王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん

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「結婚するつもりはない?」
 グレッグがアリシアの言葉を繰り返すと、アリシアは頷く。
「はい」
「どう言う事だ?アリシア。好きな相手と結婚したいから『真実の愛を貫く』んじゃないのか?だから王太子妃になりたくないんじゃ?」
 グレッグが混乱しながら言うと、アリシアは首を振る。レイモンドは半ば呆然としながら二人を眺める。
「王太子妃になりたくないのは、それが『アリシア』でなければならない、と誰も思っていないからです。『王太子妃教育を受けた令嬢』が私であるだけで、私が私だから必要なのではないから」
「分かるような、分からないような…」
 グレッグが首を捻る。
「私は…私自身を必要とされたいし、アリシアが好きだ、と思われたいし、アリシアだから一緒にいたい、と思われたい…」
「そういう人と結婚したいって事か?」
 レイモンドが聞くとアリシアは頷いた。
「…そうです。アリシアだから好きで一緒にいたい、と思ってくれる人と…でもまあそんな人いないから、結婚はしません」
 アリシアは一度俯いた後、顔を上げて真っ直ぐレイモンドを見る。
「これが私にとっての『真実の愛を貫く』という事です」

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「眠い…」
 グレッグは自分の執務室の机に突っ伏す。
「どうした?」
 ジーンは書類を見ていた視線をグレッグに向けた。
「昨夜、アリシアが父の執務室に来て、王太子妃になりたくないと言い出して」
「え?」
「更に『結婚するつもりはない』とか言うから、もうそれから眠れなくてさ。父上もきっと寝不足だぞ。今日は」
「…どう言う事だ?」
 グレッグは突っ伏したまま顔を少し上げ、ジーンを見る。
「ジーン、初耳?」
「は?」
 ジーンは眉を寄せてグレッグを見返す。
「アリシアから何か聞いてるかと思ったんだけど…本当に初耳みたいだな」
 グレッグは昨夜「真実の愛」の相手を問うた時「一方的に想っているだけなので言えない」とアリシアが答えたのを思い出していた。
 アリシアが想っているのはジーンではないか、とグレッグは考えていた。公爵令嬢と自家の執事では例え想い合っていても結婚などできない。だから「結婚するつもりはない」と言ったのだ、と。

 しかしジーンは何も知らないみたいだし、ジーンじゃないとすると…学園の生徒とかに片想いしてるのか?アリシアが?…想像がつかんな。

「アリシアは…王太子妃になりたくない、と?」
 ジーンが真剣な表情で言う。グレッグは頷くと
「王太子妃として皆が必要としているのは『教育を受けた令嬢』であって、『アリシアが』必要な訳じゃないってさ。まあ散々王子達が我儘してるのに、アリシアにも断る権利くらいあっても良いよな」
 ため息混じりに言った。
「断る…」
 ジーンは視線を彷徨わせる。
「父上もそう思っているだろうが…議会や王家からの要請を、命令にならない内に諦めさせるには『アリシアが嫌だと言っている』だけじゃ理由として弱いな」
「断り切れないと?」
「そうなる可能性はある。陛下からの命を出されると拒否はできない」
「王命か…。しかし、王家は第一王子の不始末でアリシアを振り回してるのに、王命なんて出せる立場か?」
「…辛辣だなあ。ジーン。それでも議会などの突き上げもあるし、王太子が決まってしまえば、有り得る」
「……」
 ジーンは顎に手を当てて押し黙る。
 グレッグは突っ伏した腕に顔を埋めながら
「…アリシアは、アリシア自身を好きで共にいたいと思ってくれる人と一緒になりたいんだと」
 と言う。ジーンは顎に手を当てたまま目を瞬かせる。
「……」
「ジーンは、アリシアが王家に嫁ぐ、いつか王妃になると思ったから線を引いたんだろ?」
「…何の話だ?急に」
 ジーンは顔を伏せたままのグレッグを訝しげに見る。
「アリシアは、王妃にならない。…さあ、ジーン、どうする?」
 グレッグはゆっくり顔を上げる。
「グレッグ?」
 口角を上げてジーンを見つめた。
「アリシアを好きなんだろ?昔から、ずっと」

 アリシアが誰を想っているのかは分からないが、執事の幼なじみが妹を想っているのは知っている。

「なっ」
「ぶっははは!」
 慌てる幼なじみを見て、グレッグは吹き出した。

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