綺麗……!」
好みなデザインの指輪にうっとりした。小さいダイヤモンドのような石が中央に一つ付いている。
いつか……春夜君とお揃いの指輪をしたい。想像して口元が緩むけど、すぐに我に返った。
私の馬鹿! 春夜君に嫌われているかもしれないのに。幸せな未来を夢想している場合じゃないよ。
下唇を噛む。指輪から目を逸らそうとしていたのに。
試しに着けてみるようにと同じデザインでサイズの合う指輪を勧められた。
私の指に銀色に輝いている。その存在感に圧倒され、語彙力のない感想を呟いた。
「凄い」
ダメだよ。こんなの。欲しくなっちゃうもん。買えないのに。指輪との別れがつらくなってしまう。
だからわざと明るく微笑んだ。お礼を言って指輪を返した。
一生に一度は好きな人とお揃いの指輪を持ちたい。
だけどそれ以上に今は。春夜君と一緒にいたい。できれば、ずっと。
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