8 / 25
7
しおりを挟む
7
近衛騎士団の分団長と副分団長には宝石にちなんだ二つ名が付いているんだとアンが教えてくれた。
「第一分団の分団長は瞳が青いのでサファイアの騎士、副分団長は髪が黒いのでオニキスの騎士って呼ばれてるんですって」
私の部屋で並んで毛布に潜り込んで、仰向けになった私が天井を見ながら言う。
イブはアンが髪に書いてくれた各分団長、副分団長の二つ名をうつ伏せで見ていた。
「第二分団は薄緑の瞳のプレナイト、赤い瞳のルビー。第三分団は赤い髪のガーネット、黄緑の瞳のペリドット。第五分団は緑の瞳のエメラルド、茶色の髪のエンスタタイト。第六分団は濃青の髪のラピスラズリ、朱色の瞳のカーネリアン…か。で、第四分団がネイト様のスフェーンと銀の髪の副団長がドゥルージー。よく考えるわよねぇ、こういうの」
「本当ね」
スフェーンはネイト様の瞳のような新緑色の、輝きが強い石だからピッタリだと思う。
「ねえ、クラリッサ」
紙をサイドテーブルに置いて、イブが枕を胸に抱える。
「ん?」
「今日、クラリッサの従姉妹のファイネン様、卒業パーティーに出てなかったのね」
「マジョリカ?そうね。隣国へ嫁ぐのが決まってるし、何かと忙しいから出ないって言ってたわ。…本当は色々言われるのが煩わしいからだろうけど」
お兄様を好きでセシリア様に害を与えたマジョリカは隣国の十四歳歳上の公爵に嫁ぐのが決まっている。
決めたのはアルヴェル殿下。
アルヴェル殿下はセシリア様を好きで。でも今はディナ様と婚約して、二人はとても仲が良いとお兄様から聞くけど…
「周りは色々好き勝手に言うものね」
「そうね」
イブが枕をぎゅっと抱いたまま私の方をじっと見た。
「イブ?」
私が首を傾げると、イブが遠慮がちに口を開く。
「あのね、クラリッサ。私、クラリッサと好きな人の話、してみたかったの…」
「イブ?」
「クラリッサがあまり人に相談とかするタイプじゃないのは知ってるし、もちろん話したくない事は聞かないけど、ほら、今日で最後だし」
ニコリと笑うイブ。
寮生活も明日まで。イブは卒業したらすぐジョーンズ様との結婚準備らしいし、そんなに頻繁には会えなくなるものね…
それに、何だか、今なら客観的に話せそうな気がする。
「私ね、アルヴェル殿下の事が子供の頃からずっと好きだったの」
毛布を口元まで引き上げて言った。
何か、今までマジョリカにしか話した事がない気持ちを口に出すの、ドキドキするわ。
「そう…」
納得したように頷くイブを見て、ああ、気付かれてたんだな、と思う。
私が話すまで知らないふりをしてくれてたのね。
「アルヴェル殿下は王族なのにずっと『恋愛結婚したい』って言ってて…私がその相手になれたら良いのにって思ってたわ。でも殿下にとって私は幼なじみでもあるけど、ずっとお兄様の妹、殿下にとっても妹みたいな存在でしかなかったの」
「うん…」
「そしてお兄様がセシリア様と付き合い始めて、アルヴェル殿下が政略的な結婚を受け入れて…ああもう私が殿下の相手に選ばれる事はないな、って思ったわ。それでもディナ様と婚約するって聞いた時にはショックだったな…諦めてたつもりだったのにね」
クスッと笑うと、イブが首を横に振る。
「そんなに簡単に割り切れないわよ。子供の頃からでしょ?」
「うん。そうね。でも最近ようやく本当に吹っ切れた気がするわ」
「そう…良かった」
明るい声で言うと、イブも笑ってくれた。
「私とジョーンズ様も父親同士が知り合いで、幼なじみと言うほどじゃないけど、子供の頃からの知り合いなのよ」
イブも仰向けに寝転んで、二人で並んで話す。
「そうだったんだ」
「四歳歳上だし、男女だからそんなに一緒に遊んだりした事もないしで、子供の頃は特に何とも思ってなくて。でもね、ジョーンズ様が学園を卒業して近衛騎士団に入った時に、制服姿を初めて見て……一目惚れ?じゃないけど『何て格好良いの!』ってなっちゃって」
ふふふっと照れ笑いを浮かべるイブ。
「それでお父様に『結婚するならジョーンズ様がいい』って直談判したの」
イブから今まで婚約の経緯を聞いた事なかったから、一般的な感じで親が決めたんだと思ってたけど…今までこの話を私にしなかったのは、私が自分の事を話さなかったから遠慮してたんだろうなあ。
「もちろん制服以外も格好良いと思ってるわよ。ねぇ、クラリッサ」
「ん?」
「知ってる相手に改めて一目惚れする事もあるのよ。好きになるって不思議よね?でも不思議でもないわよね?」
「え?」
イブが私の方を見ながらぐっと拳を握って見せて来た。
「クラリッサがダンヴァーズ分団長の事、結構好ましいと思ってても何の不思議もないわ」
近衛騎士団の分団長と副分団長には宝石にちなんだ二つ名が付いているんだとアンが教えてくれた。
「第一分団の分団長は瞳が青いのでサファイアの騎士、副分団長は髪が黒いのでオニキスの騎士って呼ばれてるんですって」
私の部屋で並んで毛布に潜り込んで、仰向けになった私が天井を見ながら言う。
イブはアンが髪に書いてくれた各分団長、副分団長の二つ名をうつ伏せで見ていた。
「第二分団は薄緑の瞳のプレナイト、赤い瞳のルビー。第三分団は赤い髪のガーネット、黄緑の瞳のペリドット。第五分団は緑の瞳のエメラルド、茶色の髪のエンスタタイト。第六分団は濃青の髪のラピスラズリ、朱色の瞳のカーネリアン…か。で、第四分団がネイト様のスフェーンと銀の髪の副団長がドゥルージー。よく考えるわよねぇ、こういうの」
「本当ね」
スフェーンはネイト様の瞳のような新緑色の、輝きが強い石だからピッタリだと思う。
「ねえ、クラリッサ」
紙をサイドテーブルに置いて、イブが枕を胸に抱える。
「ん?」
「今日、クラリッサの従姉妹のファイネン様、卒業パーティーに出てなかったのね」
「マジョリカ?そうね。隣国へ嫁ぐのが決まってるし、何かと忙しいから出ないって言ってたわ。…本当は色々言われるのが煩わしいからだろうけど」
お兄様を好きでセシリア様に害を与えたマジョリカは隣国の十四歳歳上の公爵に嫁ぐのが決まっている。
決めたのはアルヴェル殿下。
アルヴェル殿下はセシリア様を好きで。でも今はディナ様と婚約して、二人はとても仲が良いとお兄様から聞くけど…
「周りは色々好き勝手に言うものね」
「そうね」
イブが枕をぎゅっと抱いたまま私の方をじっと見た。
「イブ?」
私が首を傾げると、イブが遠慮がちに口を開く。
「あのね、クラリッサ。私、クラリッサと好きな人の話、してみたかったの…」
「イブ?」
「クラリッサがあまり人に相談とかするタイプじゃないのは知ってるし、もちろん話したくない事は聞かないけど、ほら、今日で最後だし」
ニコリと笑うイブ。
寮生活も明日まで。イブは卒業したらすぐジョーンズ様との結婚準備らしいし、そんなに頻繁には会えなくなるものね…
それに、何だか、今なら客観的に話せそうな気がする。
「私ね、アルヴェル殿下の事が子供の頃からずっと好きだったの」
毛布を口元まで引き上げて言った。
何か、今までマジョリカにしか話した事がない気持ちを口に出すの、ドキドキするわ。
「そう…」
納得したように頷くイブを見て、ああ、気付かれてたんだな、と思う。
私が話すまで知らないふりをしてくれてたのね。
「アルヴェル殿下は王族なのにずっと『恋愛結婚したい』って言ってて…私がその相手になれたら良いのにって思ってたわ。でも殿下にとって私は幼なじみでもあるけど、ずっとお兄様の妹、殿下にとっても妹みたいな存在でしかなかったの」
「うん…」
「そしてお兄様がセシリア様と付き合い始めて、アルヴェル殿下が政略的な結婚を受け入れて…ああもう私が殿下の相手に選ばれる事はないな、って思ったわ。それでもディナ様と婚約するって聞いた時にはショックだったな…諦めてたつもりだったのにね」
クスッと笑うと、イブが首を横に振る。
「そんなに簡単に割り切れないわよ。子供の頃からでしょ?」
「うん。そうね。でも最近ようやく本当に吹っ切れた気がするわ」
「そう…良かった」
明るい声で言うと、イブも笑ってくれた。
「私とジョーンズ様も父親同士が知り合いで、幼なじみと言うほどじゃないけど、子供の頃からの知り合いなのよ」
イブも仰向けに寝転んで、二人で並んで話す。
「そうだったんだ」
「四歳歳上だし、男女だからそんなに一緒に遊んだりした事もないしで、子供の頃は特に何とも思ってなくて。でもね、ジョーンズ様が学園を卒業して近衛騎士団に入った時に、制服姿を初めて見て……一目惚れ?じゃないけど『何て格好良いの!』ってなっちゃって」
ふふふっと照れ笑いを浮かべるイブ。
「それでお父様に『結婚するならジョーンズ様がいい』って直談判したの」
イブから今まで婚約の経緯を聞いた事なかったから、一般的な感じで親が決めたんだと思ってたけど…今までこの話を私にしなかったのは、私が自分の事を話さなかったから遠慮してたんだろうなあ。
「もちろん制服以外も格好良いと思ってるわよ。ねぇ、クラリッサ」
「ん?」
「知ってる相手に改めて一目惚れする事もあるのよ。好きになるって不思議よね?でも不思議でもないわよね?」
「え?」
イブが私の方を見ながらぐっと拳を握って見せて来た。
「クラリッサがダンヴァーズ分団長の事、結構好ましいと思ってても何の不思議もないわ」
7
あなたにおすすめの小説
私が育てたのは駄犬か、それとも忠犬か 〜結婚を断ったのに麗しの騎士様に捕まっています〜
日室千種・ちぐ
恋愛
ランドリック・ゼンゲンは将来を約束された上級騎士であり、麗しの貴公子だ。かつて流した浮名は数知れず、だが真の恋の相手は従姉妹で、その結婚を邪魔しようとしたと噂されている。成人前からゼンゲン侯爵家預かりとなっている子爵家の娘ジョゼットは、とある事情でランドリックと親しんでおり、その噂が嘘だと知っている。彼は人の心に鈍感であることに悩みつつも向き合う、真の努力家であり、それでもなお自分に自信が持てないことも、知っていて、密かに心惹かれていた。だが、そのランドリックとの結婚の話を持ちかけられたジョゼットは、彼が自分を女性として見ていないことに、いずれ耐えられなくなるはずと、断る決断をしたのだが――。
(なろう版ではなく、やや大人向け版です)
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。
楠ノ木雫
恋愛
若くして亡くなった日本人の主人公は、とある島の王女李・翠蘭《リ・スイラン》として転生した。第二の人生ではちゃんと結婚し、おばあちゃんになるまで生きる事を目標にしたが、父である国王陛下が縁談話が来ては娘に相応しくないと断り続け、気が付けば19歳まで独身となってしまった。
婚期を逃がしてしまう事を恐れた主人公は、他国から来ていた縁談話を成立させ嫁ぐ事に成功した。島のしきたりにより、初対面は結婚式となっているはずが、何故か以前おにぎりをあげた使節団の護衛が新郎として待ち受けていた!?
そして、嫁ぐ先の料理はあまりにも口に合わず、新郎の恋人まで現れる始末。
主人公は、嫁ぎ先で平和で充実した結婚生活を手に入れる事を決意する。
※他のサイトにも投稿しています。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
【完結】令嬢憧れの騎士様に結婚を申し込まれました。でも利害一致の契約です。
稲垣桜
恋愛
「君と取引がしたい」
兄の上司である公爵家の嫡男が、私の前に座って開口一番そう告げた。
「取引……ですか?」
「ああ、私と結婚してほしい」
私の耳がおかしくなったのか、それとも幻聴だろうか……
ああ、そうだ。揶揄われているんだ。きっとそうだわ。
* * * * * * * * * * * *
青薔薇の騎士として有名なマクシミリアンから契約結婚を申し込まれた伯爵家令嬢のリディア。
最低限の役目をこなすことで自由な時間を得たリディアは、契約通り自由な生活を謳歌する。
リディアはマクシミリアンが契約結婚を申し出た理由を知っても気にしないと言い、逆にそれがマクシミリアンにとって棘のように胸に刺さり続け、ある夜会に参加してから二人の関係は変わっていく。
※ゆる〜い設定です。
※完結保証。
※エブリスタでは現代テーマの作品を公開してます。興味がある方は覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる