没落令嬢は僻地で王子の従者と出会う

ねーさん

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「オリビア様、妄想男に執着されやすい体質たちなんですかね?」
「ジル…もう少し言葉を選んでちょうだい…」
 秘密裏に手に入れたガイアの供述調書を読んでジルが言い、オリビアはがっくりと脱力する。
「分からんでもないぞ」
 向かいのソファに座ったダグラスが真面目な表情で言った。
「ダグラス!?」
「俺も、明日オリビアがセヴァリー家に帰ってしまうと思えば…追い掛けて閉じ込めたくなる」
「ええ?」
「だがまあオリビアが嫌がる事はしないくらいの理性はある」
 ダグラスはクスクスと笑った。

 ダグラスが執務に戻り、ジルと二人きりになる。
「ジルは…怪我をしたからルイと結婚する事にしたの?」
「まあ、そうですね。怪我をしなければまだ決心はついてなかったかと」
 ジルが三角巾に吊られた腕を上下に動かす。
「前からそういう話があったの?」
「…行きにチャンドラー家の領地屋敷に着いた頃『将来的にもオリビア様の側にいたいなら、俺と一緒になれば良い』と言われました」
「そうなの?意外と前なのね」
「正直、その時も、怪我をした時も、その気はあまりなかったんですが、オリビア様がリネット様が結婚しない限り、自分もしないっておっしゃられた時に、じゃあ私はオリビア様の側にいようと思いました」
「……」
「私から見ればリネット様が幸せかどうかはどうでも良いですが、オリビア様は気にされて、自分の事を後回しにしようとして…世間では高慢で地位に執着する令嬢だと思われてるのに、馬鹿だなあ、と」
「…ジル、私に馬鹿馬鹿言い過ぎじゃない?」
 オリビアは上目遣いにジルを睨む。
 ジルはふっと笑うと言った。
「ほら、馬鹿な子ほどかわいいって言うでしょう?」

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「オリビアとダグラスはいつ結婚するのかな?」
 夕食の席でパリスが言った。
「なっ!領主様?何で知って…」
「まだ分からんな」
 慌てるオリビアに、しれっと答えるダグラス。
「オリビア、昨夜から俺の部屋にいるんだから、言わずもがなだろ?」
「そそそ、そう。そうね」
 赤くなるオリビアを見てダグラスとパリスは微笑む。
「結婚時期は状況次第だな」
「ダグラスはチャンドラー伯爵家に勘当を解いて貰った方が良いな」
「そうだが…それは今じゃないな」
「私の事なら気にするな」
 パリスが鷹揚に言う。
「…王子が出てるぞ」
 ジロッとダグラスが睨むと、パリスは驚く。
「ええ!?出てたか?オリビア、出てた?」
「…少し」
「王子臭の消臭剤が欲しい…」
 パリスはガクリと項垂れた。

「リネット・バーストン伯爵令嬢の婚約者殿の仕事が立て込んでいて結婚の目処がまだ立たないようです」
 夜、ルイが戻って来て報告をする。
「リネット様の婚約者殿はゴルディ侯爵家の嫡男で、王宮の教育機関で働いておられます」
 ジルが言うと、ダグラスとルイが頷く。
「学園でもよくお見掛けしたわ。今はそんなにお忙しいの?」
 オリビアが言うと、ルイは頷いて言う。
「地方に初等学校を開校する事業が数年掛かりで進められていて、来春にも三校開校予定ですね」
「三校も…」
「仕事を口実に結婚を引き伸ばしている訳ではないと?」
 ダグラスが言うと
「実際に忙しく、再来月の自身の妹の結婚式にも出られるかどうか分からない状態だと」
 そうルイが言う。
「それは…」
 ゴルディ侯爵令嬢は王弟殿下と結婚するのだ。その結婚式にも出席できないとは、どれだけ忙しいのかが、それだけで分かる。
「来春の三校開校で事業はひと段落するようですから、それから結婚式をされるのでは?」
「それで、二人の仲は?…良いのかしら?」
「婚約者殿がそのような状態ですので、なかなか会えないようですが、仲は良好との事でした」
「そう…良かったわ…」
 オリビアはホッと息を吐く。
「早くとも来年か」
 ダグラスはそう言うと、ソファを立ち上がるとオリビアをヒョイと抱き上げた。
「ダグラス!?」
 オリビアが慌てて周りを見ると、ルイもジルももう居ない。
「明日は俺も共にセヴァリー家へ行き、ご家族へ説明とオリビアとの婚約を申し込む」
「ダグラス…ん」
 ダグラスは抱き上げたオリビアに口付けながら寝室へと入って行った。


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