5 / 19
にぃに奮闘中
②
しおりを挟む
「ひぇっ」
突如右耳から聞こえてきたいい声に慌てて耳を塞ぐとそこには下町の青年と言った服装のアレックスが座っている。
そんな格好をしていてもこの場で、いや、この国で一番かっこよくて可愛いことだろう。
「アレックス、どうしてここに…?」
「家令から聞いて。ウィルが下町の宿屋で、最愛で大層な黒髪の男前と逢瀬をしていると聞きまして。結婚初日から浮気ですか?」
「初日!?お前、なんでこんなとこいんだよおまえほんと大バカだな」
「結婚してると思ってるのはアレックスだけだよ!僕は許可してない!」
そうだ、だって僕は返して欲しいと言った。
そもそもアレックスと結婚するつもりで書いた訳じゃなくて手が勝手に書いたというか、とりあえず結婚はしていないのだ。
「ほぅ」
「ーーっウィル!いいからおまえ謝っとけ」
ブレットにそう叱りつけられて何故急に責められなければならないのかと酔った頭で怒りに震えると勝手に涙がこぼれてきた。
「なんでそんな事言うの…ブレットだって兄弟で結婚するのは変だって言ってたのに」
「ばっ!!ちげーよ!それはお前が血が繋がってなくて、婚約者だってこと言わねぇから」
「お前がウィルの“最愛の友人”か」
アレックスの視線にブレットは凍りついて1歩下がると人好きする笑みを浮かべた。
接客スマイルである。
「違います」
「ちがいません~!おまえがどう思ってても僕は親友だとおもってるんだからなぁ!」
「頼むから黙っててくれないか」
「確かに、ウィル好みの黒髪クール系美男ですね。俺の方が美しい黒髪だし身体付きは少し物足りなさそうですけど」
なんだか顔色の悪い笑顔も憂いがあって男前に見える。
イケメンというのはどんな表情をしても魅力的に見えるのだから得だなぁとしみじみ思いながらちびちびと酒を飲むと、アレックスはその手元で視線をとめた。
「……カンパリオレンジ、ですか」
「はっ!?いや、これはこいつが好きだから作っただけで深い意味は全く!これっぽっちも無いので」
「…初恋、ねぇ」
「マジで違うので勘弁してください」
めっちゃ嫌そうに否定された。
確かに向こうからしたら領主の息子で逆らえないし、たまに自分の店に飲みに来る地主みたいなものかもしれないが、そこまで否定しなくてもいいと思う。
そんなに親友の否定をされると悲しくなってくる。
「ふぇ…そんな…そんな否定しなくてもいいらないかぁ!!」
「あぁウィル…可哀想に…大丈夫。こんなクズ男は海に沈めようね」
「頼むから余計なこと言わないでくれオレはこの店をついで、家庭的で慎み深いけど夜はちょっと積極的な奥さんと、『まったく~嫁が俺の事大好き過ぎて困っちゃうよな』なんて惚気けながら、幸せに暮らさないといけない使命があるんだ!」
「だいぶ具体的で気持ち悪いな…」
引きつけを起こしながら涙を拭っているとアレックスが胸ポケットからハンカチを取り出して優しく拭ってくれる。
流石僕の最愛の弟は優しい。
どっかの親友とは大違いである。
「それにしてもなんてハレンチな男だ…何故こんな男がいいの?ウィル」
「ひっく…ひっく…なんれって、めんどうみいいし、かみ、きれいらから…」
電球の光が照らす黒髪は艶があって色っぽく、いつ見ても目の保養だ。
「…ウィルは本当に黒髪が好きだね……しょうがないな。じゃあこの男の髪を全剃りしよう。そうすれば俺以外見なくなるよねにぃに」
「まっって!!!!!」
「…ぜんしょり…面白そう」
「おい!!!!こら!!!待て!!俺の大事な髪を面白そうで全剃りさせるんじゃないっ」
全剃り……。
美形のブレッドが全剃りしているのを想像するととてもシュールで面白い。
それにしても無表情な親友の必死な顔は見慣れなくてつい笑ってしまう。
目ん玉が飛び出そうだ。
「あはは~!」
「あははじゃねぇ!」
熱くてふわふわして気分よくしていたけれど、なんだか急に眠たくなってきて視界の端に逞しい腕が映った瞬間吸い込まれるように隣のアレックスに抱きつく。
「ん?どうしたのにぃに。眠くなっちゃった?」
「ねむくなっら…」
「そっかそっか。じゃあ全剃りは俺に任せてここでいい子にしてて。眠ってしまってもいいよ」
優しい天使のような笑顔に安心してその頭を撫でるとアレックスはとろけそうな微笑みで僕の頬に口付ける。
「ん~」
右頬はしてもらったので反対も催促するとチュッチュチュッチュと、リップ音をたてて何度も唇を落とされてこそばゆい。
それにしても最愛の弟にこれだけキスしてもらえるなんて本当に幸せな人生だと思う。
離れていこうとしたアレックスの首に抱きついて頬っぺたにお返しのキスをすると頭を撫でられて、今度こそ距離を取られた。
「……ははっ」
「何その魔王みたいなは微笑み!?さっきまでの優しさは一体どこへ!?…ちょ、全剃りはするんですか?まって!!そのナイフ、髪を切るためですよね?!今ここでお陀仏にされたりしませんよね!?」
「ナイフで全剃りは難しいか…頭皮ごといきそうだ」
「ーーーーっまじで!無実なので!この人とはただの友人で、邪なことは一切ありませんから見逃してくださいお願いします!!!」
眠くなってきた僕はその喧騒を聞きながらうつらうつらと机に突っ伏した。
それに対して『こらてめぇ起きろ!お前のせいでこうなってんだからな!』という親友(仮)の言葉が聞こえてきたが睡魔には抗える訳もなく意識を手放したのだった。
突如右耳から聞こえてきたいい声に慌てて耳を塞ぐとそこには下町の青年と言った服装のアレックスが座っている。
そんな格好をしていてもこの場で、いや、この国で一番かっこよくて可愛いことだろう。
「アレックス、どうしてここに…?」
「家令から聞いて。ウィルが下町の宿屋で、最愛で大層な黒髪の男前と逢瀬をしていると聞きまして。結婚初日から浮気ですか?」
「初日!?お前、なんでこんなとこいんだよおまえほんと大バカだな」
「結婚してると思ってるのはアレックスだけだよ!僕は許可してない!」
そうだ、だって僕は返して欲しいと言った。
そもそもアレックスと結婚するつもりで書いた訳じゃなくて手が勝手に書いたというか、とりあえず結婚はしていないのだ。
「ほぅ」
「ーーっウィル!いいからおまえ謝っとけ」
ブレットにそう叱りつけられて何故急に責められなければならないのかと酔った頭で怒りに震えると勝手に涙がこぼれてきた。
「なんでそんな事言うの…ブレットだって兄弟で結婚するのは変だって言ってたのに」
「ばっ!!ちげーよ!それはお前が血が繋がってなくて、婚約者だってこと言わねぇから」
「お前がウィルの“最愛の友人”か」
アレックスの視線にブレットは凍りついて1歩下がると人好きする笑みを浮かべた。
接客スマイルである。
「違います」
「ちがいません~!おまえがどう思ってても僕は親友だとおもってるんだからなぁ!」
「頼むから黙っててくれないか」
「確かに、ウィル好みの黒髪クール系美男ですね。俺の方が美しい黒髪だし身体付きは少し物足りなさそうですけど」
なんだか顔色の悪い笑顔も憂いがあって男前に見える。
イケメンというのはどんな表情をしても魅力的に見えるのだから得だなぁとしみじみ思いながらちびちびと酒を飲むと、アレックスはその手元で視線をとめた。
「……カンパリオレンジ、ですか」
「はっ!?いや、これはこいつが好きだから作っただけで深い意味は全く!これっぽっちも無いので」
「…初恋、ねぇ」
「マジで違うので勘弁してください」
めっちゃ嫌そうに否定された。
確かに向こうからしたら領主の息子で逆らえないし、たまに自分の店に飲みに来る地主みたいなものかもしれないが、そこまで否定しなくてもいいと思う。
そんなに親友の否定をされると悲しくなってくる。
「ふぇ…そんな…そんな否定しなくてもいいらないかぁ!!」
「あぁウィル…可哀想に…大丈夫。こんなクズ男は海に沈めようね」
「頼むから余計なこと言わないでくれオレはこの店をついで、家庭的で慎み深いけど夜はちょっと積極的な奥さんと、『まったく~嫁が俺の事大好き過ぎて困っちゃうよな』なんて惚気けながら、幸せに暮らさないといけない使命があるんだ!」
「だいぶ具体的で気持ち悪いな…」
引きつけを起こしながら涙を拭っているとアレックスが胸ポケットからハンカチを取り出して優しく拭ってくれる。
流石僕の最愛の弟は優しい。
どっかの親友とは大違いである。
「それにしてもなんてハレンチな男だ…何故こんな男がいいの?ウィル」
「ひっく…ひっく…なんれって、めんどうみいいし、かみ、きれいらから…」
電球の光が照らす黒髪は艶があって色っぽく、いつ見ても目の保養だ。
「…ウィルは本当に黒髪が好きだね……しょうがないな。じゃあこの男の髪を全剃りしよう。そうすれば俺以外見なくなるよねにぃに」
「まっって!!!!!」
「…ぜんしょり…面白そう」
「おい!!!!こら!!!待て!!俺の大事な髪を面白そうで全剃りさせるんじゃないっ」
全剃り……。
美形のブレッドが全剃りしているのを想像するととてもシュールで面白い。
それにしても無表情な親友の必死な顔は見慣れなくてつい笑ってしまう。
目ん玉が飛び出そうだ。
「あはは~!」
「あははじゃねぇ!」
熱くてふわふわして気分よくしていたけれど、なんだか急に眠たくなってきて視界の端に逞しい腕が映った瞬間吸い込まれるように隣のアレックスに抱きつく。
「ん?どうしたのにぃに。眠くなっちゃった?」
「ねむくなっら…」
「そっかそっか。じゃあ全剃りは俺に任せてここでいい子にしてて。眠ってしまってもいいよ」
優しい天使のような笑顔に安心してその頭を撫でるとアレックスはとろけそうな微笑みで僕の頬に口付ける。
「ん~」
右頬はしてもらったので反対も催促するとチュッチュチュッチュと、リップ音をたてて何度も唇を落とされてこそばゆい。
それにしても最愛の弟にこれだけキスしてもらえるなんて本当に幸せな人生だと思う。
離れていこうとしたアレックスの首に抱きついて頬っぺたにお返しのキスをすると頭を撫でられて、今度こそ距離を取られた。
「……ははっ」
「何その魔王みたいなは微笑み!?さっきまでの優しさは一体どこへ!?…ちょ、全剃りはするんですか?まって!!そのナイフ、髪を切るためですよね?!今ここでお陀仏にされたりしませんよね!?」
「ナイフで全剃りは難しいか…頭皮ごといきそうだ」
「ーーーーっまじで!無実なので!この人とはただの友人で、邪なことは一切ありませんから見逃してくださいお願いします!!!」
眠くなってきた僕はその喧騒を聞きながらうつらうつらと机に突っ伏した。
それに対して『こらてめぇ起きろ!お前のせいでこうなってんだからな!』という親友(仮)の言葉が聞こえてきたが睡魔には抗える訳もなく意識を手放したのだった。
640
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる