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「…とはいえ、やっぱりそれなりの条件の令息は既に婚約してるものね…」
寮の私の部屋で、イブが呟く。
「それよ」
私は我が意を得たりとばかりに人差し指を立てた。
上位貴族こそ早くに婚約が決まる。私と近い歳回りでまだ婚約してない令息があまりいないのよね。
「クラリッサは公爵令嬢だから相手もそれなりの家格が必要だし…」
そう。そしてその「それなりの家」の令息はやっぱり既に婚約してるのよ。
「お父様も色々考えてくださってるからその内決まると思うわ」
そう言って曖昧に笑うとイブも「そうよね」と頷く。
婚約かあ…早くしなきゃと思うけど、本音では、まったく気乗りしないわ。
「でも今日の視線、見られるのに慣れてるクラリッサが『嫌な感じ』って言うなんてよっぽどの事だと思うの。誰かに相談してみた方がいいんじゃない?」
心配そうなイブ。その気持ち、すごく嬉しい。
「お父様か、お兄様は?あ、アルヴェル殿下は?クラリッサと仲が良いし」
ドキッと心臓が鳴る。
ここで殿下の名前は不意打ちだわ。
「お兄様もアルヴェル殿下も卒業して学園にはいないし…」
「じゃあジョーンズ様に相談してみる?ジョーンズ様も学園生じゃないけど、彼、騎士だし」
ジョーンズ様は、イブの婚約者。四歳歳上の伯爵家の三男で、近衛騎士団員。
「でも近衛騎士の方を個人的な問題で煩わせるのも……もう少し様子を見てみるわ」
私がそう言うと、イブは渋々納得してくれた。
-----
「あ…また」
私は視線を感じて、目だけで辺りを伺う。
やっぱり誰もいない…
今は放課後、私は学園の図書室のテーブル席で本を読んでいた。
寮へ戻ろう。
本を閉じて立ち上がる。その本を元の棚に戻して図書室を出ると、視線を感じなくなった。
一緒に図書室を出るとバレるから視線の主はまだ図書室にいるという事ね。
私は早歩き、ほぼ小走りで寮まで戻って息を吐く。
最初ほど嫌な感じではないけど、多分同じ人。
四六時中ではないからイブには言ってないけど、こうやって毎日どこかで視線を感じるのよね…
教室と寮では感じないから、同じクラスの人と、同じ寮の人じゃないとして、よく感じるのが廊下、寮への帰り道、図書館。図書館には一部の教師しかいないし、多分生徒、よね?
だっからあと半月もすれば卒業だし、このままやり過ごしても大丈夫かしら。
と、思って、やり過ごしていたら、明後日は卒業パーティーという日の朝、私の教室の机の上に一通の手紙が置いてあった。
「…手紙?」
「クラリッサ宛…よね?」
私とイブは机の上の封筒を見る。
白い無地の封筒。表は真っ白で宛名も書いてない。
私が机の上の手紙を手に取る──と、強い視線を感じた。
ゾクッと首筋に悪寒が走り、思わず周りを見る。教室内には同じクラスの生徒しかいない。教室の扉の方を見ても、誰も見えなかった。
「クラリッサ?」
「…視線を感じたの」
「え!?」
イブも周りを見回す。
「特に…怪しい人はいないわね…」
「すぐ感じなくなったから、もう立ち去ったのかも」
小声で言うイブに、頷いて肯定した。
手に持った手紙を開けるのを躊躇っていると、イブが
「内容によっては、すぐジョーンズ様に連絡するわ」
と言ってくれる。
「ありがとう」
私は頷いて、ペンケースから小さなペーパーナイフを取り出した。
封筒の裏にも差出人などは書いてないし、蝋封もしていない。ただ糊付けは頑丈にしてある。
一応、封筒に何か仕込まれていないかを警戒しつつ、糊付けされた封を切った。
中にはやっぱり無地の便箋。
【愛しのクラリッサへ
もうすぐ一緒に暮らせるね。楽しみにしているよ】
「!」
文字を読んで、顔が強張るのが自分でもわかる。
「……怖っ」
イブが小声で私の気持ちを代弁してくれた。
なにこれ、怖い。
婚約者でもないのに呼び捨て?一緒に暮らす?
何、何、何で?
一体誰?
ドクドクと心臓が脈打ち、血の気が引く。
「…直ぐにジョーンズ様に来てもらうわ。クラリッサ、寮に戻りましょう」
イブが小刻みに震える私の手をぎゅっと握った。
「…とはいえ、やっぱりそれなりの条件の令息は既に婚約してるものね…」
寮の私の部屋で、イブが呟く。
「それよ」
私は我が意を得たりとばかりに人差し指を立てた。
上位貴族こそ早くに婚約が決まる。私と近い歳回りでまだ婚約してない令息があまりいないのよね。
「クラリッサは公爵令嬢だから相手もそれなりの家格が必要だし…」
そう。そしてその「それなりの家」の令息はやっぱり既に婚約してるのよ。
「お父様も色々考えてくださってるからその内決まると思うわ」
そう言って曖昧に笑うとイブも「そうよね」と頷く。
婚約かあ…早くしなきゃと思うけど、本音では、まったく気乗りしないわ。
「でも今日の視線、見られるのに慣れてるクラリッサが『嫌な感じ』って言うなんてよっぽどの事だと思うの。誰かに相談してみた方がいいんじゃない?」
心配そうなイブ。その気持ち、すごく嬉しい。
「お父様か、お兄様は?あ、アルヴェル殿下は?クラリッサと仲が良いし」
ドキッと心臓が鳴る。
ここで殿下の名前は不意打ちだわ。
「お兄様もアルヴェル殿下も卒業して学園にはいないし…」
「じゃあジョーンズ様に相談してみる?ジョーンズ様も学園生じゃないけど、彼、騎士だし」
ジョーンズ様は、イブの婚約者。四歳歳上の伯爵家の三男で、近衛騎士団員。
「でも近衛騎士の方を個人的な問題で煩わせるのも……もう少し様子を見てみるわ」
私がそう言うと、イブは渋々納得してくれた。
-----
「あ…また」
私は視線を感じて、目だけで辺りを伺う。
やっぱり誰もいない…
今は放課後、私は学園の図書室のテーブル席で本を読んでいた。
寮へ戻ろう。
本を閉じて立ち上がる。その本を元の棚に戻して図書室を出ると、視線を感じなくなった。
一緒に図書室を出るとバレるから視線の主はまだ図書室にいるという事ね。
私は早歩き、ほぼ小走りで寮まで戻って息を吐く。
最初ほど嫌な感じではないけど、多分同じ人。
四六時中ではないからイブには言ってないけど、こうやって毎日どこかで視線を感じるのよね…
教室と寮では感じないから、同じクラスの人と、同じ寮の人じゃないとして、よく感じるのが廊下、寮への帰り道、図書館。図書館には一部の教師しかいないし、多分生徒、よね?
だっからあと半月もすれば卒業だし、このままやり過ごしても大丈夫かしら。
と、思って、やり過ごしていたら、明後日は卒業パーティーという日の朝、私の教室の机の上に一通の手紙が置いてあった。
「…手紙?」
「クラリッサ宛…よね?」
私とイブは机の上の封筒を見る。
白い無地の封筒。表は真っ白で宛名も書いてない。
私が机の上の手紙を手に取る──と、強い視線を感じた。
ゾクッと首筋に悪寒が走り、思わず周りを見る。教室内には同じクラスの生徒しかいない。教室の扉の方を見ても、誰も見えなかった。
「クラリッサ?」
「…視線を感じたの」
「え!?」
イブも周りを見回す。
「特に…怪しい人はいないわね…」
「すぐ感じなくなったから、もう立ち去ったのかも」
小声で言うイブに、頷いて肯定した。
手に持った手紙を開けるのを躊躇っていると、イブが
「内容によっては、すぐジョーンズ様に連絡するわ」
と言ってくれる。
「ありがとう」
私は頷いて、ペンケースから小さなペーパーナイフを取り出した。
封筒の裏にも差出人などは書いてないし、蝋封もしていない。ただ糊付けは頑丈にしてある。
一応、封筒に何か仕込まれていないかを警戒しつつ、糊付けされた封を切った。
中にはやっぱり無地の便箋。
【愛しのクラリッサへ
もうすぐ一緒に暮らせるね。楽しみにしているよ】
「!」
文字を読んで、顔が強張るのが自分でもわかる。
「……怖っ」
イブが小声で私の気持ちを代弁してくれた。
なにこれ、怖い。
婚約者でもないのに呼び捨て?一緒に暮らす?
何、何、何で?
一体誰?
ドクドクと心臓が脈打ち、血の気が引く。
「…直ぐにジョーンズ様に来てもらうわ。クラリッサ、寮に戻りましょう」
イブが小刻みに震える私の手をぎゅっと握った。
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