ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん

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 夜中に、眠るイブの隣で目が覚めてしまった私は天井を見つめた。
「クラリッサがダンヴァーズ分団長の事、結構好ましいと思ってても何の不思議もないわ」
 イブにそう言われて「好ましいと言っても、アンと同じで、ファンになったの」って答えたけど…若干慌ててたのを見抜かれて生暖かい眼で見られてしまったわ。

 カタン。
 眠っていたら気付かないくらいの小さな音が聞こえる。
 窓の方から?風かしら?
 イブの方とは反対側の窓に視線を向けると、何かの影が窓の向こうを横切ったのがカーテン越しに見えた。
「?」
 鳥?でもこんな夜中に?
 身を起こして、改めて窓の方を見ようとする。と。

 ガシャンッ!!

 窓ガラスが割れ、黒い影が窓から入って来る。
「!!」
 声にならない声を上げると、黒い影が素早く近寄って来て、あっという間に私の口元に布が当てられた。
 ───!!
 あ、この人が、あの視線の人。手紙の主だわ!
 ほとんど本能的にそう悟る。
「何!?きゃあ!」
 私の口元に布を当てながら、後ろから片手を首に回され、引っ張られた。目を覚まし起き上がったイブの腹を蹴る足が見える。
 イブ!
 叫びたいのに声が出ない。手も足も動かなくて、視界も段々黒く染まって来た。 
 グイグイと身体を引っ張られ、ふわりと身体が浮く。黒い影が男性で、私はその男の肩に担がれた。
 わかったのはそこまで。
 私は気を失ってしまった。

-----

「クソッ」
 卒業パーティーは終えたし、寮では今まで何もなかったと油断した。クラリッサ嬢の部屋は四階建ての寮の三階だから侵入は難しいだろうとの判断も甘かった。
 寮で最後の夜。偏執狂者が何か仕掛けて来る可能性は決して低くはなかったのに。
「ダンヴァーズ分団長」
 俺を呼ぶのはクラリッサ嬢の兄、シルベスト殿だ。
 寮からマルセル公爵家へ知らされた異変を、第四分団長の執務室へいる俺にも知らせてくれたのだ。
「申し訳ありません。シルベスト殿」
 机の前に立って頭を下げる。
「いえ。寮は大丈夫だろうと俺も考えていましたから。それより妹のために第四分団を動かしていただきありがとうございます」
 いつも冷静で表情の変わらないシルベスト殿だが、今は美麗な顔に緊張の色が滲んでいた。
 第四分団の団員は既に秘密裏に連れ去られたクラリッサ嬢の捜索に走っている。ジョーンズだけは負傷したイブ嬢の元へ駆け付けさせたが。
 だが、第四分団は王太子妃付きだ。本来は公爵令嬢が誘拐されたからと動く団ではない。
 しかし王太子も王太子妃もこの事態に団を動かす事を咎めたりはしないだろう。
 俺は執務机の上の紙を握りしめる。
 手の中でグシャリと潰れた紙は学園に関わる者の名簿だ。生徒だけではなく、教師や事務員、王城の教育を司る部門の役人の名もある。ここから怪しい奴を何人か絞れたので、夜が開けたら裏付け捜索をするつもりだった。
 しかし、それでは遅かったんだ。

「アルヴェルからは第五分団を動かす許可も得ています。しかし…あまり大事おおごとにするのは…」
 シルベスト殿が言い辛そうに言う。
 そう。貴族の令嬢が拐かされたというのは醜聞だ。
 婚約していれば破棄もあり得る。そして今後の縁談は……クラリッサ嬢に現在婚約者はいない。しかしこの誘拐が表沙汰になれば、いくら公爵家の令嬢でも忌避されてしまうだろう。
「もちろん表には出ないよう最大限努力します。しかし朝になっても見つからなければ第五分団にも協力を仰ぐ事になるでしょうが…」
「ええ」
 私の言葉に、シルベスト殿は厳しい表情で頷いた。

 シルベスト殿はクラリッサ嬢に良く似ている。同じ銀髪で青い瞳で…とても美しい。
 そして、クラリッサ嬢の青い瞳は俺にを思い出させる。
 青い瞳の、俺の幼なじみ。
「私はこれから一番怪しいと睨んでいる人物の所へ行きます。シルベスト殿は屋敷に戻っていてください」
 シルベスト殿にそう言うと、俺は執務室を出て駆け出した。



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