ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん

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 近衛騎士団の分団長と副分団長には宝石にちなんだ二つ名が付いているんだとアンが教えてくれた。
「第一分団の分団長は瞳が青いのでサファイアの騎士、副分団長は髪が黒いのでオニキスの騎士って呼ばれてるんですって」
 私の部屋で並んで毛布に潜り込んで、仰向けになった私が天井を見ながら言う。
 イブはアンが髪に書いてくれた各分団長、副分団長の二つ名をうつ伏せで見ていた。
「第二分団は薄緑の瞳のプレナイト、赤い瞳のルビー。第三分団は赤い髪のガーネット、黄緑の瞳のペリドット。第五分団は緑の瞳のエメラルド、茶色の髪のエンスタタイト。第六分団は濃青の髪のラピスラズリ、朱色の瞳のカーネリアン…か。で、第四分団がネイト様のスフェーンと銀の髪の副団長がドゥルージー。よく考えるわよねぇ、こういうの」
「本当ね」
 スフェーンはネイト様の瞳のような新緑色の、輝きが強い石だからピッタリだと思う。

「ねえ、クラリッサ」
 紙をサイドテーブルに置いて、イブが枕を胸に抱える。
「ん?」
「今日、クラリッサの従姉妹のファイネン様、卒業パーティーに出てなかったのね」
「マジョリカ?そうね。隣国へ嫁ぐのが決まってるし、何かと忙しいから出ないって言ってたわ。…本当は色々言われるのが煩わしいからだろうけど」
 お兄様を好きでセシリア様に害を与えたマジョリカは隣国の十四歳歳上の公爵に嫁ぐのが決まっている。
 決めたのはアルヴェル殿下。
 アルヴェル殿下はセシリア様を好きで。でも今はディナ様と婚約して、二人はとても仲が良いとお兄様から聞くけど…
「周りは色々好き勝手に言うものね」
「そうね」
 イブが枕をぎゅっと抱いたまま私の方をじっと見た。
「イブ?」
 私が首を傾げると、イブが遠慮がちに口を開く。
「あのね、クラリッサ。私、クラリッサと好きな人の話、してみたかったの…」
「イブ?」
「クラリッサがあまり人に相談とかするタイプじゃないのは知ってるし、もちろん話したくない事は聞かないけど、ほら、今日で最後だし」
 ニコリと笑うイブ。
 寮生活も明日まで。イブは卒業したらすぐジョーンズ様との結婚準備らしいし、そんなに頻繁には会えなくなるものね…
 それに、何だか、今なら客観的に話せそうな気がする。

「私ね、アルヴェル殿下の事が子供の頃からずっと好きだったの」
 毛布を口元まで引き上げて言った。
 何か、今までマジョリカにしか話した事がない気持ちを口に出すの、ドキドキするわ。
「そう…」
 納得したように頷くイブを見て、ああ、気付かれてたんだな、と思う。
 私が話すまで知らないふりをしてくれてたのね。
「アルヴェル殿下は王族なのにずっと『恋愛結婚したい』って言ってて…私がその相手になれたら良いのにって思ってたわ。でも殿下にとって私は幼なじみでもあるけど、ずっとお兄様の妹、殿下にとっても妹みたいな存在でしかなかったの」
「うん…」
「そしてお兄様がセシリア様と付き合い始めて、アルヴェル殿下が政略的な結婚を受け入れて…ああもう私が殿下の相手に選ばれる事はないな、って思ったわ。それでもディナ様と婚約するって聞いた時にはショックだったな…諦めてたつもりだったのにね」
 クスッと笑うと、イブが首を横に振る。
「そんなに簡単に割り切れないわよ。子供の頃からでしょ?」
「うん。そうね。でも最近ようやく本当に吹っ切れた気がするわ」
「そう…良かった」
 明るい声で言うと、イブも笑ってくれた。

「私とジョーンズ様も父親同士が知り合いで、幼なじみと言うほどじゃないけど、子供の頃からの知り合いなのよ」
 イブも仰向けに寝転んで、二人で並んで話す。
「そうだったんだ」
「四歳歳上だし、男女だからそんなに一緒に遊んだりした事もないしで、子供の頃は特に何とも思ってなくて。でもね、ジョーンズ様が学園を卒業して近衛騎士団に入った時に、制服姿を初めて見て……一目惚れ?じゃないけど『何て格好良いの!』ってなっちゃって」
 ふふふっと照れ笑いを浮かべるイブ。
「それでお父様に『結婚するならジョーンズ様がいい』って直談判したの」
 イブから今まで婚約の経緯を聞いた事なかったから、一般的な感じで親が決めたんだと思ってたけど…今までこの話を私にしなかったのは、私が自分の事を話さなかったから遠慮してたんだろうなあ。
「もちろん制服以外も格好良いと思ってるわよ。ねぇ、クラリッサ」
「ん?」
「知ってる相手に改めて一目惚れする事もあるのよ。好きになるって不思議よね?でも不思議でもないわよね?」
「え?」
 イブが私の方を見ながらぐっと拳を握って見せて来た。
「クラリッサがダンヴァーズ分団長の事、結構好ましいと思ってても何の不思議もないわ」



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