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セヴァリー邸の応接室でダグラスと並んでソファに座るオリビアは俯いてもじもじと膝の上に置いた手を動かしていた。
ダグラスとオリビアの前には母ナタリーと兄オスカーが座っている。
「…つまり、ダグラス殿は本当にオリビアと婚約したいと?」
オスカーが言うと、ダグラスは「はい」と頷く。
「オリビアは?…何でそんなにもじもじしてる?」
オスカーが言うと、オリビアは赤くなった頬を押さえて顔を上げる。
「は…恥ずかしいの」
「何でそんなに?」
「だって、あんなに男の人が苦手だったのに、お兄様とお母様から見たら急すぎておかしくない?」
「いや…おかしくはないが…」
「オリビア」
ナタリーが真剣な表情でオリビアを見る。
「はい」
オリビアもピンと背筋を伸ばした。
「ダグラス様は…怖くないの?」
オリビアは大きく頷く。
「ダグラスは、最初から怖くなかったわ。お母様、お兄様、ダグラスは何もかも知っていて、それでも私を望んでくださっているの」
「何もかも?」
「そう。私がした事も、私がされた事も」
「オリビア…」
ダグラスがオリビアの手を握る。オリビアはダグラスをみて微笑む。
ナタリーもオスカーも、オリビアが予告なしに触れられて怯えていない様子をあの事件以来初めて見た。
「オリビアが幸せになるのなら…こんな嬉しい事はないわ…」
ナタリーはそっと涙を拭った。
-----
応接室に、義父フレッドと義母ルイーズもやって来る。
「ガイア・ハモンドは捕まったそうだな」
フレッドが言うと、ダグラスとオリビアは頷く。
「どうやら妄執に取り憑かれていたようで、オリビアを拐おうとしたため、取り押さえました」
「…そうか。私も、ハモンド商会の会長…彼の父上も、随分説得したのだが…すまなかったね」
フレッドがオリビアとダグラスに頭を下げる。
「お義父さまが謝る事ではありませんわ。こうして私も無事ですし」
「あの男はこの後どうなりますか?」
オスカーが言う。
「有罪となっても何年服役になるか…服役したとして、出てきてまたオリビアが狙われたらかなわんな」
フレッドが顎に手を当てて言った。
「オリビアには指一本触れさせませんよ。二度と」
ダグラスが言うと、オリビアは頬を赤くしてダグラスを見つめた。
「あらあら。仲良しね」
ルイーズが笑いながら言うと、オリビアはますます赤くなって俯いた。
「それで、いつ結婚するつもりなのかな?」
「私が、父に勘当を解いてもらってからになりますので…早くとも来年、遅くとも再来年には、と考えています」
ナタリーとオスカーには、リネットが結婚するまで結婚しないつもりだと告げたが、フレッドとルイーズにはこちらの理由を告げる事にしていたのだった。
その日セヴァリー邸に泊まる事になったダグラスの居る客室に、オリビアがこっそりと訪れる。
まだ正式に婚約した訳ではないので、夜二人きりになる訳にはいかないのだ。
「オリビアは、家族に色恋沙汰を知られるのが恥ずかしいのか?」
「そうね。自分の家でこうしてるのも恥ずかしいわ」
ダグラスはソファに座り、自分の腿の間にオリビアを座らせていた。後ろからお腹に手を回し、肩に顎を乗せている。
「この体勢、落ち着く」
「そうなの?」
「ああ。オリビアの匂いがするし」
「…嗅がないで」
オリビアが赤い顔をして少し振り向く。ダグラスはオリビアの頬にキスをする。
「ひゃっ」
耳まで赤くなるオリビアをぎゅうっと抱きしめた。
「オリビアは王都に戻りたいか?」
「え?」
「…勘当を解いてもらうには、パリスの側を離れないとならないかも知れない」
「え?」
「そもそもパリスに付いて来たのが主な原因だしな」
「…領地に帰るの?」
「そうなるな。これからパリスに付ける信頼できる人物を探す事になるから、そんなにすぐにではないが…その時は、オリビア…付いて来てくれるか?」
「何でそんなに自信なさ気なの?」
「…家族と離れる事になるし、王都に戻りたいなら、領地は真逆だ。あんな田舎で雪深くて不便な所だしな。しかし俺はもうオリビアしか考えられないから…」
「…ダグラス」
オリビアは肩に乗るダグラスの髪を撫でた。
「うん?」
「王都はいつも誰かに見られて噂されているようで…むしろ行きたくないし、社交界にも出たくないの」
「そうか」
「ダグラス」
「うん?」
オリビアは腕を曲げ力こぶを作る動作をすると、拳を握る。
「私、雪掻き頑張るわ」
「…オリビア!」
ダグラスはますます強くオリビアを抱きしめた。
セヴァリー邸の応接室でダグラスと並んでソファに座るオリビアは俯いてもじもじと膝の上に置いた手を動かしていた。
ダグラスとオリビアの前には母ナタリーと兄オスカーが座っている。
「…つまり、ダグラス殿は本当にオリビアと婚約したいと?」
オスカーが言うと、ダグラスは「はい」と頷く。
「オリビアは?…何でそんなにもじもじしてる?」
オスカーが言うと、オリビアは赤くなった頬を押さえて顔を上げる。
「は…恥ずかしいの」
「何でそんなに?」
「だって、あんなに男の人が苦手だったのに、お兄様とお母様から見たら急すぎておかしくない?」
「いや…おかしくはないが…」
「オリビア」
ナタリーが真剣な表情でオリビアを見る。
「はい」
オリビアもピンと背筋を伸ばした。
「ダグラス様は…怖くないの?」
オリビアは大きく頷く。
「ダグラスは、最初から怖くなかったわ。お母様、お兄様、ダグラスは何もかも知っていて、それでも私を望んでくださっているの」
「何もかも?」
「そう。私がした事も、私がされた事も」
「オリビア…」
ダグラスがオリビアの手を握る。オリビアはダグラスをみて微笑む。
ナタリーもオスカーも、オリビアが予告なしに触れられて怯えていない様子をあの事件以来初めて見た。
「オリビアが幸せになるのなら…こんな嬉しい事はないわ…」
ナタリーはそっと涙を拭った。
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応接室に、義父フレッドと義母ルイーズもやって来る。
「ガイア・ハモンドは捕まったそうだな」
フレッドが言うと、ダグラスとオリビアは頷く。
「どうやら妄執に取り憑かれていたようで、オリビアを拐おうとしたため、取り押さえました」
「…そうか。私も、ハモンド商会の会長…彼の父上も、随分説得したのだが…すまなかったね」
フレッドがオリビアとダグラスに頭を下げる。
「お義父さまが謝る事ではありませんわ。こうして私も無事ですし」
「あの男はこの後どうなりますか?」
オスカーが言う。
「有罪となっても何年服役になるか…服役したとして、出てきてまたオリビアが狙われたらかなわんな」
フレッドが顎に手を当てて言った。
「オリビアには指一本触れさせませんよ。二度と」
ダグラスが言うと、オリビアは頬を赤くしてダグラスを見つめた。
「あらあら。仲良しね」
ルイーズが笑いながら言うと、オリビアはますます赤くなって俯いた。
「それで、いつ結婚するつもりなのかな?」
「私が、父に勘当を解いてもらってからになりますので…早くとも来年、遅くとも再来年には、と考えています」
ナタリーとオスカーには、リネットが結婚するまで結婚しないつもりだと告げたが、フレッドとルイーズにはこちらの理由を告げる事にしていたのだった。
その日セヴァリー邸に泊まる事になったダグラスの居る客室に、オリビアがこっそりと訪れる。
まだ正式に婚約した訳ではないので、夜二人きりになる訳にはいかないのだ。
「オリビアは、家族に色恋沙汰を知られるのが恥ずかしいのか?」
「そうね。自分の家でこうしてるのも恥ずかしいわ」
ダグラスはソファに座り、自分の腿の間にオリビアを座らせていた。後ろからお腹に手を回し、肩に顎を乗せている。
「この体勢、落ち着く」
「そうなの?」
「ああ。オリビアの匂いがするし」
「…嗅がないで」
オリビアが赤い顔をして少し振り向く。ダグラスはオリビアの頬にキスをする。
「ひゃっ」
耳まで赤くなるオリビアをぎゅうっと抱きしめた。
「オリビアは王都に戻りたいか?」
「え?」
「…勘当を解いてもらうには、パリスの側を離れないとならないかも知れない」
「え?」
「そもそもパリスに付いて来たのが主な原因だしな」
「…領地に帰るの?」
「そうなるな。これからパリスに付ける信頼できる人物を探す事になるから、そんなにすぐにではないが…その時は、オリビア…付いて来てくれるか?」
「何でそんなに自信なさ気なの?」
「…家族と離れる事になるし、王都に戻りたいなら、領地は真逆だ。あんな田舎で雪深くて不便な所だしな。しかし俺はもうオリビアしか考えられないから…」
「…ダグラス」
オリビアは肩に乗るダグラスの髪を撫でた。
「うん?」
「王都はいつも誰かに見られて噂されているようで…むしろ行きたくないし、社交界にも出たくないの」
「そうか」
「ダグラス」
「うん?」
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