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それから卒業パーティーの会場へ向かうまでの間にネイト様が婚約者候補ならば知っていて当然であろう自分の経歴について説明してくださった。
ネイト様はダンヴァーズ伯爵家の三男で、学園を卒業して近衛騎士団へ入団。初めは第五分団に配属されて、第二王子アルヴェル殿下や第三王子の護衛などをしていたそう。三年経った処で、第一王子が妃を娶られ、そのタイミングで第四分団へ異動。そこでの四年目に副分団長になり、二年後の九年目に分団長となったそうだ。
そして、現在は入団して十年の二十八歳、夏に二十九歳になるそう。
近衛と言えば、屈強ながら眉目秀麗な貴族令息の集まり。それも二十代で分団長とは出世頭だろう。アンのようなファンがいるくらいだし、ネイト様はとてもモテるはず。なのに貴族の令息が大体二十代前半には結婚する世の中で、これだけの方が結婚していない、婚約者もいない、恋人もいないのは何故なんだろう?
「視線を感じますか?」
「今は感じないです」
私とネイト様は、今、ダンスをしている。
ネイト様はさり気なく周囲を警戒しながらも、ダンスはお上手でとても踊りやすいわ。
やっぱり…モテそうよね。
卒業パーティーの会場である学園の講堂へネイト様に手を取られて入った時、どよめいたものね。特に女生徒が。
「スフェーンの騎士様!?何でここに!?」
「マルセル公爵令嬢と婚約したの!?嘘でしょ!?」
と、悲痛な声が聞こえて来たし。
私たちのすぐ側ではイブとジョーンズ様も踊っている。
イブが楽しそうで何よりだわ。
「開会式の時に視線を感じたんですよね?」
ネイト様が小声で聞いて来る。
「はい。一瞬ですけど」
開会式で生徒会長が挨拶している時に、一瞬刺すような視線を感じた。
すぐに感じなくなったし、あの手紙の人なのかどうかもよくわからない。
何しろネイト様といるから四方八方から見られてるしね。ただあんな風に嫌な感じの視線じゃないけど。
二曲目に突入したイブとジョーンズ様をフロアに残し、ダンスを終えた私とネイト様は壁側に下がった。
「あの…ネイト様、兄と知り合いなんですか?」
ネイト様から飲み物を渡されて、壁際の椅子へエスコートされる。
「ええ。第五分団でアルヴェル殿下に付いていた頃、シルベスト殿とはよく会いました」
お兄様とアルヴェル殿下は幼なじみだから、お兄様よく王宮へ行ってたもん。そういえば知ってて当たり前だったわ。
ネイト様も葡萄ジュースの注がれたグラスを持って私の隣に座った。
「その頃アルヴェル殿下に随行してマルセル公爵家へ行った事もありますし、クラリッサ嬢をお見掛けした事もありますよ」
「え?そうなんですか?」
その頃、ネイト様が十八から二十歳か二十一歳くらい?
と言う事は十歳下の私は八歳から十歳辺りか。
確かにアルヴェル殿下にはいつも護衛騎士が付いてたけど、いつも同じ人ではなかったし、さすがに記憶にないな…
「あの頃のクラリッサ嬢はアルヴェル殿下にベッタリでしたね」
クスクスと笑いながら言われて、私の頬が熱くなる。
子供の頃はアルヴェル殿下が来られたら遠慮なく付き纏ってたわ。十歳過ぎたくらいに男女が一緒にいるのが憚られるようになるまで。
「そんな頃もありましたね」
懐かしいな、と思った時、また刺すような視線を感じた。
「!!」
パッと顔を上げた私に気付き、ネイト様がサイドテーブルへグラスを置くと、さり気なく剣へ手を触れた。
「…どちらの方向からかわかりますか?」
私にしか聞こえないような声で問われる。
いつでも剣を握れるようにしながら、にこやかな表情は崩さずに周囲を窺っているネイト様。
「多分、舞台の方…?」
私も舞台の方を見ないようにしながら、できるだけ唇を動かさないように言った。
ネイト様がダンスフロアのジョーンズ様へ視線を動かすと、ジョーンズ様はイブと踊りながらも少しづつ舞台の方へ移動する。
アイコンタクトしてる風でもなかったのに。すごい。
曲が終わり、ジョーンズ様が胸に手を当て、イブがスカートを摘んで礼をする様子の向こうに舞台があり、間違いなくそちらの方向からまた鋭い視線が飛んで来た。
「…っ」
舞台上に立っていたのは二人の男子生徒。その内の一人が私を見ている。
あれは、生徒会の副会長だわ。
まだ学園の一年生の頃に彼から告白された事がある。
舞台の袖から近衛の騎士服…正装ではない濃紫の詰襟の制服を着た騎士がスッと出て来てその副会長に話し掛け、副会長と騎士は舞台袖へと消えて行った。
あの騎士様は王太子妃殿下に付いていた護衛、よね?
来賓である王太子殿下と王太子妃殿下はもう退席されたから、あの騎士様はネイト様とジョーンズ様が私のために本当に護衛を増やして、この場に残してくださったという事だわ。
それから卒業パーティーの会場へ向かうまでの間にネイト様が婚約者候補ならば知っていて当然であろう自分の経歴について説明してくださった。
ネイト様はダンヴァーズ伯爵家の三男で、学園を卒業して近衛騎士団へ入団。初めは第五分団に配属されて、第二王子アルヴェル殿下や第三王子の護衛などをしていたそう。三年経った処で、第一王子が妃を娶られ、そのタイミングで第四分団へ異動。そこでの四年目に副分団長になり、二年後の九年目に分団長となったそうだ。
そして、現在は入団して十年の二十八歳、夏に二十九歳になるそう。
近衛と言えば、屈強ながら眉目秀麗な貴族令息の集まり。それも二十代で分団長とは出世頭だろう。アンのようなファンがいるくらいだし、ネイト様はとてもモテるはず。なのに貴族の令息が大体二十代前半には結婚する世の中で、これだけの方が結婚していない、婚約者もいない、恋人もいないのは何故なんだろう?
「視線を感じますか?」
「今は感じないです」
私とネイト様は、今、ダンスをしている。
ネイト様はさり気なく周囲を警戒しながらも、ダンスはお上手でとても踊りやすいわ。
やっぱり…モテそうよね。
卒業パーティーの会場である学園の講堂へネイト様に手を取られて入った時、どよめいたものね。特に女生徒が。
「スフェーンの騎士様!?何でここに!?」
「マルセル公爵令嬢と婚約したの!?嘘でしょ!?」
と、悲痛な声が聞こえて来たし。
私たちのすぐ側ではイブとジョーンズ様も踊っている。
イブが楽しそうで何よりだわ。
「開会式の時に視線を感じたんですよね?」
ネイト様が小声で聞いて来る。
「はい。一瞬ですけど」
開会式で生徒会長が挨拶している時に、一瞬刺すような視線を感じた。
すぐに感じなくなったし、あの手紙の人なのかどうかもよくわからない。
何しろネイト様といるから四方八方から見られてるしね。ただあんな風に嫌な感じの視線じゃないけど。
二曲目に突入したイブとジョーンズ様をフロアに残し、ダンスを終えた私とネイト様は壁側に下がった。
「あの…ネイト様、兄と知り合いなんですか?」
ネイト様から飲み物を渡されて、壁際の椅子へエスコートされる。
「ええ。第五分団でアルヴェル殿下に付いていた頃、シルベスト殿とはよく会いました」
お兄様とアルヴェル殿下は幼なじみだから、お兄様よく王宮へ行ってたもん。そういえば知ってて当たり前だったわ。
ネイト様も葡萄ジュースの注がれたグラスを持って私の隣に座った。
「その頃アルヴェル殿下に随行してマルセル公爵家へ行った事もありますし、クラリッサ嬢をお見掛けした事もありますよ」
「え?そうなんですか?」
その頃、ネイト様が十八から二十歳か二十一歳くらい?
と言う事は十歳下の私は八歳から十歳辺りか。
確かにアルヴェル殿下にはいつも護衛騎士が付いてたけど、いつも同じ人ではなかったし、さすがに記憶にないな…
「あの頃のクラリッサ嬢はアルヴェル殿下にベッタリでしたね」
クスクスと笑いながら言われて、私の頬が熱くなる。
子供の頃はアルヴェル殿下が来られたら遠慮なく付き纏ってたわ。十歳過ぎたくらいに男女が一緒にいるのが憚られるようになるまで。
「そんな頃もありましたね」
懐かしいな、と思った時、また刺すような視線を感じた。
「!!」
パッと顔を上げた私に気付き、ネイト様がサイドテーブルへグラスを置くと、さり気なく剣へ手を触れた。
「…どちらの方向からかわかりますか?」
私にしか聞こえないような声で問われる。
いつでも剣を握れるようにしながら、にこやかな表情は崩さずに周囲を窺っているネイト様。
「多分、舞台の方…?」
私も舞台の方を見ないようにしながら、できるだけ唇を動かさないように言った。
ネイト様がダンスフロアのジョーンズ様へ視線を動かすと、ジョーンズ様はイブと踊りながらも少しづつ舞台の方へ移動する。
アイコンタクトしてる風でもなかったのに。すごい。
曲が終わり、ジョーンズ様が胸に手を当て、イブがスカートを摘んで礼をする様子の向こうに舞台があり、間違いなくそちらの方向からまた鋭い視線が飛んで来た。
「…っ」
舞台上に立っていたのは二人の男子生徒。その内の一人が私を見ている。
あれは、生徒会の副会長だわ。
まだ学園の一年生の頃に彼から告白された事がある。
舞台の袖から近衛の騎士服…正装ではない濃紫の詰襟の制服を着た騎士がスッと出て来てその副会長に話し掛け、副会長と騎士は舞台袖へと消えて行った。
あの騎士様は王太子妃殿下に付いていた護衛、よね?
来賓である王太子殿下と王太子妃殿下はもう退席されたから、あの騎士様はネイト様とジョーンズ様が私のために本当に護衛を増やして、この場に残してくださったという事だわ。
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