ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん

文字の大きさ
9 / 25

8

しおりを挟む
8

 夜中に、眠るイブの隣で目が覚めてしまった私は天井を見つめた。
「クラリッサがダンヴァーズ分団長の事、結構好ましいと思ってても何の不思議もないわ」
 イブにそう言われて「好ましいと言っても、アンと同じで、ファンになったの」って答えたけど…若干慌ててたのを見抜かれて生暖かい眼で見られてしまったわ。

 カタン。
 眠っていたら気付かないくらいの小さな音が聞こえる。
 窓の方から?風かしら?
 イブの方とは反対側の窓に視線を向けると、何かの影が窓の向こうを横切ったのがカーテン越しに見えた。
「?」
 鳥?でもこんな夜中に?
 身を起こして、改めて窓の方を見ようとする。と。

 ガシャンッ!!

 窓ガラスが割れ、黒い影が窓から入って来る。
「!!」
 声にならない声を上げると、黒い影が素早く近寄って来て、あっという間に私の口元に布が当てられた。
 ───!!
 あ、この人が、あの視線の人。手紙の主だわ!
 ほとんど本能的にそう悟る。
「何!?きゃあ!」
 私の口元に布を当てながら、後ろから片手を首に回され、引っ張られた。目を覚まし起き上がったイブの腹を蹴る足が見える。
 イブ!
 叫びたいのに声が出ない。手も足も動かなくて、視界も段々黒く染まって来た。 
 グイグイと身体を引っ張られ、ふわりと身体が浮く。黒い影が男性で、私はその男の肩に担がれた。
 わかったのはそこまで。
 私は気を失ってしまった。

-----

「クソッ」
 卒業パーティーは終えたし、寮では今まで何もなかったと油断した。クラリッサ嬢の部屋は四階建ての寮の三階だから侵入は難しいだろうとの判断も甘かった。
 寮で最後の夜。偏執狂者が何か仕掛けて来る可能性は決して低くはなかったのに。
「ダンヴァーズ分団長」
 俺を呼ぶのはクラリッサ嬢の兄、シルベスト殿だ。
 寮からマルセル公爵家へ知らされた異変を、第四分団長の執務室へいる俺にも知らせてくれたのだ。
「申し訳ありません。シルベスト殿」
 机の前に立って頭を下げる。
「いえ。寮は大丈夫だろうと俺も考えていましたから。それより妹のために第四分団を動かしていただきありがとうございます」
 いつも冷静で表情の変わらないシルベスト殿だが、今は美麗な顔に緊張の色が滲んでいた。
 第四分団の団員は既に秘密裏に連れ去られたクラリッサ嬢の捜索に走っている。ジョーンズだけは負傷したイブ嬢の元へ駆け付けさせたが。
 だが、第四分団は王太子妃付きだ。本来は公爵令嬢が誘拐されたからと動く団ではない。
 しかし王太子も王太子妃もこの事態に団を動かす事を咎めたりはしないだろう。
 俺は執務机の上の紙を握りしめる。
 手の中でグシャリと潰れた紙は学園に関わる者の名簿だ。生徒だけではなく、教師や事務員、王城の教育を司る部門の役人の名もある。ここから怪しい奴を何人か絞れたので、夜が開けたら裏付け捜索をするつもりだった。
 しかし、それでは遅かったんだ。

「アルヴェルからは第五分団を動かす許可も得ています。しかし…あまり大事おおごとにするのは…」
 シルベスト殿が言い辛そうに言う。
 そう。貴族の令嬢が拐かされたというのは醜聞だ。
 婚約していれば破棄もあり得る。そして今後の縁談は……クラリッサ嬢に現在婚約者はいない。しかしこの誘拐が表沙汰になれば、いくら公爵家の令嬢でも忌避されてしまうだろう。
「もちろん表には出ないよう最大限努力します。しかし朝になっても見つからなければ第五分団にも協力を仰ぐ事になるでしょうが…」
「ええ」
 私の言葉に、シルベスト殿は厳しい表情で頷いた。

 シルベスト殿はクラリッサ嬢に良く似ている。同じ銀髪で青い瞳で…とても美しい。
 そして、クラリッサ嬢の青い瞳は俺にを思い出させる。
 青い瞳の、俺の幼なじみ。
「私はこれから一番怪しいと睨んでいる人物の所へ行きます。シルベスト殿は屋敷に戻っていてください」
 シルベスト殿にそう言うと、俺は執務室を出て駆け出した。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が育てたのは駄犬か、それとも忠犬か 〜結婚を断ったのに麗しの騎士様に捕まっています〜

日室千種・ちぐ
恋愛
ランドリック・ゼンゲンは将来を約束された上級騎士であり、麗しの貴公子だ。かつて流した浮名は数知れず、だが真の恋の相手は従姉妹で、その結婚を邪魔しようとしたと噂されている。成人前からゼンゲン侯爵家預かりとなっている子爵家の娘ジョゼットは、とある事情でランドリックと親しんでおり、その噂が嘘だと知っている。彼は人の心に鈍感であることに悩みつつも向き合う、真の努力家であり、それでもなお自分に自信が持てないことも、知っていて、密かに心惹かれていた。だが、そのランドリックとの結婚の話を持ちかけられたジョゼットは、彼が自分を女性として見ていないことに、いずれ耐えられなくなるはずと、断る決断をしたのだが――。 (なろう版ではなく、やや大人向け版です)

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。 彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。 ――その役割が、突然奪われるまでは。 公の場で告げられた一方的な婚約破棄。 理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。 ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。 だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。 些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。 それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。 一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。 求められたのは、身分でも立場でもない。 彼女自身の能力だった。 婚約破棄から始まる、 静かで冷静な逆転劇。 王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、 やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。 -

わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。

楠ノ木雫
恋愛
 若くして亡くなった日本人の主人公は、とある島の王女李・翠蘭《リ・スイラン》として転生した。第二の人生ではちゃんと結婚し、おばあちゃんになるまで生きる事を目標にしたが、父である国王陛下が縁談話が来ては娘に相応しくないと断り続け、気が付けば19歳まで独身となってしまった。  婚期を逃がしてしまう事を恐れた主人公は、他国から来ていた縁談話を成立させ嫁ぐ事に成功した。島のしきたりにより、初対面は結婚式となっているはずが、何故か以前おにぎりをあげた使節団の護衛が新郎として待ち受けていた!?  そして、嫁ぐ先の料理はあまりにも口に合わず、新郎の恋人まで現れる始末。  主人公は、嫁ぎ先で平和で充実した結婚生活を手に入れる事を決意する。 ※他のサイトにも投稿しています。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

ホストと女医は診察室で

星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。

処理中です...