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どうすれば良いの?
私が何もしなければお父様が直接動くかも知れないわ。
父ヒューゴから「セルダ殿下の意中の令嬢リネットに醜聞を起こせ」と言われたオリビアは悩んだ。
自分が何もしなければ、父が直接動く。それは令嬢に本当に危害を加えるかも知れないと言う事だ。
王太子妃になるには純潔である事が求められる。父ならば本当に令嬢のそれを奪うかも知れない。奪わないまでも、見える場所に跡が残るような怪我をさせるかも知れない。
本当にその令嬢リネットがセルダの意中の令嬢かどうか、確信がある訳ではないのだ。もし違ったら…嫌、違わなくてもオリビアを王太子妃にするために他の令嬢の尊厳を奪う真似をして良い訳がない。
それにもしリネットが意中の令嬢でなかったとしたら、父はまた可能性の高い令嬢を陥れようとするのでは?
オリビアは「令嬢が誘拐される」その事実だけで充分な醜聞になると考えた。
拐かされた娘として、どこで誰に何をされたのか、疑いを持たれる事、何もなかった証明ができない以上、王太子妃にはなれなくなる事を考え、リネットを誘拐しようと決心する。
考えれば、もっと他の解決方法があったはずなのだ。今ならそう思えるが、オリビアも思い詰め、追い詰められていた。
「ジル、いる?」
オリビアが寮の部屋で小声で言うと、天井から人影が音もなく降りてくる。エバンス侯爵家が雇っている文字通りの「影」だ。
「リネット様が、一人になった時を狙うわ。準備をお願い」
ジルと呼ばれた影は無言で頷くと、姿を消した。
機会は意外と早く訪れた。
放課後、生徒会室にいると、偶然セルダと二人きりになった。
そこへリネットがやって来たのだ。
セルダに目配せされ、生徒会室を出る。
「やはりリネット様がそうなの…?」
皆もう下校していて教室に戻るまで他の生徒に会わなかった。
隣のクラスを覗くと、やはり人はいない。鞄が残っている机があった。きっとリネットの席だ。
もし、リネット様が一人で戻って来れば…。
オリビアは、うるさく鳴る心臓を押さえながら、小さく
「ジル」
と呼ぶ。
廊下の端に人影が見えた。
「馬車で待ってるわ」
小声で言うと、影が消えた。
オリビアが裏門から学園の外へ出ると、道の向こうから馬車がやって来てオリビアの近くに止まる。
馬車の扉が開くと、メイドのお仕着せ姿の女性が顔を出した。
女性は、オリビアを馬車に招き入れると、オリビアの向かい側に座った。
「…上手くいくとは思えないわ」
オリビアが呟くと、女性は笑う。
「覚悟の上ですよね?オリビア様」
「そうね」
しばらくすると、馬車に女性を抱いた男性が乗り込んで来る。
女性はリネットだ。封筒を抱えたまま気を失っていた。
-----
「オリビア、どこに行ってたんだ?」
夜会の開かれている広間に戻ると、兄オスカーが足早に近寄って来た。
「ちょっと休暇よ」
「…何かあった訳じゃないのか?」
心配そうに自分を見るオスカーに
「何もないわよ」
と言って笑って見せた。
「疲れたからもう部屋に戻って良いかしら…?」
「そうだな」
今日はこの辺境伯邸の一室へ泊まる事になっている。
義父と義母への伝言をオスカーに頼んで部屋へと向かった。
部屋に入ると、ドアの鍵を閉める。義母と同室だが、声を掛けてもらえば開けるから大丈夫だ。
夜遅い時間になっても平気だ。どうせ自室以外ではまともに眠れないのだ。
窓の鍵も確認する。
「ふう。疲れた…」
子爵家から連れて来れる侍女は一人しかおらず、主人が戻るまでは義父と兄の部屋で待機している。義父と義母の世話は掛け持ちだ。
オリビアとオスカーは自分の事は自分でできるので侍女は必要なかった。
カーテンを閉めて、浴室へ行って部屋着に着替えると、化粧を落としてベッドに横になる。
「ここにパリヤ殿下がいるなんてね…」
目を瞑る。
暗い視界に白い手が浮かんで見えて、ハッと目を開ける。
心臓が早鐘を打つ。
オリビアは身を起こすと、部屋着の胸の辺りを掴んだ。
「最近なかったのに、今日は思い出したからね…」
どうすれば良いの?
私が何もしなければお父様が直接動くかも知れないわ。
父ヒューゴから「セルダ殿下の意中の令嬢リネットに醜聞を起こせ」と言われたオリビアは悩んだ。
自分が何もしなければ、父が直接動く。それは令嬢に本当に危害を加えるかも知れないと言う事だ。
王太子妃になるには純潔である事が求められる。父ならば本当に令嬢のそれを奪うかも知れない。奪わないまでも、見える場所に跡が残るような怪我をさせるかも知れない。
本当にその令嬢リネットがセルダの意中の令嬢かどうか、確信がある訳ではないのだ。もし違ったら…嫌、違わなくてもオリビアを王太子妃にするために他の令嬢の尊厳を奪う真似をして良い訳がない。
それにもしリネットが意中の令嬢でなかったとしたら、父はまた可能性の高い令嬢を陥れようとするのでは?
オリビアは「令嬢が誘拐される」その事実だけで充分な醜聞になると考えた。
拐かされた娘として、どこで誰に何をされたのか、疑いを持たれる事、何もなかった証明ができない以上、王太子妃にはなれなくなる事を考え、リネットを誘拐しようと決心する。
考えれば、もっと他の解決方法があったはずなのだ。今ならそう思えるが、オリビアも思い詰め、追い詰められていた。
「ジル、いる?」
オリビアが寮の部屋で小声で言うと、天井から人影が音もなく降りてくる。エバンス侯爵家が雇っている文字通りの「影」だ。
「リネット様が、一人になった時を狙うわ。準備をお願い」
ジルと呼ばれた影は無言で頷くと、姿を消した。
機会は意外と早く訪れた。
放課後、生徒会室にいると、偶然セルダと二人きりになった。
そこへリネットがやって来たのだ。
セルダに目配せされ、生徒会室を出る。
「やはりリネット様がそうなの…?」
皆もう下校していて教室に戻るまで他の生徒に会わなかった。
隣のクラスを覗くと、やはり人はいない。鞄が残っている机があった。きっとリネットの席だ。
もし、リネット様が一人で戻って来れば…。
オリビアは、うるさく鳴る心臓を押さえながら、小さく
「ジル」
と呼ぶ。
廊下の端に人影が見えた。
「馬車で待ってるわ」
小声で言うと、影が消えた。
オリビアが裏門から学園の外へ出ると、道の向こうから馬車がやって来てオリビアの近くに止まる。
馬車の扉が開くと、メイドのお仕着せ姿の女性が顔を出した。
女性は、オリビアを馬車に招き入れると、オリビアの向かい側に座った。
「…上手くいくとは思えないわ」
オリビアが呟くと、女性は笑う。
「覚悟の上ですよね?オリビア様」
「そうね」
しばらくすると、馬車に女性を抱いた男性が乗り込んで来る。
女性はリネットだ。封筒を抱えたまま気を失っていた。
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「オリビア、どこに行ってたんだ?」
夜会の開かれている広間に戻ると、兄オスカーが足早に近寄って来た。
「ちょっと休暇よ」
「…何かあった訳じゃないのか?」
心配そうに自分を見るオスカーに
「何もないわよ」
と言って笑って見せた。
「疲れたからもう部屋に戻って良いかしら…?」
「そうだな」
今日はこの辺境伯邸の一室へ泊まる事になっている。
義父と義母への伝言をオスカーに頼んで部屋へと向かった。
部屋に入ると、ドアの鍵を閉める。義母と同室だが、声を掛けてもらえば開けるから大丈夫だ。
夜遅い時間になっても平気だ。どうせ自室以外ではまともに眠れないのだ。
窓の鍵も確認する。
「ふう。疲れた…」
子爵家から連れて来れる侍女は一人しかおらず、主人が戻るまでは義父と兄の部屋で待機している。義父と義母の世話は掛け持ちだ。
オリビアとオスカーは自分の事は自分でできるので侍女は必要なかった。
カーテンを閉めて、浴室へ行って部屋着に着替えると、化粧を落としてベッドに横になる。
「ここにパリヤ殿下がいるなんてね…」
目を瞑る。
暗い視界に白い手が浮かんで見えて、ハッと目を開ける。
心臓が早鐘を打つ。
オリビアは身を起こすと、部屋着の胸の辺りを掴んだ。
「最近なかったのに、今日は思い出したからね…」
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