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寮に駆け付けてくださったのは近衛騎士団の濃紫の制服姿で帯剣している男性がお二人。
お一人は茶色の髪に丸くて大きな水色の瞳で人が良さそうな顔立ちの男性。こちらがジョーンズ様だろうな。もう一人は濃緑の髪に緑色の瞳の男性。
ジョーンズ様が二十二歳よね。この方はそれより歳上なのは間違いないけど二十代後半くらいかしら?
「クラリッサ、彼が私の婚約者のジョーンズ様よ。ボイヤー伯爵家の三男で近衛騎士団第四分団に所属しているの」
「はじめまして、クラリッサ・マルセル公爵令嬢」
寮の談話室で入口に立つ人の良さそうな男性をジョーンズ様だとソファから立ち上がったイブが紹介してくれて、イブの隣に立った私も腰を折って挨拶をする。
「こちらは、俺の上官のダンヴァーズ分団長です。たまたま近くにいたんで応援に連れて来ました」
ジョーンズ様がニッコリと笑って隣の男性を手で示した。
え?上官、しかも分団長なのにそんな簡単に連れて来れるものなの?
そんなに上下関係厳しくないのかしら?
「ネイト・ダンヴァーズです」
ダンヴァーズ分団長は表情を変えず、チラリとジョーンズ様の方を見た後、私の方へ頭を下げる。
ジョーンズ様を見る目が若干冷たかったような。やっぱり強引に連れて来たんじゃ…?
「クラリッサ・マルセルです。お忙しい中ありがとうございます。私の事はクラリッサとお呼びください」
-----
「視線は感じるが姿は見えない…ですか」
私とイブが手紙を見せて事情を説明すると、ダンヴァーズ分団長は顎に手を当てて言った。
「学園の生徒で、『もうすぐ一緒に暮らせる』って事は、四年生ですかね?」
ジョーンズ様がテーブルの上に開いたまま置かれた便箋を覗き込む。
「そうだな。四年生は十クラス、同じクラスでないとして、二百七十人。男子生徒のみに絞っても百五十人か…」
「今まで見ているだけだったのに、こうして直接働き掛けて来たのは、クラリッサと自分が卒業するから…でしょうか?」
イブが言うと、ジョーンズ様が頷いた。
「そうだろうね。卒業パーティーで接触して来る可能性もあるよ」
「あり得るな」
ダンヴァーズ分団長も頷く。
卒業パーティーか…
「じゃあ接触して来た処を捕まえられないかしら?」
私がそう言うと、三人の視線が私に集まった。
「クラリッサ!?」
驚くイブ。
「え?」
私、何かおかしな事言った?
「自分を囮にするような事を言うものではないです」
ダンヴァーズ分団長が私を嗜めるように言う。
凛々しい眉が寄せられ、切長の目が眇められる。けど怒っていると言うより心配してくれているのが何となく伝わって来た。
優しい方なんだわ。
「…はい。じゃあ卒業パーティーには出ない方が良いですか?」
婚約者にエスコートしてもらう訳でもないし、出席しなきゃ卒業できない訳でもないし、出ないからと言って特に支障はないけど。
「でも、ドレスももう準備したでしょう?」
「まあ…でも卒業したら夜会とか舞踏会に出るようになるから着る機会はあるわ」
「護衛を付けるのはどうですか?俺がイブのパートナーとして出席しますし、第四分団の団員が二人、王太子妃殿下の護衛に付きますよね?その人員をもう少し増やすとか」
ジョーンズ様が良い事を思い付いたという風に人差し指を立てる。
近衛は第一分団が国王陛下、第二分団が王妃殿下、第三分団が第一王子の王太子殿下、第四分団は王太子妃殿下付きよね。で、第五が第一王子以外の王子王女、第六がそれ以外の王族付き。
卒業パーティーに王太子夫妻が来賓として臨席されて第三と第四分団の騎士様が護衛として付くから、その人数を増やして私を護ってくださるって事?
「そうだな…しかしジョーンズとイブ嬢がクラリッサ嬢の側にいるとしても、ずっとは無理だろう」
ダンヴァーズ分団長が思案しながら言った言葉に私は大きく頷いた。
「ええ。卒業パーティーで婚約者と踊らないなんてあり得ません」
イブがジョーンズ様とダンスをするのを楽しみにしてたの、知ってるもの。私のために我慢させるなんて嫌。それなら私が卒業パーティーを欠席する方がいい。
「クラリッサ嬢の婚約者殿はどちらの令息ですか?武術や剣技に長けた者なら…」
「いません」
あ、被せ気味に言っちゃったわ。
目を見開くダンヴァーズ分団長へ笑いかける。
「私、婚約してないんです」
「公爵家の令嬢が婚約してない…?」
小声で呟き、マズイ事を言ったか?という表情だったダンヴァーズ分団長が何かを思い出したように眉を上げた。
「ああ…マルセル公爵家か…」
どうやら、我が家とお兄様とアルヴェル殿下との取り決めの影響について思い至ったみたい。
申し訳なさそうな様子に何故か胸が騒めく。
「あの、ダンヴァーズ分団長が護衛として私のパートナーになってくださいませんか?」
私は思わず身を乗り出してそう言っていた。
寮に駆け付けてくださったのは近衛騎士団の濃紫の制服姿で帯剣している男性がお二人。
お一人は茶色の髪に丸くて大きな水色の瞳で人が良さそうな顔立ちの男性。こちらがジョーンズ様だろうな。もう一人は濃緑の髪に緑色の瞳の男性。
ジョーンズ様が二十二歳よね。この方はそれより歳上なのは間違いないけど二十代後半くらいかしら?
「クラリッサ、彼が私の婚約者のジョーンズ様よ。ボイヤー伯爵家の三男で近衛騎士団第四分団に所属しているの」
「はじめまして、クラリッサ・マルセル公爵令嬢」
寮の談話室で入口に立つ人の良さそうな男性をジョーンズ様だとソファから立ち上がったイブが紹介してくれて、イブの隣に立った私も腰を折って挨拶をする。
「こちらは、俺の上官のダンヴァーズ分団長です。たまたま近くにいたんで応援に連れて来ました」
ジョーンズ様がニッコリと笑って隣の男性を手で示した。
え?上官、しかも分団長なのにそんな簡単に連れて来れるものなの?
そんなに上下関係厳しくないのかしら?
「ネイト・ダンヴァーズです」
ダンヴァーズ分団長は表情を変えず、チラリとジョーンズ様の方を見た後、私の方へ頭を下げる。
ジョーンズ様を見る目が若干冷たかったような。やっぱり強引に連れて来たんじゃ…?
「クラリッサ・マルセルです。お忙しい中ありがとうございます。私の事はクラリッサとお呼びください」
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「視線は感じるが姿は見えない…ですか」
私とイブが手紙を見せて事情を説明すると、ダンヴァーズ分団長は顎に手を当てて言った。
「学園の生徒で、『もうすぐ一緒に暮らせる』って事は、四年生ですかね?」
ジョーンズ様がテーブルの上に開いたまま置かれた便箋を覗き込む。
「そうだな。四年生は十クラス、同じクラスでないとして、二百七十人。男子生徒のみに絞っても百五十人か…」
「今まで見ているだけだったのに、こうして直接働き掛けて来たのは、クラリッサと自分が卒業するから…でしょうか?」
イブが言うと、ジョーンズ様が頷いた。
「そうだろうね。卒業パーティーで接触して来る可能性もあるよ」
「あり得るな」
ダンヴァーズ分団長も頷く。
卒業パーティーか…
「じゃあ接触して来た処を捕まえられないかしら?」
私がそう言うと、三人の視線が私に集まった。
「クラリッサ!?」
驚くイブ。
「え?」
私、何かおかしな事言った?
「自分を囮にするような事を言うものではないです」
ダンヴァーズ分団長が私を嗜めるように言う。
凛々しい眉が寄せられ、切長の目が眇められる。けど怒っていると言うより心配してくれているのが何となく伝わって来た。
優しい方なんだわ。
「…はい。じゃあ卒業パーティーには出ない方が良いですか?」
婚約者にエスコートしてもらう訳でもないし、出席しなきゃ卒業できない訳でもないし、出ないからと言って特に支障はないけど。
「でも、ドレスももう準備したでしょう?」
「まあ…でも卒業したら夜会とか舞踏会に出るようになるから着る機会はあるわ」
「護衛を付けるのはどうですか?俺がイブのパートナーとして出席しますし、第四分団の団員が二人、王太子妃殿下の護衛に付きますよね?その人員をもう少し増やすとか」
ジョーンズ様が良い事を思い付いたという風に人差し指を立てる。
近衛は第一分団が国王陛下、第二分団が王妃殿下、第三分団が第一王子の王太子殿下、第四分団は王太子妃殿下付きよね。で、第五が第一王子以外の王子王女、第六がそれ以外の王族付き。
卒業パーティーに王太子夫妻が来賓として臨席されて第三と第四分団の騎士様が護衛として付くから、その人数を増やして私を護ってくださるって事?
「そうだな…しかしジョーンズとイブ嬢がクラリッサ嬢の側にいるとしても、ずっとは無理だろう」
ダンヴァーズ分団長が思案しながら言った言葉に私は大きく頷いた。
「ええ。卒業パーティーで婚約者と踊らないなんてあり得ません」
イブがジョーンズ様とダンスをするのを楽しみにしてたの、知ってるもの。私のために我慢させるなんて嫌。それなら私が卒業パーティーを欠席する方がいい。
「クラリッサ嬢の婚約者殿はどちらの令息ですか?武術や剣技に長けた者なら…」
「いません」
あ、被せ気味に言っちゃったわ。
目を見開くダンヴァーズ分団長へ笑いかける。
「私、婚約してないんです」
「公爵家の令嬢が婚約してない…?」
小声で呟き、マズイ事を言ったか?という表情だったダンヴァーズ分団長が何かを思い出したように眉を上げた。
「ああ…マルセル公爵家か…」
どうやら、我が家とお兄様とアルヴェル殿下との取り決めの影響について思い至ったみたい。
申し訳なさそうな様子に何故か胸が騒めく。
「あの、ダンヴァーズ分団長が護衛として私のパートナーになってくださいませんか?」
私は思わず身を乗り出してそう言っていた。
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